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生き切る 細川晋輔さん

細川photo_instructor_965.jpg「禅とは捨てる修行」だとよく聞くので何を捨てるのかずっと考えていた。断捨離とは違うらしい。では長年の間に培ってしまった思い込みの類だろうか。はたまたつまらぬこだわりのことだろうか。あれこれ考えていたけれど、「これが」というものに確信を持つには至っていなかった。細川晋輔氏の講演で私はこの問いへの答えの一つを見出せたように思う。

「雲水日記」という誠に可愛らしくユーモア溢れる絵を用いながら、私達にはなかなか窺い知ることのできない修行僧の生活が細かく紹介された。故郷を旅立ち修行道場への入門を乞う図、庭詰め、先輩僧への挨拶、托鉢、畑仕事、座禅、禅問答など。絵があまりに可愛らしくて見過ごされそうだが日常生活は当然のことながら大変厳しそうで規則的だ。細川氏がこれでもかというほど微に入り細に入り日常生活の説明をするのを聞いて、私にはそれが「修行僧の生活とは『超人』になるためのものではありません」と言っているように思えてきた。型にはまった同じ生活を繰り返すことで感覚を研ぎ澄まし、自分のなすべきことに集中して、その成果を試される。毎日毎日。それが目的のように思える。

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日本経済の機会とリスク 竹中平蔵先生

タケナカphoto_instructor_991.jpg慶應義塾大学名誉教授であり、東洋大学教授でもある竹中平蔵先生は、開口一番に「日本人は平成の時代に起きてきた海外の出来事について検証を行っていない」と警鐘を鳴らした。令和の時代がしなやかで強い時代であるために、捉えておくべき世界の事象とは何か。グローバルにコネクトされた社会を生き抜くために求められることは何か、考える時間となった。

我々の生きるこの世界では、戦後の世界的復興と同レベルのエネルギーを注いで、World Architectureを再構築することが求められている

スイスで行われている世界経済フォーラムのダボス会議では、各国の経済リーダーが集い、世界の安定的な成長に向けた様々なテーマを討議する。2019年は、ドイツのメルケル首相が提唱した「戦後構築したLiberal World Orderはうまく機能しておらず、我々の生きるこの世界は、戦後の世界的復興と同レベルのエネルギーを注いで、World Architectureを再構築することが求められている」というメッセージが観衆の注目を浴びた。ポピュリズムの台頭や米中対立の最中にある、現在の世界情勢を表すのにふさわしい言葉である。

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戦略的意思決定とは、見えない機会損失について考えることである 清水勝彦先生

katsuhiko_shimizu.jpg私たちは何かの機会(opportunity)を得る代わりに、何かの機会を失っている。それは他でもなく、時間やお金、身体等の資源が限られているからだ。その限られた資源を効率的に配分(投入)できる企業や個人が高い利益を生み出すことができる。

寓話『アリとキリギリス』で、アリが成功したのは勤勉で「遊び」という誘惑に打ち勝つ強い心があったからではない。限られた資源(時間、労働力)を効率的に配分(夏の間、遊びではなく食料の備蓄)したからだ。よって、目の前の快楽に気を取られ、まだ見ぬ冬のことまで注意を払えなかったキリギリスも「怠け者」という一言では片づけられず、夏の間に「食料の備蓄」という努力を投入するところを、全ての時間を遊びに投入してしまったというように資源投入に誤ったのである。キリギリスが夏中に遊んで人生を謳歌しないで、冬に備えて働いていれば、生活するに困らない食料を得ることができただろう。

この得られたはずの食料が機会損失、言い換えれば夏のレジャーのコストである。清水勝彦先生によれば、機会損失の問題はこのように「見える」ところばかりに気を取られ、「見えない」ことに注意を払わないから起こるという。

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第25回 7/31(水)吉田裕先生・保阪正康さん

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7/31(水)今期の最終回です。テーマはアジア・太平洋戦争です。


ご講演いただくのは一橋大学大学院社会学研究科 特任教授 吉田裕先生。そして、ノンフィクション作家 保阪正康先生を対談のお相手としてお迎えします。

吉田裕先生の近著『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)が話題となりました。13万部を記録。徹底した第一線の兵士の目線であることと、歴史学者による一冊であったことが本著を特徴づけていました。

吉田先生は日本近現代軍事史、日本近現代政治史をご専門に、長きにわたり一橋大学で教鞭をとられるとともに、アジア・太平洋戦争、日本の軍隊や徴兵制、日本人の戦争観などをテーマに著作をお持ちです。

保阪先生は日本近代史、特に昭和史をご専門とするノンフィクション作家です。前回「昭和天皇実録」をテーマにご登壇いただいた『夕学五十講』にご来場くださった方もたくさんいらっしゃることと思います。研究を重ね、延べ4,000人余の人びとに聞き書きを行ってこられた、といいます。今回はそんな保阪先生だからこそ、との思いからご登壇をお願いしました。

