●はじめに
初めて見た外国映画は何だったのか、思い出そうとしても、どうにも思い出せそうにない。ただし、字幕は戸田奈津子さんだったように思う。多分そうだ。
あれは高校生の頃だっただろうか、それまでに何本かの外国映画を見ていた私は、その日も映画館に行き、画面に出る名前を見てふと気が付いた。「あれ、今日も『戸田奈津子』だな」と。
以来、見る映画見る映画、いずれもが戸田奈津子さんによる字幕翻訳で、一体どんな人なのだろうとぼんやりとした興味を覚えた。あの手書きのようなフォントは不思議と画面に溶け込んでいて、外国映画に後から日本語が付け加えられたとわかってはいても、違和感がなかった。
今思えば、あの違和感のなさはフォントよりも字幕の的確さがそうさせていたのだろう。こう気が付いたのは、ずっと後になってからのことだ。
今回、 あの戸田奈津子さんのお話を直接伺えることに、私は静かに興奮していた。

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