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IoTが連れてくる、人間味あふれる世界

photo_instructor_847.jpgアメリカで過ごした中学時代からプログラマーとしてのキャリアをスタートし、大学在学中に起業して生体認証の新技術を開発し成功をおさめた齋藤ウィリアム浩幸さん。この経歴を聞いただけで、間違いなく「天才」 だということがわかる。
現在は日本でアントレプレナーへの支援活動をおこなう傍ら内閣府本府参与としての顔も持つ超エリートだが、壇上では第一声からフレンドリーな雰囲気をかもしだし、自己紹介にはご自分の失敗談も盛り込んで見事にアイスブレイクされていた。

「ムーアの法則」がもたらすIoT

今回の講演の軸のひとつとなっていたのは、「Moore's Law=ムーアの法則」だ。これはインテル社の創業者のひとりであるゴードン・ムーア氏が提示したもので、「半導体、ストレージ、センサーは、2年ごとにパフォーマンスが2倍になる。もしくは値段が半分になる」というもの。
齋藤さんは、「ムーアの法則に従ってトランジスタ、コミュニケーション、ストレージ、センサーの4つの要素が利用しやすくなったおかげで、IoT(Internet of Things)が実現可能になりました」と説明した。

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人生は感謝を見つける旅である

空前の落語ブームだと言われる。夏にはビジネス誌が落語特集を編むほどである。現在、落語家の人数は800人。過去最大の規模だという。
日本の伝統芸能は世襲制が中心なので、落語界も二世、三世が多いのかと思っていたが、柳家花緑師匠によれば、世襲落語家はせいぜい30人程度。実は実力主義の世界のようだ。
確かに、これまで夕学に登壇いただいた落語家(柳家喬太郎金原亭馬生春風亭一之輔)は世襲落語家ではなかった。

photo_instructor_840.jpgそんな中で、花緑師匠は、落語界初の人間国宝 五代目柳家小さんのお孫さんにあたる。飛びっ切りの血筋である。しかも入門からわずか7年、戦後最年少の22歳で真打ちに昇進したという超実力派でもある。
45歳にして芸歴30年。古典から新作までなんでもこなし、落語界を背負って立つ存在の一人といえるだろう。

講演のタイトルは「笑いと感謝」。それが、花緑師匠がいま思うことだという。
「笑い」というのは落語の効能と言っていいだろう。夕学にも登壇された筑波大名誉教授の村上和雄先生の研究を引き合いにだして話してくれた。
村上先生が吉本興業との共同研究で明らかにした「お笑いを聞くと糖尿病患者の血糖値が改善する」というユニークな研究結果である。
「笑い(落語)は身体に良い」のである。

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雑学が世界に彩りを与える―科学で斬るベースボール 矢内利政さん

photo_instructor_855.jpg私は野球にうとい。野球好きの主人から「カーブ」「シュート」「スライダー」の違いを何度聞いたかわからないが、いまだに覚えられない。

ではなぜ今回、野球をテーマにした矢内利政先生の講演を聞こうと思ったかといえば、過去にこの夕学五十講に出席してきた経験からすると、自分の関心領域から離れている講演は面白い、という実感があるからだ。野球、それも「スポーツ科学」という自分から遠く離れた分野の講演は、「わからなくて当然。発見があればラッキー」とでもいうような安心感があり、私は肩に力を入れることなく丸ビルに足を運んだ。

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好きなことと役立つことを両立する 向谷実さん

photo_instructor_846.jpg 今回は、ジャズフュージョン・バンド「カシオペア」のキーボーディストである向谷実さんのお話を伺った。「好きなことをビジネスに変える」というお話であったが、向谷さんのお話を聞いて思ったのは、その好きなことがきちんと他人の幸せに繋がっているということ。好きなことを追求する姿勢の中にも、自分と社会との繋がりを欠かしていないことに向谷さんの信念が伺えたような気がする。だからこそ、そのビジネスに対価を支払ってくれる人がいるという当たり前の話なのだけれど、この感覚をすべての経営者が持ち合わせているのかと言われると、そうでもない気がする。

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異次元緩和と財政ファイナンス 池尾和人さん

photo_instructor_845.jpg「マネタリーベース(ベースマネー)という言葉は、本来、大学の経済学部で金融論の授業を取った人にしかわからない専門的用語のはずだ。それが、金融・財政政策の焦点として一般的に論じられるようになった・・・」

金融論の第一人者 池尾和人教授はそう言う。まさにその通り。だからこそ12年振りに夕学に登壇いただいた。

今年の6月7日、8日の日経新聞「経済教室」に、「ヘリコプターマネーの是非」と題して、日銀のマネタリーベース(ベースマネー)をテーマにした特集が組まれた。紙面上で、否定的な立場で登場した専門家が池尾先生であった。

マネタリーベース(ベースマネー)とは、日銀の現金と貯金準備高を意味する。これを裏付けに財政出動がなされることを「財政ファイナンス」と呼ぶ。
「財政ファイナンス」は、国債発行による財政出動に限界が見えてきた日本の財政政策の次の一手として、このところ急浮上してきた言葉である。
2013年以来政府・日銀の異次元金融緩和は、「財政ファイナンス」の領域に入っているのではないかという指摘もある。
たしかに「日銀が、輪転機をぐるぐる回して紙幣を発行すればよい(市場にお金が流れ、経済活動が活発になる)」という発言を総理就任前後の安倍首相もしていた。
すでに、日銀は、年80兆円のペースで市場から既発国債を買い上げており、その保有残高は400兆円を越えたといわれている。

今年9月の「総括的な検証」を転換点として、日銀は異次元緩和政策の誤りをはっきりと認めないままに静かに表舞台からフェードアウトした、との池尾先生の弁でもわかるように、6月時点とは金融政策への関心が少し様変わりしているが、基本的な状況は何ひとつ変わっていないであろう。

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ザ・ストーリー・オブ・ムネハル・オザキ

photo_instructor_858.jpg貧しい生活だった。
1億円の借金をして、食肉用の牧場をはじめた親父は借金まみれであった。 
56歳になった尾崎宗春は子どもの頃の記憶を甦らせる。
牛は飼育しているが、高級品である牛肉なんて食べたことがなかった。
情けない。子ども心に「親父のようにはなりたくない」と思い、自分は安定した公務員になるんだと心に誓った。

高校は宮崎ではなく、大阪にあるPL学園に通った。1970年代半ばのことである。これが宗春にとっての転機となった。
大阪の街には、疲れ切った顔で会社に向かうサラリーマンであふれていた。
ふと、故郷の親父の顔が脳裏に浮かんだ。
中卒で借金まみれだが、生き生きと牧場で働く親父の顔が懐かしくなった。
目を閉じて考えた。親父のようになりたいと思った。
目を開けると公務員になる夢は消えていた。
高校卒業後、4年間は親父のもとで畜産の基礎を学んだ。
しかし、それだけでは何かが足りないと感じた。
もっと上を目指したい。自分は世界一になりたい。
「そうだアメリカで勉強しよう」と宗春は思った。

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