『夕学五十講』ではこれまでにも歴史や戦争をテーマとした講演を開催していますが、中でも私が印象に残っているのが4年前の「戦後70年、『学生と戦争』を考える」です。
軍隊を経験された3名の方々をお招きしました。戦後70年たった今だからこそ、と、初めて語ってくださったお話もありました。実際に目撃し体験したお話を生で伺えた貴重さと同時に、その重みをとても感じました。そして、戦争の記録・記憶の継承の重要さと難しさについても考える機会となりました。今回は、私の中ではその続きの位置づけです。

テーマは「兵士達が見たアジア・太平洋戦争」。研究者とノンフィクション作家の先生方が語り合う"兵士の目線"による戦争の現実。皆さんとじっくり伺うとともに、私たちも新たな角度から戦争について見つめてみることできたらと思っています。(湯川)

・演題「兵士達が見たアジア・太平洋戦争」
※講演60分、対談30分、質疑応答30分の構成です。
・吉田 裕氏 
・一橋大学大学院社会学研究科 特任教授 講師プロフィール
・保阪 正康氏 
・ノンフィクション作家 講師プロフィール

第24回 7/17(水)安部 龍太郎さん

ryutaro_abe.jpg7/17(水)にご登壇いただくのは作家 安部 龍太郎さんです。

安部龍太郎さんは『血の日本史』で1990年にデビュー、2013年には『等伯』で第148回直木賞を受賞。皆さんご存じのとおり現代を代表する人気の歴史小説家のお一人です。私もいつか実現したらいいなと楽しみにしていました。

直木賞受賞作である『等伯』は、日経新聞の連載中から、話題となりました。
長谷川等伯といえば代表作『松林図屏風』。
この絵のことは知っているがそのすごさや描いた画家のことはあまりよく知らない、そんな読者も圧倒的に多かったなか、安部さんによって、躍動的で、力強く、生き生きとした長谷川等伯が描き出されたのでした。
歴史小説の面白さに引き込まれた、私も一読者、一ファンの一人です。

そんな安部さんが、歴史小説家になって三十年、ずっと取り組んできたテーマがある、とおっしゃいます。それが織田信長。『信長はなぜ葬られたのか』『信長になれなかった男たち』など作品もありますが、そこにとどまらない尽きぬ探究心や情熱を言葉に感じます。そしてそれが今回の講演実現にもつながりました。

「彼のことが分かれば日本と日本人が分かる。そう思ったからです。」
と安部さん。しかし追いかけ続け何がわかったか、といえば、なぜ信長がわからないか。そしてそこが面白い、そうに違いない、と今からわくわくするのです。信長を通じて眺める戦国時代、信長をとおして観る日本と日本人、作家 安部 龍太郎が描く "新しい歴史観" 楽しみでなりません。(湯川)

・安部 龍太郎
・作家
・演題は「信長はなぜ葬られたのか」
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第23回 7/11(木)高橋 祥子さん

syoko_takahashi.jpg7/11(木)は株式会社ジーンクエスト 代表取締役、株式会社ユーグレナ 執行役員バイオインフォマティクス事業担当 高橋祥子さんにご登壇いただきます。

ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか?

誰もがドキッとするような高橋さんの著書タイトル。テクノロジーの進歩によって、生物学にも大きな変化が生まれているといわれますが、生命科学の根本情報であるゲノムの活用は私たちの生活、世界を大きく変えるとされています。

高橋さんが代表を務める株式会社ジーンクエストは、生活習慣病など疾患のリスクや体質の特徴など約300項目以上におよぶ遺伝子を調べ、病気や形質に関係する遺伝子をチェックできるベンチャービジネスを展開しています。

ゲノム解析はデータ収集から始まる
と、言われるほどに、ゲノム解析では膨大な人々からの膨大なデータが必要です。その一方で、倫理的、法的、社会的問題を生み出すこともあり、その点において、遺伝情報を扱われることに対する私たちの不安や恐怖感が存在することも間違いありません。

今後も加速度的に進歩を続けるテクノロジー。生命科学のテクノロジーにはどのようなメリットとリスクがあり、有効活用するためにはどうすればいいのか、未来に向けた思考はとても大切なことでしょう。

高橋さんは遺伝子解析の研究推進、正しい活用を広めることを目指し、大学院在籍中に日本初の個人向け大規模遺伝子解析サービスを立ち上げ、展開しています。高橋さんだからこそ見えていらっしゃるゲノムの活用の現状と未来についてお話し頂けること楽しみです。(保谷)

