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平井孝志氏に聴く、「構造」と「因果」の「本質思考」

photo_instructor_790.jpgローランド・ベルガー執行役員として活躍する平井孝志氏の最新刊は、『本質思考』。その副題には「MIT式課題設定&問題解決」とある。

かのローマ・クラブが1972年に発表した『成長の限界』。成長から均衡へ、と四十年以上を経てなお世界に影響を与え続けているその警鐘は、MITに委託実施された研究の成果であった。その研究で分析および未来予測手法として用いられたのがMIT発祥の「システムダイナミクス」である。

従来の科学が、自然科学にしても社会科学にしても要素還元主義であったのに対し、システムダイナミクスはそのアンチテーゼとして「全体としての振る舞い」に着目する。
そのシステムダイナミクスを学ぶのが、二十年前の平井氏にとって、MITスローンスクールでMBAを取得した重要な理由のひとつであった。

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SFではない、AIの"今"

photo_instructor_783.jpg今回のレビューは、私にとってかなりの難題だ。
「AIといえば、スピルバーグの映画に出てきた、あのヒューマロイドはけなげで可愛かったなあ」とか「『ターミネーター』のスカイネットは怖かった」とか、その程度の予備知識(いや、知識とは言えないレベル)しか持たず、しかも理数系がからっきしダメな私が小林さんの貴重なお話をどの程度理解できているかはなはだ不安なのだが、恐れず筆を進めてみようと思う。

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大竹文雄教授に聴く、「経済学的思考法」のエッセンス

photo_instructor_796.jpg行動経済学者である大竹文雄・大阪大学社会経済研究所教授の講演は、「小学生の算数レベルの」3つのクイズで始まった。

問1「バットとボールが合わせて110円です。バットはボールよりも100円高いです。ボールの値段はいくらですか?」
問2「ある工場では5台の機械が5分間で5個のおもちゃを生産します。100台の機械で100個のおもちゃを生産するのには何分かかりますか?」
問3「ある池に浮き草の塊があります。毎日、浮き草の面積が倍になっていきます。もし、48日で浮き草が池全体を覆ってしまったとすれば、池の半分を覆うのに何日かかったでしょうか?」

順に、10円、100分、24日、というのが「直観に基づく、よくある誤答」だと大竹先生は言う。正解は5円、5分、47日。だが、ハーバードやMITの学生でも全問即正解できるのは1/3程度に過ぎず、しかもその人たちは「神様を信じない傾向がある」らしい。

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坂下玄哲准教授に聴く、「消費者行動とブランド・マネジメント」

photo_instructor_800.jpg2007年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授、2013年ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院客員准教授。研究者としてのその肩書きが、既に立派なブランドを形成している坂下玄哲先生は、まず「ブランドとはなにか」というところから当夜の話を始めた。

曰く、「ブランドは消費者の中にある」。

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内省的実践家 為末大さん

「内省的実践家」 Reflective Practitioner

ジャンルは問わず、プロフェッショナル・専門家の育成に携わる人々の多くが口にするコア概念である。
組織心理学者のドナルド・ショーンは、プロフェッショナル・専門家の仕事は、理論・技術に習熟するだけでは不十分で、矛盾や不条理に満ちた実践の場で葛藤や試行錯誤を繰り返しながら、自分なりの解決策を見い出していかなければならない、と喝破した。
それが出来る人を「内省的実践家」と呼んだのである。

photo_instructor_795.jpg為末大氏の話を聞きながら、内省的実践が出来る人の実例を見る思いがした。
為末さんには、25年の陸上選手生活を通して、いや引退して3年経つ今もなお、ひょっとしたら一生を通じて、追究し続けるかもしれない知的な営みがある。
それは、自分のやったこと、歩いてきた道を振り返り、そこに意味を見いだし、概念化する行為である。

3年前、引退して間もない時期に夕学に来ていただいた時の講演と比較してみた。テーマは大きくは変わっていない。しかしその内容には、スポーツを越えた普遍性が増していることが分かる。
圧倒的な身体能力の違い、マスコミや周囲の喧噪、天候、コース順等々、努力ではいかんともしがたい矛盾や不条理に満ちた世界で、悩み・苦しみ・失敗し、それを乗り越えて身につけてきた「自分なりの解決策」を、他の世界にも通用する方法で語ることが出来るようになったのではないだろうか。

為末さんは、プロ・専門家の成長には6段階のプロセスがあるという。

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丹念な取材から生まれる"作品の魅力"と"人への愛"

photo_instructor_794.jpg「華」のある方。
舞台にあがった中園さんの第一印象はこれだ。

ワンピースにジャケットという女性らしい出で立ち。うつくしくセットされたヘアスタイルも上品なメイクも手抜かりなし。それにもかかわらず「今日は徹夜明けなんです」と話を切り出した中園さんを見て「いくつもの大ヒット作を手がけた美人脚本家ともなるとスキが無いものだなあ」と思ったのだが、次の一言で急に親しみがわいた。

「私は仕事のあとはお酒を飲むことしか考えていないので、アフターファイブにお勉強しようとお集まりのみなさんの前で、どんなお話ができるのか不安です」
"パーフェクトな美人脚本家"改め"「なまけもの」で「酒飲み」の美人脚本家"がどんな講演を聴かせてくれるのか、ますます期待が高まってきた。

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川村隆元会長に聴く、日立再生と「ラストマン」の生き方

photo_instructor_793.jpg連結の最終損益は787,337,000,000円の赤字。
製造業史上最悪、いまだ破られない不名誉な日本記録を日立製作所が計上したのは、リーマンショックが世界を直撃した2008年度のことだった。
沈みゆく巨艦は、危機に立ち向かうトップを必要としていた。
「社長として、戻ってきてくれないか」
子会社の会長に転出していた川村隆氏に白羽の矢が立ったのは2009年3月。日立本体で副社長まで務め上げ、既に引退も意識し始めていた氏は、思いもかけない形で日立再生の陣頭指揮を執ることになった。
69歳のことだ。

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