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第20回(7/15) 長瀬勝彦さん

第20回(7/10)の講師は、首都大学東京 大学院教授の長瀬勝彦先生です。

「意思決定」というと、何か重要で特別のことを決めることのように思えますが、実は、私達の日常の生活や仕事は意思決定の連続です。
・朝出かける時に傘を持って出ようか、よそうか。
・きょうは、どの仕事からまず片付けようか。
・昼飯は何にしようか。
・こんどの会議での上司への報告はどんな言い方をしようか
・新しい携帯はどの機種にしようか etc

誰もが経験しているこれらの日常的な意思決定と、企業買収の価格決定などの戦略的な意思決定は、実は、まったく同じメカニズムで行われており、またどんなに冷静に、論理的に考えようとしたところで、ある一定に認知的な歪みにとらわれてしまう点でも同じです。

長瀬先生は、この意思決定の実際を、経営学のフィールドで研究している数少ない研究者です。
岩手は遠野のご出身で、派手ではないけれど、誠実で粘り強く、相手に信頼感を与えてくれる穏和な雰囲気の先生です。

「この講演では、最新の心理学や脳科学の知見を引きながら、働く人の意思決定について考えていきます」とのこと。

人間は間違いを犯すものだという前提に立って、その間違いを出来るだけなくすためにはどうすればよいかを考えていただければと思います。

第19回(7/7) 冨田勝さん

第19回(7/7)の講師は、慶應SFC教授の冨田勝先生です。
冨田先生は、慶應が山形県鶴岡市の協力を得て開設した先端生命科学研究所の所長を務めていらっしゃいます。
この研究所は、最先端のバイオテクノロジーと ITを駆使した新しい生命科学のパイオニア的研究拠点として、2001年に設立されました。
この研究分野を学術的には「バイオインフォマティックス」と呼ぶそうです。
例えば、ある細胞のメカニズムを全てコンピュータ言語で記述すれば、コンピュータ上に疑似細胞を再現することができます。その疑似細胞に、あるウイルスを投与し、細胞がどのような時間経過で、どう変化していくのかをシミュレーションすることで、新薬の開発や治療法の開発に貢献できるわけです。

もともとは、情報科学の研究者として海外でPhdまで修得した冨田先生ですが、その後バイオインフォマティックスを専門分野に定め、SFCで教鞭を取りながら、医学博士を修得してしまったという恐るべき先生です。

山中伸弥先生のiPS細胞の研究が、皮膚から他の器官を作製するのに対して、人間を人間たらしめているDNA情報を、ITを使ってコンピュータ上で再現しようというのがバイオインフォマティックス研究になります。

現在は、がんやアルツハイマーの早期発見技術や、光合成で大気中の二酸化炭素を軽油に変換してくれる究極のエコ微生物「オイル生産藻」など、現実の人間社会の問題を解決するために実用研究に積極的に取り組んでおり、その最新情報もお話いただけるとのこと。
是非、山中先生や福岡先生の講演とセットで聞き比べて欲しい講演です。

第18回(7/4) 瀬名秀明さん

第18回(7/4)の講師は、東北大学特任教授で作家の瀬名秀明先生です。

1995年,27歳の時にSFホラー小説「パラサイト・イブ」を書いた瀬名先生。本はもちろんのこと、映画やゲームにもなって、生命科学ホラーの新境地を開拓しました。

実は、その時は東北大大学院の博士課程に在籍中で、まもなく薬学博士号を修得し、作家と研究者の二足の草鞋で活躍されてきました。

2006年からは東北大の機械系の教授に就任し、現在はロボット研究に携わっています。
鉄腕アトムが生まれて50年。ホンダのアッシモやトヨタのパートナーロボットに代表されるように、アンドロイド型ロボットの実用研究は大きな進歩を遂げてきました。

ロボットに出来ること、ロボットだからこそやれること、ロボットと人間の役割分担等々、ロボットの未来には大きな夢が広がります。

作家として、科学を題材に空想の世界を創造してきた瀬名先生が、ロボットを通して、リアルな世の中にどのような創造力を植え付けようとしているのか、興味が尽きません。

第17回(7/1) 本田由紀さん

第17回(7/1)の講師は、東大大学院准教授の本田由紀先生です。

ニートに代表される若者の就業問題に対して、教育社会学の立場から、切れ味鋭い論評を発表してきた本田先生。
いまの若者には意欲がない、夢がない、辛抱が出来ない等々、大人にとって都合のよい指摘が蔓延している中で、「何が彼らをそうさせたのか」を、あくまでも客観的なデータに基づいて発言してきました。

