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「「サブスク!」は魔法の呪文じゃない」川上 昌直さん

川上 昌直

伝統的マーケ手法のコレジャナイ感

「さて、プランニングに取りかかろうか」と、おもむろにマーケティングのバイブルを開く。AIDMA、SWOT分析、3C分析、4P...どれもかつては魔法の呪文のように、課題のもつれた糸をほぐしてくれた珠玉の手法ばかり。

しかし何だか様子が変だ。検索窓に「AIDM...」と入れるや「AIDMA 古い」という予測候補が出てくる始末だ。マーケティングの神としてバイブルに登場するような企業もどんどん苦境に陥っているという。これらの手法はもう効かないというのか。

呆然として天を仰ぐ経営者の目に、遥かな高みからキラキラと輝くキーワードたちが舞い降りて来るのが見える。「サブスクリプション」「リカーリング」「所有から利用へ」...。

そのキラキラを従えて大天使ミカエルのように勇ましく、迷える経営者の元へと降臨して来るのが、兵庫県立大学国際商経学部教授の川上昌直さんだ。

スタイリッシュなスーツ姿の川上教授は爽やかな笑顔で熱く伝道する。「サブスク時代に入っちゃいました」「企業の収益を増大させて人々の暮らしを変える新たなビジネスモデルです」「でも言葉だけが独り歩きして、重要な視点が欠けているんです」

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青柳 直樹「キャッシュレス社会とメルペイの戦略」

青柳 直樹

メルペイが創る「なめらかな社会」

現在はキャッシュレス戦国時代である。paypayにLINE Pay、SEVENpayなどなど、キャッシュレス決済の数は30にものぼり、どの「ペイ」が勝ち抜くのか気になるところだ。

私はメルカリが大好きである。大好きというか、メルカリで売ったり買ったりすることが日常的になってしまった。しかし、メルペイには懐疑的であった。その理由は単純に自分がメルペイを使う機会がなく、メルカリの売り上げもすべて現金化していたことと、割引クーポンが使える場所がファーストフード店やコンビニなど自分はあまり使わないところのものであったからだ。さらに、今年8月発表の決算では、メルカリの経常利益がかなりマイナスになっていたので、個人投資家ではないがメルカリ愛好家である私は、メルペイにまで事業を広げることが心配であった。

しかし、今回のメルペイ代表取締役の青柳直樹さんの講演とNewsPicks佐々木紀彦さんとの対談は、メルペイが可能とする「なめらかな社会」の実現を見据えておられ、希望に満ちあふれ、聴いていてとても幸せな気分になる内容であった。

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土屋 哲雄「ワークマンのビジネス変革と市場戦略」

土屋 哲雄

"二毛作"で新たなブルーオーシャンへ

先日、国内アパレル大手が600店もの閉店をいきなり発表し、世間に衝撃が走った。ここに来て海外発のファストファッションブランド各社も軒並み苦戦、そのうちの1社は先月とうとう破産した。アパレルはもうダメなんじゃないか...そんな空気をよそに、ひとり快進撃を続けるのが株式会社ワークマンだ。

ワークマンといえば知る人ぞ知るガテン系の御用達ブランドだが、このところたびたびSNSで話題になっているのは気になっていた。1カ月ほど前にはテレビから「ワークマンがファッションショーを...」というナレーションが聞こえたので、『え?作業服屋がファッションショー?』と疑問に思って画面に目をやると、屋内というのに容赦のない雨風がモデルたちをグシャグシャに翻弄するステージの様子が映っていて、唖然とした。

ショーのプロデューサーとしてインタビューに答えていたのは、およそファッションメーカーのディレクターにも作業服屋のオヤジにも見えない、丸ノ内の商社マンみたいな風貌に何故かカラフルなジャンパーを着込んだ男性だった。思えばそれが株式会社ワークマンの土屋哲雄専務取締役だったのだ。今夜もブルーグレーの柄のジャンパーを着込んでの登壇だ。

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一條 和生「DX時代のリーダーシップ」

一條 和生

敵を知り己を知れば

どうも私は大変な時代を生きているらしい。「100年に1回の大変革の中」と一條和生氏はいう。薄々大変だとは思っていたがそこまでとは知らなかった。戦国時代かあるいは幕末並みの、どうもそのような時代らしいのだ。信長や秀吉、家康、勝海舟や西郷隆盛が出てくるような時代である。

「伝統企業がVulnerableな時代」と画面いっぱいに表示される。伝統企業を徳川幕府に置き換えれば正に幕末だ。
「片足は今日に、もう片足は明日に」とかつて未来対策を語ったマーク・フィールズは「フォードのスーパースター」と評された程のCEOだったものの、社会意識が高いミレニアル世代が車の所有を疑問視する、そのような時代の変化に対応し切れず解雇されてしまった。

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千葉 雅也「働く大人のための「勉強の哲学」」

千葉 雅也台風19号が吹き荒れた日の前夜、千葉雅也先生は、大人が勉強することの意義について語ってくださった。

同調圧力から自由になるためのスキル、あるいは覚悟

勉強とは自分に新しい知識やスキルをプラスするものであり、つまりは「足し算」だととらえる発想は「よくある勉強観」である。
それに対し、「深い勉強」とは自己破壊であり、ラディカルに「変身」することである、と千葉さん。無論、千葉さんがオススメするのは後者の勉強だ。

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高木聡一郎「デフレーミング概念で読み解くデジタル・トランスフォーメーション(DX)の本質」

高木聡一郎デフレーミングとは、高木聡一郎先生の造語である。そして、その定義は「伝統的なサービスや組織の『枠組み』を越えて、内部要素を組み合わせたり、カスタマイズすることで、ユーザーのニーズに応えるサービスを提供すること」であるという。私にとっては初見の概念であったが、とても興味深く、今書いている高等教育系の論文へのヒントがかなり頂けてラッキーであった。

現代のようにデジタル情報技術が普及する以前は、商品やサービスは画一性に基づいたものであった。たとえば、テレビ番組の『8時だョ!全員集合』は土曜の夜8時にやっていて、その時間にしか観ることができなかったので、みんな家に帰って、家族揃ってテレビの前にいた。『東京ラブストーリー』は月曜の夜9時に放映されていたので、その時間には「街からOLが消える!」(表現古!)なんて言われていた。自動車もスニーカーも同じものを大量に生産することで、一つあたりの固定費用を抑えて商売をしてきた。このように、様々な商品やサービスが多くの人が満足できるようにパッケージ化されて販売されていた。

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楠木建教授に聴く、「すべては『好き嫌い』から始まる」

楠木建ショウタくん、マイさん、この度はご結婚おめでとうございます。ご両家ご親族の皆様にも心よりお慶び申し上げます。ご紹介にもありました通り、私、新郎新婦が出会った当時の上司でございます。お二人はよくご存知のはずですが、なにしろ私、口下手なほうでして、このような晴れの場にふさわしいお話しが上手にできるかどうか甚だ心許ないですが、ご指名でございますので、僭越ながら一言、お祝いの言葉を述べさせていただきます。

話し上手といえば、先日、この近くの丸ビルホールで楠木建さんという経営学の先生の講演を聴いたのですが、いや見事なお話しっぷりでした。競争戦略論、なんていう難しそうな分野の話なのに、三百人からの聴衆を飽きさせず、笑わせ、考えさせ、あっという間の2時間でした。そもそもタイトルからして経営学っぽくなかったですね。「すべては『好き嫌い』から始まる」。いや、今日のお二人の門出は、「好き」だけから始まっているわけですが。

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