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「変わった子」の可能性 大平貴之さん

photo_instructor_618.jpg皆さんが子供の頃、クラスにちょっと変わった友人はいなかっただろうか。

好きな事には好奇心旺盛で、何でも知りたがり、やりたがる。
勉強はそこそこ出来るが、宿題は一切やらない。
モノ無くしで悪名をとどろかせ、学校で渡される保護者向け通知などは一切親に渡さない。
机の上も中もグチャグチャで、奥の方からカビた給食パンが出てきたりする。
そのくせクラスの人気者で皆に慕われる。先生も叱りとばしながらも、つい笑ってしまう。

いわゆる「よい子」の枠からはみ出し、ある所がピンと尖って飛び出ている愛すべき子供が...。

ギネス認定の世界のプラネタリウム・クリエイター大平貴之氏は、そんな子供だったという。

日本の学校教育、組織社会は、こういうトンガリ系人材の角を削り、丸く仕上げてしまうことには定評のあるシステムで、いつしかこういう人間はいなくなる。
大平少年は、幸いなことに丸くならず、トンガリ部分を残しながら、大人になっていた。
本人のトンガリ度が飛び抜けていたからなのか、周囲(親や教師など)が愛情と包容力に満ちていたからなのか、きっとその両方であったに違いない。

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身体知としてのトイレ掃除 加護野忠男さん・大森信さん

photo_instructor_625.jpgのサムネール画像photo_instructor_626.jpg「トイレ掃除で会社がよくなる」

理論的には「ありえない」はず。しかし現実的には「ありえている」ようだ。
実際に、永守重信氏(日本電産)、鍵山秀三郎氏(イエローハット)、塚越寛氏(伊那食工業)等々。トイレ掃除の重要性を指摘し、全社活動として実践している経営者は多い。

そうであれば、なぜ「ありえる」のかを、研究してみよう。
そこに新たな経営学の萌芽があるかもしれない。
これが、大森先生がトイレ掃除研究に取り組んだ理由であり、師である加護野先生が力強く後押しをした理由である。

経営学とは、
「正しいことを上手に成し遂げるための方法を研究・教育する学問」
である。
加護野先生は、そう喝破する。

学術用語で言えば、「正しさ」とは、目的の妥当性の検証で、「上手に」とは、手段の妥当性の検証により判明する。
合理主義に傾斜し過ぎた現代経営学は、後者(手段)にばかり目を向けて、前者(目的)を疎かにしてきた。
トイレ掃除の研究は、その流れに楔を打つ、大きな意味がある。
加護野先生は、若い門下生の研究を、そう評価した。

自らも企業に入り込み、社員と一緒にトイレ掃除に精を出すエスノグラフィ的な研究をしてきた大森先生は、「トイレ掃除の効用」を次ぎのように分析する。

トイレ掃除の効用は、掃除そのもの、ましてや綺麗になった便器がもたらすのではない。
自分の会社のトイレを掃除しつづける人間が、企業に効用をたらすのである。
大森先生は、それを「間接的効用」と呼ぶ。

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子供と一緒に夢を見ている。 石川勝美さん

photo_instructor_617.jpg開講前の控室、石川勝美氏に全米プロの話題を振ってみた。
石川遼選手は、初日1アンダー15位と健闘したが、2日目に崩れて、予選落ちに終わったばかりである。

「いまの遼は、あの程度ですよ、初日が良すぎただけです。」

勝美氏は、即座にそう返答された。それは達観というよりも、はるか遠くを見透したうえで、今はひたすら藻掻く時期だと割り切っているかのようだった。

石川遼選手は、1年半ツアーで勝っていない。最後の勝利は2010年11月の三井住友VISAマスターズのことだ。
勝美氏は、この勝利の後に、一冊の本を息子に渡したという。
森鴎外の『高瀬舟』。読んで欲しかったのは「高瀬舟」ではなく、その中に収められた「杯(さかずき)」という短編小説だった。
 
「わたくしの杯は大きくはございません。それでも、わたくしはわたくしの杯で戴(いただ)きます」
主人公の女性が、毅然とした態度で、そう述べる。

そのころの遼選手は、外国人選手のショットやスイングの真似ばかりしていたという。
真似をいくらしたところで遼はウッズやミケルソンにはなれない。勝美氏にはそう思えた。
しかし、言葉で言うのではなく、それまでもそうしてきたように、一冊の本を差し出すことで、思いを告げたのである。

