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「強運」の本質 佐山展生さん

photo_instructor_881.jpg佐山展生氏は、三つの顔を持っている。
ハイブリッド型投資(投資家資金と合わせ自己資金を投じる)を特徴とする独立系投資ファンド インテグラル社代表の顔、一橋大大学院国際企業戦略科教授としてM&Aや企業経営を教える教育者の顔、スカイマーク会長として企業再生に取り組む経営者の顔。
したがって、講演テーマは多岐に渡るが、テーマに関わらず、冒頭の自己紹介にかなりの時間を費やすことは変わらない。そこに、佐山さんのメッセージを理解するための原点があるからである。

今回の夕学では、「きょうは短めにいきます」ということであったが、たっぷり60分。本題の「スカイマークの再生」の話の2倍の所要時間であった。
リーダーシップ研究に「Lesson of Experience(経験を通じた教訓)」という概念がある。神戸大の金井壽宏先生流に言えば、「リーダーシップの持論」ということになる。持論を理解するにあたって、最も効果的なのはたっぷりの自分語りであろう。
佐山さんの60分の自己紹介には、「なぜスカイマークだったのか」 「どうやって再建しているのか」 「どういう思いで経営トップを兼任しているのか」といったきょうのテーマに関わるオーディエンスの関心事に対する回答でもあった。

佐山氏は、京都を代表する中・高一貫制進学校洛星で6年間野球部に所属していた。高3夏の甲子園予選で、実力では差があった強豪校に勝った。この経験から得た「人間の力はたいした違いはない」という教訓は、社員のやる気を重視し、それを引き出す経営トップの有無で会社の命運は決まる、という経営観に通じるものがある。

大学卒業後に入社した帝人でのサラリーマン生活は、松山の工場勤務から始まった。「スカイマークにも同じ現場の匂いがする」という。全国の空港を回って社員と一緒にお祭りに参加し、マラソン大会に挑戦する現在の姿は、工場勤務時代の自分に重なるものを感じているのかもしれない。

三井銀行で、日本では黎明期のM&Aに関わった時に、「これは自分の天職だ」と感じたという。その時から30年。一癖も二癖もある剛の者達が毀誉褒貶の波に洗われてきた日本のM&Aの世界で、いつも第一線で新しい挑戦を続けてきた。

ユニゾンキャピタルを設立しようとした際には、銀行から信じられないような好条件で引き留めにあった。「人生は、お金ではなく時間で選べ」という信念で、あえて無謀な選択をしたが、それが今日につながっている。

佐山さんが取り組むスカイマークの再生も、そういう文脈で理解するべきものなのであろう。
スカイマーク社が経営難に陥った原因は明確であった。国際線に打って出ようとすべく大型機(エアバス)を導入したことが結果的に失敗したのだ。円安に見舞われ、契約変更交渉も暗礁に乗り上げ、一気に負債が膨らんだ。

前経営陣は支援先を探したが、そのプロセスは難航した。「頼まれたわけではない」インテグラルが乗り出したタイミングは、すべてのファンドや航空会社に断られ、月末の資金ショートを目前に控えて、破産を覚悟していた時だったという。

わずか三日間で再建案をまとめ、90億円の出資を決断して民事再生に持ち込めたのは、インテグラルにしか出来ない荒業だった。佐山さんは、その時までスカイマークの飛行機に乗ったことさえなかったという。
その後も紆余曲折があり、いまは言えないこともたくさんあるようだが、民事再生によって大型機の解約問題が決着したことで、再建は予定通りに進む。

搭乗者数が増えたわけではないが、コンパクトな飛行機に集中したことで搭乗率がアップし、定時発着率も向上した。
社員のリストラをしなかったこともあって、モチベ―ションは劇的に改善しているという。きょうの講演も、社員が数人、自分で受講券を申し込んで聴きにみえていた。夕学では経営者の講演はよくやっているが珍しい光景であった。

「現在は、精神的には95%はスカイマーク会長に集中している」というほどのコミットで、佐山さんは全国を回り、社員にメッセージを送る。自身の人脈を駆使して、タイガースジェット、ユナイテッドアローズ製の制服導入などの新企画も導入している。2018年の再上場を目指して、順調な再建途上にあるという実感を持っていることがよくわかった。

昔から、佐山氏の講演・講義資料には、必ず「結び」が付いている。さまざまな経験をし、教訓を得る度に書き加えてきた「持論」である。
夕学には4度目の登壇になるが、手元の資料を探してみたところ、2004年の講演の「結び」はわずか2ページ。持論は18コであった。2011年には118コに増えていた。そして今回、数えてみたら、なんと214コ。驚いてしまった。

成功者には、自分は「強運」だと語る人が多い。しかし強運は、挑戦の数が多いことの裏返しともいえる。
ついている人は、難しいことに挑戦し成功した人。しかも何度も。だから強運を実感できる。
ついていない人は、挑戦そのものをしない。困難に遭遇してはあきらめることを繰り返す。だから不運を嘆く。

佐山氏の最新の「持論」である。スカイマークの再生も、難しいことに何度も挑戦してきた佐山氏ならではの「強運」といえるだろう。

(慶應MCC城取一成)

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