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第18回 7/2(木) 漆紫穂子さん

第18回 7/2(木)の講師は、品川女子学院学校長の漆紫穂子先生です。
大正時代に、当時品川町長であった漆昌巌氏、娘の雅子氏により設立されたという品川女子学院。80年以上の伝統を誇る女子中・高等学校です。
設立当初から、良妻賢母を養成するお嬢様学校ではなく、社会で働き、家庭と両立させる自立した女性を育てようという理念を掲げていたといいますから、当時としては稀有な女子学校ではなかったでしょうか。

そんな名門校を引き継いだ漆紫穂子先生ですが、現在にいたる道のりは、平坦ではなかったとのこと。一時は生徒が集まらず、廃校が取りざたされた時期もあったそうです。
漆校長が取り組んだ学校改革が奏功し、現在では、国公立大学をはじめ、有力私大にも多くの生徒が進学する人気女子校のひとつに数えられています。

今回の講演では、改革の過程を振り返りながら、先生に、職員に、そして生徒に直接働きかけ、モチベーションを高めていった漆先生の改革のストーリーをお話いただきます。

第17回 7/1(水)上村達男さん

第17回 7/1(水)の講師は、早稲田大学大学院教授の上村達男先生です。
上村先生は、言わずと知れた会社法の大家です。2006年の会社法改正前後はもちろんのこと、この10年、グローバル金融資本市場の大波が日本を覆い尽くそうとする中で、日本の企業経営やコーポレートガバナンスのあり方について積極的に発言をされてきました。

素人知識で認識しているのは、会社法改正の意義は、頻発する企業不祥事が社会問題化したこと、金融資本市場の急進展に背を向け、グローバルな競争について行けないor目を背けようとしている日本企業の「経営の規律」を糾すことにあったような気がします。
ベンチャーにとっては障壁となっていたいくつかの規制を緩和する一方で、会計制度やコーポレートガバナンスの仕組みを変えることで、経営監視機能を強化する取り組みが行われてきました。

その流れの中で起きた、今回の金融危機。
経営のモデルとされた米国で顕在化したグローバル金融資本主義の問題点は、日本の資本主義、そして株式会社をどう進化させていくのか。
法的な側面から、問題の本質に遡って考えてみたいと思います。

第16回 6/17(水) 清水聰さん

第16回 6/17(水)の講師は、明治学院大学教授の清水聰先生です。
清水先生の専門は消費者行動論です。そう聞いてピンと来ない方も多いかもしれませんが、実は、マーケティングの中でも、最もビジネス現場との関係が深い分野ではないでしょうか。
有名な「アイドマ(AIDOMA)理論」は消費者行動論の知見が、実務の世界に広く普及した例のひとつです。

いわば、消費者は、なぜ、どのようにモノ・サービスを購入し、利用するのか。そのメカニズムを明らかにしようというものです。
当然のことながら、消費者の行動は、時々の社会環境や技術環境の影響を受けて変化します。現在では、ネット社会の進展をうけて、上記のアイドマ理論に変わり、アイサス(AISAS)理論」なる概念を提唱する一群もいます。
アメリカの音楽業界は、すでにi-Tuneに覇権を握られており、ネットでの流通が主流になりました。もちろん、すべての販売チャネルがネットに置き換わることはないにしろ、モノ・サービスの消費プロセスにおける、ネットの存在と影響力は、消費者行動論を大きく変えると言われています。

清水先生は、そんなネット社会の新たな消費のあり方を、「ネットが産み出した新しい消費者像」という切り口から解明すべく、実証的な研究をしてきました。
「目利き」 「聞き耳」 「死神」というのは、そんな新しい消費者と行動を言い表した言葉です。

