「母なるミトコンドリアDNA」/やまがらメリー

国立科学博物館人類研究部長の篠田謙一博士は、開口一番
「ホモ・サピエンスとは賢い人という意味ですが、どうなんでしょうか?」
との問いかけで始まった、人類史の流れの始まりです。
20世紀後半から始まった分子生物学の発展により、従来の化石に頼った方法とは比較にならない精度で明らかになっている、人類の起源と拡散の経路の話の中で、ド素人の私にも共感出来る、博士の本音の「問いかけ」が随所に根底にありました。

ひとりの体には60兆の細胞があり、髪の毛1本、唾液一滴のひとつひとつの全てに同じ遺伝情報がある。


地球上の歴史ではごく新参者の我々人類のルーツを辿っていくには、母からしか子供に伝わらないミトコンドリアDNAの16550の波形の配列データを集積し数学的なアルゴニズムで違いを検証し、クラスター分析等、データを細かく読み取っていくなかで、民族や文化の偏見が取れていく事に意味があると話されます。

「今の人類の方が文明も進んでいて、能力も高く優れているという思い込みをしていないか?」
「肌の色や、生活スタイルの違いで、人間の優劣を決めていないか?」

太古の人間も今の人間も、同じ潜在能力をもっていて、優劣はないということが、ミトコンドリアDNAのデータを通して見えてくる。DNAの多様性、普遍性から文化が違うということであって、文化の違いを認め合うことにつながってくる。

ミトコンドリアDNAの母性を辿っていくと、アフリカにある。
男性から息子に伝わるY染色体もアフリカが最古。
Y染色体は乗っ取られやすい。何故なら一夫多妻制や高年齢になっても生殖能力があるからと女性には反感を買うかも知れませんとのひと言もありました。

200万年位前にアフリカの原人から始まっている。
50万年位前に旧人・ネアンデルタール人。
20万年位前から新人ホモ・サピエンス。
10万年より古い時代のホモサピエンスの化石は、アフリカか中東からしか出土しない。

狩猟を主体とした初期から、幾多の氷河期やら苦難を乗り越えながら、民族移動をし農耕を習得し、拡散していった人類。

ヨーロッパの西端で最後を遂げたネアンデルタール人のDNAが2.5%も日本人に残っているという驚き。
日本人は2つのDNAグループがあり、本土の日本と沖縄ではDNAが違う。そしてオホーツク文化のアイヌ。
縄文人にはハプログループのアジアの全タイプがあり、更に日本だけのがふたつあるという多様性。
ハワイは99%同じ遺伝子だそうです。
日本人は沢山のタイプがあり、縄文人はたれ目で弥生人は丸い目をしているらしい。

蒙古斑のあるなしで同じグループかどうかが私にも分かる見分け方のひとつでしたが、ミトコンドリアDNAのデータから世界の成り立ちが分かっていくのですね。

人類史上、爆発的に増えている人口増加の今の状況に、この丸の内のビジネスど真ん中のような場でいうのを博士はためらいながらも、
「そろそろ成長神話をやめてはどうか?」
「文化は中央と周辺にあるという丸の内理論は、DNAデータから見ると違う」

結論などではなく、今の地球上の激烈な環境悪化や日本の現状にも、ミトコンドリアDNAのデータに答えのヒントが隠されているのではと感じた、貴重な講演会でした。

上野寛永寺での徳川家墓所から発掘した、徳川家歴代の奥方様達のしゃれこうべがずらっと並んだ写真を前にして、世が世ならこんなことをやっている私達は皆、打ち首もんですとには笑えました。
上野の森にある国立科学博物館には、そんなしゃれこうべが山とあるとのことで、怖いもの見たさで出かけたくなりました。

博士の本音に共感して、私も思うままに列挙します。
過去があるから今があり、未来を担う役割が今にある。
役割は全員違い、認め合うこと。
誰が偉いとかではない。
拝金主義全盛で世界が動き、お金に振り回され、命が削られていく。
人類が登場したのは地球の歴史の中ではごく最近なのに、わずかここ百年位で地球上のありとあらゆる生命を絶滅させている。
経済だ、景気だと、大量生産、大量消費の結果、地球環境を破壊して、海に大気に有害なゴミをまき散らし、
空気を汚し、山の緑を育てなくなった。
地球がこわれたら元も子もないでしょ。
失われた生命は二度と戻らない。
日本人と同じDNAのネイティブアメリカンは7代先の子孫を想って環境を守る教えがあるように、八百万の神様が日本人にはあるのだから、大自然と共にありたいのです。

環境を良くするビジネスが丸の内から始まっているとしたら凄いですよね。

ありがとうございました。


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