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未来の脳を脳で考える 池谷裕二先生

photo_instructor_878.jpg「世の中は 夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ」

905年に成立した古今和歌集に収録されている歌である。時は流れて現代、「この世は脳の解釈による幻影である」と池谷裕二先生はいう。今、私たちの見ている世界は本物だろうかと問われれば、自信をもって「はい」と答えるのは難しい。

本日の講演テーマは「未来の脳を考える」であった。しかし、その内容は脳のしくみや人工知能について網羅しながらも、「私たちの見ている世界とは何だろう」という一貫した哲学的なテーマがより強かった。そして、先生の話を聞けば聞くほど、現実世界とは何であろうという疑問が増し、迷宮入りしていくような1時間半であった。

さて、冒頭に紹介した歌である。「この世は夢なのか現実なのか、現実か夢なのかもわからない。この世の中は存在していて、存在しないものなのだから」という意味である。私たちの見ている世界は大いに幻影で作られているというからには根拠がある。

例えば色。アイザック・ニュートンの言葉をそのまま拝借すると「光そのものに色はついていないが、光には人間の視覚に色の感覚を引き起こす能力がある」のだ。池谷先生によれば、赤、青、緑の三原色以外のすべての色は脳が生み出した幻覚である。つまりは、脳内のパレットで混ぜた色なので、現実世界には存在はしていないのだ。そして色は背景によっても見え方が大いに変わってくる。そして、人それぞれ同じように色が見えているわけではない。

と、普段私たちが当たり前に見ている色の世界だけでも不思議な感じである。私たちが触ったもの、見たもの、感じたものは、電気信号として脳に送られて認知される。その時、脳内で何が起こっているかというと、該当箇所が反応しているだけである。つまり、脳自体は実際に触ったり、見たり、感じたりしないのにも関わらず、送られてきた信号を認知することでこの世界を作りあげているのだ。そんな世界を現実と決めることができるのだろうか。こんなことを考えていると全くもってラビリンスなのだが、なぜか脳の話は面白い!

こんなにも不確かな現実世界を作り上げている人間の脳。そんな脳が作った人工知能とは何なのだろうか。人間は脳を進化させたがゆえに、多くのエネルギーを消費し、疲労しているという。反対に人工知能は疲れを知らない。人の行動を先読みして先手をうつことが得意である。これを池谷先生は「おもてなし」と表現した。つまり、ぬかりなく事前に準備することが人工知能にはできる。

また、昨年には「人間の仕事の47%は人工知能によって奪われる」という研究結果が話題となった。まあ、私のような性格の悪い人間は、おいおいAIに仕事を奪われる心配よりも、他の誰かに奪われる心配をしたほうがよいのではないかと思ってしまうのだが......。そんな話はどうでもいいとして、池谷先生は人工知能が人間の職業を奪うかどうかについては懐疑的である。人の50%は一生涯に一度以上転職はするし、また別の研究では今の子供たちの65%は、現在は存在していない職業に就くという結果がでている。例えば、私たちが子供の頃はIT関係の職業など存在していなかったのが、今は多くの人がその手の職業についている。よって、その点については心配することはない(はず)。

ここまでくると、暗闇の中でシグナルだけを受け取って、現実か夢かもしれない世界を作り上げている人間が、人工知能を作るとはなんだか妙な話である。

私の見ている世界は本当に現実になのだろうか。オックスフォード大学のニック・ボストロム博士は「この世界は未来人がシュミレーションした仮想現実ではないか」という仮説をたて研究している。さすがに未来人云々などとは思わないが、私は子供のころから相当な変人だったので、この世の中にあるものは全部自分の想像であり、実在しないのではないかと思うことがよくあったし、今でも時々考える。例えるなら、自分はずっと昏睡状態で、夢の中を現実だと思って生きているような状態である。好きなタイプの人も、食べているものも全部自分の頭が作り出している。書いていて自分でも完全にいっちゃってるなと思うが、頭蓋骨の中に閉じ込められている脳は外の世界を知らない。触ったもの、見たもの、感じたものが信号によって脳に送られているだけだ。

未来の脳を考える。しかも、脳で。池谷先生によればシンギュラリティ(2045年問題)は起こらない。多くの人工知能研究者もこの問題に関しては否定的だ。なぜなら、人工知能は汎用性がなく、自動運転なら自動運転だけ、囲碁なら囲碁だけという具合にしかできない。知能であって人の脳ではない。人類を征服するような知能を作りたければ、人類(新たな生命)を作りだしたほうが早い。もしかしたら、人間と人工知能を比較することが間違っているのかもしれない。未来の脳を自分の脳で考えてみた結果は、私にはよくわからない。1000年以上前に、詠まれた歌のように、現実か夢かわからない世界を相変わらず生きているのではないだろうか。

(ほり屋飯盛)

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