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考え続けるエネルギー 「創造的なこころ」 安藤忠雄さん

「5,000円もとってるの。ぼったくり商売やな」控室で夕学のパンフレットを見た安藤さんにいきなり言われてしまいました。つづいて、「よし、○○くんの講演に何人来るかあててみせよか」と言って愉快そうに講師の名前の横に数字を書き込みはじめました。しかも、それがあたってるんです。あげくには「こんなことしていたら時間がもったいない。本にサインでもしよか」と席を立ち、気づいたらロビーでにこやかにサインをこなしています。
こんな感じで、完全に安藤さんのペースに巻き込まれながら講演は始まりました。

お話は、大阪人らしいユーモア満点の展開です。それでいて、安藤さんが建築家としてどう生き、何を考え、誰と交流してきたのか、そして建築を通して何を表現しようとしているのか、熱い想いがビンビンと響いてきます。「創造的なこころ」というきょうの主題に随所で触れながら、私たち日本人の生き方に厳しい指摘も忘れません。

私が強く印象に残ったのは、「創造的なこころとは“考え続けるエネルギー”だと思う」という言葉でした。安藤さんは、ちょっとした空間や古くなった建物に出会うと、そこにはどんな建築がいいのかを常に考えるのだそうです。時には頼まれもしないのに、オーナーに提案することもよくあるとのこと。
安藤事務所のスタッフに対しても、まず「お前はどう考えるのか」を厳しく問いかけるのだそうです。人に意見を求める前に自分の意見を考えること、それも思いつきでなく、根拠や理由を伴った論理的なものであること、その姿勢がクリエイティブマインドの大前提ということでしょう。私たち日本人に向けられている教戒であったのかもしれません。

また、安藤さんのお話を聴いて、キャリア論で語られる「Planned Happenstance(計画的偶然性)」という言葉を思い出しました。人生とは、あらかじめ設計図を描いて、その通り進もうとしても、思い通りにはいかない。偶然の積み重ねで構築されるものだ。しかし偶然が起きる確率を高めるための行動をすることは出来る。簡単に言うと、そういう考え方です。
家庭の事情もあって大学進学をあきらめ、独学で建築の道に進もうと決意した10代の安藤さんは、徒手空虚のまま世界一周の旅に出ます。旅先で目にしたさまざまな建築や事象に「なぜか」「自分ならどうする」という問いを繰り返したことが安藤さんの原点だったようです。頼まれもしないのに図面や模型を作って提案に行くという行為も同じです。一見非効率な行動の連鎖が、斬新なアイデアのストックを生み、生涯の支援者との出会いと交流を実現し、結果として多くの建築へと結実していったのではないでしょうか。
大きな方向性が定まったら、あれこれと細かいことにこだわらず行動してみること、それが道を切り拓くのだと改めて思いました。

「また呼んでくださいね。いつでも来ますから」そうおっしゃって、のぞみの最終電車に飛び乗ってお帰りになった安藤さん。主催者が言うのも変ですが、5,000円の価値は十分にあった講演でした。

最後に、いま安藤さんが注力している「瀬戸内オリーブ基金」の趣旨に賛同し、夕学の場を活用させていただきました。多くの募金が集まったようです。印税が「瀬戸内オリーブ基金」になる「建築を語る」「連戦連敗」もたくさん売れました。この場をお借りして御礼申し上げます。

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