本田先生は、ニート問題の背景に、日本が「ハイパーメリトクラシー」社会に入ったことをあげています。
学歴や知能指数といった測定可能な実績をもとに構成された実力主義を「メリトクラシー」といいますが、それに「ハイパー」という言葉が付く所以は、従来の実力主義に加えて、人間力、やる気、生きる力といった抽象的で、測定不能な能力が重視される傾向のことです。
これを「ハイパーメリトクラシー」と本田先生は呼んでいます。

重要だと叫ぶ側の人間でさえ、わかりやすく説明することができない、これらの曖昧な能力概念。
その存在が評価される側の若者を苦しめ、不安にさせ、あきらめや無気力を増長しているというわけです。

実務家の立場からは、「ひと言いたい!」と思われる方も多いと予想されるこの見解。
本田先生と建設的な議論ができればと思います。

第16回(6/27) 福岡伸一さん

第16回(6/27)の講師は、青山学院大学教授で分子生物学者の福岡伸一先生です。

狂牛病問題に対して確固たる知見を持っており、知る人ぞ知る存在であった福岡先生の名を一躍高めたのが、昨年出版された「生物と無生物のあいだ」でした。
ネーミングの妙もあって、科学をテーマにした啓蒙書としては異例の50万部のベストセラーになったと聞いています。
昨年夏に、この本を読んだ時には、その内容もさることながら、読者を惹きつける文学としての完成度の高さに驚きました。

かつて三島由紀夫は「小説とは何か」の中で、柳田国男の「遠野物語」の一節を激賞し、これぞ小説であると喝破しました。民俗学の泰斗であった柳田が、実は優れたストーリーテラーであったことを指摘した一文として、よく知られるところです。

分子生物学という、およそ文学とがかけ離れたサイエンスの世界にいる福岡先生ですが、実は、作家顔負けの卓越した「書き手」でもあるようです。

ウィルスの発見やDNA塩基列のらせん構造の発見など、一般人には縁の遠い科学史の一端を分かりやすい文章で繙きながら、「生物とは何か」という命題に挑んできた多くの科学者の功績や愛憎・悲劇を語っています。
自らも彼ら(挑戦する科学者)の一員である福岡先生が記す淡々とした文章には、日の当たらない地下室で、黙々と顕微鏡を覗き続ける科学者への、強い愛惜の思いが込められていると感じたのは私だけではないと思います。

今回の講演は、「生命観」がテーマです。
生命とは、数多くのパーツを精緻にくみ上げた高度で複雑な造形物である、とするステレオタイプの生命観に対して、生命とは、パーツそのものが常に生まれ変わりながら、ダイナミックな流れの中に存在する動的なものだ、という新たな生命観を説明してくれるそうです。

この世に存在する全てのものは「無常」=常ならぬものである、とみる仏教的な世界観が、分子物理学の最先端の知見と一致するという話は、玄侑宗久さんや竹内薫さんも触れていましたが、福岡さんはどのように語ってくれるのか、とても楽しみです。

第15回(6/19) スコット・キャロンさん

第15回(6/19)の講師は、いちごアセットマジメント代表のスコット・キャロン社長です。

社名の「いちご」は「strawberry」の意味ではありません。
「一期一会」という言葉に由来しているそうです。
投資会社の外国人社長と聞くと、「ハゲタカ」という言葉を連想してしまいますが、在日18年で日本国籍を持ち、日本語ペラペラのスコット氏のスタンスは、日本企業を買いまくる某外資系投資会社とはまったく異なります。

成熟期を向かえた日本の将来のためには、健全な投資市場の育成と日本経済のためになる企業の育成が必須と考えて、企業と積極的な対話を指向する投資姿勢を明確にしています。

自称「もの聞く株主」

規模の小さなファンドではありますが、日本株投資に特化した独立系の投資顧問会社として、ユニークな活動をされています。
外国人による、ニュートラルな日本のマーケット論をお伺いできればと思います。