人によって、能力に違いはある。しかし、持って生まれた能力を変えることも出来ない。
自分の能力(杯)でやっていくしかないのだ、と。

「やっぱり...」
読んで欲しかったのは、「杯」だと告げられた遼選手は、そう答えたという。

父は戒めを言葉にせずに、本に託した。
子は父の戒めをすぐに理解した。
何とも気持ちのよい親子である。

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自分が変わるから、周りが変わる。 周りが変わることで、自分も変わる。 金井壽宏さん

photo_instructor_622.jpg金井壽宏先生は、若い頃、臨床心理学を学び、カウンセラーを目指したことがあったという。
京都大学教育学部で、故河合隼雄氏の心理学講義を三年連続で履修するほどに惹かれたことが理由のひとつ。困っている人、悩んでいる人の役に立ちたいという思いが強かったことがもうひとつの理由だった。

紆余曲折を経て、人と組織に関わる領域を専門とする経営学者になった金井先生が、「組織開発」というテーマに辿り着いたのは、必然だったのかもしれない。
経営学全般の知見、組織行動論の専門性、心理学や臨床技法に対する造詣を持ち、どんな相手にも敬意を払い、ユーモアと人なつっこい笑顔で接する金井先生こそ、「組織開発」を語るにふさわしい学者ではないだろうか。

ジャングル化の様相を呈しつつある「組織開発」を、学問的に俯瞰してくれる一方で、自分の立ち位置も明確にして、「だから私はこう考える」という見解を述べてくれた。

金井先生は、「組織開発」には二つのアプローチがあるべきだとする。
クリニカルアプローチ=支援と働きかけのアプローチ
エスノグラフィックアプローチ=観察と記述のアプローチ
のふたつである。

クリニカルアプローチ=支援と働きかけのアプローチ
臨床心理学の知見を使うことから、この名前を付けている。
相手(組織)が自ら元気になるプロセスに役立つために、さまざまな働きかけを行うことである。
金井先生の恩師であるE・H・シャイン氏(MIT教授)はその大家といえる。

エスノグラフィックアプローチ=観察と記述
文化人類学で用いる調査手法の名に由来する。
相手(組織)の内側に入り込み、内部者のすぐ横で、そこで何が起きているのかを観察し、記述することである。
シャインがMITに招いたJ・V-マーネン氏は、組織エスノグラフィーの第一人者である。

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「なぜ」「だから何なの」 ちきりんさん

photo_instructor_601.jpg「Chikirinの日記」が始まったのは、2005年3月のこと。
現在確認できる限りでは、最初の記事は「ホリエモン vs フジテレビ」であった。

実は、「夕学楽屋ブログ」が始まったのも、2005年4月である。
最初の講演ブログは高橋俊介さんだった。

「Chikirinの日記」「夕学楽屋ブログ」ともに、当初のアクセス数は3000PV/月程度と同じようなものだったらしい。
それが今では...
「Chikirinの日記」は、100万~150万PV/月、ユーザー数3万人/日
「夕学楽屋ブログ」は、1.5万~2万PV/月、ユーザー数は200~300/日

百倍にまで開いた要因は何なのか。
ここは書き手の筆力の差だと認識せねばならない....

自嘲気味の愚痴はさておき、本題へ。
ブログ、書籍、講演を通して、ちきりんさんのメッセージは「もっと考えよう!」ということだ。
「考える」ことへのこだわりは、異なる二つの職業体験で感じたカルチャーギャップが原体験とのこと。

バブル期に新卒で入社した証券会社では、「考えるな」と叱られた。
MBA取得後に入った外資系企業では、「考えろ」と叱責された。
この差はいったい何なのか。その時からひたすら「考えてきた」
そして「考えよう」というメッセージが、いまの日本にビシッと刺さるテーマだということに確信を持ったということかもしれない。

先が読める時代=「変わらない世界」には、知識と経験が重要。だから年の功が生きる。
先が読めない時代=「変わる世界」では、思考と論理が重要。無知・無経験が武器になることさえある。
これからの世界、これからの日本は、後者である。