・高橋祥子さん
・株式会社ジーンクエスト 代表取締役
株式会社ユーグレナ 執行役員バイオインフォマティクス事業担当
・演題: 「パーソナルゲノムが拓く未来」
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第22回 7/9(火)村上絢さん

aya_murakami.jpg7/9(火)ご登壇いただくのは一般財団法人 村上財団 代表理事の村上絢さんです。

私たちビジネスパーソン一人ひとりが、社会とお金についてじっくり考える、きっかけとなる講演をお願いしたいとの思いから今回のご登壇が実現しました。

「日本の社会がより強く、優しく、しなやかであるように、私たちにできることを探したい」と村上財団のウェブサイトにスローガンが掲げられています。そのためには「日本はお金がもっと循環する社会になるべきである」と村上さんは言い切ります。それはどういうことなのか、それはなぜなのか、それが私たちが社会とお金を考えることにつながると思います。

村上絢さんは、村上ファンド創設者の投資家 村上世彰さんの長女で、モルガンスタンレー証券会社債券部勤務をへて、投資家に。
プロフィールからはつい、羨望も混じり"あの村上さんのお嬢さんならね" とそれがすべてかのように思います。しかしながら村上絢さんのご活躍やメッセージからは、強い指針や思いをたしかに感じます。

高校時代をスイスに留学し、海外における社会貢献活動のあり方に影響を受けたといいます。父である村上世彰さんの意志を継ぎ、チャリティ・プラットフォーム代表に就任。一般社団法人 子ども宅食応援団理事も務め、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんらとともに、子どもの貧困問題にも具体的に取り組まれています。ご自身、お2人のお子さんをもつ母でもいらっしゃいます。

日本の非営利組織の活動を資金面で支援する。投資や資金というと実社会、一般市民から遠い世界とイメージしがちですがそれをしかと結びつけ、活動されている方。そんな村上絢さんだからこそのお金と社会のお話、じっくり伺い、自身に引き寄せ考えたいと思います。(湯川)

・村上 絢
・一般財団法人 村上財団 代表理事
・演題は「資金循環で社会の問題を解決する」
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第21回 7/3(水)鷲田祐一先生

yuichi_washida.jpg7/3(水)は一橋大学大学院経営管理研究科 教授 鷲田 祐一先生のご登壇です。

アップルやダイソンの製品が、優れたデザインで世界的な成功を収めています。これらの企業では、経営の最高意思決定でデザインという要素が重視されていると言われます。

一方で、日本の製造業は技術偏重にて右肩上がりを続けてきたなか、ここ数年で、ものづくり日本としての価値づくりが揺らいでいるとされています。

日本の企業経営の意思決定において、デザインという要素はひどく軽んじられており、企業経営とデザインが結びつくことに着目していない企業もまだまだ多く、大きく出遅れている感があることは否めません。

そこには、日本では「デザイン」という言葉が、色やカタチという狭い意味に封じ込められてしまった歴史ゆえ、本来の「設計」という概念が含まれなくなっているという背景もあるようです。

鷲田先生は、大学卒業後、博報堂に入社し、生活総合研究所、イノベーションラボと消費者研究を続けていらっしゃいました。本来の「デザイン」とは何かを理解されているからこそ、私たちの生活の実態を理解していらっしゃるからこそ、先生のお話には説得力があります。

デザインによる企業経営においての可能性について、事例やさまざまなデータとともに解説いただきます。(保谷)

・鷲田 祐一(わしだ ゆういち)先生
・一橋大学大学院経営管理研究科 教授
・演題:「企業経営とデザインの力」
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第20回 7/2(火) 田村次朗先生

jirou_tamura.jpg 7/2(火)ご登壇いただくのは、慶應義塾大学法学部教授、ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー 田村次朗先生です。

田村先生は、経済法、国際経済法、交渉学をご専門に、教鞭をとり、研究、教育に携わられています。そしてそれらの実践面の最前線でもご活躍です。日米通商交渉、WTO(世界貿易機関)交渉等に携わってこられ、世界経済フォーラム(ダボス会議)では「交渉と紛争解決」委員会委員を務められています。今回の「対話型リーダーシップ」はまさに、研究・教育・実践の世界の最前線にいらっしゃる田村先生だからこそのテーマ。

交渉学とは「対話(Dialog)」の方法論である

と田村先生はおっしゃいます。前回4年前に「三方よしの対話力~交渉学入門」と題して『夕学五十講』にご登壇いただきました。そのときの大きなメッセージがこの「交渉学とは対話の方法論である」でした。対話は、立場や価値観、文化、利害の"異なる"当事者同士が合意形成をめざす、困難でストレスを伴う営みです。そのときの夕学リフレクションはこちらです。

今回はこのメッセージの応用編ともいえましょう。ここ数年で多様性とは必然で当り前であると認知されてきました。しかし認知は単なるスタート地点、多様性の複雑化、対立や障害の深刻化がすすんでいるのも事実です。ますます求められていくのが対話型リーダーシップです。私たちビジネスパーソン誰もにとって大切な基盤能力ともなりうる、このテーマについて、今回はじっくり講義いただきたいと思います。楽しみです。(湯川)

・田村 次朗
・慶應義塾大学法学部教授、ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー
・演題は「対話型リーダーシップのすすめ~リーダーシップ基礎教育への挑戦~」
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