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「クチコミは売れる」  山本晶(ひかる)さん

ITが登場したことで大きく変容したものはいくつもあるが、マーケティングで言えば「消費者理解の方法論」がそれにあたるだろう。

消費者が製品・サービスに関わる情報を認知してから、購買、使用に至るまでのプロセスのうち、見えづらかったAttention、Interestといった初期段階のトレーサービリティが、ITによって飛躍的に高まった。ソーシャルメディアの登場はそれを加速させている。
今や、消費者はいたるところに「消えない足跡」を残してくれるようになった。
それを利用した新たな消費者理解の方法論が開発されてきた。

新たな消費者理解の知見は、さまざまな成果となって現れてきた。
夕学でもいくつかの事例がある。
・オンライン上のコミュニティをマネタイズすることに成功した武田隆氏(エイベック研究所)

・消費者を起点としたイノベーションを研究している小川進先生(神戸大学)

・ネットを通じてつながることで生まれる経済システムを説く國領二郎先生(慶應大学)

photo_instructor_746.jpg「クチコミマーケティング」もそのひとつであろう。
10年以上に渡って「クチコミマーケティング」を研究してきた慶應ビジネススクールの山本晶(ひかる)先生は、本当にクチコミは売れるのか、というど真ん中の疑問を解明すべき調査研究を行ったことがある。

結論からいえば、「クチコミは売れる」という結果が出た。

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武田双雲という人

photo_instructor_737.jpg NHK大河ドラマ「天地人」など、数々の題字を手掛ける書道家の武田双雲氏。自身を「スーパーポジティブ」と語る武田氏だが、元々はネガティブでイライラすることも多かったそう。どのようにして「スーパーポジティブ」になれたのか。武田氏は「ポジティブは技術、毎日の積み重ねで誰でも出来る」という。

 現在、江の島に住んでいる武田氏はあることに気が付いた。
江の島駅では、みんな笑顔で電車から降りてくるのだ。しかし、丸の内のようなオフィス街では、電車から降りてくる人たちの表情が暗い。今から遊びに行く人と仕事に行く人の違いだ。ポジティブとネガティブは、何か大きなことがあって決まるのではない。
同じ人がポジティブにもネガティブにもなることに気が付き、武田氏は生活の中での感情の持ち方を変えていった。

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宇宙飛行士に学ぶメンタルマネジメント

photo_instructor_736.jpg「浦島太郎と桃太郎どちらが好きか?」
JAXAで宇宙飛行士選抜に関わる松崎一葉氏が、最終候補生を3人に絞るための面接で聞く最後の質問である。あなたならどちらを選ぶだろう?
今まで難しい試験に合格してきたとしても、答えによって運命が決まってしまう。
浦島太郎か桃太郎かで、宇宙飛行士への適性がわかるのだ。

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安倍首相の言う『集団的自衛権』は、 従来からある『個別的自衛権』の一部分のことだと理解しました

photo_instructor_735.jpg 「集団的自衛権」の行使容認について賛否を問われれば、私は「反対」と答える。理由は、それはいつしか日本の平和を脅かし、戦争への距離を縮めることになると、なんとはなしに感じるからだ。
 ただし、「集団的自衛権、絶対反対!」と声高に主張するだけの自信が私にはない。
 正直に言えば、集団的自衛権が何を意味するか正確に理解しているとは言い難いし、今年7月に行なわれた閣議決定が実のところどれだけの威力を持つのか、そして日本という国のありようがこの決定でどんな風に変わっていくのか、実際のところはよくわからないというのが本当のところだ。
 印象的だったのは、7月1日の閣議決定後、安倍首相が記者会見で「今回の決定により、戦争の可能性がより小さくなった」という趣旨の発言をしていたこと。集団的自衛権に反対する人々も「戦争をしない国であり続けるために」反対しているのに、推進する人々もまた、同じ目的のために全く逆の決断を行なったという事実。同じ目的を掲げつつ、正反対の主張をする両者の違いとはどこにあるのだろう?どちらの考察がより深く、より戦略的であって、より将来を見通せているのか。
 今回この講座に参加したのは、そうした疑問のひとつでも解決できればと思ってのことだ。講師は憲法学者の木村草太先生。木村先生の講演は、個人としての賛否や評価を述べるのではなく、あくまで学者の立場から、集団的自衛権を技術的に考察するというものだった。
 結論から言えば、今回の講演を聞き、私は極めて不安かつ不愉快な気持ちに陥った。集団的自衛権の解釈変更により戦争に巻き込まれるかもしれない、という不安ではない。現政権が、世に憚ることなく穴だらけの決定をしていたことを知り、そのいい加減さに呆れたのである。

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先進国におけるビジネスモデルイノベーション

photo_instructor_734.jpg最近は受験生が入試の日に、お弁当でトンカツを食べることは少ないそうだ。
親が子どもの胃もたれを心配し、お弁当に入れないからである。
しかし、験を担ぐ食べ物がなくなったわけではなく、約10年前からネスレの「キットカット」が受験のお守りになりはじめた。
「キットカット受験生キャンペーン」を成功させたのが、当時マーケティング本部長であった高岡浩三氏である。

