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行動せよ、自分の頭で考えよ、試行錯誤せよ 三谷宏治さん

人間の思考は知識をベースにして作動する。
新たな情報に触れた時、脳内に蓄積してきた知識のストックの中から、ある知識を瞬時に選び出し、フレームとして当てはめることで「それは何か」「何でありそうか」を識別する。
この高度な類推能力が、人類を生物圏から人間圏へと昇格させる原動力であった。
しかし、時にして知識が思考を妨げることがある。
類推がはずれることもあるからだ。悲しいかなアダムとイブの昔から人間は間違える生き物でもある。
誰もが知っている知識ほど、大きな間違いを誘発しやすい。
「常識や慣習に縛られて革新できない」というのは、そういう現象である。

photo_instructor_760.jpg「座って悩むな、行動せよ」
「自分の頭で考えよ」
「失敗を恐れずに、繰り返し試してみろ」

三谷宏治氏の講演は、イノベーションとビジネスモデルをテーマにした内容であったが、伝えたかったメッセージがこれに尽きるであろう。

例えば、講演の事例で取り上げた越後屋で考えてみよう。

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越後屋は、松阪の商人三井高利が創業した呉服店で現三井グループの始祖にあたる。
「越後屋の繁盛」と聞けば、多くの人が知識のストックの中から「現金商売」「掛け値なし(定価販売)」「ハギレ切り売り」といった革新的販売方法が行われていたと思い浮かぶのではないだろうか。
しかし、この絵をじっくりと眺めてみると、実は越後屋が実現したビジネスモデル革新が他にもいくつもあったことに気づくという。

売場毎に担当者の名前が掲げられ、布地の種類に応じて担当専門職制度が取り入れられていたことがわかる。
天井近くには仕立て上がりの着物が手ディスプレイされ、それをモデルに仕立て上げる「仕立て売り」も話題を呼んだ
「小判=(銀)60匁」という為替相場が掲示されており、呉服販売のみならず金銀の両替を生業にしていたこともわかる。
担当者制、仕立て売り、両替商への業態拡大。
売り方の革新だけでなく、人材活用法、店舗オペレーション、収益モデルetcさまざまな革新を数珠つなぎ式に組み合わせた「連鎖複合型のビジネスモデル革新」が「越後屋の繁盛」の所以であった。さらに三井高利の死後には、大元方という持ち株会社制度を導入し、今日の三井グループへと続くファミリービジネスの基盤を整えた。ビジネスモデルの連鎖的革新は経営ガバナンス革新にまで及んでいたという。

人々が日常生活で利用するコモディティ産業にもイノベーションやビジネスモデルを学べる題材があると、三谷氏は言う。
講演で事例として解説してくれたのはホームセンター業界であった。
戦国時代の如く激烈な業態内競争が続いているホームセンター業界の生き残りプレイヤーを分析するとビジネスモデル競争の不変的真理が浮かび上がってくるという。

「答えはひとつではない」

DCMホールディングスは、カーマ、ダイキ、ホーマックと事業エリアが異なる三社が統合して設立され、業界一の売上高を誇る。彼らが選んだ戦略は、M&Aによるバイイングパワーの増大をテコにした「低価格」戦略である。

カインズは拠点規模でこれに対抗した。売り場面積7000㎡以上のスーパーホームセンターを開発して、圧倒的な「品揃え」を武器に商圏を飛躍的に拡大した。

業界中堅のハンズマンは、顧客視点の「見つけ易さ」にフォーカスした。多階層吹き抜けの建築構造は、広さを犠牲にして、見やすく、探しやすい売り場を狙ったものだ。徹底した社員教育で顧客対応力を磨き、探したいものが必ずみつかる評価を獲得した。

4/17の夕学で山田英夫先生が話したように、生物学の知見が教えてくれるのは、同種間競争では生き残ることができるのはNo1だけ、という原理である。であるならばビジネスモデルを変え、違う戦いの土俵を作ること(種を変えること)で生き残るしかない。
ホームセンター業界には、これからも新たなプレイヤーが登場し、ビジネスモデル革新の連鎖が行われていくのであろう。
私達が学ぶべきは、他の産業でも、個人のキャリアにおいても、同じ構図があてはまるという厳然たる事実である。


「座って悩むな、行動せよ」
「自分の頭で考えよ」
「失敗を恐れずに、繰り返し試してみろ」

このメッセージが持つ希望と厳しさを噛みしめたいと思う。

(慶應MCC 城取一成)

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