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里山資本主義 藻谷浩介さん

photo_instructor_712.jpg藻谷浩介氏は、政府系金融機関在職時代(日本政策投資銀行)に、平成大合併前の3,200市町村の全てを自費で巡歴したという。しかも2度、3度廻った地域も多かったと聞いていた。
藻谷氏に率直に聞いてみた。

「なにがそこまでのモチベーションになったのですか?」


答えは、この講演のスタンスにも通じるものがあった。

事実を確かめたかった。
「○○○○と云われている」=情報や理論ではなく
「□□□□であって欲しい」=信念やイデオロギーでもなく
自分の目と足で確かめる。
そうすると目から鱗が落ちるような思わぬ事実に出くわすことがある。
それがとにかく面白かった。

藻谷氏が講演で使った資料の言葉を借用すれば
1.統計と実例から帰納し、確実に事実と言えることを押さえる
2.統計と実例から帰納し、確実に間違いと言えることを押さえる
3.どちらとも言えない領域について、仮説を元に仮判断を下し、後日検証する
そのために、訪れた市町村の、地形・交通・産業・人口動態・通勤通学動態・郷土史等を詳細に把握した。
これが藻谷氏の首尾一貫した調査スタイルである。

新書大賞2014に輝いたベストセラーで、今回の講演テーマでもある「里山資本主義」という考え方も、同じ姿勢で形成されたものだ。
中国山地の里山で、実際に行われ、立派な成果を出している実例で、なおかつ、工夫さえすれば他の地域でも展開可能な地域のあり方を提示したものだ。

例えば、岡山県真庭市では、集成材工場の副産物(産業廃棄物)である木屑をペレットに成型し、専用ボイラーで燃やすことで、極めて高効率の発電を実現している。ペレットは灯油の半額、電力の1割が木で賄うことができている。

例えば、広島県庄原市には、石油缶を再生利用した手作りのエコストーブを作り、少量の木切れを完全燃焼させて、おいしく煮炊き+暖房を実践している人がいる。しかも「過疎を逆手に取る会」と名付けた仲間を募り、暮らしの中での創意工夫を楽しんでいる。

「里山資本主義」についてはこちらを参照
http://www.nhk.or.jp/eco-channel/jp/satoyama/interview/motani01.html

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普通にでも前向きに。日々の仕事のなかで自分でつくるキャリア 花田光世さん

photo_instructor_726.jpg 花田光世先生にご登壇いただきました。キャリア、人材開発の分野で日本を代表する専門家であり、実践的研究者でいらっしゃいます。キャリア自律、キャリアアドバイザー、プランドハプンスタンス、花田先生が提唱されてきたキャリア論がありました。皆さんもご存じの言葉、もしかしたら人事制度や研修にも登場する身近なコンセプトではないでしょうか。

「自分の居場所をつくる」。今回の講演タイトルです。さて、どういうことでしょうか。肝は「つくる」にありました。

・キャリアに当事者意識をもつ。
・日々の仕事に向き合うなかで、
・モチベーションも自分で積極的につくりながら
・キャリアを自分で構築していく。
・それによって、自分の居場所は、自分でつくっていく。

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「情報余り時代」のビジネスモデル 小川進さん

photo_instructor_706.jpg小川進先生とは、実に12年振りの再会であった。
まだ、夕学五十講が昔の新丸ビル地下の大会議室でやっていた時(2002年5月)に来て頂いて以来である。
調べてみたら、その時の講演タイトルは「顧客と店舗の知恵を活かす経営」であった。
次のような内容紹介がされていた。


90年代以降に存在感を示した流通企業の仕組みについて紹介します。 セブンーイレブン、しまむら、ユニクロ、マツモトキヨシといった企業が どうして成長することが可能であったのかを事業運営の仕組みといった視点から 説明します

当時小川先生は、『イノベーションの発生論理』で組織学会の高宮賞を受賞したばかりで、それを実務家向けにリライトした『ディマンド・チェーン経営』も話題になっていた。新進気鋭の若手マーケティング研究者であった。

いま思えば、今回の講演の萌芽のような話をされていたのだなと思う。
「ユーザーイノベーション(消費者を起点としたイノベーション)」は、当時から一貫して小川先生が追究してきたテーマである。
ひとつのテーマを10年以上続ける姿勢は研究者の範になるべきだ。素晴らしい。

さて本題。
小川先生によれば、マーケティングの世界では、2005年以降大きくパラダイムが変わったという。ソーシャルメディアの登場が転換点であった。
消費者が、購買にあたって入手できる情報量が飛躍的に増えた。にもかかわらず、消費者が選択できる情報はそれほど増えていかない。
「情報余りの時代」が到来した。

歴史をみれば時代が変わる時に必ず新たな時代に適合する企業群が登場してきた。
フォード、トヨタ、セブン・イレブン、アマゾン等々がそれにあたる。
だとすれば「情報余りの時代」にも、新たな企業群が生まれるはずである。

それは「ユーザーイノベーション」の取り込みに成功した企業であろう。
小川先生はそう予見する。

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40代50代まだまだこれから。だからこそ多様な働き方。明るい未来 柳川範之先生

noriyuki_yanagawa.jpg柳川範之先生は、小学校4年生から中学1年生をシンガポールで、高校時代をブラジルで、過ごされたそうです。楽屋でご挨拶のあと、ふとそんなお話になりました。時代は1970年。帰国子女がまだまだ珍しかった時代、そして、シンガポールは独立間もなく、ブラジルは債務激増の時代です。

「こんな国があるのか、と思いました。」
その頃を振り返り、ひとこと、おっしゃいました。その言い方に明るさがありました。働き方の多様性、選択肢をもつ生き方、40代50代はまだまだこれからいろいろなことをやるチャンスがあってその能力も持っている。柳川先生のメッセージの原点をこのひとことに感じました。