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大人げない大人  成毛眞さん

photo_instructor_616.jpg夕学には、外資系IT企業の日本法人トップを務めた方が、何人か登壇してきた。
平松庚三さん村上憲郎さん前刀禎明さん辻野晃一郎さん等々。

平松さん、村上さんは全共闘世代。
「戦う世代」らしく、パッションに満ち、挫折体験をエネルギーの変えてきたという自負が感じられた。
「熱きストラテジスト」 平松庚三さん
パトスの論理 村上憲郎

前刀さん、辻野さんは、新卒でソニーに入ったという共通点がある。
二人とも、スマートな紳士ながらも、黄金時代のソニーで鍛えられた人ならではの「こだわり」がある。 
日本の素晴らしさを世界に向けて発信するという強い意志である。
「感じる」「創る」「動かす」 前刀禎明さん
21世紀の日本発イノベーションとは  辻野晃一郎さん

成毛眞さんは、平松・村上世代と前刀・辻野世代の真ん中にあって、まったく異なる個性をもった人だ。
「シニカル」 「反主流」 「好きなことをやる」
そんなキーワードが頭に浮かぶ。

「正直言って、飽きた」
12年前、マイクロソフト日本法人の社長を退く際に言ったコメントがそれを象徴しているかもしれない。
この数年の著書も
『日本人の9割に英語はいらない』『就活に日経はいらない』というショッキングなタイトルである。
誰もが知っている有名人だけに、随分と波紋を呼んだという。

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気づく、考える、比べる  おちまさとさん

photo_instructor_605.jpgプロデューサーおちまさと氏は、
10歳のとき、人生を決めた。 
映画『ジョーズ』を見て、「自分はスクリーンの向こう側(作り手)に立つ!」と。

20歳のころ、道を切り拓いた。 
『天才たけしの元気が出るテレビ』の放送作家オーディションで、4千人の激戦を勝ち抜き、テリー伊藤氏の弟子となり、この世界に入った。

30代後半になって、世界を広げた。 
TVからファッション、ネット、企業コラボへと、プロデュース活動のウィングを伸ばしたのだ。

46歳のいま、何かを始めようとしているように思える。
育児とデュアルライフ(ハワイ&日本)を楽しみながら、ライフスタイルプロデューサーとしても注目されている。

著書名に擬えていえば、そんな「ひとりコングロマリット」的な生き方を可能にしてきたのは、秀でた「企画力」なのであろう。

おちさん流の企画は、「きかく」という語呂にちなんで、
き:気づく
か:考える
く:比べる

の三段階で構成されるという。

「気づく」という行為は
クイズ番組の早押しと同じだという。
誰も気づいていないことに、一番に気づくことが勝負を決める。

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財政健全化に向けた改革課題の全体像

まずはじめにおことわり(言いわけ)から。

私は、夕学講演の翌日にブログをアップすることを基本にしている。何もなければ翌日の昼まで、午前中に予定がある時は、夕方にはアップをする。講演翌日が週末休暇の場合には、休み中に書いておいて、翌週の朝にアップする。

今回は、31日(木)に土居丈朗氏、1日(金)古賀茂明氏と連続だったが、1日は朝から3時近くまで用事があったので、土居さんのブログを書きかけ途中で、古賀さんに講演時間が来てしまった。

お二人の講演は、日本財政の課題を取り上げた点は同じであった。そして、大きな意味での問題意識と解決の処方箋についてはそれほど変わらないと理解した。
ただ、ご承知のように、野田内閣が取り組んでいる消費税増税法案に対する立場は180度異なる。
その違いは、どこに起因するのかを整理することで、二つの講演をまとめて、ひとつのブログにすることにした。

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さて、日本財政が危機的状況にあることを否定する人はいない。
政府債務残高の対GDPが220%を越えて、世界最悪の状態にあることは揺るがない事実である。
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財政健全化の処方箋がひとつで済むという人もいない。複数の改革を同時並行的に取り組む必要がある。
お二人の話を参考に、財政健全化に向けた改革課題の全体像を列挙すると次ぎの4つになる。

1)使うお金を減らすこと=歳出削減(ムダの削減)
2)お金の使い途を変えること=構造改革(社会保障制度の改革、地方分権改革など)
3)お金の集め方を変えること=税制改革(消費税増税)
4)集めるお金を増やすこと=成長戦略(規制緩和

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