« 言葉のある世界を私はどう生きるか 穂村 弘さん | メイン | ユーザーインで1兆円企業を狙う 大山晃弘さん×清水勝彦さん »

あなた好みの健康法で 藤田紘一郎さん

フジタphoto_instructor_957.jpgなぜインドネシアのカリマンタン島の子供たちはアトピーにならないのか。それは腸内環境がアトピーを抑える性質を持っているからだ。洗濯もトイレもするような川で遊ぶ子供たちの腸には回虫がいた。人間の腸そのものに病気を予防する力はないが、その力を外部の細菌や回虫によって賄うことができるのである。

病気を治す医療の場合、救うことができた命の数が実績になって、積み重なる。しかし、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生のご専門である予防学の場合、直接先生が救った命の数を的確に数えることは難しい。特別な条件を付けた実験とは違って、先生がおススメする予防対策と、実際に世界で病気にならなかった事例の因果関係を説明するのは難儀だ。しかし、限りある命を大切に最大限生きるという意味において、予防学と外科・内科的治療は同等に扱われるべきではないか。

藤田先生によれば、アレルギーは、アレルギーに対抗する免疫力(Th2細胞が持っている)、つまり自然治癒力を高めることができれば、治すことができるという。アレルギーになった後に、鼻水やかゆみをもたらすヒスタミンに対抗する薬を使うことで症状は抑えられる。しかし、遺伝子的(西洋医学的)投薬では副作用を起こす可能性があるため、東洋医学的に自然治癒力である免疫力を高めることが重要であるという。先生がマウスに遺伝子学的投薬をしたところ、マウスのアレルギーは改善した。しかし、今度はガンから身を守る免疫力(Th1細胞が持っている)がやられてしまった。Th1細胞とTh2細胞の量のバランスが崩れてしまったためマウスは投薬によって別の病気になってしまう。

免疫力のバランスを整えている要素は腸内環境が70%、こころの健康が30%で、腸内環境を整えるためには、1. 腸内細菌を増やす(回虫の代わり)、2. 活性酸素を消す、3. ストレスを取り除く、4. お腹を温めることが重要なのだという。

腸内細菌には悪玉菌と善玉菌と日和見菌がいる。悪玉菌がすべてなくなればよいわけではなく、悪玉と善玉のバランスが大切なのだという。人は生後一年以内に腸内細菌の組成が決まる。赤ちゃんが何でもなめようとするのは、口に細菌を入れてみようとする行動にもなっているのだ。先生はあまりにも清潔を嗜好しすぎると、逆に免疫力が低下すると警鐘をならす。日和見菌の中には善玉菌が好きなものと悪玉菌が好きなものがいる。悪玉菌が好きなフィルミクテス門の日和見菌は別名デブ菌と呼ばれており、これが増えると肥満を招く。

また、現代の生活に必需品となった交通ICカードや電子レンジ、抗菌グッズや保存料などの添加物の入った食事は活性酸素を多量に含んでいるそうだ。これらに対抗できるのが、植物化合物(ファイトケミカル)である。ファイトケミカルは色の濃いお野菜や海藻、ニンニク、大根のからみ、キノコやハーブに含まれている。活性酸素を発生させないようにするには、よく噛み、ゆっくり食べること、ゆっくり呼吸すること、自然の中で生活すること、過度な運動をしないことが大切である。

ストレスは腸内環境を荒らす力を持っており、免疫力の30%以上を左右している。お腹を温めて腸の活動を促進させ、何か困難なことがあってもポジティブに考え、よく笑って過ごすべし。

こう考えると、病気の多くはかなり自然な生活で防ぐことができるようだ。おいしいご飯を食べて楽しく過ごすことが基本のように思う。しかし、自分の生活を振り返ってみると健康的な生活とは程遠く、健康的な生活を送るために必要なことよりも、目の前のストレスたっぷりの仕事や便利な電子レンジについつい気持ちが流れてしまう。どうしても健康の大切さが他の出来事に負けてしまう。

どうやったら健康の大切さをもっと優先できるのだろう。病気の怖さや究極的には死の恐怖が、健康に対する一番大きなモチベーションになるのだろうけれど、毎日この気持ちと付き合っていくのも疲れてしまう。ヘルスケアビジネスや健康を可視化できるfitbitのような新しいテクノロジーも、アメリカに比べると少し伸び悩んでいるように思う。日本人はそもそも健康的で長寿であること、医療費が米国に比べて破格に安いことが原因かもしれない。

私はかつて、健康に対する効果を最大にするために、無理やりジョギングする日が何日もあったが、それは結局ストレスになった。一方、先生が挙げてくれた健康食品のキノコや柑橘類は健康を理由にせず、好きだから食べ続けられる。
無理やり健康になろうとするのは本末転倒だが、モチベーションをあげる要因はもしかしたら、自分のお気に入りの健康法を見つけられるかどうかにかかっている気がする。何万通りもある健康法を広く知っていて、自分が最も楽しく続けられる健康法をカスタマイズできるようなサービスがあったら使いたいなぁ。

沙織