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伊丹敬之教授に聴く、『孫子に経営を読む』

photo_instructor_748.jpg 『孫子』は、2600年程前に書かれた兵法書である。文字にして約6000字。その読み継がれて来た永さとは対照的な、本編の短さ。
 「しかし、これだけ密度濃く、内容の深い本はありません」
 伊丹教授はそう言い切り、その理由を論じ始めた。

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成熟社会を生き抜く力

photo_instructor_745.jpg 今回の講演は、教育改革実践家の藤原和博氏。テーマは『正解のない問いに向き合う力』。
私のように、初詣で10円の賽銭にも関わらず、「もっとお金が欲しいです」と祈っている人にとっては、必聴の講演内容だった。

 藤原氏が登場直後、「わたしが似ていると思う歌手の名前を『せーの』で言ってくださーい」と聴講者に投げかけると、一斉に「さだまさし!」とかえってきた。このただのウケねらいのような、投げかけが、今回の講演ではポイントになる。

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藤原和博さんの板書を公開!

昨日、今期第一回でご講演いただいた藤原和博さんが使った板書を、ご本人の了解をいただきましたので、アップいたします。

通常の講演では、終了後に受講者にカメラ撮影をOKにしているそうですが、会場の制約もありまして、昨夜はそれが出来ませんでしたので、代わりにこのプログにアップします。

1.「20世紀成長社会から21世紀成長社会へ」

白板1.JPGのサムネール画像


2.「情報編集力アップのための自分プレゼン術」

白板2.JPG


3.日本人の人生観は変わる
※上書きがありましたので当初とは異なります。
白板3.JPG


4.ニッポンの時給を考える

白板4.JPG

ブログをリニューアルします!

日頃は、「夕学楽屋Blog」をご愛読いただき誠にありがとうございます。

さて、2005年4月から10年間現在の形式で続けて参りましたが、本日(10/2)から始まる2014年後期の夕学五十講から、ブログの名称と形式をリニューアルすることに致しました。

新名称は「夕学リフレクション」とさせていただきます。
夕学五十講の講義を振り返り、感想・気づき・意味づけ等を皆さんと共有化することを狙いとします。
まあ、このコンセプトは従来とそれほど大きき変わりませんが(笑)、書き手が変わります。

これまでは、講演の司会を担当する城取一成と湯川真理が書いてきましたが、これからは、新たに5人のライターの方にリレー式に書いていただくことにしました。
いずれの方もプロのライターさんではありませんが、慶應MCCのagora講座で開催してきた文章表現ワークショップを優秀な成績で修了された方です。
5人とも、素晴らしい着眼点、文章力をお持ちで、自分の書いた文章を多くの方と共有化することに意欲を持っていらっしゃいますのでおおいに期待をしております。
私城取も少しだけですが書かせていただくことにしましたので、引き続きよろしくお願いします。

今後は、原則として講演日の翌々営業日中にはアップをするつもりでがんばりますが、お仕事もお持ちの方々ですので、万が一の時にはお許しください。

それではこれからもよろしくお願い致します。

(慶應MCC 城取一成)

最終回 1/28(水) 中村和彦さん

最終回の1/28(水)にご登壇いただくのは、南山大学教授の中村和彦先生です。
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中村先生は、組織開発や人間関係トレーニング(ラボラトリー方式の体験学習)に関するアクションリサーチ研究をご専門にされています。

企業の方から「組織開発」という言葉を伺うことが増えてきました。
日本の企業人事が、90年代以降取り組んできた「ハードな変革」(組織構造の変革や制度の変更、戦略の立案)に加えて、個人のモチベーション、部署内でのコミュニケーションや関係性、組織の風土などの「ソフトな変革」が大きなテーマになっているということの証左ではないかと思います。

「組織開発」はorganization developmentの日本語訳で、略してODとも言われます。
けっして新しい概念ではなく、1960年代から、人と組織の問題に関わる研究領域として多年の研究や実践が蓄積されてきた概念です。
中村先生は、日本における第一人者の研究者です。

コーチング、ファシリテーション、プロセスコンサルテーション、ホールセールアプローチ等々、個人のモチベーション、部署内でのコミュニケーションや関係性構築を狙いとした各論的な手法は数多くあって、夕学でも取り上げてきましたが、「組織開発」というのは、もう一歩上位のレイヤーで、それらの手法や理論を包括する"箱"のようなものだと思っていただければと思います。
(これは中村先生の受け売りですが)

冒頭で、「組織開発」への関心が高まっていると書きましたが、その一方で、魅力的ではあるけれど、つかみどころがない、と言われることも多いようです。

●●●●と何が違うのか、□□□□と似ていないか、という声がその代表です。

「組織開発」がわかりにくいということは、私達が各論的な手法に慣れすぎて(こだわり過ぎて)しまい、大きな目的のために手法を使いこなすという柔軟性を失っていることの裏返しでもあります。

うちの会社はもうひとつ元気がない。
みんなの知恵やアイデアを出し合って組織の問題に向き合いたい。
職場や職位を越えた活発な意見交換や議論の場をつくりたい。

そんな課題を抱えていらっしゃる経営者の方、人事部門の方、現場マネジャーの方に、中村先生の講義を通して、「組織開発」というスケールの大きな、そして戦略的な取り組みがあることを知っていただければと思います。