人生を引き受けるということ 樹木希林さん
樹木希林さんは、5歳違いの実妹で、琵琶奏者の荒井姿水さんと供に登壇した。
薩摩琵琶の音色に合わせて、お気に入りの「詩」を朗読することから、この日の講演は始まった。
「最上のわざ」(Hermann Heuvers)
http://home.interlink.or.jp/~suno/yoshi/poetry/p_thebestact.htm
最近公開の映画『ツナグ』の中で、樹木希林さんは、監督にお願いして、自らこの詩を紹介するシーンを入れたのだという。
この世の最上のわざとは何か。
それは、老いていく自分をありのままに受け入れて、従順に、静謐な心で過ごすことだ。
講演の演題「老いの重荷は神の賜物」はこの詩の一節に由来している。
樹木希林さんは、文学座の大先輩長岡輝子さんに教えてもらったこの詩を大切にしてきたという。
11月に夕学に登壇された南直哉師は言った。
人間は、その宿命として「存在することの不安」を抱えている。
人間は生まれてきた理由など知らない。なぜいま、ここで生きているのか、誰もわからない。「存在することの不安」を抱え続けて生きているのが人間である。
しかしながら、元気な時、若い時にはそれに気づかない。
病や老いを自覚すると、不安の重さにはじめて気づくものかもしれない。
樹木希林さんも、何度も病気を繰り返した。
間を置くことなく映画やテレビ・CMに出演し、強烈な存在感を発揮してきたので気づかなかったが、この10年程は病気の連続だったようだ。
肺炎を繰り返して三度入院、網膜剥離で左目を失明、乳がんで切除をしたが、全身に転移・再発を繰り返した。
その身体で、よくあれだけ映画やテレビに出続けられたのか、不思議に思うほどだ。