消費財メーカーや小売り業など、一般コンシューマー向けビジネスの関わっている方、商社や広告業界など消費者と消費行動に関心のある方には、是非聴いて欲しい講演です。

第15回 6/11(木) 山極寿一さん

第15回 6/11(木)の講師は、京大大学院教授で霊長類学・人類学を専門とする 山極寿一先生です。

ルワンダとコンゴ民主共和国にまたがる中央アフリカ熱帯雨林の森で、ゴリラやチンパンジーの生態を解明すべく30年にも及ぶ調査研究を続けているという山極先生。
ゴリラの研究では、数ヶ月間も現地に留まって、その生態を間近で観察してきたと言います。
山極先生の研究は、単なるゴリラの生態研究に留まらず、その知見を現代の人間社会が抱える普遍的な問題にまで敷衍していることに特徴があります。

今回の講演テーマは「暴力はなぜ生まれてきたのか」です。
古代社会での戦争は、部族間による土地や資源の争奪戦でした。やがてそれは国家レベルの戦争へと発展します。
中世には、国を超えて、宗教や民族を巡る争いが生まれました。
近代に入ると、帝国主義による侵略戦争が始まり、世界大戦へと連鎖していきました。
第二次大戦後は、イデオロギーをめぐる戦いが世界を二分しました。
現在の先生は、西欧文明社会とイスラム原理社会とのテロ戦争の様相が濃くなっています。

これほどに、文明が進歩したにもかかわらず、なぜ戦争はなくならないのか。なぜ暴力が繰り返されるのか。人類の祖ともいえる霊長類(ゴリラやチンパンジー)の生態を知ることで、暴力とは何か、人間性とは何かを解明しよう、というのが山極先生の研究です。

山極先生によれば、「人間の暴力には人間以外の霊長類の攻撃性に由来する特徴と、人間独自のものがある」とのこと。
何が人間を人間たらしめ、それゆえに引き受けねばならなかった不幸とは何か。
そんなスケールの大きな問題を考えることができればと思います。

第14回 6/9(火) 三枝成彰さん

第14回 6/9(火)の講師は、作曲家の三枝成彰さんです。
テレビでは洒脱なトークで司会業もこなす三枝さんですが、音楽家としては、クラシックから、映画音楽、テレビ音楽、演劇音楽など、さまざまなジャンルで活躍していらっしゃいます。

そんな三枝さんが、ライフワークとして取り組んでいるのがオペラの作曲と普及活動です。

「音楽・演劇・美術が渾然一体となったオペラはどうして生まれ、今日まで人々を魅了してきたのか。それはすなわち、近世から現代までの西洋文化を考えることに他なりません。その歴史をひもとくことで、世界にあまねく広まっている西洋文化の意味を考察します。」
とのこと。

夕学では、これまでも、クラシック音楽(茂木大輔さん)ミュージカル(塩田明弘さん)と音楽関係を取り上げてきましたが、その全ての要素を取り込んだ芸術がオペラです。

三枝さんが、自らの経験も踏まえて語る本格的なオペラ講義です。

第13回 6/3(水) 宇津木妙子さん

第13回 6/3(水) はルネサス高崎女子ソフトボール部シニアアドバイザーの宇津木妙子さんです。
まだ記憶に新しい昨年の北京五輪。日本選手団最大の快挙は女子ソフトボールの金メダル獲得でした。
あの時、冷静沈着な強面の監督として鳴らしてきた宇津木さんが、テレビ解説席で思わず発した「よかったョ~!!」という嗚咽混じりの言葉。
感動の場面を思い出す方も多いのではないでしょうか。
シドニーでも、アテネでも、あと一歩及ばず敗れ去った日本チーム。その時、宇津木前監督は「弱いから負けたんだ」と突き放すように言い放ちました。
その冷徹なまでの勝負師精神には、恐ろしさを感じたほどです。

そんな宇津木さんが、絞り出すようにして発した、あの一言は、ご本人とその教え子でもある斎藤現監督、そして選手達にしかわからないさまざまな思いが凝縮した言葉だったと思います。

