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「儲けの構造」を競い合う時代 山田英夫さん

「企業の目的は顧客の獲得と維持である」

かつてドラッカーはそう喝破しました。
いまなら株主至上主義を主張する論者もいるでしょうし、企業の社会的責任を声高に訴える人々もいるかもしれません。
しかしながら、今も昔も、企業の活動目的のド真ん中に「どうやって儲けるのか」という課題が存在することは間違いありません。
山田先生は、そのド真ん中の課題に真っ向から切り込み、シャープで切れ味の鋭い解説を加えてくれました。

山田先生は、まず「儲けの構造」=ビジネスモデルをシンプルに説明されました。

誰に、どのような価値を提供するか

そのために、内外の資源をどう組み合わせるか

この二つの組み合わせの巧拙が、ビジネスモデルの良否、つまり「儲かるか否か」を決めることになります。

ビジネスモデルの良否は、環境変化に応じて変わります。
技術革新や規制緩和は、従来成功していたビジネスモデルの陳腐化や、非効率化を促進することがあります。
かつては、たて型の事業構造にせよ、横型のプロセス構造にせよ、川上から川下まで、一気通貫式の総合型のモデルが王道でした。
総合型が、最も効率良く、また柔軟な顧客対応が可能になるからでした。
しかし現在では、その構造が崩れ、基幹部品やコアなプロセスでさえ、外部化した方が儲かる時代になってきました。

業界、業種を一括りにする時代はすでに終焉し、同じ業界・製品であっても、「儲けの構造」は大きく異なるようになったと山田先生は言います。

例えば、デジタルカメラを例にとれば、
デジカメという製品だけを見れば同じでも、現像で利益を上げようとしている富士フイルム、プリントアウトに必要な消耗品に利益の源泉を置くキャノン、PCに繋げて編集・加工してもらうところに強みを出そうとするソニー、といったように競争の実相はまったく異なります。
デジカメという製品の競争ではなく、どこで儲けようとするかを競うビジネスモデルの競争が起きているというわけです。

では、どうすれば儲かるビジネスモデルを作れるのか。
山田先生は、4つの入り口で選択と集中を考えることだと言います。

1.何を自社で持つべきか
「よく使うから」「コアな部分」だから自社で抱えるという発想は変えるべきである。

2.どこで差別化するか
なんでも他社と差別化をしようとしても無理。差別化する部分と標準化で済ます部分の切り分けの妙が重要である。(顧客に見える)品揃えは同質化したままで、(顧客には見えない)基幹システムを独自開発した大手銀行は悪い例。

3.オープンとクローズドの組み合わせ方をどうするか
オープンによる市場拡大とクローズドの収益確保を同時に追える土俵をつくること。
スイカとパスモの連携はその好例。

4.継続的に儲ける仕組みにできるか
本体売り切り型ではダメ。継続的に利益が取れる補完財をセットしておくこと。
全国百貨店商品券のクリアリング業務のように、ジレットモデルはサービス業にも適用できる。

いずれの場合も、競争優位はどこに(何に)あるかを見極める冷静な視点と、業界常識にとらわれない柔軟で大胆な決断がポイントになるそうです。
ビジネスモデルの良否は、モノの見方・考え方の柔軟性にかかっていると言っても過言ではないのかもしれません。

山田先生は、最後に現在進行形の新たな切り口として、「無料ビジネス/有料ビジネス」を取り上げました。
リナックス、グーグルに代表されるWEB世界に勝ち組は、いずれサービスの受け手やユーザーに課金するのではなく、より多くのユーザーを獲得することで発生する別の価値に着目し、そこから利益を上げています。
「グーグルの広告モデルはテレビと同じ20世紀型」と切り捨ててしまう人がいますが、
グーグルを広告モデルと考えるのではなく、ユーザー増大で生まれる新たな価値の販売と考えれば、発想が広がっていきます。

山田先生は、「ビジネスモデルで勝った企業は、新たなビジネスモデルに駆逐されるリスクもある」と言います。
儲けの構造が変わる時代は、新たなプレイヤーが次々と生まれるエネルギッシュな側面がある一方で、勝ち組の既得権が長続きしない、緊張感の溢れる厳しい時代でもあります。

「他社が新たなビジネスモデルを作るまえに、自分自身の手でビジネスモデルを変えていくことが必要である」

山田先生が質疑応答の中でおっしゃった言葉が印象に残りました。