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瞬間を生きる 川野泰周さん

photo_instructor_861.jpg川野泰周先生の特徴は何といってもそのご経歴にある。精神科医にして禅寺の住職。産業医としても活躍されている。常々私は既存宗教がこの悩み多き現代に人生相談や精神治療などの現場でもっと活躍すべきではないかと思っていたので、待ってましたとばかりに講演会場に向かった。会場はほぼ満席、席を見つけるのが難しいほどの大盛況で関心の高さが窺える。

講演は簡単な説明の後、参加者全員による2分間の瞑想から始まった。難しいことは何も言わず、呼吸の仕方も指導や制約も特になく、ただ瞑想をするだけだ。静かな2分間。瞑想後、瞑想とは生まれた時から人に備わっているもの、瞑想の大切さが今また気づかれているのではないかとお話しされ、本格的な講演が始まった。

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考えるクラシック音楽 仲道郁代さん

仲道郁代「音楽の力」という言葉を、耳にするようになったのはいつからだろうか。おそらく、東日本大震災後ではないかと思う。「音楽には人を励まし、勇気づけ、癒す力がある----」。この言葉に反対する人は多くないはずだ。しかし、「なぜか」を言葉にして伝えられる人もまた多くないであろう。
ピアニストとして30年のキャリアを持つ仲道郁代さんは、この曖昧で朧ろげな「音楽の力」をご自身の感覚、言葉で語ってくださった。それは、決して説明ではなく、ピアノの演奏のように、聴く人の感覚に響くようなお話だった。

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揺らぐ民主主義 神保 謙先生

神保 謙 神保 謙先生と私は同い年である。同い年どころか、大学では同じゼミに所属していた。当時から神保先生はとても優秀で、学内でも有名人だった。
 私が大学に入ったのは1992年。89年にベルリンの壁が崩れ、91年にソビエト連邦が崩壊し、希望に満ちた新たな時代の幕開けのような空気が溢れていた時期だ。
 大学でもどこでも「グローバル」という言葉が多用され、それはとても輝かしい響きを持っていた。ヒト・モノ・カネが国境を超えて自由に行き来する時代が来る、それは明るい未来だ、というようなイメージを多くの人が共有していたように思う。
 25年が経過した今、国境は消えるどころか、再び重要な意味を持つ時代へと突入した。「グローバル」という言葉は、今ではネガティブな響きさえ含んで聞こえる。

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遠いシリア 安田菜津紀さん

photo_instructor_866.jpg 安田菜津紀さんの講演が始まってすぐに「まるでテレビのナレーションを聞いているようだな」と感じた。それは、安田さんの聞きやすくてソフトな声のせいもあるけれど、言いよどみのない、ひとつひとつの言葉に迷いのない、思いのこもった安田さんの喋り方がそう感じさせたのだろうと思う。過不足のない言葉で、会場の人たちの頭に染み込むように、一人ひとりの目を見ながら語り掛けるような調子で安田さんは話し始めた。

最初に語られた場所はカンボジア。かつてポル・ポト政権下の恐怖政治により、全国民の5分の1、あるいは4分の1とも言われる大量の人々が虐殺された国である。
今から十年以上前になるが、私自身もカンボジアを訪れたことがある。その時首都プノンペンにあるキリングフィールド(たくさんの人が殺された刑場跡地)にも行ったのだが、あまりの生々しさに目を覆いたくなるような息苦しさを感じたことは強烈な記憶だ。ある展示室には殺される直前に撮影された人々の顔写真がズラリと掲示されていて、一様にひきつった顔でカメラを見つめていた。血糊がついたままの鉄のベッドや夥しい数の頭蓋骨など、どれも凄まじい光景で、あまりに痛ましかった。

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行動デザインの魅力と魔力を知った夜 國田圭作さん

photo_instructor_862.jpg國田圭作さんの講演の話をする前に、いきなりの自分語りで恐縮だが、私はクライアントのwebサイトを制作することを生業としている。
この仕事をはじめて20年ほど経つが、最初の頃はただただ「作る」ことに夢中だったように思う。しかし、いつの頃からか「自分が提供すべきサービスは、作る行為そのものではない」と考えるようになった。今では、「クライアントのビジネスに貢献できないwebサイトなら(極端な言い方をすれば)作る意味がない」とすら思っている。

もちろん、大抵は「webサイトでできること」なんてたかが知れているのだが、それでも可能なかぎりクライアントの実質的な利益になる仕事をしたいのだ。
ただ、クライアントに「集客できるサイト」「モノが売れるサイト」を提供するには、"マーケティング"という、サイト制作職人にとっては未知の領域に踏みこんでいかざるを得ない。それが、今回の講演を聴講する動機だった。

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未来の脳を脳で考える 池谷裕二先生

photo_instructor_878.jpg「世の中は 夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ」

905年に成立した古今和歌集に収録されている歌である。時は流れて現代、「この世は脳の解釈による幻影である」と池谷裕二先生はいう。今、私たちの見ている世界は本物だろうかと問われれば、自信をもって「はい」と答えるのは難しい。

本日の講演テーマは「未来の脳を考える」であった。しかし、その内容は脳のしくみや人工知能について網羅しながらも、「私たちの見ている世界とは何だろう」という一貫した哲学的なテーマがより強かった。そして、先生の話を聞けば聞くほど、現実世界とは何であろうという疑問が増し、迷宮入りしていくような1時間半であった。

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