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庄司 克宏「欧州統合は「脱EU」と「奪EU」に勝てるか?―ブレグジットとポピュリズム」

ブレグジットとポピュリズム―ポピュリズムはなぜ生まれて、どうしたら解消できるのか―

庄司 克宏慶應義塾大学大学院法務研究科の庄司克宏教授が、EUにおけるポピュリズム台頭やブレグジットが起こった要因の一つとなった、EUの政治的統治構造について、詳しく丁寧に解説してくださった。欧州におけるポピュリストの不満は、EU域内において、人が自由に行き来できる原則を持っていること、またその原則構造に対し、各国が独立して別の選択をする余地があまりない点にある。庄司先生は、EUから離脱をして、自国の民主主義に基づく政策を推進しようとする英国を「脱EU」派と呼び、EU域内に加盟国としてとどまりながら、ポピュリズムの影響力を拡大しようとする勢力のことを「奪EU」派と呼んだ。後者には、ポーランド・ハンガリーなどのポピュリスト政党が含まれる。

欧州統合の父とも呼ばれるフランスの政治家ジャン・モネは、EUの成立契機を、横暴なナショナリズムが主導した第二次世界大戦に対する反省、と表現している。つまり、そもそも狂犬な国の力を抑え込み、公正無私なテクノクラート(EUコミッション=欧州委員会)に立法発議の主権移譲をすることがEU設立の目的だった。そして、EUでは、域内を単一の市場とみなして、原則として、域内の人・物・サービス・資本は自由に移動できること、となった。国境管理、難民問題、環境政策、単一通貨、対外政策がEUの対象政策分野となる。

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No忖度上等! 望月衣塑子さん

望月衣塑子のっけから恐縮だが、いやはや、すごい講演だった。望月衣塑子さんの熱量に圧されっぱなし。質疑応答まで含め、めくるめくドトウの2時間15分だった。

レビュー担当の講演は細かくメモを取りながら聴講するのが常だが、今回は開始10分でペンを置いてしまった。望月さんが十分な配布資料を用意してくれていたから、というのもあるし、ペンが追いつかないほどの言葉の洪水に圧倒されたから、というのもあるが、何より「メモに気を取られてこの場の空気をつかみ損ねてしまうのが惜しい」と感じたからだ。

話しはじめた瞬間に、小柄で華奢な体型からは想像できない、たいそう大きなパワーを内包している方だということがわかった。第一声からラストまで息切れすることなく一気に語りつくした2時間強。この原動力は、いったい何なんだろう。

「忖度しない」ことの価値

望月さんが特に注目されるきっかけとなったのは、官房長官記者会見をめぐる官房長官および官邸報道室との攻防だ。社会部記者の望月さんは政治部の記者とは異なる作法で会見にのぞみ、結果、会見においてさまざまな妨害を受けることになる。

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本間希樹所長に聴く、事象の果てに見えたもの

本間希樹プロジェクトの名はEHT/Event Horizon Telescope。直訳すれば「"事象の地平線"望遠鏡」。
欧州、北米、南米、南極、そしてハワイに散らばる各国の電波望遠鏡を連携させて地球と同じ大きさの仮想的な巨大電波望遠鏡を構成する。人間でいえば視力300万、というその途轍もない「目」=超長基線電波干渉計(VLBI)が見据えるのは、太陽系から5500万光年の彼方にあるM87銀河、その中心にある見えない陥穽、ブラックホール。

200名を超える世界の研究者たちが参加したこの国際プロジェクトの成果発表は、2019年4月10日、協定世界時13時ちょうどに世界6か所で一斉に始まった。歴史的瞬間はそのきっかり7分後に指定されていた。

「日本時間午後10時07分、この時刻は一生忘れられない」

日本チームのリーダーを務めた本間希樹・国立天文台水沢VLBI観測所所長は、各チームを代表する6人のうちの一人として、人類が初めて撮影したブラックホールの姿を世界に向けて見せたその瞬間を振り返って、言った。

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西田 亮介「ソーシャルメディア時代の政治と民主主義~その現状と課題~」

西田 亮介

知性の終わり


数年前から言論を取り巻く環境が大きく変化したことを感じている。数十年前はもっと大らかな言論環境があったはずなのに最近では何か発言するとすぐ攻撃に晒されるようだ。こうした思いを抱くのは私だけではないようで指摘する識者もおり、灘中学校の校長が歴史教科書の採択を巡る実体験の公表もした。背景にネットによる匿名かつ集団的攻撃が容易になったことがあるだろう。そこへきてトランプ米大統領の不可思議な言動がある。大統領選でのロシアの介入も取り沙汰された。大変な時代だ。いつの間にか私達は窮屈でおかしな縛りの中にいる。何とも言えないモヤモヤした気持ちと危機感で今回の講演に申し込んだ。

西田亮介氏の演題が「ソーシャルメディア時代の政治と民主主義」であったのでアメリカ大統領選でのロシア介入疑惑やフェイクニュース等を中心に語られるのだろうと思った。確かにそうしたことも取り上げられたものの、ご本人が初めに断っていたように講演内容は概況的でより高い視点、民主主義の現代的問題を大きな軸として語られた。この構成はとても良く、ともすれば個々の事象を追うだけで終わりがちになるところを世界全体、歴史的な変化の一環として捉えられた。

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