« 2009年3月 | メイン | 2009年5月 »

ワンダーを求める旅 荒俣宏さん

世の中には生きながらにして「伝説」を語られる人物がいます。
長嶋茂雄、勝新太郎、赤塚不二夫などがそうでした。
荒俣宏さんも、その系列に連なる人であり、「アラマタ伝説」なる珍説・奇説がファンの間で語られているようです。
曰く、「何十年間も平凡社に住んでいた」 「稀覯本の蒐集で数億円の借金を抱え、『帝都物語』の大ヒットで完済した」 「読書に費やす時間とお金を節約するため1日1食インスタントラーメンだけで暮らした」etc...。
ご本人によると、「風呂の代わりに砂場の砂をかぶっていた」などという珍説まで実しやかに語られているそうです。
ちなみに、平凡社に住んでいたというのは事実で、「世界大百科事典」の編集に携わることを理由に、会社の一角を約20年に渡ってなし崩し的に占拠し、事務所代わりにしていたとのこと。

さて、そんな「伝説」の流布を半ば楽しむようにして生きる荒俣さんが、ライフワークとして取り組んできたのが博物学の研究でした。
10年近い年月を費やして完結させた『世界博物図鑑』全5巻・別巻2巻は、その集大成です。億単位の借金も、この図鑑の資料収集のためでした。

きょうの夕学は、そんな博物学研究から見出した溢れんばかりの知見をもとにお話いただきました。

続きを読む "ワンダーを求める旅 荒俣宏さん"

対話と対決 今北純一さん

今北純一さんのプロフィールとみるとその華麗なるキャリアに嘆息してしまいます。
東大大学院で化学工学を専攻、大手素材メーカーの研究員を経て、米国留学、英国、スイスでキャリアを積んで、多国籍企業の経営幹部として実績をあげ、現在は欧州拠点の戦略系コンサルティングファームのパートナーを勤める。
グローバルなフィールドで活躍することを目指す日本人にとっては、究極のロールモデルといってよいでしょう。
ところが、実際の今北さんは、そんな華麗なキャリアとは対照的に、温厚で、偉ぶるところがなく、私達のような普通の人々が抱えるのと同じ平凡な悩みを、泥臭い努力によって、ひとつひとつ解消してきた人でした。

続きを読む "対話と対決 今北純一さん"

不平の徒の論理 佐高信さん

-世の通説によれば、在野精神の早稲田に対して、慶應には、体制側のお坊ちゃんというイメージがありますが、それは間違い。私こそが慶應の本道です。-

講演冒頭、佐高さんは、いつもの悪戯っぽい笑いを浮かべながら、話し始めました。

政府、権力におもねらず、在野にあって常に批判する。
確かに、評論家 佐高信が貫いてきた姿勢は、福澤諭吉の生き方と相通ずるものがあります。
佐高さんの基本的な立ち位置は、タカよりはハト、権力側よりは民衆側、中央よりは地方、イデオロギー重視よりは暮らし重視とはっきりしているので、大きなものを守るために小さなものが犠牲になることは絶対に許さないという姿勢に貫かれています。
したがって、有名な人はたいがい、佐高さんの妖剣に切りつけられることを覚悟しないといけません。しかも少々の脅しにはびくともしない人なので、批判にカッとなって歯向かうと手痛い返り討ちにあってしまいます。
また、権力者の金銭に関する身綺麗さに関して「お金はどうやって手にいれたかよりは、何のために使ったか」を重視するという基準を持っているそうで、「クリーンなタカよりはダーティーなハト」という判断軸もよく知られたところです。

続きを読む "不平の徒の論理 佐高信さん"

「したたかな戦略家」 藤原和博さん

藤原和博さんには、夕学だけでなく、他の講座のゲスト講師としても登壇いただいており、その都度、控室でもお話を伺ってきました。
その経験から、藤原さんには、「表に見える能力」と「見えにくい能力」の二つの能力があると思っております。
「表に見える」ものは、カリスマ的な魅力です。
親しみやすい雰囲気、流れるようなプレゼン、ユーモア、自信、豪快さ、頭の回転の良さetc....
売れっ子コンサルタントや評論家、ベンチャー起業家などに共通してみられる特性です。

では、「見えにくい能力」とは何か。
それに気づいたのは、昨年夏に、ある講座のゲストに来ていただいた時でした。

続きを読む "「したたかな戦略家」 藤原和博さん"

歴史から学ぶ「日本発の資本主義」 中谷巌さん

リーマンショック以降、金融危機の発生原因や新自由主義的経済システムの限界を謳う書籍は、それこそ山のように出ました。
その中で、毀誉褒貶相半ばする形で、最もインパクトをもって取り上げられたのが中谷巌先生の『資本主義はなぜ自壊したのか』でした。

では、中谷さんは、なぜ「転向」したのか。
「アメリカ発経済学」の理論で、全てを考えると「マズイ!」と思わせたものは何だったのか。
その理由を語ることで、これからの日本経済の方向性を示唆する。きょうの夕学は、そんな2時間になりました。

