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相手がしゃべりたくなる対象になれるかどうか  阿川佐和子さん

新書では、何年かに一度驚異的なベストセラーが誕生する。
永六輔『大往生』1994年
養老孟司『バカの壁』2002年
藤原正彦『国家の品格』2005年
姜 尚中『悩む力』2008年
などの本が社会現象化に近いブームを巻き起こしてきた。こうしてもみると、いずれの本も、功成り名を遂げている著者であり、ご本人の専門から少しずらしたテーマながらも、この人がこのテーマを書くのならぜひ読んでみたい、と思わせる絶妙な企画がなされている。
上記の方々のうち、夕学がスタートした2001年以降の著者には、すべて夕学に登壇をいただいてきた。

photo_instructor_664.jpg阿川佐和子さんの『聞く力』は、2012年1月に刊行されて現在141万部。いまも売れ続けているという。
直裁かつ洒脱な文章が魅力の作家・エッセイストであり、一方で雑誌・テレビで毎月8人の著名人と対談、討論をするという阿川佐和子さんが、「聞く」というテーマで書き下ろしたこの本も、読んでみたいと思わせるテーマと著者の組み合わせである。

ちなみに、阿川さんによれば、ベストセラーを書いた人は皆同じ事を言うという。
「自分の本が、なぜこんなに売れたのかよくわからない。わかっていれば次の本も売れたはず...(笑)」
阿川さんらしいウイットに富んだ逸話である。

さて、講演では阿川さんが考える「聞く力」のコアエッセンスを、ご自身のテレビ・雑誌のエピソード、失敗談を交えながら楽しく語っていただいた。

阿川さんは言う
「インタビューは生ものである」相手との相性、タイミングによってフィットする話法やHow toは変わる。ましてや、どういう質問をするかではない。「相手がしゃべりたくなる対象になれるかどうか」につきる、と。

そのために、阿川さんは、事前に質問をある程度は用意するものの、それにこだわらないように心がけているという。
質問リストにこだわると、用意した質問ができたかどうかということばかりが気になり、相手の話にのめり込めない。それが相手にも伝わってしまう。結果として表面的な部分で終わってしまうことがある。

いま、このタイミングで気になること、聞きたいと思うことに遭遇したら、それをしっかりと掴まえて突破口にすると、思わぬ展開に転ぶこともある、という。

「相手がしゃべりたくなる対象になれるかどうか」ということは、
「相手が話したいと(潜在的に)思っていることに気づくかどうか」ということなのかもしれない。
言うならば、それが「聞く力」のカンドコロとも言えるだろう。

お父上(作家の阿川弘之氏)の友人である故遠藤周作氏の逸話も面白かった。
対談は、具体性に富んでいないとダメだ、という。
あるエピソードや経験をきっかけにして、「なんで」「どうして」「その後どうした」と繋ぎたくなるような具体性があると、対談は豊かになる。

ただし、具体性に富んだ話ほど、脱線も多いし、一見くだらない話もたくさん混じり込む。その中から、「宝モノ」を見つけ出せるかどうかは、読者や聴衆の力量にもよる。
「聞く力」ならぬ「聴く力」が重要なのかもしれない。

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