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人口減少と経済成長~希望~ 吉川 洋先生

photo_instructor_882.jpgレビューを書くときはいつもタイトルに悩む。私は夕学の講師の先生が一番伝えたかったことのほかに、私は何を感じ、得られたのかをタイトルに織り込むようにしている。
 今回、吉川先生が伝えたかったことは「人口減少時代における経済成長」の可能性である。そして、先生の講演で私が最も強く感じたのは「希望」だったので、それを副題にしてみた。
 
 先生のメッセージは決して、人口減少を否定したものでも、経済成長をするために簡単な解決策があると楽観視した安直なレトリックでもない。先生のメッセージは、経済成長やその減退は本来人口のみでは説明できないロジックや複数要因によって成し遂げられるものであるというもの。そして、人々は常に革新的かつ高付加価値の製品とサービスに投資し、イノベーションの創造に挑戦することで、人口減少時代においても経済成長に対して希望を抱くことはできるというものである。とにかく、お話を伺って、人口減少の時代を強く生きる希望を持つことができた。
 

 まず、先生は経済社会の閉塞感、特に、常態化している格差の現状をお話しになった。経済の長期停滞により、日本では非正規雇用者が就業者の40%を占めるまでになった。所得・健康のばらつきや格差が大きいのは、今後人口が増加していく65歳以上の高齢者である。また、家族の形態が変容し、経済力のない若者に対し、家族ではなく社会が福祉として救いの手を差し伸べる時代になった。つまり、格差は今後助長される一途である可能性が極めて高く、現代の日本では社会がその対応をする仕組みだということである。
 
 先生は、人口減少時代でも経済成長を生み出し、希望ある未来を手にしつつ、この格差の防波堤として機能する社会保障をきちんと国家が運営できるようにしなくてはならないと説いた。

 日本では、格差に対する防波堤として、社会主義や共産主義を選択せず、資本主義経済の中で社会保障を運営している。しかし、この社会保障費は国の財政を悪化させるもっとも大きな要素であり、ただシンプルに高齢者が増加し、格差が拡大することによって今後も増加する。特に保障料率が高くなっているわけではない。つまり、国の歳出を減らす努力と、国債ではなく税収によって歳入の増加を目指し、財政の均衡を図らなくてはならない。
 
 今回の講演は、歳出を減らす努力よりも、後者の国の税収を向上させ、格差のない社会を実現する経済成長がテーマとなった。では、どのようにしたら税収を向上させ、経済成長を遂行し、個人所得の向上した希望の未来を築くことができるのだろうか。
 
 冒頭でも述べたように、そもそも人口が減少したからといって、必ずしも経済が成長できないわけではない。ある鉄道会社は、通勤人口が減ったことを問題として受け止めている。しかし同時にこれをビジネスチャンスと捉え、保有しているロマンスカーの車両を通勤用に運転し、一般の切符より高額な運賃で、満員でない車両での移動サービスを提供し、通勤客を集客した。これは人口が減っても単価を上げることによって儲ける仕組みである。
 
 また、先生は企業の内部留保の高さが個人の貯蓄率を抜いたことを指摘し、人口減少の時代でも新規イノベーションへの投資を強く求めた。儲け方に関する発想の転換ともいえるだろうか。今まで子ども向けが大部分を占めたオムツの販売モデルは、高齢者をターゲットとして集客できるようになり、少子化時代に強いビジネスモデルへと変革してきた。このように変化を怖がらずに、イノベーションを推進していくことが企業には必要である。
 
 年率の経済成長が1.5%で、人口が毎年0.5%減少すると、それだけ個人の取り分が増えるため、個人所得は2%増加することも不可能ではないと先生は言う。希望が持てるではないか。それに、イノベーションでもたらされる新しいサービスにも消費者として期待できる。
 
 私は、希望を持つということ自体がイノベーションを生み出すのにとても重要な要素だと思う。後ろ向きな気持ちや閉塞感を吹き飛ばし、自分を信じて前向きに進むことができて初めて、革新的な挑戦に打って出る決断ができるのではないだろうか。それに、創造的なことをするには、少し気持ちが明るかったり、余裕のある状態の方が好ましい。経験上、「どうせ人口が減るんだから仕方ない」という後ろ向きなあきらめが心を占拠しているときに、何かいいアイデアが浮かぶとは思えないのである。
 
 今の日本には、「どうせ」の気持ちが広くはびこっているように思う。しかし、たとえば日本同様に人口減少を問題視しているドイツは、強い経済を自負している。移民で減少分を補う対応も実施しているが、人口減少と経済成長の相関を決して過大評価したり、必要以上に不安視したりしていない。日本だって先生がおっしゃるように、人口が減少したからといって、経済成長ができないわけではない。少し落ち着いて、自分の将来は決して暗いことばかりではないかもしれないと認識できたときこそ、一歩踏み出す経済成長のチャンス。先生のお話に希望のパワーが秘められていたことがやはり重要なメッセージなのではないだろうか。

う~ん、副題というより、むしろ本題にすべきだったかな~。

(沙織)

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