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多数決は民意を反映しているのか 坂井豊貴先生

photo_instructor_872.jpg歴史にイフ(if)をつけてみる。もし、アメリカの大統領選に決戦投票があったなら、イスラム国は誕生しなかったのではないか。

慶應義塾大学経済学部教授で、「決め方」の研究者である坂井豊貴先生は、多数決で決める危険性について説明するために、2000年のアメリカ大統領選を例に挙げた。多数決―アメリカ大統領選―イスラム国。そこにはいかなるロジックがあるのか。

2000年アメリカ大統領選。当初は民主党のゴアが、共和党のブッシュに優勢であった。しかし、そこに「第三の候補」である弁護士で活動家のネーダーが参戦してきた。相対的に政策が同じネーダーはゴアの票を食い、ブッシュが逆転勝利した。もし、アメリカに決選投票があったなら、ゴアが勝利していたであろうと坂井先生は言う。ブッシュが大統領になった翌年2001年9月11日にアメリカ同時多発テロが起こり、2003年にはその報復として、イラク戦争へと突入した。その後、フセイン政権は倒れたが、その残党がイスラム国を設立するに至ったということである。

ここで多数決について考えてみる。遡れば幼少期から人が集まって、複数の意見があれば多数決を使ってきた。そして、多数決はあまりにも身近すぎて、この「決め方」が正しいとか正しくないとか疑う機会がなかった。しかし、多数決とは何であろうか。なぜ、人々は多数決が最善の決め方だと思うのか。

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人口減少と経済成長~希望~ 吉川 洋先生

photo_instructor_882.jpgレビューを書くときはいつもタイトルに悩む。私は夕学の講師の先生が一番伝えたかったことのほかに、私は何を感じ、得られたのかをタイトルに織り込むようにしている。
 今回、吉川先生が伝えたかったことは「人口減少時代における経済成長」の可能性である。そして、先生の講演で私が最も強く感じたのは「希望」だったので、それを副題にしてみた。
 
 先生のメッセージは決して、人口減少を否定したものでも、経済成長をするために簡単な解決策があると楽観視した安直なレトリックでもない。先生のメッセージは、経済成長やその減退は本来人口のみでは説明できないロジックや複数要因によって成し遂げられるものであるというもの。そして、人々は常に革新的かつ高付加価値の製品とサービスに投資し、イノベーションの創造に挑戦することで、人口減少時代においても経済成長に対して希望を抱くことはできるというものである。とにかく、お話を伺って、人口減少の時代を強く生きる希望を持つことができた。
 

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ロンドン、リオ、そして東京へ 水鳥寿思監督

photo_instructor_880.jpg予選結果4位。

「自分たちには世界トップの実力がある」という甘い考えがあった。田中、山室が続けて平行棒で落下。ミスがミスを誘い、内村は鉄棒で背中から落ち、唯一、調子が良かった白井も床でラインオーバーの減点であった。

内村航平はリオオリンピック事前のインタビューでこう応えている。
「予選1位にならなければ、(金メダルのチャンスは)半分以上は消えちゃうと思う」

しかし、翌々日の決勝では日本中が歓喜の声をあげることになる。予選4位からの大逆転。日本体操男子団体は金メダルを獲得した。なぜ、予選から決勝までの短い時間で、選手たちは切り替えることができたのか?水鳥寿思監督はリオオリンピックを振り返る。

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遠藤謙氏に聴く、義足のランナーが健常者を抜き去る日

photo_instructor_871.jpg夕学五十講で取り上げられる幅広いテーマのうち、特に自分が引きつけられてしまうのが「障害」をめぐる話である。視覚障害者と晴眼者のいつもの立場を逆転させるDIALOG IN THE DARKの暗闇を作り出した志村(金井)真介氏、人を環境に合わせるのでなく環境を人に合わせることで障害者の就労支援を行うLITALICOの長谷川敦弥氏。そこには、凝り固まった自分の「常識」を根底から揺さ振り覆す、思いがけない「逆転」がある。