いまでは、かつての厳しい姿とは別人のような柔らかな笑顔で、テレビに登場することも増えた宇津木さん。教え子達が成し遂げた夢の金メダルをどのように総括しているのでしょうか。

第12回 6/2(火) 原丈人さん

第12回 6/2(火)の講師は、 デフタパートナーズグループ会長の原丈人さんです。

慶應の法学部を卒業後、中央アメリカの考古学研究に従事するために渡米し、その資金獲得のためにスタンフォード大でMBAを取得し、ベンチャーキャピタルの世界に入ったという原さん。
ネット時代の到来を見越して、シリコンバレーのITベンチャーに投資し、大成功しました。
数年前からは、コンピューターによるITの限界を読み切って、ポストコンピュータ-によるネット社会のあり方とコンピューターに換わるネットワークツールを新たな基幹産業として育てようという活動をされています。

更に、最近ではソーシャルな活動に重点を移し、自らが開発したポストコンピュータ-のネットワーク技術を使って発展途上国の情報インフラを整備し、識字率、医療衛生状態の改善につなげようという社会的な取り組みに注力しています。

2007年に出版され、ベストセラーになった『21世紀の国富論』という本は、そんな原さんの想いの丈がつづられた素晴らしい本です。
アダム・スミスが元祖『国富論』を書いたのは、いまから230年前。
夕学に登壇された大阪大学の堂目先生によれば、スミスが主張したのは、市場経済万能主義による富める者中心の社会発展ではなく、道徳的な規範も合わせ持った、貧困なき社会の実現だったとのこと。

生き馬の目を抜くようなシリコンバレービジネスで成功してきた原さんが、いち早く見据えたのは、230年前にスミスが抱いた問題意識と同じだったのかもしれません。

演題は「公益資本主義と新基幹産業創生」
すぐに役立つ実践的な知識やスキルもよいですが、大上段から社会のあり方を問いかける原さんの講演も、是非多くの方に聴いて欲しいものです。

第11回 5/28(木) 堀場厚さん

第11回 5/28(木)の講師は、堀場製作所の堀場厚社長です。

"京都系企業”と呼ばれる企業群があります。
京セラ、ローム、ワコール、オムロン等々。戦後生まれで、京都に本社を置き、独自な製品や経営観をもって、キラリと光る優良企業としてあげられる企業です。
堀場製作所も、そんな"京都系企業”の代表といえる存在です。
厚社長のお父様である堀場雅夫さんが終戦間もない頃に学生ベンチャーとして起ち上げたのがはじまりだと言われています。

経営学の研究では、「なぜ、京都にユニークな優良企業が多いのか」という命題に対して、京都の閉鎖性が理由にあげられています。
「一見さんお断り」という慣習に見られるように、京都は伝統的に外部の人間を容易に受け入れない、閉鎖的社会だと言われています。
志のある若者が起業しようとしても、既成の事業領域、やり方では通用しません。それゆえに創業時から、新奇性や独自性にこだわり、自社ならではの技術やサービスを創り出すことを迫られます。そのスピリットが"京都系企業”には脈々と息づいていると言われています。

堀場社長にも、その精神は、しっかり受け継がれているようです。
昨秋の金融危機以降、世界中の経済が急激に冷え込み、守りに入ることを最優先する会社が多いなかで、、いたずらに不況を嘆くばかりではなく、逆境の時こそ、次ぎに備えた準備をすべきであるという前向きな発言を繰り返しされています。

今回の夕学の演題は「大波に打ち勝つ経営」
逆境に立ち向かう、ファイティングスピリットを持った人材をどう育てるか。教育問題にまで言及しながら、力強いお話をいただけるようです。