わかりにくい安政時代 『海舟がみた幕末・明治』(第二回)

夕学プレミアム『海舟がみた幕末・明治』は21日(金)に第2回が行われました。
きょうのテーマは、「安政の大獄」です。
NHK放送文化賞の授賞式から駆けつけた半藤一利さん。
「きょうは、幕末で一番面白くない時代の話をします」と前置きしながら、いつものべらんめい調で講義が始まりました。

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幕府は予期していたはずにも関わらず、なんら対策を打っていなかったペリーの来航。
2度目の来航があった安政元年(1854年)の三月に日米和親条約が結ばれ、日本は新しい時代に船出することを余儀なくされました。
先延ばし戦術を取りながらも、なんとか混乱をさばいてみせた老中 阿部正弘は心労がたたって退任。幕府・諸藩・公家の混乱はピークに達します。

安政の年号は1859年まで約6年間続きますが、この時代は、「幕末で最も面白くない時代」(半藤先生談)とのこと。
言い換えれば、最もわかりにくい時代ということでもあります。
幕末・明治史は、「攘夷」か「開国」か、「討幕」か「佐幕」か、「富国強兵」か「征韓」かというように、明解に対立軸が語られる二元論に魅力があります。
それに対して、この6年間は、対立軸が複雑に錯綜しているところが「わかりにくさ」の理由です。

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第14回(6/16) 西尾久美子さん

第14回(6/16)の講師は、この4月から京都女子大学准教授に就任されることが決まった西尾久美子先生です。

西尾先生は、京都で数代続いた米穀商の家に生まれました。
就職・結婚・出産・離婚を経て、一念発起で大学に入り直し、神戸大大学院でMBAを修得、遅咲きの研究者としてスタートを切りました。

しかしながら、京都で生まれ育った経験と多彩な人生体験を活かし「京都花街」を研究対象に選定、そのユニークな視点と積極果敢な行動力は、学会で注目を浴びています。

著書『京都花街の経営学』はビジネス書としては異例の販売部数を記録し、講演会等でも多忙な日々を送っていらっしゃいます。

講演依頼のメールに対して、ご快諾の返事とともに、「着物で登壇します」とのお約束(?)もいただきました。
今回の講演では、「日本の伝統的な文化産業である京都花街の強さを経営学的視点から解き明かしながら、風土・伝統の継承の重要性についても考えます」とのこと。

京都が好きな方、花街に興味がある方、伝統産業に生きる方、人材育成に携わる方などなど、いろいろな方に聞いていただきたい講演です。

第13回(6/13) 出井伸之さん

第13回(6/13)の講師は、クオンタムリープ代表の出井伸之さんです。

90年代半ばから2000年代の半ばまで、ソニーを率いて、復活、絶頂、転換という激動の10年を経験した出井さん。社名ではありませんが「クオンタム=非連続」の時代をソニーのトップとして生きてこられたわけです。

CEOを退任されて以降お書きになったいくつかの本には、そんなソニー時代の様子が,かなりリアルに書かれていました。
私が印象に残ったのが、「どの睡眠導入剤が一番いいか」という話題で、ジャック・ウェルチと異様に盛り上がったという逸話でした。
グローバル企業のトップという仕事が、如何に激務だったのかが、ひしひしと伝わってきた記憶があります。

出井さんは、現在、クオンタムリープで、ポスト資本主義モデルの発信を目指しています。

戦後のジャパニーズドリームの代表企業であるソニーで一時代を築いた経験と、世界に広がる人的ネットワークを活かし、新たな時代のかたちと日本の将来を見据えていることと思います。

第12回(6/10) 山折哲雄さん

第12回(6/10)の講師は、宗教学者で、前国際日本文化研究センターの山折哲雄先生です。

宗教学、思想史を専門とされ、親鸞、蓮如、道元など、民衆に分け入った中世仏教指導者の研究書や、霊魂観、死生観など、日本独特の精神世界を一般の人に向け分かりやすく解説する著作も多数書いていらっしゃいます。

『文明の衝突』の中で、ハンチントンは、宗教を共通基盤とする分類軸を用いて、世界を8つの文明に切り分けました。彼によれば、日本は「日本文明」という独自の文明を形成していると言います。

しかしながら、日本には、体系的な教典を持つような宗教は発生せず、仏教、儒教、キリスト教等々外国からもたらされたさまざまな宗教を独自に発展・融合させてきたことに特徴があります。