産業構造の変化は、世界全体で急速におこっています。講演の前半は、経済全体の大きな視点からとらえていきました。産業構造の変化、それに伴う能力や技能の陳腐化、直接・間接的グローバル競争の激化、直面しているのは日本だけではありません。日本の問題はこの世界の変化についていけなくなる危険性、にあります。産業構造調整のスピードが遅く、少子高齢化や人口減少といった特徴からです。それではどう変わらなければならないのでしょうか。
暗い話題が続きますが、と先生がなんどか添えられたとおり、楽観的にはとうていなりにくい現状ながらも、常に柳川先生のお話には前向きさを感じました。実際、講演も著書もさいごはこう、しめくくられています。

「未来は明るい。未来には大きな可能性がある。」

では、どうしたら変われるのでしょうか。
柳川先生は、働き方の多様性と、学び直しの2つ、だとお話されました。

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会社は夢で誕生し、情熱で成長し、責任感で安定し、官僚化によって衰退する  坂本幸雄さん

経営の第一線でバリバリと仕事をしていた人が、辞めた後に体調を壊すという話はよく聞く。多くの場合、緊張感がなくなったことで身体のたがが緩んで悪いところが噴出する、というものであろう。

2013年7月末、エルピーダ再建の道筋をつけて、管財人兼CEOを退任した坂本幸雄氏もまもなく帯状疱疹を発症した。それをきっかけにしばらく体調を崩した。
しかし、自覚している理由は、普通の人と少し異なったようだ。
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ストレスがなくなって身体のたがが緩んだのではなく、「ストレスがないことがストレスになった」とのこと。
身も心も、骨の髄まで仕事人間なのかもしれない。

日体大野球部出身で、地元(群馬)で高校野球の監督になるつもりだった坂本氏が、夢破れてビジネスの世界に入ったのは1970年である。日本法人設立3年目の日本TIの倉庫係からの出発であった。ジャパニーズドリームの体現者でもある。

坂本氏は、汎用DRAM全盛期の頃から半導体業界の風雲児と呼ばれていた。
社長になっても電車通勤を通し、社員には、「会議は1時間以内」、「資料はA4一枚」を厳命した。空いた時間で世界を飛び回り、ひと癖もふた癖もあるIT業界の創業者やワンマン経営者を口説き落としてきた。
「異能」の経営者と言ってよいだろう。

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国と地方を分ける意味 橋本大二郎さん

1991年、史上初の戦後は生まれ知事として高知県知事に当選し、4期5選16年の知事経験を持つ橋本大二郎氏
「インテリジェンス」という概念を世に知らしめた外交ジャーナリストで、慶應SDMの教壇に立つ手嶋龍一氏。

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ともにかつてはNHKの報道記者、キャスターとして大活躍をした経歴をもつとあって、オーディエンスは何を聞きたいのかを意識しながら、論旨明快かつ具体的な議論を進めていただいた。

対談のテーマは「地方分権」である。橋本氏のライフワークとも言える。
従って、橋本氏の持論を手嶋氏が広げつつ、突っ込むという理想的な展開で対談は進んだ。

「元祖改革派知事」として、県内の保守派や霞ヶ関と対峙してきた橋本氏は、「地方分権」の重要性と難しさの両方を、身をもって知っており、かつそれを明晰に語ることができる数少ない論者である。

「地方分権」がなぜ遅々として進まないのか
橋本氏はその問題点を、1)補助金、2)法律、3)国と地方の力関係の3つの側面から解説してくれた。

1)補助金の問題
国から地方への補助金は、戦後復興期以来、全国津々浦々の社会インフラ整備に役だってきた。しかし、すでにその歴史的使命を終えている。
1000兆円の借金を抱える国には、もはや地方への補助金につぎ込むお金がない。
地方も、随分と前から「お腹いっぱい状態」に陥っている。
にもかかわらず止むことなく続いている。

補助金の多くは「ひもつき」である。使い方の基準が事細かに決まっている。これに従うと全国どこにいっても同じ規格の道路、橋、施設、街が出来上がる。
そこには個性がない。橋本氏流に言えば「画一化の罠」である。

2)法律の問題
法律の作り方が、地方の声、実情を(実態として)無視している、と橋本氏は言う。
例に挙げたのが「メガソーラー」問題である。
3.11を受けて、再生可能エネルギー買い取りを義務づけた法律が成立したのはいいが、全国各地で「メガソーラー」設置をめぐるトラブルが頻発している。
地元が知らぬうちに、遊休地を買い取った企業が国の認可を受けてソーラー設置を始めてしまい、異様な光景が突如として形成されている。
「メガソーラー」を設置するならば、地域と連携し、売電収益の使い道も地域の課題解決に繋げるべきだ。長野県の飯田市ではそれができつつあるのに。
もっと地方の裁量に委ねることが求められる。

3)国と地方の力関係
端的にいえば、地方版の「政・官・財トライアングル」がもたらす問題である。
公共事業に利権を持つ地方のボスが、選挙応援の見返りに地元出身の政治家に公共事業を陳情する、政治家が霞ヶ関に働きかけ、官僚が地方に補助金を流す。
小泉改革、民主党政権で公共事業が削減されて弱まりつつあるといわれたトライアングルの紐帯は、国土強靱化構想という美名を借りて復活しつつある。
東北沿岸地区で進められている防潮堤復旧事業はその縮図である。何も変わっていない。

国と地方のやるべきことを仕分けして、国は本来やるべき戦略課題に集中すべきだ。問題は山積しているのだから。


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