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クールヘッドとウォームハートの人 柳家喬太郎

「あたしゃあ、なぜ、いまここにいるんでしょうかね。いまもってよくわかんないんです」

出囃子で登場するなり、見事なつかみで、会場に笑いを起こした柳家喬太郎師匠。
「いまもっともチケットが取りにくい落語家」と評されるだけあって、きょうも春日部高校での二回の公演を終えて、夕学が、三つめの御座敷とのこと
「Noを言わせない交渉術」を誇る夕学スタッフの熱意に感じ入ってくれたのか、疲れたそぶりもみせずに、二時間たっぷりとお話していただきました。

半数の人が、落語を生で見るのは初めて、ということを知ると、芸能としての落語論をさらりと紹介してくれる。
しかも五代目志ん生六代目円生八代目正蔵(彦六)といった昭和の名人達のモノマネも随所に織り込んで、落語ファンのこころもしっかりと捉える。さすがである。

お客にお題をいただくのが落語流ということで、何を聞きたいかのリクエストを募ったうえで、漫談、古典、新作の三席をご披露いただいた。

漫談は「コロッケソバ」という得意技。まくらで使うことが多いそうだ。 立ち食いそばの中で崩れていく「コロッケの悲哀」を、全身を使って演じると会場は報復絶倒となる。バルタン星人の落ちは、計算づくの締め方とか。

古典は、「金明竹」のさわり部分。与太郎が「貸し猫なら一匹おりやしたが、あいにくと...」とまぬけを繰り返す。展開が読めるおかしさは、なぜか懐かしさを憶える。「そうそう落語ってこうだった。」
欽ちゃん仕込みのズッコケが加わったのもご愛敬である(笑)。

新作は、ちょいと抜けたおじいちゃんと孫の愉快な会話劇かと思いきや、一転思わぬ展開に会場がしんみりとくる、ペーソスに満ちた作品。カルチャーセンターで新作落語教室をやった時の生徒さんの作品とのこと。

それぞれの話のあとで、話の基本構造、「かみしも」を使った人物の演じ分け方など、落語のイロハを的確に説明してくれるのもありがたい。

喬太郎師匠の話を聞いていると、落語という芸能は、「場のマネジメント」だと思える。
お客様にこころから喜んでもらう、腹の底から笑ってもらうという「ゴール」は決まっており、そのために与えられた時間にも限りがある。その前提条件のなかで、お客さんと噺家の「場」をマネジメントしていくのが落語ではないか。
まずは「場を読む」
どういうお客さんが来ているのか、何を聞きたいのか。自分に求められている役割は何か。他の噺家の顔ぶれを考えて、会場のお客さんの顔色を眺めて、場を読んでいる。

ついでは「場に合わせる」
場を読んだあとは、その場に合った打ち手が必要になる。落語であれば、まくらの選択、小ネタの入れ方を瞬時に変える。 きょうの喬太郎さんであれば、話やしぐさの後にかならず解説・説明を入れてくれたというのは、夕学という場に合わせてくれたに違いない。

ここぞというところで「場を作る」
相手との距離間が掴めてきたら、こちらが相手の空気に合わせる段階から、相手をこちらの空気に引き込む段階へと転換していく。お客さんを自分の舟の乗せるのである。このあたりが、プロのプロたるゆえんで、相手を唸らせるような高度な技術がないと出来ない。

最後は「場を支配する」
お客さんを自分の舟に乗せることができたら、あとはゴールに向けて心地よい旅に誘えばよい。

「場を読む」ためには、俯瞰して自分を見る客観視能力が必要だろう。
「場に合わせる」時には、ストックの多さが不可欠になる。
「場を作る」には、歌舞伎の見栄のような「華」が勝負を決める
「場を支配する」段階になると、真剣勝負の中で滲み出てくる人間性が決め手になる。

喬太郎師匠は、大人気の理由を問われて言う。
それは、「落語」が一回終わったからかもしれない。
志ん生、円生が寄席で君臨し、三平、円鏡がテレビで活躍した黄金時代を経て、落語は年寄り臭い芸能と言われるようになった。喬太郎師匠や私の青年時代はそうであった。
いまの若い人達は、そういう感覚さえもない。「落語」に対して真っ新な状態である。

「だから新鮮なんですよ。ねずっちのなぞかけと一緒です。」

どこか冷静でいて、それでいて、とっても温かい。
クールヘッドとウォームハートの人。それが、柳家喬太郎師匠である。

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