日本という自然、文化、風土、社会の中で、宗教はどのように成り立ち、広まり、伝承されてきたのか。
山折先生は、それを研究してこられました。

今回の講演タイトルは「日本人のこころ」です。
西行、芭蕉、良寛という、3人の宗教家、文化人の生き方を通して、人生80年時代を生きるための知恵を語りたいとのこと。

乞うご期待です。

天理にそむく罪 『海舟が見た幕末・明治』第一回

「夕学五十講」から生まれた新企画 夕学プレミアム 半藤一利 史観『海舟が見た幕末・明治』(全10回)がはじまりました。
「夕学五十講」と同様にブログでその概要をご紹介していきます。
きょうは、その第一回「ペリー来航 ~“終わりの始まり”告げる号砲」からです。


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東京湾を地図で見るとお酒の徳利をひっくり返した形をしています。湾岸の埋め立てがはじまる前は、今よりも徳利のお腹の部分がはっきりとした形状でした。
口元のくびれた部分、東京湾の一番狭いところを、東京湾フェリーが就航しています。三浦半島の久里浜港と房総の金谷港を35分間で繋ぐ高速フェリーです。
久里浜側のフェリー乗り場のすぐ横、小さな白い砂浜に面して、ペリー公園があります。

嘉永6年(1953年)の6月9日(太陽暦で7月18日)、この地にペリー提督率いる米国海軍の小隊が上陸したことを記念して作られた小さな公園です。
公園の真ん中には、伊藤博文の筆になる「北米合衆国水師提督伯理上陸記念碑」と刻まれた大きな石碑が建立されています。
東京湾に直面し、周囲を睥睨するような威圧的な姿は、150余年前にペリーが見せたという尊大な交渉態度を彷彿させるものがあります。

夕学プレミアム 半藤一利 史観『海舟が見た幕末・明治』は、ペリー来航から西南戦争に至るまでの、幕末・明治の激動の時代を舞台に、作家の半藤一利さんが全10会合で語り下ろす連続歴史講義です。
第一回目は、上記の上陸日をはさんで、ペリー艦隊が浦賀沖に姿を見せた6月3日から、目的を達成して揚々と引き上げていった6月12日までの、9日間の混乱の様子が語られました。
半藤さんの名を高めた名著「日本の一番長い日」流に言えば、「徳川幕府の一番長い9日間」と言えるのかもしれません。
歴史の教科書では、「1953年、浦賀に黒船が来航する」と一行で終わる事件ですが、この9日間から日本の近代がはじまる、大きな出来事でした。

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第11回(6/9) 佐藤悦子さん

第11回(6/9)の講師は、SAMURAIマネージャーの佐藤悦子さんです。

佐藤悦子さんは、いまをときめくアートディレクター佐藤可士和さんの奥さんであり、マネージャーです。
ご主人が奥さんのマネジメントやプロデュースをする例はよくありますが、奥さんがダンナのマネジメント&プロデュースをやるという例は珍しいですね。司馬遼太郎の奥様 福田みどりさんが、担当編集者から奥さんに転身し、司馬を陰から支えた話を思い出します。

さて、佐藤夫妻は、博報堂でクリエイターと営業という関係で出会ったのがきっかけだったとか。
可士和さんは、若くしてホンダステップワゴンやSMAPのプロモーションなどを担当して脚光を浴びた才能豊かなクリエイターで、独立後も、ユニクロ、明治学院大学、国立新美術館など話題の企業や施設のブランディングやデザインを手がけています。
その可士和さんをプロデュースするのが、悦子さんです。
昨年『SAMURAI佐藤可士和のつくり方』という本をだし、その活動の様子を披露されました。

デザインの力を信じ、デザインを通した企業イメージ向上、組織変革、社会提言を指向していると思われる佐藤可士和さんと、夫の才能と志を最大限活かすフィールドを探し、夫の主張を広く社会へ届けようとする佐藤悦子さん。