第10回 5/26(火)竹森俊平さん

第10回5/26(火)の講師は、慶應義塾大学経済学部教授の竹森俊平先生です。

昨秋に発した金融危機以降、金融危機の発生原因や資本主義のこれからをテーマにした書籍が山のように出版されました
そんな中で、多くの識者から高い評価を得た数少ない良書のひとつが、竹森先生の『資本主義はお嫌いですか』でした。
この本が発売されたのは昨年の夏の終わりですから、金融危機のインパクトは、専門家の間の議論であって、私たち自身の問題として眼前に立ち上がる前のことです。
しかもこの本で多くの紙面を割いているのは、サブプライムローンが及ぼす世界経済への危険性について論争がかわされた米国の経済学会の様子ですが、その会議が行われたのは2006年の夏のことでした。

つまり、今回の危機はすでに3年前から多くの経済学者の間で予見されえたもので、突如として発生したものではないことがわかります。
しかし残念ながら、予見できることが支配的な言説となるかどうかは別物で、世界の叡智を集めた場であっでも、時の勢いに流されていくことが止められなかった様子がよくわかります。

どうやら、私たちが選んだ資本主義というシステムは、いつの時代も予測不能な新たな問題を発生させるメカニズムを内在しており、永遠に不確実なままであるようです。
少なくとも、資本主義にまさる思想や制度がない以上、次々と生まれてくる資本主義の弱点を見つけては分析し、手だてを考え、対策を打つという行為を、永遠に続けていくしかありません。

私たちには、その現実を冷静に受け止めて、一時の享楽に浮かれることなく、資本主義と付き合い続ける覚悟をしておく必要がある。
竹森先生は、きっとそんなお話をされるのではないでしょうか。

第9回 5/22(金) 山田ズーニーさん

第9回 5/22(金)の講師は、文章表現・コミュニケーションインストラクターの山田ズーニーさんです。
ベネッセで高校生を対象とする小論文編集長として「書く力、考える力」の育成に取り組んできた山田ズーニーさん。
現在は、学生さんだけでなく、大人、企業人を対象とした、表現教育にも尽力しています。
糸井重里さん主宰の『ほぼ日刊イトイ新聞』では、「おとなの小論文教室。」を連載中ですので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
PCがビジネスツールとして普及して以来、私たちの表現技術は、ビジュアル化への傾倒を深めてきました。
また、メール文化の普及は、手紙や報告書を推敲し、手直しをするという習慣を、なくしつつあると言われています。

「ひと目でわかること」「ひと言で言い表すこと」が重要なことは言うまでもありませんが、それは、論理的に自分の考えを伝えるというプロセスの向こう側にある、一歩進んだ表現のあり方であって、思考のショートカットを意味するものではありません。

書くという行為を通して培われる表現力が、時を超えた普遍的な「知性」であることは、今もなんら変わることはないはずです。

文章表現のプロ、山田さんが説く、「相手のこころを揺さぶる文章」の要件とは何か。
ブログを書く私としても、興味深い講演です。

第8回 5/12(火) 五味一男さん

第8回 5/12(火)の講師は、日本テレビ上席執行役員の 五味一男さんです。

入社以来、ディレクターorプロデューサーとして、数々のヒット番組を世に送り出してきた五味さん。
24時間テレビを、現在のマラソンとチャレンジ応援パターンという形に作りかえたことをはじめとして、「マジカル頭脳パワー」、「ごくせん」「エンタの神様」などの大ヒット番組に関与してきたとのこと。

日大芸術学部を出て、CMディレクターとして市川準氏に師事した後に、テレビ制作の世界に入ったというキャリアだけを拝見すると、天才肌のクリエイターというイメージが思い浮かびます。
天才のやり方は天才だけに通用するもので、普遍性はないというのが一般的な捉え方ですが、五味さんは、そんな考え方を真っ向から否定します。

ヒット作品は、天才的なひらめきや、思いつきから生まれるのではなく、一般大衆の代弁者として、彼らが抱えている潜在的なニーズを、最大公約数で表すことができるかどうかである。
ヒットには、ヒットするための普遍的な理論がある。
というものです。
メガヒットを生み出すノウハウを、自ら「五味理論」と名付け、多くの場で紹介しています。