「アメリカ発経済学」はシンプルでクリアな理論と言えます。経済においても、政治においても、極めて民主的なオープンなシステムで成り立っています。
「資源の再分配」については、マーケットメカニズムに委ねることを第一義とします。
一部特権階級に富の配分を委ねるのではなく、全ての人が参加できる「市場」における需要と供給の自己調整機能に任せることで、「神のみえざる手」が働くと考えました。(この慣用句の使い方も要注意だと堂目先生から学んだばかりですが...)
市場に委ねるのに相応しくない公共財(教育、貧困対策、地方対策)などは、選挙によって決まった政府に任せることで、民意を反映させることができます。

続きを読む "歴史から学ぶ「日本発の資本主義」 中谷巌さん"

第25回7/30(木) 佐藤勝彦さん

第25回 7/30(木)の講師は、宇宙物理学の第一人者 佐藤勝彦先生です。
この春に東大を定年退官された佐藤先生は、宇宙をテーマにした一般向け科学解説書や教養書を数多く書いてこられました。
湯川秀樹、朝永振一郎両博士を嚆矢に、昨年の南部陽一郎先生まで、ノーベル賞学者を輩出してきた日本の素粒子理論研究の関連領域で、私達一般人がかろうじてイメージできるのが「宇宙」の不可思議を解明することに貢献してきたという事実ではないでしょうか。
佐藤先生は、そんな伝統的系譜をつないでこられた研究者のお一人です。

137億年前にビックバンによって誕生し、いまもって加速度的な膨張を続けていると言われる「宇宙」。夕学にも登壇いただいた松井孝典先生のお言葉によれば、「自然界には、宇宙の歴史的痕跡が刻み込まれており、いわば「宇宙の古文書」の役割を果たしている」とのこと。
その古文書を、物理学の理論を使って読み解くことで、宇宙の謎を解明するのが宇宙物理学という学問です。

佐藤先生によれば、宇宙を構成する物質エネルギーのほとんどは「暗黒物質」と呼ばれるものだそうです。
なんともおどろおどろしい名称が付けられていますが、要は、自ら光を発することもなく、どんな信号にも反応することもない、正体不明の存在であることが、「暗黒」である所以とのこと。
つまり、宇宙のほとんどは、まだ未解明の物質エネルギーに満ちており、宇宙の膨張も、その「暗黒物質」が及ぼす効果なのだそうです。

かくも不思議で、スケールの大きな宇宙の話。
佐藤先生のお話を聞いたあとに、夏の夜空を眺めてみたいと思いませんか。

第24回 7/24(金) 保阪正康さん

第24回 7/24(金)の講師は、作家の保阪正康さんです。
日本の近現代史、特に昭和史を専門とし、骨太のノンフィクションや歴史書を著してきた保阪さん。かつて夕学にも登壇いただいた半藤一利さんと並ぶ在野歴史家の代表者です。

昭和という時代は、わずか60年の短い期間に劇的なパラダイムチェンジが起きた稀有な時代です。
私の父親は昭和2年生まれ(昭和元年は一ヶ月もなかったので事実上の昭和のスタート)ですが、その年代の方々は、一人の人生の中で、「軍国主義」「連合軍占領下」「戦後経済発展」という、3つの時代を生き抜かねばなりませんでした。
社会規範、経済状態、教育制度、文化・思想のあり方等など、人間のモノの見方・考え方に影響を及ぼす環境要因が、まったくといっていいほど異なる中で生きてきたことになります。

「こうした時間帯のなかで、日本人はどのような変容をとげたのか。あるいはとげなかったのか。この講座では改めてそのことを考えてみる」と保阪さんはおっしゃっています。
日本人は何を、どのように失敗し、それをどうやって省察してきたのか。
昭和という時代の日本人のどのような性格や思考方法を次代につなげばよいのか。
戦後64回目の夏を前にして、そのことを考えてみたいと思います。

第23回 7/22(水)山本博文さん

第23回 7/22(水)の講師は、東大史料編纂所教授の山本博文先生です。
日本近世史(江戸時代)を専門として、江戸文化や武士をテーマにした多くの著作を出してきた山本先生。
江戸城を眼前に望む丸ビルで行う夕学では、徳川将軍と大奥をテーマにお話していただきます。

昨年、大好評だったNHK大河ドラマ『篤姫』は、改めて大奥への関心を喚起させてくれました。
名前の通り、本来は、表向きの政務とは一線を画す、影の存在であった大奥が、後継将軍の決定にさえ影響を及ぼすほどの政治力を持つにいたったのはなぜなのか。
とかく興味本位の俗論で語られることが多い世界ですが、今回は、最新の資料を踏まえながら、徳川幕府における大奥の役割や意義などを解説していただきます。

第22回 7/17(金) 上田紀行さん

第22回 7/17(金)の講師は、東工大大学院准教授で文化人類学者の上田紀行先生です。
文化人類学というと、未開の奥地や秘境に入り込む探検家的な研究姿勢が特徴ですが、上田先生の学者としてのキャリアは、スリカンランカでのスリランカで「悪魔祓い」のフィールドワークだったと言いますから、もう筋金入りですね。

