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イスラム国とは何か

photo_instructor_782.jpg「わかっているのか、わかっていないのか、よくわからない」
イスラム国についての率直な感想である。
さらに、中東諸国とアメリカやイギリスの国々。エネルギー資源の思惑など考えると、より複雑になる。

今回の山内昌之教授の話は、私には難解であった。
テレビや本よりもはるかに少ない人数に向けた講演という形式だからこそ、より高度なレベルになるのは当然と言えば当然だ。
大勢の人に向けて話すのとは訳が違うだろう。

講演の主題は『イスラム国とは何か』。
しかし、自らを"中東屋"と称する山内教授は副題の『日本と中東の新未来』に重きを置いて話をされた。
文字どおり、『イスラム国とは何か』を聴きに来た人は、いささか面食らっただろうが、あまり話されなかったということが、イスラム国を知る上では重要なのではないかと理解し、考えてみた。

2014年6月29日イスラム国が独立国家宣言をした。
彼らの残虐な行為には、日本人も巻き込まれて悲惨な結果となっている。
私がこの記事を書いている現在(4月22日)では、指導者のバグダディ容疑者が空爆により重症かと報道されている。

山内教授は、彼らはイスラム教史上7世紀に出てきた「ハワーリジュ派(共同体の外に出ていくの意)」の処刑法を模倣しているようだという。
現代にハワーリジュ派を甦らせ、イスラム国の行動を見たら「まさに、ハワーリジュだ」と言うだろうと。
なぜ他宗教だけでなく、同じ宗派の人間を残虐な方法で殺すのか。
まず、そこから分からない。多くの人が「なぜ?」と疑問を抱く。
ムスリムやコーランについて勉強し、スンナ派、シーア派の対立について知ろうとする。
しかし、彼らの動機を理解することが出来ない。

イスラム国でなくても、日本のオウム真理教やよど号ハイジャック事件、あさま山荘事件なども私には理解が出来ない。
そこに、正しい論理があれば内側の人だけでなく、外側にいる人にもその動機が理解できる。
しかし、論理があるならば、それは知性に響くので、洗脳しようにも人は冷静沈着し、テロ行為へとは向かわない。
非論理的な情緒や感情に訴えかけるものでなければ、過激派テロリスト集団に向かうはずないのだ。
思想や根本にある考えがおかしければおかしいほど、力を持ちうるという性質がテロリズムにはある。
もし、イスラム国が理解できたのならば、それは彼らの仲間になるということだ。
だから、誰も明確に「何か」を答えないし、理解できなくて当然なのだ。
わけのわからない情熱を理性で捉えようとするのが、そもそも間違っているのだと気づいた。
「イスラム国とは何か」と問われれば、ただの過激派組織にすぎないと答えるだけだ。

チュニジア、サウジアラビア以外にも、ヨーロッパをはじめとする外国人の若者たちがイスラム国戦闘員を志願しているという。
彼らは疎外されていると感じる若者たちだ。移民ムスリムの子供たちも多いという。
確固たるアイデンティティを感じられない若者が、「自分探し」のためにイスラム国の戦闘員になる。
「自分探し」をしようとすれば、企業がすでに「やりたいこと」を用意している現代日本もどうかと思うが......

サウジアラビアの場合は失業率35%。山内教授によると彼らの場合はサービス業をしたくないなどの選り好みもある。
パレスチナは55%の失業率。若者では80%。
そういう虐げられている人の心を、ムスリムを使って上手く掴むという。
ジハードで死ねば、天国で幸せな生活が出来ると。
広報活動も巧みだと言われる。
私は動画を見たことはないが(意図せず動画が再生されるのではないかと思い、「イスラム国」で検索することも出来ないぐらい臆病)、テレビの報道番組で再生されるそれは、画像もかなりキレイだ。
ムスリムのインドネシア人の志願兵も多く、日本ももはや対岸の火事ではないと、山内教授は言う。

イスラム国のような虚無的、かつ有害な世界観を持つ組織は最終的には滅亡すると山内教授をはじめ、多くの専門家は見ている。
しかし、存続が長引けば、世界はそのぶんだけ深刻な事態に直面すると。
イスラム国の掃討には時間が掛かる。
10年(アブドゥッラー・ヨルダン国王)30年(前国防長官レオン・パネッタ)かかるという。アメリカの経費は200億ドル以上になると推定されている。

先に述べたように山内教授の話は『日本と中東の新未来』が中心であった。
現在、事実上国家であるクルディスタンがクルディスタン大国家になる見込み。見込んで参入する日本企業。
危険な国家だと忘れてしまうイラン外交の脅威。
燃料の奪い合いに、歴史的な問題を日本に突き付ける中国。
8月15日に発表される安倍首相による70年談話も注目されている。
これからは政治も経済も世界情勢は、中東が握っていくという話を、ご自身の経験を織り交ぜながらして下さった。
それはメディアでは語られない視点が入った大変貴重なものであった。

ほり屋飯盛