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015夕学だより夕学だより ] 2006年01月17日
くらた まなぶ 「カラダ発想術~やわらか右脳マーケティング~」

くらた まなぶ 株式会社あそぶとまなぶ 代表取締役 >>講師紹介
講演日時:2005年10月31日(月) PM6:30-PM8:30

今日の『夕学五十講』は、元リクルートで「創刊男」の異名を取った、くらたまなぶ氏が登壇されました。

「とらばーゆ」「フロムエー」「エイビーロード」「じゃらん」「ゼクシー」など、くらた氏が立ち上げたリクルートの情報誌は14誌に及びます。社会人の方で、これらの情報誌のお世話になったことのない方は、まずいらっしゃらないのではないでしょうか。

くらた氏は、25歳でリクルートに中途入社しました。面接で何をやりたいかと聞かれ、「新しいことがやりたい」と答えたところ、望みどおり新規プロジェクトに配属されます。以来、リクルート社在籍の20年間、次々と新たなアイディアに基づく情報誌を成功させてきました。その生活は、家に帰らない、眠らない、風呂に入らない日々だったそうです。

さて、くらた氏は、自らの経験を通じて、事業を成功に導くためのプロセスは次のような流れになることを説明してくれました。

  • まず、昨日までの状況を実績(数字)として把握する・・・市場調査
  • 明日の予算や計画を立てるために人の気持ちを聞く・・・マーケティング
  • 人のことばをカタチにする・・・マーチャンダイジング(商品化)
  • カタチにした結果が、実績となる(昨日の数字になる)

上記のプロセスでわかるように、くらた氏は、「市場調査」と「マーケティング」を別ものとして扱っています。市場調査とは、昨日(きのう)までの行動を数字で把握することです。顧客数や、売り上げ、価格など、「数字」がベースになる、いわば「算数」です。一方、「マーケティング」とは、明日(あした)からの人の気持ちを言葉で知ることです。つまり、算数ではなく、国語の仕事なのです。

そして、くらた氏は、新たなアイディアを発想し、事業を成功させるために大事なことは「顧客に耳を傾ける」というマーケティングに尽きると考えているそうです。ところが、これが簡単なようで、実はそう簡単ではないのです。

くらた氏によれば、顧客から聞きだすべき言葉は、グチ、すなわち、不満、不安、不快、不便といった「不」のつくものです。具体的には、「ひどい」「まずい」といった形容詞をどれだけ引き出せるかにかかっています。しかし、実際には、こうした本当の気持ちを集めるのはなかなか難しい。例えば、話を聞きたいということで、メモや録音の用意をしたりすると身構えてしまうし、謝礼を払ってしまうと、もらう方は本音を話しづらくなり、好意的な言葉になってしまうのです。ですから、くらた氏は人の話を聞く際には、オフィスではなく喫茶店や飲み屋などで2人きり、メモ、録音、謝礼なし、費用も基本的に割り勘、友達感覚で話せる状況を作り出したのです。

また、くらた氏は、どんな人の気持ちを聞くべきかということについても、順番を決めています。すなわち、次のような順番で聞いていきます。

「好きな人・得意な人」→「嫌いな人・苦手な人」→「普通の人」→「知らない人」

「好きな人・得意な人」は、くらた氏の場合、奥さんや会社の近くの台湾料理のマスターです。実は、奥さんの意見でつぶれたアイディアもたくさんあるそうです。(笑)
次に聞くべき人たちである、「嫌いな人・苦手な人」は、共通点が見出しづらく、気まずい雰囲気にならざるを得ないのですが、自分とはまったく異なる視点を持っているからこそ、彼らの口から出てくる意見が役に立つのだそうです。そして、「普通の人」や、「知らない人」については、一定の謝礼や予算を使って実際に「調査」をやることになるのですが、この場合というのは、身近な人から聞いた話から作った仮説を確かめることが目的になります。

さて、人の不平不満を聞いたら、次にそれを裏返して「夢」に変えることになります。不平・不満を解消できるアイディアを生み出すことです。具体的な「カタチ」にする前段階です。

くらた氏は、「夢」を生み出すために「ブレイン・ストーミング」(ブレスト)を最大限に活用してきました。ブレストは、4~7人のメンバーが集まって自由にアイディアを出し合うもので、一切相手の発言を否定してはいけません。くらた氏は、時に湯島のラブホテルをブレストの会場として使いました。とにかく、突拍子もないアイディアがどんどん出るような雰囲気作りが大切だそうです。もし、1回でも否定的な言葉が出て場が白けてしまったら、即座にブレストを中止したそうです。それ以降、自由な発言が抑制されてしまうからです。

こうしたお話をお聞きしていると、くらた氏はずいぶんと型破りな方だとの印象を受けてしまいますが、情報誌を成功させ、莫大な収益をリクルートにもたらした方だけに、一方でバランス感覚をしっかりとお持ちです。なぜなら、起業の3条件として、くらた氏は、

  • 「ロマン」(夢、世のため人のためになるか)
  • 「ソロバン」(金、稼げるか、儲かるか)
  • 「ジョーダン」(愛、楽しいか、面白いか)

を挙げてらっしゃるからです。情報誌の立ち上げ時期、くらた氏はスタッフに向かって、例えば

“今期は「ロマン1、ソロバン8、ジョーダン1」で行きます。”

と宣言して、スタッフを方向付け、また鼓舞していたそうです。

今回のご講演で、くらた氏は、豊富な創刊経験に裏打ちされた実践ノウハウを体系的な方法論としてお話くださったので、受講された方の多くが、「これは仕事にすぐに応用できそうだ!」といった実感を持たれたのではないかと思います。

主要著書
MBAでは教えない「創刊男」の仕事術』日本経済新聞社、2003年
カラダ発想術』日本経済新聞社、2005年

推薦図書
唯脳論』養老猛著、青土社、1989年

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