山崎さんは、自分自身の仕事を、客観的に「うさん臭い」と言ってしまう。
本当にうさん臭い人が、自身をうさん臭いと定義し、告白したとしても、うさん臭さはいつまでも残ってしまうものである。なのに。。。。

山崎さんの認識は、studio-L という会社を立ち上げ、人と人をつなぐ「コミュニティデザイン」という仕事を始めてから、常に付きまとっていたイメージを、的確に捉え、正に仕事の中で、それを克服するための方法論を積み上げてきた証のようである。

とにかく、一人一人に聞いて回った。
「はっ!」「なるほど!」「すごいっすね!」
聞くことに徹して、「聞く人」になる。
「情報を集めること」と、「友達になること」
これが、山崎さんの経験から生まれた、仕事の本質である。

山崎さんは、この日の講演会場に集まった人と雰囲気を見て、自己紹介のために兵庫県の「有馬富士公園」における仕事の話を、はじめに選んだ。
この仕事で、公園という施設(ハードウェア)を設計するという仕事ではなく、「そこに集まる人がいかに楽しめるか」いうソフトウェアの仕事を請け負った。
最初はディズニーランドの手法を勉強しながら、「コミュニティデザイン」の方法論を少しづつ積み上げていった。この公園。利用者が毎年増えているらしい。

続いて、
鹿児島県の「マルヤガーデンズ」での仕事。
この仕事は、前の「有馬富士公園」の仕事で得た方法論を、デパートと組み合わせて、実現していった。

続いて、
立川市の「こども未来センター」での仕事。

と、こ・こ・で、
この話をタンタンと続けると思いきや、キュッとハンドルを切った。

この時はまだ、会場の雰囲気は、とても静かで、ややこちら側にも警戒感が残り、
山崎さんの大阪弁だけが響いていた。

「コミュニティデザイン」とは何か?

「コミュニティ」には、今やたくさんの意味があって、
地域で実践していくときの困難さ、企業で実践していくときの困難さを
キッチリ説明したら、またキュッと逆戻り。
立川市の「こども未来センター」の仕事に話が戻るのである。

この山崎さんの、キュキュッ、というハンドルの切り替えをきっかけに、その大阪弁のスピードは、グッと加速した。
「話す人」である。
香川県の「観音寺まちなか再生計画」という、閑散とした商店街の再生の話に入るやいなや、
アッという間に、
会場には、山崎さんの仕事を語る言葉に共鳴する笑いが何度も湧き、いつのまにか山崎さんの世界に包まれ、この雰囲気のまま最後までイッキに駆け抜けていってしまった。

この「観音寺まちなか再生計画」のアウトプットは、「今宵も始まりました。」である。
この日の最後の話、「家島」のアウトプットは、「のりっこ」である。
何のこと?
アウトプットの詳細を知りたい方は、ぜひネット検索してみてほしい。

僕は山崎さんの世界に取り込まれながら、
「山崎さんって、一体何をやっている人だろう?」と、
話の途中で思ってしまった。
でも、こんな思いを持ちながらも、その自称する「うさん臭さ」はどこかに散ってしまい、
信頼感と満足感が残っていたのである。

「コミュニティデザイン」とは一体何であろうか?

山崎さんは、
「デザインの力で、人の集団が持つ課題解決力を高めるよう支援することである」
と定義している。

実際には、課題というブラックボックスの中に、山崎さんがシンプルな公式を入れて、山崎さんに支援されるみんなが一生懸命に箱の中身をかき混ぜて、新しい公式を生み出している。

「観音寺まちなか再生計画」+ 「     」=「今宵も始まりました」
という簡素な公式のカッコの中身には、山崎さんが加えた小さなルールとアイデアに、
関わっているすべての人が、多種多様な具材を持ち寄って入れ込むのである。
さらに関わる人が具材の調理方法も決めるのである。

話が終わり、舞台から遠くに立つ聴講者からの質問になれば、
山崎さんは、「聞く人」に変化(へんげ)し、相手に対してハッキリとうなずく。
その質問に答える自らの方法論も、さっと一般公開していた。

会場には、僕を含め企業で働く方が多かった。
企業で働く人にとって、今日の話がどんなに役に立つのか、
その明確な答えはここになく、山崎さんも必ずしもそれを提供していない。

でも、
電車で帰宅する途中、僕は今日の講演のことを思い浮かべ、
自然と自分の仕事と講演の話がリンクしていったのである。

僕の職務には、「支援」という言葉が付いている。
僕の職務には、「デザイン」という言葉が付いていない。

でも、「支援」の方法って、デザイン的で、デザイン的な要素も含まれていてというふうに、いつのまにか考えが進み、最後には勝手に一つの言葉が生まれていった。
今度、実践してみようと思う。
恐らく、この講演を聞いた人の中には、同じような経験をした人がいると思う。

その日の夜、NHK news web 24 に、ナビゲーターとして出演していた山崎さんは、
この講演と全く同じボーダーのシャツに、薄いブルーのジーンズという格好で、
出演する専門家の話を「聞く人」になっていた。

山崎さんが「話す人」の時は、関わる人が山崎さんのことを知る。
山崎さんが「聞く人」の時は、山崎さんが関わる人のことを知る。
山崎さんの瞬間的な 「変化(へんげ)」に魅せられてしまう。


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