グローバル企業が、軒並み足下をすくわれているなか、内需産業が注目されています。基本的なニーズが全て満たされてしまっている成熟社会にあって、新商品・サービス開発に携わる方には必見の講演ではないでしょうか。

第7回 5/8(金) 池上重輔さん

第7回 5/8(金)の講師は、早稲田大学商学研究科、客員准教授の池上重輔先生です。

外資系コンサル、外資系企業でのブランドマネジャー、新事業開発、ベンチャーキャピタリストなどを歴任してきた池上先生。昨年、日本向けにブルーオーシャン戦略を解説する本を書かれました。
ブルーオーシャン戦略は、欧州を代表するビジネススクールINSEADのW・チャン・キムとレネ・モボルニュが提唱した戦略論の理論的フレームワークです。
競争のない、まったく新しい市場をブルーオーシャン(青い海)に擬え、激しい競争のもと消耗戦を余儀なくされるレッドオーシャンから脱却し、新市場を切り開く組織的な方法論と言われており、成熟化した社会で、競争戦略に苦慮している日本企業からもたいへん注目されている理論です。

その一方で、池上先生によれば、「日本においては残念ながら多くの誤解や、実行方法がよく理解されていない例が非常に多い」とのこと。
今回はブルー・オーシャン戦略を理解する上でのポイントを実例を交えながら解説していただけるようですので、新規事業や新商品開発を考えているビジネスパースンには必見の講義です。

第6回 5/7(木) 谷川俊太郎さん・覚和歌子さん

第6回 5/7(木)は、詩人の谷川俊太郎さんと覚和歌子さんによる、詩の朗読&対談です。

「マザーグースのうた」をはじめ、半世紀に渡って、日本を代表する詩人として活躍する谷川俊太郎さん。
彼の詩は、誰もが何らかの形で目にし、朗読してきたことと思います。
今回、谷川さんに講演と朗読をお願いしたところ、「どなたかと対談であれば」ということで、自ら覚和歌子さんをご指名いただきました。

覚さんは、作詞家として平原綾香、夏川りみなどに詩を提供する一方で、「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」の作詞など、ジブリ作品でも同じみの新進気鋭の作詞家・詩人です。

聞けばお二人は、セッションで朗読と対談をする機会も多いとのこと。
気のあったお二人の詩人による「言葉の世界」をご堪能いただきたいと思います。

第5回 4/28(火) 荒俣宏さん

第5回 4/28(火)の講師は、作家の荒俣宏さんです。
SF小説『帝都物語』で世に出て、幻想文学、神秘世界、妖怪などなど、人間の理性・論理とは少しばかり距離のある、不可思議世界の森羅万象に精通した「知の巨人」として有名です。

ライフワークとされる『世界大博物図鑑』は、荒俣さんが平凡社で“生活しながら”全7巻を一人で書き上げたと言われています。
私は、目にしたことはありませんが、例えば鳥類の巻を見ると、キジ類の分類の中に、キジ、ヤマドリ、ニワトリなどと並んで、大鵬やフェニックスまでもが載っているとのこと。
現存する(した)かどうかではなく、人類が想像しえたあらゆるものが掲載された、まさに「博物図鑑」であります。

今回の講演では、当初は「日本の歴史と文化」というテーマの中で、江戸・東京の文化についてお話していただこうと思いましたが、時代や地域を限定されると話ずらい、もっと自由にして欲しいというご要望を受けて、「博物学と美術」という演題となりました。

古今東西の人類の叡智・情念・想像を、その巨躯一杯に詰め込んだ荒俣さんのお話が、どう展開するのか大いに楽しみです。

第4回4/24(金) 今北純一さん

第4回(4/24)の講師は、欧州系戦略コンサルティング会社 コーポレート・バリュー・アソシエイツ(CVA)のマネージング・ディレクターを務める、今北純一さんです。