そしてこの日の遠藤 謙氏は、「健常者の最速ランナーを抜き去っていく義足のランナー」というビジョンを描き、近未来に実現しようとしている義足エンジニアであった。

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世界はどう変わるか 佐藤優さん

photo_instructor_870.jpg「さてね。今、半年後の世界を予測できるっていう人がいたら、それは嘘つきです。とにかく、変数が大きすぎますから」

本邦きってのインテリジェンスの使い手、佐藤優氏をもってしても大変に読み解きづらくなっているというこの世界。いわんや、我々をおいてをや。しかし、諦めることなかれ。今日はあなた方にだけ、この皮袋の中から特別に、情報という名の葡萄酒を数滴ふりかけてあげよう......と言った(かのように見えた)その直後から90分。立て板に落ちる水のような流麗さで、目をむくような逸話がリリースされつづけた。そのあまりのスピードに、喘ぎ喘ぎしながら「変数」のピースを拾い上げる。

掛けあわせる定数は、むろん旬の男、ドナルド・トランプだ。

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坂城町の狛犬に聴く、小松美羽という「第三の目」

photo_instructor_883.jpgあれは今から二十年以上も前のことだったな。大和の国の真ん中あたり、信州は坂城町の山道で、ひとりの少女が道に迷っておった。どうするかな、と思っていたら、わしと目が合った。

見えるのか。

いまどき、見える人間がいたとはな。
そう呟きながら先を歩き、麓へ戻る道を教えてやった。

それからわしらは、山道で幾度も出会った。あいつは、後先考えずに山に分け入って、いつも道を見失いそうになっとった。そのたびわしは家へ帰れるように先導してやった。あいつはそれを不思議とも思わず、いつもついて来た。きっとただの山犬だと思っとったんだな。
でも、ある吹雪の晩、あいつは走って追いかけてきた。もちろん追いつくことはできぬ。そして、山犬ならあるはずの足跡が雪の上にないことに気付いて、あ、と言った。

気づいたな。

あいつは十五になっとった。幼子と違い、穢れや業のようなものが澱となって積もり始める年頃だ。もうわしを見ることはできんかな。そう思いながら、宙にくるりと円を描いて、別れの挨拶をして姿を消した、つもりだった。
しかし翌朝、あいつは、神社の前でわしをじっと見てきたな。台座の上から辺りを睥睨し、神域を護る狛犬のわしと、ようやく目線が合う身長になっとったんだ。ぱっちりした二つの目の間にある、見えない「第三の目」を微かに開いて、こっちを見ていた。
それが、小松美羽とかいう絵師との出会いだったな。

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伊賀泰代さんに聴く、「生産性」と「成長」の方程式

photo_instructor_860.jpg半年前に『生産性』という本を出して以来、伊賀泰代さんのところには企業からの講演依頼が引きも切らないという。曰く、「我が社には生産性の意識がない、意識改革のために講演に来てほしい」と。「でも講演というのは、意識改革のためにはもっとも生産性の低い方法で、そのことは本にもきちんと書いておいたんですけど」と微笑む伊賀さんにつられて笑いそうになるが、その自分もこうして講演を聞きに来た満場の聴衆の一人であったことに気付く。

マッキンゼーで長く採用と育成に携わってきた伊賀さんが、独立してまず書いた本がリーダーシップを論じた『採用基準』であったことは驚くにあたらない。驚くべきは、外資系コンサルなんてこんなものだろうという先入観を悉く打ち砕くその内容だった(詳しくは同書で確認してほしい)。欧米に比して日本が劣るただ二つの要素が「リーダーシップ」と「生産性」であり、その両者を身に付ければ日本の将来は開ける、と伊賀さんは断じるが、そこで言う「生産性」は、多くの日本人がイメージするそれとは、おそらく違う。

トヨタをはじめとする日本の製造現場の生産性の高さは誰もが知っている。だが非製造業やホワイトカラーの生産性はアメリカの半分、先進国中最低レベル。それを自覚している日本人がどれだけいるか、と伊賀さんは嘆じる。もちろん米国の店員が日本の2倍テキパキしているとは思えない(むしろ逆)。問題は現場の人ではなくマネジメントである。

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"異色"たりて礼節を知る 朝倉祐介さん

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息つく暇もない転身劇の連続

今回の講師は、「異色の若手経営者」という冠つきで紹介されることの多い、前ミクシィ社長の朝倉祐介氏だ。
白いTシャツとデニムパンツに綿ジャケットを羽織って軽やかなステップで駆け上るように登壇したその姿は、確かに、仕立ての良いスーツに身を包んだベテラン経営者達とはかなり違う。しかし2000年前後からこういう「Tシャツ経営者」はよく見られるようになり、そういうスタイルだけで異色と呼ばれることは今やないだろう。
では、何が異色なのか。
まず分かりやすいところから言えば、その経歴だ。講演は、その異色な経歴の紹介からはじまった。

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