お二人の二人三脚の軌跡は、互いを高め合う夫婦の理想像を表現してくれるかもしれません。

第10回(5/29) 野田稔さん

第10回の講師は、多摩大学大学院教授で、ジェイフィール社長の野田稔先生です。

慶應MCCでは、「変革の時代のリーダーシップ」「人事プロフェッショナル養成講座」の講師として人気を集める野田先生。

野村総研のトップコンサルタントを経て、リクルート社のフェローやワトソン・ワイアット社の社外役員を務めるなど、研究と実践の両方を究めた「行動する経営学者」であります。
昨年は、自ら人材開発コンサルティング会社「ジェイフィール」を起業し、「感情ルネサンス」を合い言葉に、暖かい組織感情の再生を目指してコンサルティング活動も行っています。

今回は、いま、なぜ「感情ルネサンス」なのかを中心に、豊かな組織感情がもたらす意味を企業と個人の双方からの視点でお話いただければと思っています。

第9回(5/28)小笠原継承斎さん

第9回(5/28)の講師は、小笠原流礼法宗家の小笠原継承斎さんです。

小笠原流礼法とは、室町時代から連綿と続く「日本の伝統的コミュニケーション体系」だそうです。
弓、馬などと並び「武家のたしなみ」として生まれた礼法。
供奉、食事、宮仕えや応対の仕方から書状の様式、蹴鞠など武士の一般教養として体系化されたものだと言います。

質実剛健を尊び、合理性を旨とした武家のコミュニケーション作法を、現代社会の礼儀作法として普及しているのが、小笠原流礼法です。

トヨタがレクサスを日本に導入した3年ほど前に、レクサスディーラーのサービス研修として用意されたのが、リッツカールトンの体験研修と小笠原流礼法研修だったと聞いています。

小笠原継承斎さんは、はじめての女性宗家として、門外不出の伝書を元に、現代の礼法にアレンジして、その精神と技法を伝えています。

およそ全ての「型」というものは、先人の知恵と工夫が凝縮された、最も普遍的で合理的な到達点です。
小笠原礼法にも、相手を大切に思う心を伝える、古き良き武家の伝統がこめられていると思います。

第8回(5/20) 星野佳路さん

第8回(5/20)の講師は、星野リゾートの星野佳路社長です。

100年前、軽井沢の開拓と同時に創業した老舗旅館 星野温泉。
その三代目として生まれた星野さんは、コーネル大学大学院でホテル経営を学び、紆余曲折を経て、家業を継ぎました。
リゾート法が施行され、大手資本による大規模リゾート開発の波が押し寄せる中で、星野さんが取った戦略は、老舗旅館を先端的なリゾートビジネス会社星野リゾートに業態転換することでした。
これが大当たり、次々とユニークな高級リゾート施設を開業し、大反響を呼びました。

星野さんは、自社のリゾート開発に留まらず、リゾート再生ビジネスに着手します。
自らのノウハウを体系化し、リゾート運営に特化した「リゾート運営の達人」というコンセプトを掲げ、赤字に悩む各地の老舗旅館やホテルの再生に関わっています。

ともすれば「伝統」「格式」を言い訳にして、革新に背を向けることが多い老舗旅館の経営に、星野さんは、リサーチに基づいた科学的な経営管理手法を導入します。
一方で、従業員の創造性やコミットを産み出すためのモチベーションにも気を配り、リゾート再生を通じて、人材を育てることにも注力しています。

リゾート再生にかける星野さんの戦略をお聞きしたいと思います。

第7回(5/19) 天外伺朗さん

第7回(5/19)の講師は、元ソニー上席常務で、作家の天外伺朗さんです。

天外さん(本名:土井利忠氏)は、ソニーのエンジニアとして、また開発マネジャーとして、CD、ワークステーション、AIBO等々の開発に携わってきた方です。

ソニー創業者の井深大氏が書き起こしたというソニー設立趣意書には有名な一節があります。

「真面目ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」

井深さんの薫陶を受けた最後の世代でもある天外さんは、さしづめ上記の理想を体現してきた「ソニーのサムライ」のお一人でもあります。

今回の講演は、天外さんのソニーでの体験をベースに、深層心理学やトランスパーソナル心理学の知見を盛り込んだ、天外さん独自の人材マネジメント論です。

宇宙、超能力、気の力などにも造詣が深いという天外さん独特の世界観は、ちょっと冒険心のある方におすすめです。


第6回(5/16) 山中伸弥さん

第6回(5/16)の講師は、京都大学 iPS細胞研究センター センター長の山中伸弥先生です。

iPS細胞とは、神経や心臓の筋肉などさまざまな細胞に変化できるヒトの人工多能性幹細胞のことです。
iPS細胞のように、さまざまな細胞に変化する機能を持つ細胞を「万能細胞」と呼び、ここ数年世界中で研究が進められてきました。
有名な「ES細胞」も万能細胞のひとつですが、こちらは、受精卵から作製しなければならなかったことから、倫理上の問題が指摘され論議を呼んできました。