今北さんは、メーカーの研究者出身で、単身ヨーロッパに渡ってから30年、日本と欧州の掛け橋的な仕事をされてきました。テクノロジーとエコノミクスを結合した)「テクノ・エコノミクス」という考え方を体現してきたという今北さん。
理系、文系といったステレオタイプの分類軸では処しきれない融合的な捉え方を提唱されています。
日本では、「欧州」という呼び方で、ヨーロッパとアメリカをセットで捉えてしまう傾向がありますが、実はヨーロッパ(特に大陸欧州)とアメリカは、社会・文化的価値観はかなり違うと言われています。
今北さんによれば、欧州は、大枠の社会ルールを共有化しておいて、個別の問題は、個の対応力に委ねるべきだという価値観を持っているそうです。
規制や細かいルール作りによって暴走を防ごうとするアメリカ型の社会システムに対して、欧州の方が日本人には親和的であるはずです。

また、今北さんは、将棋の羽生善治さん、柔道の山下泰裕さん等とも親しく交流しているといいます。将棋や柔道といった日本的文化を欧州人に説明するのに苦労していた時に、絶妙のタイミングで現れて、手助けをしてくたのが今北さんだとか。人間的にも魅力的な存在に違いないでしょう。

講演は、ズバリ「世界で戦える人材とは」です。

第3回4/22(水) 佐高信さん

第3回4/22(水)の講師は、佐高信さんです。
佐高さんも夕学は3度目の登壇になります。
大学時代からの友人である岸井成格さん(毎日新聞編集顧問)が言うところの「人間性センサー」を持っている佐高さんにとって、これまで2回は、小泉-竹中コンビという好敵手が健在だったので、センサーの鳴り方も、ひときわ高かったような気もします。
ところが、この2年ほどは、センサーを鳴らすに相応しいほどの相手もいないというのが、我が国の政治の現状ではなかったでしょうか。こころなしか佐高さんの物言いも優しくなったと感じるのは私だけでしょうか。

そこで今回は、現状の政治・経済を斬るのではなく、過去の先達を振り返っていただくことにしました。
佐高さんは、「慶應出身だから...」というわけでなく、ひとりの評論家として、福澤諭吉を高く評価しています。
幕末、日本中に攘夷思想が跋扈していた頃は、福澤の開明的な思想や行動に対する攻撃も激しいものがありました。命を狙われることもしばしばだったと言います。中津藩の下級武士に生まれ、拠って立つ基盤のない福澤は、生身でその危険に立ち向かっていきました。
その精神的強靱さは、佐高さんの高く評価するところです。

また、明治政府が成立後に、繰り返し政府出仕を求められながら、終生在野に生きることを貫いた姿勢も佐高さんの好みのようです。

思想というのは、常にその時代の風と熱に晒されます。
後世から見てみれば好きなことが言えますが、ある方向へと時代がうねりを上げて動いている時、人々が熱病のようにそれに流されている時、敢然として自身の信じる思想を語り、行動することは並大抵のことでは出来ないことを、自らもそうして生きてきた佐高さんはよく知っているのかもしれません。

時代の熱に浮かれなかった生き方。それが佐高さんをして、福澤諭吉を「平熱の思想家」と言わしめたものだそうです。

第2回4/15(水) 藤原和博さん

第2回4/15(水) 杉並区立和田中学校前校長で、大阪府知事特別顧問の藤原和博さんです。

夕学には3度目の登壇になる藤原さん。
最初の時は、リクルートから和田中校長の転身した直後。二度目は、その3年後、そして今回はそのまた3年後になります。

はからずも和田中の学校改革の様子を定期報告のようにお聞きしてきたわけですが、改めて思うのは、藤原さんの卓越した実行力です。
威勢のよい改革論を語る人は多いものですが、実際に学校組織に飛び込んで、さまざまなしがらみや制約条件をクリアしながら、構想を実現することは、並大抵のことではありません。
強い意思の力が必要なことはもちろんですが、冷静な分析、ユニークな発想、したたかな交渉、暖かい人間性等など、人間としてのトータルな力が必要です。
藤原さんは、その全てを有しながら、持ち前の飄々とした雰囲気で、サラリとやってしまったという印象を与えるところが素晴らしいと思います。

