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伊藤 亜紗「身体論から考える利他」

伊藤 亜紗

身体のローカルルール

「自分と違う体から、世界はどう見えているのか?」という問いから出発し、おもに障害を持つ人たちとの対話を重ね、彼らの感覚や機能の差異から独自に編み出された驚くべき体の操縦法や、痛みとの折り合い方を聴取してきた伊藤亜紗氏。また介護や介助に携わる人たちの声などからケアの感性についても考察を広げ、それらの調査結果を、データ(数字)ではなく一人ひとりで違う「その人の体らしさ」「個別性=ローカルルール」の物語として全く新しい身体論・ケア論にまとめてきた。

その伊藤氏は、今、東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センターで長を務め、当面「利他学」を主題とする研究プロジェクトを率いる。「利他」を、宗教ではなく学問の文脈で系統づけられるのかといぶかしむ向きもあろうが、日本の理工系大学としてはめずらしくリベラルアーツに力を入れる東工大の試みときけば納得がいく。「ほんとうに必要とされている科学技術とは何か」を考えるとき、本来的に自己中に陥りがちな学問を相対化する倫理としての役割もあろう。むろん、パンデミック下で世に高まる排他的な自己責任論の大合唱を批判する立場として、利他学発信が急務となった背景もある。

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