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ヒットの方程式は「e=mc²」 干場弓子さん

photo_instructor_564.jpg出版というのは、新規参入が難しい業界だという。
腕利きの編集者が、著名作家との個人的繋がりを武器に独立する例は多いようだが、それはあくまでも個人事務所の域を出ないものであって、企業として、ある程度の規模に成長させるのは難しいとされる。
干場さんによれば、幻冬舎とディスカヴァー・トゥエンティワンの二社が希有な例で、他にはほとんどないという。

端的にいえば、業界構造が閉鎖的で、新規のビジネスモデルが入り込む隙間が少ない業界のひとつになるだろう。
そんな業界にあって、ディスカヴァー・トゥエンティワンは、この数年、特色のある書籍でヒット作を出し続ける注目企業と言えるだろう。
無名だった勝間和代氏を世に出し、知る人ぞ知るコンサルタントであった小宮一慶氏をベストセラー作家にした。
『ニーチェの言葉』は百万部の大ベストセラーになった。

同社を設立し、育ててきたのが、干場弓子さんである。
2年前に、小宮一慶さんに夕学に登壇いただいた際に、「面白い人ですよ」とご推薦をいただいてから、いつかお呼びしようとタイミングを狙っていた。

干場さんは、売れる本の条件を二つあげてくれた。
WILL TO SELL  売ろうとする意志の強
ABILITY TO DISCOVER  (新しい価値を)発見する力

売れない編集者の言い訳は、いつも同じだという。
「良書は売れない...」「無理に売ろうとしていない...」「いい本は売れなくてもいい...」
干場さんは、そんな姿勢を「ひとりよがりの自己表現」と切り捨てる。

かといって、売ろうとする意欲ばかりが先走りし、だれそれに紹介してもらおう! どこそこで取り上げてもうらおう!と「小手先のマーケティン」グを弄しても、DISCOVER(発見)がないものは売れない。

二つの条件を満たすところに「革新的なベストセラー」はあるが、残念ながら多くの出版社は、WILL TO SELLも ABILITY TO DISCOVERも不十分で、書籍の売れ行き減を新刊の配本増で補う「自転車操業の数合わせ」に奔走しているのが実情とか。

では、DISCOVER(発見)に必要な要素は何か。
干場さんは、アインシュタインが特殊相対性理論の帰結として行き着いた質量とエネルギーの等価性計算式をつかって、自らの考えを説明してくれた。

e=mc²

「C」は、「collect」=知識の引き出し、と「combine」=思いがけない組み合わせ、を意味している。
知識・情報は多い方がいい。しかし、ただ多いだけではなく、思わぬ組み合わせが必要である。シュンペーターの言う「イノベーション」であろう。

「M」には、多元的な意味が込められている。
目標・目的、問題意識の「M」 
感動で人を動かMOVINGの「M」
マケーティングの「M」
そして、何よりMISSIONの「M」

社会を変えようという強い意志が、人の心を動かす原動力になる。
自己の最善を尽くそうという思いの強さが、目標や問題意識を鮮明にしてくれる。
自らの使命を自覚することで、創意工夫やイマジネーションが生まれる。

あれやこれやと考えを巡らし、まずはやってみようと行動することで「運」に巡り会う確率は高まる。 
そして「運」がDISCOVER(発見)の扉を開いてくれる。

それが、売れる本の作り方であり、干場さんの生き方なのだろう。

自分の講演を「社員にも聞かせたい」とおっしゃる社長さんは他にもいた。
しかし、講演の最中に、壇上から、終了後の打ち上げを誘いかける人はいなかった。

オープンで、パッションに満ち、自らの行動で道を示し、いざという時に頼りになる人。
ヒットが生まれる組織のリーダーの条件を、体現して教えてくれるような人であった。

・この講演に寄せられた明日への一言はこちらです。
http://sekigaku.jimdo.com/みんなの-明日への一言-ギャラリー/6月15日-干場-弓子/

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