彼の改革の原動力になったのが、今回の講演タイトルにもある「つなげる力」です。
藤原さんの言う「つなげる力」とは、情報編集力のことです。
人、モノ、金、アイデアなどなどさまざまな情報を柔軟な発想で組み合わせる力とも言えるかもしれません。
藤原さんは、組み合わせる際に発揮される「頭の柔らかさ」こそが、いまの子供、大人、日本に必要なもので、それを養うための「よのなか科」という授業を行って来ました。
和田中学校の改革は、彼が「つないだ」情報が、次ぎの情報を「つなぎ」、その連鎖が改革を継続させるエンジンになることを証明した事例だと思います。

いま藤原さんが挑戦しているのが、大阪の学校改革です。
和田中を退任された後、1年かけて大阪の学校現場を周り、入念な状況把握を終え、「こうすればいける」という確信を得た頃ではないでしょうか。

教育に関心がある人、組織の変革を目指す人、自己の能力向上を考えている人等々
もう一歩成長したいと考えている全ての人に聴いて欲しい講演です。

第1回 4/13(月) 中谷巌さん

本日から申込・予約受付を開始いたしました。
お陰さまで、多くの方に申込をいただいております。ありがとうございます。

さて、今期の1回目は、三菱UFJリーサーチコンサルティング理事長で、多摩大学教授の中谷巌先生です。
中谷先生が、昨年末に出された『資本主義はなぜ自壊したのか』という本は、大いに話題になりました。
「あの中谷さんが!」という驚きがありました。
構造改革推進派の理論的支柱として、自由で公正な市場の原理に委ねることこそが、経済と社会の発展に繋がることを説いてきた中谷さんが、「アメリカ型の金融資本主義」への決別宣言を発したということに、大きな時代の変化を感じます。

本によれば、中谷さんが、考え方を変える過程には、塾長として関わってきた次世代リーダー育成塾での経験が影響しているそうです。
夕学にも登壇いただいてきた、松岡正剛さん、山折哲雄さん、川勝平太さん、山内昌之さん等を講師に招き、彼らが語る歴史観、人間観、日本文化論を聞くことで、経済学以外の「知の世界」への関心と洞察が深まり、資本主義のあり方、日本の進むべき道を再構築することに繋がったとのこと。

かといって、中谷さんは、かつての護送船団方式や統制経済に戻れと言っているわけではありません。科学の進歩と自由な社会を標榜する以上は、私たちが受け入れざるを得ないグローバル資本という「モンスター」を、どのように飼い慣らしていくか、その手綱さばきの知恵が求められていること。そのヒントは日本的価値観の中に見つけ出すことができることを提唱されています。

いま、この時だからこそ、じっくりとお話を伺いたいと思います。

来期の予定をアップしました。

2009年度前期の予定をアップしました。
http://www.sekigaku.net/index.htm

今期は、4/13(月)の中谷巌先生(多摩大学)から、7/30(木)佐藤勝彦先生(東大大学院)まで全25回になります。
申込受付は、明日3/4(水)10:00からになりますので、お忘れなく!!

