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2013年度前期 第1回 手嶋龍一さん

昨日から2013年度前期の「夕学五十講」の申込・受付を開始致しました。
早速、満席になる講演もあり、引き続き多くの皆さんに関心をお寄せいただいていることに心から感謝申し上げます。

本日から、いつものように今期25講演について、順番にご紹介をしていきます。

4月9日(火)の 第1回は慶應大大学院SDM研究科教授で、外交ジャーナリストの手嶋龍一先生です。
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手嶋さんは夕学2度目のご登壇となります。前回話していただいたのは2007年の春になります。
思えば、あの時も安倍さんが総理大臣に就任して間もない頃のことだったかと思います。
手嶋さんが、講演内容に記していらっしゃるように、その前年(2006年)に出た佐藤優さんとの対論本『インテリジェンス 武器なき戦争』(幻冬舎)という本は、 日本でインテリジェンスという言葉が一般書のタイトルに登場した初めてのケースでした。

あれから6年が経過し、インテリジェンスという言葉が市民権を持つようになったことは間違いありません。それは、この6年間の日本の対外関係、特に中国、朝鮮半島を中心とする東アジア外交が緊張感を高めてきたことの裏返しでもあります。

中国との関係でいえば、長らく続いてきた「政冷経熱」の微妙な調和関係は、昨年の反日暴動でターニングポイントを迎え、今後日本の対中投資は減り続けるのではないかという意見もあります。
また、先の核実験の強行実施にかかわる報道でわかるように、北朝鮮との軍事衝突の可能性がここまで現実感をもって語られたことも初めてではないでしょうか。

インテリジェンスの80%は、公開情報を丹念に拾い集めることで収拾できるものだそうです。いまいちど、手嶋さんに教えを請うことでインテリジェンス感覚を磨き上げる機会にしたいと思います。

お申込はこちらのサイトからどうぞ。
https://www.sekigaku.net/Sekigaku/Default/Normal/SekigakuTop.aspx

「世界の経営学者はいま何を考えているのか」を読んだ

夕学ネタではないけれど、いつか夕学に登壇していただけることを期待して、きょう読んだ本について書いてみた。
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<以下書評>
ビジネス書としては珍しく、最初から最後まで一気に読んでしまった。
理由は「既視感がなかった」からかもしれない。
これはどこかで聞いたとか、どこそこで読んだという部分が少ない。私にとっては新奇性の高い本であった。

なにより挑戦的な姿勢がよい。
「世界の経営学のフロンティアを、体系的にわかりやすく紹介する。しかも実証性に基づいて」
などということは、日本の経営学者はまずやらない。というよりやれない。
実務家向けに、そんな本を書いているひまがあるなら、もっと論文を書け、校務をこなせと言われることだろう。
著者の入山章栄氏は、米国の大学に所属する30後半の経営学者である。日本では、経済学修士課程を修了しているが、経営学をまったく学ぶことなく、米国の大学で経営学PhDを取っている。
なるほど、だから書けたのだな。合点がゆく。
日本で経営学を学んだ人=日本の経営学者に師匠がいる人には書けない、思い切りのよさがある。

この本は、そんな健全な野心をもった若手経営学者が、米国経営学トピックの目利きに挑戦した本といえるのではないか。

競争戦略論では「ハイパーコンペティション」
組織学習は「トランザクショナリーメモリー」
イノベーション論なら「両利き(Ambidexterity)経営」等々
いずれも、著者がフロンティアとして目利きした経営学トピックである。
コンサル会社発信のカタカナコンセプトではなく、データに裏づけられた実証研究として注目されている出自の正しいものらしい。

もし、数年後、丸善丸の内店の一階に、これらのトピックが織り込まれたタイトルのビジネス書が平積みされたら、著者の目利きは当たったことになる。
真面目な話、「日本人には受けるかも...」と感じた。ひょっとしたら、目先の利く編集者はすでに動き始めているかもしれない。
コンサルタントの皆さんは要チェックであろう。

「日本の経営学のことは、ほとんど知らない」と著書が自ら語っているだけに、日本の経営学についての勘違いや早合点もあるようだ。

「米国の経営学者はドラッカーなど誰も読まない」という著者の主張が本当かどうかは知らないが、日本だって、ドラッカーを経営学の先行理論として提示する経営学者はほとんどいない。数少ない例外が慶應の菊澤研宗教授ではないだろうか。

日本でドラッカーを熱心に読んでいるのは、いまも昔も、経営者や実務家である。少なくとも昨今のドラッカーブームは日本の経営学の世界で起きたことではない。

日本の経営学の主流は、事例分析などの定性的な情報から経営の法則や含意を導きだそうとするもので、統計学的手法を使わない、という見解も事実とは違うのではないか。

もちろん、そういう学者もいるが、主流は「理論仮説をたて、統計的な手法で検証する」社会科学的なアプローチである。著者が標榜する姿勢とまったく同じである。
むしろ現在は、逆の危機意識が語られており、若手の経営学者は、統計手法に乗りやすい重箱のスミをつつくような研究ばかりしていて、理論が生まれないことが問題とされていると聞く。

とはいえ、冒頭に述べたように、最後まで一気に読んだ。仕事柄、たくさんのビジネス書を読むが、そういうことは滅多にない。
それだけ、面白かったということである。