iPS細胞は、皮膚などから作成することが可能で、倫理上の問題をクリアできることから、世界中から注目されている最先端の研究分野とのこと。

山中先生は、昨年秋に、世界ではじめてヒトのiPS細胞を作り出すことに成功し、一躍「時の人」となりました。
iPS細胞の研究が進めば、ケガや病気で身体を損傷した方の再生医療に大きな可能性が開けるでしょうし、人工的に心臓や肺などの臓器を作ることが出来れば、新薬の臨床実験なども飛躍的な進歩が期待できます。
世界中の人々が待ち望んでいる研究といって良いかも知れません。

山中先生の発表をきっかけに、政府もiPS細胞の研究支援に乗り出しました。
京大にiPS細胞研究センターが設置され、2009年には5階建ての最先端の研究拠点が出来るそうです。東大や慶應など他大学との研究連携も一気に動き出しました。
国をあげて研究を推進する環境が整いつつあります。

山中先生は、もともとは整形外科医として医療の最前線に立っていた医師です。
臨床の現場で、リュウマチや手足の変形に苦しむ患者の姿に直面し、抜本的な治療法の必要性を痛感して、基礎研究に転身をしたという経歴の持ち主です。

iPS細胞の研究は、山中先生にとって、知的好奇心から選んだ研究対象ではなく、現実の問題を解決するための、強い使命感に突き動かされて取り組んだスピリチュアルな仕事なのかもしれません。

第5回(5/13) 勝間和代さん

第5回(5/13)の講師は、経済評論家の勝間和代さんです。

「いま最も本が売れる書き手」と称される勝間さん。大きな書店には、勝間本コーナーが設置され、何冊もの著書が平積みになっています。
昨年出した4冊の単著は、いずれも10万部を大きく超えるベストセラーになりました。
「時の人」と言ってよい勝間さんですが、そのキャリアを拝見すると、一層の興味関心をそそられます。
慶應在学中に当時最年少で公認会計士の資格を取得。21歳の時には最初のお子さんを生んで、外資系コンサルファーム金融機関に務めながら、合計3人のお子さんを育て上げました。
子育てしながら働く女性のコミュニティサイトの草分けと言われる「ムギ畑」を創設し、ソーシャルな活動でも輝いてきました。

資産活用、情報収集、時間管理術といったライフスキル、ビジネススキルは、昔もいまも数限りなく本が出て、いろいろと啓蒙されてきましたが、勝間さんの本には、限られた時間で最大限のパフォーマンスを出し、なおかつ自分自身の生活を充実させてきた、「筋金入りの実践家」ならではの迫力があります。

いま一番輝いている女性 勝間和代さんが語る「金融リテラシーのすすめ」 必聴の一講です。

第4回(4/25) 野口悠紀雄さん

第4回(4/25)の講師は、早稲田大学大学院教授の野口悠紀雄先生です。

「現在の景気回復は幻想に過ぎない」

辛口で鳴る野口さんの、日本経済への論評は実に辛辣です。
ものづくり国家という美名のもとに、工業化社会に拘泥しつづける限り、グローバルな経済システムの中で日本が生きる残る道はない。真の構造改革とは、古い産業を延命させることではなく、海外の資本を積極的に受け入れて、大胆な産業転換を行い、「脱工業化」に道筋をつけることだ。

それが野口先生の「資本開国論」です。
そのモデルが、金融国家として復活なったイギリスにあることは良く言われるところです。
イギリスに出来たことが、なぜ日本で出来ないのか。
どこまでも論理的に語り、政策の誤りを厳しく指摘し、進むべき道を明解に示す野口先生。
夕学3度目の登壇となる今回も、刺激の多い講演になるに違いありません。