今期は、5つのテーマを掲げました。

1)資本主義はどこへ行く
リーマンショック以降、いったい資本主義はどうなるのだ!という議論が花盛りとなりました。
新自由主義への過度の傾斜がもたらす弊害がはっきりと見えてきたいま、私たちは資本主義とどう付き合っていくべきなのか。切り口を変えながら、5人の論客に登場していただきます。

・構造改革論者からの「転向宣言」が話題になった中谷巌先生には、その真相を
・辛口評論家佐高信さんからは、福澤諭吉論を通して、普遍的な思想家のあり方を
・世界で活躍する今北純一さんからは、グローバル人材論を
・金融危機の可能性をいち早く指摘した慶應の竹森俊平先生には、日本の進むべき道を
・グローバルな視点で公益と資本主義を結びつけようとする原丈人さんには、新産業論を
・コーポレイトガバナンス研究の第一人者上村達男先生には、株式会社のあり方を

それぞれお話いただきます。


2)強い企業の条件
トヨタ、松下、キャノン...これまで勝ち組とされてきた優良企業までもが、苦境に追い込まれた今回の経済危機。巷間いわれているように、輸出に頼る製造業モデルでは本当にダメなのでしょうか。
しかし、今回の危機の発生原因を考えると、次代の日本のモデルといわれていた金融立国構想に素直にうなずくことも出来ません。
未曾有の危機を迎えて、新たな道を模索する企業の皆さんと共に考えるべくこのテーマを設定します。

・注目される戦略論アプローチ「ブルーオーシャン戦略」を、専門家の池上重輔先生に
・危機こそ、次ぎに備える準備の時と檄を飛ばす堀場製作所の堀場厚社長には、独自の経営論を
・北京の感動から半年。教え子を通して夢を達成した宇津木妙子前監督に、あきらめない精神を
・消費者行動論を専門とするマーケティング学者清水聰先生に、ネット社会の新たな消費者像を
・品川女子学院を都内屈指の人気校に育てた漆紫穂子さんに、組織変革の軌跡を

それぞれお話いただきます。


3)思考と発想の方法論
仕事をする上でのコツ、勘どころ=方法論について考えようという人気シリーズ。
今期も思考、発想、表現法、コミュニケーションと多彩なテーマで、大活躍している方々をお呼びします。

・和田中学校の改革を経て、大阪の公教育変革にも挑戦する藤原和博さんに、「つなげる力」の重要性を
・日テレで大ヒット企画を生み出してきた五味一男さんに、誰にとっても有効な「メガヒット理論」を
・文章表現のスペシャリスト山田ズーニーさんに、こころを揺さぶる文章を書くコツを
・アサーションの専門家森田汐生さんには、上手なNoの伝え方を
・広告界のカリスマ箭内道彦さんには、サラリーマンへの熱いエールを

それぞれ紹介していただきます。


4)日本の歴史と文化
社会がグローバルになるほど、日本とは何か、日本人とは何かを明確に意識することが求められます。当たり前のように見過ごしてきたもの、深く考えずに置き去りにしてきたものの中に、日本の歴史と文化の真髄が隠されています。

・テレビでもおなじみ博覧強記の知の巨人荒俣宏さんには、博物学について
・仏教ルネッサンスを主張する宗教学者の上田紀行先生には、生きる意味と仏教への期待を
・江戸文化を紹介してきた山本博文先生には、徳川将軍と大奥について
・日本近現代史で数多くの著述を残してきた保阪正康さんには、昭和史と日本人論を

それぞれお話いただきます。


5)知を楽しむ
功利や便益のために知識を得るのではなく、知ることそのものを楽しむこと。それが豊かで深い教養につながります。文学・芸術から動物生態学、宇宙論まで、さまざまなジャンルの専門家から奥深い知の世界の入り口を紹介してもらいます。

・詩人の谷川俊太郎さん、覚和歌子さんのお二人から、朗読と語りを通して「言葉の力」を
・テレビでもおなじみの作曲家三枝成彰さんがライフワークとして取り組むオペラの魅力を
・サル学の専門家、京大の山極寿一先生が、ゴリラの生態からみる暴力の本質を
・作詞家として、作家として頂点を極めたなかにし礼さんが人生を変えたゴーギャンとの出会いを
・宇宙論の第一人者、東大の佐藤勝彦先生が、壮大で深遠な宇宙の歴史と未来を

それぞれお話されます。