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失敗が財産になる  堀場厚さん

堀場製作所とはどのような会社なのか。
一般コンシューマー向けの製品を作っている会社ではないので、「京都企業」「高業績」「創業者 堀場雅夫氏」といったイメージしかない方も多いかもしれません。私もそうでした。
そこでまずは、簡単にプロフィールを確認します。
売上高1,342億円 経常利益100億円 従業員5,146名 (いずれも2008年度実績)
排ガス測定システム、水質測定機器などニッチな事業領域で、多品種少量生産方式を貫き、堀場社長の言葉を借りれば「高級割烹と同じで、舌の肥えた常連さん相手の商売」で成功してきました。マーケットの複雑性に対応した高度な専門性が強みです。
日本、欧州、米国、アジアで事業を展開し、従業員の半数は外国人。特にフランス人社員の比率が20%に達するなどグローバルな人材マネジメントを行っています。
開発・販売に集中し、生産機能は800近くにのぼる協力会社に委託。そのうち中心となる80社程度で構成する「洛楽会」というパートナー組織があり、共同体的な信頼感で結ばれています。
日本人の強みが活かせる領域で、グローバル展開に成功し、従業員・ステークホルダーとの協働システムを重視して、高業績を続けている会社と言えるでしょう。

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イバラの道は続く  竹森俊平さん

いつも思うことですが、経済学者というのは、経済論争において、なぜあれほどに闘争意欲が旺盛なのでしょうか。
お会いしてお話を伺う時には温厚で、制御的な物言いをされる先生方が、論争においては相手に容赦ない厳しい言葉を浴びせ、批判を展開します。
私のような気の弱い人間からすると、「そこまで言わなくても...」というようなえげつない表現も使って、相手の論が如何にダメなのかを指弾することがあります。
竹森先生も、実に温厚で、物静かな雰囲気の方ですが、論争においては闘争本能に満ち溢れた、経済学者らしい経済学者という印象でした。

本日の夕学で、その本能が垣間見えた場面は、我が国の経済危機への対応策をめぐる論争を紹介された場面でした。

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「書く」こと 「月を見る」こと 山田ズーニーさん

「ズーニー」というのは、カシミール語で「月」という意味だそうです。山田ズーニーさんは、インド旅行中に地元の人に付けられたこの名前が、心に残っていたようで、独立後、ペンネームを付ける必要に迫られた際に、思いつきのように心に浮かんだ「ズーニー」という言葉を綴って、はじめての原稿を書いたと言います。
今夜の東京は曇り空で、月を見ることは出来ませんでしたが、ズーニーさんは、月をイメージしたと思われる浅黄色のワンピースで登場しました。鮮やかでありながら奥ゆかしい。夜空にあって、慎ましやかながら、確かな存在感を示す満月の色に似ていました。胸には三日月のペンダント。名刺にも、青い夜空に三日月を配した印象的なものでした。

お名前そのままに、ズーニーさんは、「月」のような人でありました。
古代の人は、月の満ち欠けをもとに季節の移ろいや時の経過を知ったと言います。何度もこのブログに紹介してきましたが、裏千家家元の千宗室さんは、「侘び・さび」の心とは何かを問われる度に、「月を見よ」と応じるそうです。

「月の満ち欠けの繰り返しの中に、限りなく続く生死の輪廻を感じることができる。死ぬために生まれ、生まれる為に死んでいく。栄えるものの中に、衰退の哀れを感じ、滅びゆくものの中に、生命力を見いだすことができる」 
                       (2007年11月21日 「夕学五十講」

月を見るということは「見えないものを見る」ことでもありました。
ズーニーさんが、追究している「書く」という行為も、深いところで、「月を愛でる」日本人の、故き知の営みに通ずるものがあるように感じました。

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実践知としての「五味理論」 五味一男さん

意図したわけではありませんでしたが、前回の「ブルーオーシャン戦略」と今回の「五味理論」は、よく似た考え方のアプローチを取っています。
両者の共通点には、
・大ヒット商品の開発や巨大市場の創造など、マスを狙うことにこだわる点
・商品・サービスの斬新性や技術イノベーションにはこだわらない点
・再現性を強調する点
の3点があげられます。
いずれも、多様で成熟化した社会では難しい(得策ではない)とされる点にあえて挑戦しているところに新奇性を感じるのかもしれません。

ただ、両者には大きな違いがあります。
「ブルーオーシャン戦略」が、欧州を代表するビジネススクール インシアードの教授であるW・チャン・キムが体系化したアカデミック理論「理論知」であるのに対して、「五味理論」は、五味一男さんが、テレビ番組の制作と実践現場の中で紡ぎ出した「実践知」である点です。

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ブルーオーシャン戦略の本質 池上重輔さん

私達、実務家が経営やビジネスについて学ぶ際に、陥りがちな誤りが「わかった気になること」です。
全ての理論について言えることですが、表面的な概要を理解することと実務で使えるレベルまで習熟するのとでは、大きな違いがあります。
多くの支持を集める優れた理論というのは、シンプルでわかり易い点に特徴がありますが、それゆえに、表層部分をなぞっただけで、わかった気になりがちです。
最も悪いのは、わかった気になり、中途半端に試して失敗した時に、「この理論は実践では使えない」というレッテルを貼ってしまうことです。
池上先生の話を聞くと、ブルーオーシャン戦略に対する受け止め方も同じ兆候が散見され、誤った認識が広がっているのではないかという危惧をお持ちのようでした。
だからこそ、ブルーオーシャン戦略とは何かを、しっかりと伝えておきたい。そんな熱意を感じる講義となりました。

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声に出すことで立ち上がる力 谷川俊太郎さん・覚和歌子さん

今夜の丸ビルは、ハリウッドスターが来場したとのことで、1Fのエントランスはファンの人だかりと物々しい警備体制で騒然としておりました。
対称的に7Fのホール内は、時折の笑い以外はシンと静まり、谷川俊太郎さんの詩ではないですが、それこそ“耳を澄まして”お二人の話と朗読に聞き入る2時間でした。

「言葉の力」という今日のテーマを受けて、対談内容を構成されたのは谷川さんだそうです。言葉の素晴らしさ。言葉の魅力。そんなお話を展開されるのかと思いきや、以外なことに、言葉のネガティブな側面を語り合うことから入りました。

「あなたが傷ついた言葉は何か」
「他者を深く傷つけてしまった言葉は何か」
お二人は、体験談をもとに、「言葉の力」のマイナス面を語り合いました。
幼い頃、父母から叱られた時の言葉。友人に思わず口にしてしまった言葉。そんな言葉や経験が、実はその後の生き方や物事の考え方に影響を与えていることを確かめ合うように。

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