そんな上田先生がここ数年特に力を入れて取り組んでいるのが、日本仏教の再生です。「仏教ルネッサンス塾」という勉強会の塾長をつとめ、宗派を超えた若手僧侶のディスカッションの場をマネジメントするなど精力的に行動をされています。
考えてみれば、親鸞、一遍、日蓮などを産み出した「鎌倉仏教」は、それまでひと握りの支配者層に独占されていた仏教を民衆に開放することで壮大なパワーを発揮したと言われています。
あおの信長の天下布武に最後まで抵抗したのは、本願寺を中心にした一向宗の門徒達でした。日本の仏教は、社会の変革期に大きな力を発揮する磁場の働きを果たしてきたのかもしれません。
翻って、混迷を深める21世紀の社会。自殺者3万人と言われる一方で、癒し、ヒーリングが求められています。
果たして、宗教は、仏教は、この時代にどのような役割を果たすべきか。
仏教に期待されるものを考えてみたいと思います。

第21回 7/13(月) なかにし礼さん

第21回 7/13(月)の講師は、作家の なかにし礼さんです。

学生時代に、シャンソンの訳詞家としてキャリアをスタートさせ、作詞家に転向してヒット曲を次々と世に送り出したなかにしさん。
『天使の誘惑』(昭和44年黛じゅん)、『今日でお別れ』(昭和46年菅原洋一)、『北酒場』(昭和57年細川たかし)と、いまと違って権威があった頃の日本レコード大賞を三度も受賞しています。

その後小説も書き始め、こちらも大ヒット作を連続して、2001年には『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞されました。

そんな華麗な遍歴を誇るなかにしさんですが、訳詞家になる時、作詞家に転ずる時、小説を書き始める時、それぞれの転機にあたっては、人生を変える大きな出会いがあったそうです。
石原裕次郎氏、ゴーギャンなどとの出会いがそれにあたるとのこと。

彼らとの出会いが、なかにしさんにとって、どんな意味を持ち、何を変えたのか。
人生を変えるような大きな出会いとはいったい何なのか。
この講演では、そんな出会いを考えます。

第20回 7/9(木) 箭内道彦さん

第20回 7/9(木)の講師は、クリエイティブ ディレクターの箭内道彦さんです。

箭内さんは、広告の世界では名前の知られたクリエイターです。
誰もが知っているところでは、吉本のお笑いタレントを、奇抜なヘアスタイル次々と登場させて話題になった、資生堂のUNOシリーズのCMがありますね。

クリエイター、特にCMクリエイターというと、天賦の才に恵まれたひと握りの天才の世界という印象がありますが、箭内さんの持論はまったく違います。

「自分ひとりで思いつくことなんてあまりにも小さい。目の前の相手と向き合ってそこから生み出せばいい」

自分の才能に思い悩んでいた時に、クリエイティブは自分だけで考えるものではなく、依頼主から引き出すものなのだということに気づいたことで、一気に世界が拓かれたと言います。

箭内さんは、それを「合気道」の精神に擬えました。
つまり、「相手の力を利用すること」に本質があるということです。
「合気道」の精神は広告の世界に留まらず、およそ全てのビジネスにあてはまるスピリットです。
そう気づいた箭内さんが書いた本が、『サラリーマン合気道』でした。

この講演は、そんな箭内さんの仕事術をお聞きしたいと思います。

第19回 7/7(火) 森田汐生さん

第19回 7/7(火)の講師は、アサーティブジャパン代表理事の森田汐生さんです。

アサーティブネス、あるいはアサーションというのは、端的にいえば、「きちんと自己を主張すること」と言えばよいでしょうか。
1960年代~70年代にかけて、米国で普及したコミュニケーション理論とスキルのひとつです。

マイノリティや女性など、抑圧されがちな立場に置かれた人々が、相手に対して攻撃的にならずに、かといって受け身的にもならずに、言うべきこと、主張すべきことを、適切に伝えるためのコミュニケーションのあり方として発展してきました。

森田さんは、イギリスの医療機関でソーシャルワーカーとして働くなかで、アサーティブネスに出会い、専門家としてのトレーニングを積んだそうです。10年ほど前に、日本においてアサーティブの考え方を広める目的でアサーティブジャパンを設立し、全国各地で講演や研修を行っています。

日本人は、同質的な集団の中で、和を重んじるばかりに、知らず知らずのうちに、言いたいことを抑圧するコミュニケーションスタイルが染みついていると言われています。
一方で、社会は多様化し、異なる価値観を持った人々と協働することも求められています。

言いたいことを我慢して、無用なストレスを感じることや、主張をしないばかりに、意見を持たない人間と軽視されてしまうことも増えてきました。
いまこそ、上手に自己主張するスキルを持つことが必要ではないでしょうか。

森田さんのお話を通して、誠実で率直な「No」の伝え方を、アサーティブネスを通じて学んでみたいと思います。