第3回(4/22) 藤巻幸夫さん

第3回(4/22)の講師は、フジマキ・ジャパン副社長の藤巻幸夫さんです。
伊勢丹のカリスマバイヤー、福助を再建した熱血社長、ヨーカドーでのGMSのファッション革命への挑戦...
持ち前のバイタリティーとパッションを武器に、次々と新たなフィールドに挑んできた藤巻さん。
1月にイトーヨーカドーの役員を退任され、いまはひと息ついていらっしゃいます。
ヨーカドーの衣料品改革は、藤巻さんをもってしても一筋縄ではいかない困難なもので、まだ変革途上の認識ではあるものの、何度か体調を壊されて、志半ばで大役を辞すことになったそうです。

いまは、お兄さんの藤巻健史さんが代表を務めるフジマキ・ジャパンの副社長に座り、マーケッターの視点で、執筆や講演に注力されています。
金融とファッションというまったく親和性のない分野に軸足を置きながら、格別に仲のよい藤巻兄弟。
以外な取り合わせだからこそ可能になるイノベーションが起きるかもしれません。

いずれにしろ、藤巻さんの波瀾万丈の人生航路に、また一つ財産が加わったわけで、この経験をどのように咀嚼・消化して、ご自身のブランド化に活かしていくか。
稀代のマーケッター藤巻幸夫氏の本領発揮が期待されます。

第2回(4/14) 井上哲浩さん

第2回(4/14)の講師は、慶應ビジネススクール教授の井上哲浩先生です。
関西生まれ・育ちの井上先生。いまもご自宅は関西にあり。毎週東京-大阪を往復する忙しい日々を送っているそうです。

先日電通が発表した「2007年日本の広告費」によると、日本の広告費総額(約7兆円)はここ数年ほぼ横ばいが続いていますが、ネット広告は順調に増加し、07年には、主要4媒体のうち雑誌を抜き、TV、新聞に続く位置に上昇したとのこと。
広告に限らず、マーケティン全般において、ネットが可能にした新たなコミュニケーションの及ぼす影響は確実に増大しています。
特に、ブログの登場は、消費者側の情報発信のリーチと質を飛躍的に伸ばした一方で、大多数の消費者にとって、もっとも信頼性の高いコミュニケーションであった「口コミ」までもが、ある種の操作性のリスクに晒される時代になったことを意味します。

そんな「受け手の情報過負荷」時代の、新たなマーケティングコンセプトとして、井上先生、「オーガニックマーケティング」なる概念を提唱しています。

講演案内には、「顧客の有機性とメディアの有機性を念頭に置く」とあります。
「多様化するメディアが、受け手にとってストレスではなく、メリットになるために、その人にあった、有機的なメディアの使い方を、マーケティングサイエンスを駆使して可能にする」
そんなお話が伺えるものと思います。

第1回(4/10) 高橋俊介さん

2008年前期  第一回目の夕学は、慶應SFC教授の高橋俊介さんです。
思えば、1995年に高橋さんが書いた『自由と自己責任のマネジメント』という本は衝撃的でした。
「激変する環境に適応するために、"企業と個人”の関係も市場原理型に変わるべきだ。企業で働くということは、会社に対して、報酬に見合う成果をだす旨の契約をすることと同義だ。そこにはプロとしての責任と自律性が求められる」
高橋さんはそう啓蒙をしました。
私は当時から、研修や人事制度にかかわる仕事をしていましたが、あの本と相前後するように、日本企業の人材マネジメントの潮流が変わっっていったことを実感として体験しました。
口の悪い人は「成果主義のグル」などと揶揄する人もいるほどでした。
それほどの影響力だったということでしょう。

あれから10年以上が経過し、高橋さんの指向と関心の変遷は、そのまま日本企業が直面してきた人材マネジメント課題と相似形をなしていると思います。
「キャリアショック」から「スローキャリア」、そしてライフキャリアインテグレーションやダイバシティへ。
自律した個人に自由な選択と意思決定の権利を与えることと組織全体のパフォーマンスを向上することを統合するためには、会社は何をするべきか、個人はどうあるべきか。
それを考え続けているのではないでしょうか。

それは、高橋さん自身が「こうありたい」という生き方であり、「こうあって欲しい」という人材マネジメントのあり方だと思います。

高橋さんの語る「これからの働き方」に、日本の組織と個人のネクストステージを見つけることができればと思います。