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儲かる仕組みを異業種に学べ  山田英夫さん

photo_instructor_638.jpgビジネスモデル(山田先生の定義によれば「儲ける仕組み」)の議論になると、その成功例としてアップルやグーグルのような画期的で斬新な例が話題にのぼる。
そこには、なんとなく他人事ような真剣さが薄い雰囲気が漂うことが多い。

しかし本当にそうだろうか。
伝統企業による寡占状態が続いている成熟産業であっても、工夫次第で、ビジネスモデルのイノベーションは起こせるはずだ。
それが山田先生の問題提起であった。

例えば、文具業界では、15年間に3回のビジネスモデルが登場したという。
アスクルの登場が1回目のイノベーション。
大塚商会が仕掛けた集中購買システムの成功が2回目。
数年前からは、先進企業を中心に、リバース・オークションという新しい購買形態が始まった。
こういう変化が起こりうるのは、文具業界だけではないはず。
変化を読み解くヒントは「異業種に学ぶ」こと。異業種のビジネスモデルを移植することである。

山田先生は、5つの具体例をあげて、異業種にあるヒントを解説してくれた。
1)スターマイカ
賃借人が住んでいるマンションを売買する「オーナーチェンジ」に特化した不動産事業である。この会社のモデルは、金融の「裁定取引」をヒントにして考案された。

2)コマツのKOMTREX
GPSによる建機の位置情報管理を通じたモニター&制御システムである。
このシステムは、富士ゼロックス社の「マネージド・プリント・サービス(MPS)」と驚くほど似ている。

3)楽天のバスサービス 
ホテルの稼働率向上策として活用されていたレベニューマネジメントを、楽天トラベルが、バスの稼働率アップ策に転用したものである。

4)日本ゴアのゴアテックスブランド
インテルが「Intel inside」で成功した成分ブランドマーケティングと同じやり方である。

5)ブヂストンのリトレッド(再生タイヤ事業) 
GEの航空エンジンと同じで、製品を売り切らずに低価格とする代わりに、メンテナンス契約で長く稼ぎ続けるモデルである。

いずれも、成熟産業におけるビジネスモデルのイノベーション例である。
しかも、他業種の成功モデルに、その範がある。意識して考えたか、無意識にそうなったのかは別として、「儲かる仕組み」には業種を越えた共通点があるのだ。

では、異業種の何を学べばよいのだろうか。
山田先生は、いくつかの着眼点を提示してくれた。

a)顧客の再定義:本当の顧客は誰なのかを考えること
BtoBビジネス企業が、顧客を購買企業ではなく、最終ユーザーとして認識すればどうなるか。
病院が、サービスの受益者を患者だけはなく、その家族をも含めて捉えればどうなる。
真の顧客は、目の前の顧客とは別のところにいる可能性がある。

b)顧客価値の再定義:どんな価値を提供すべきなのかを考えること
サービス・ドミナント・ロジック」という考え方が参考になるという。製品の付随としてサービスがあるのではなく、サービスの提供にモノの受け渡しが介在するのだという認識のチェンジがあれば、モノを売り切る必然性はなくなるだろう。
また、サービスは多ければよいものではない。QBハウスのように基本機能に絞り込んで、余分なサービスを省くことで価格競争力が生まれることもある。

c)顧客の経済性:トータルでのコストを意識すること
単品コストではなく、その製品・サービスに関わる顧客が担う諸作業・メンテナンスまでも含めたトータルコストで経済最適化をはかる提案もビジネスモデルになりうる。

d)バンドリングorアンバンドリング
事業領域をどんどん広げることで、顧客との関係性を深めることや、逆にニッチな領域に絞っていくことで希少性が出ることもある。

裁定取引やレベニューマネジメントのように、「定番の収益モデル」と言われている普遍性の高いモデルは他にもある。
ポートフォリオモデル、ネットワーク効果、フリーミアム等々。 
拙文では説明を省くので、ぜひ『なぜ、あの会社は儲かるのか ビジネスモデル編』を読まれたい。

私たちは、成熟化産業ではイノベーションは生まれにくいという呪縛にとらわれている。
製品の質や機能に目を奪われていればその通りかもしれない。でもビジネスモデルという観点にたてば、異業種のモデルを移植することで、新たな顧客や提供価値を見いだせるかもしれない。
それは、サービスの充実をコストとして捉えるのではなく、別のところで儲ける道を作り出すための投資に切り替える発想にもつながる。

儲かる会社は、それが出来た会社なのだ。
頭を柔らかくして考えれば、以外なところにヒントは転がっている。