夕学五十講からの帰り道は、毎回気分が異なる。
理解できなかった内容を反芻しながらぼんやりと歩くこともあれば、講師の言葉に刺激され大股で闊歩することもある。講師の冗談を思いだし、思わずニンマリすることもある。

宮本亜門氏の講演を聞いた帰り道は、不思議な気分に包まれていた。
東京駅の雑踏のなかで見ず知らずの人たちとすれ違いながら、私は、行き交う人々の体温を感じていたのだ。

ほろ酔い加減のサラリーマン。「30%引き」の値札を手に声を張る店員。スマホの画面を見ながら歩く女性。手をつないだカップル。
いつもと変わらない光景は、まるで、無彩色の街のなかで人間の周りだけがやわらかな光を放っているような、一人ひとりが温かい熱を発しているかのような、そんな思いがした。いや、あの日の夜は、実際に街がそう見えた。
 

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