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時代を越えた普遍の真理を学ぶ 「変貌するビジネスシステム」加護野忠男さん

経営学者の中で“西の重鎮”と称される加護野先生。けっして難しい言葉は使わず、ユーモアたっぷりに、絶妙の間を取った語りには、聴く人を心地よく納得させる深さを感じます。

「競争原理の導入」「イノベーションの創出」「オープンネットワーク」など、多くの企業がこぞって取り組む経営コンセプトがあります。そして、それらを持続可能なシステムとして構築するために、さまざまなアプローチがなされています。加護野先生は、先端的ビジネスコンセプトを根づかせるためのヒントは日本の伝統システムの中に織り込まれていると主張します。

京都の特徴である閉鎖的・排他的な文化風土が、実は京都企業特有の革新性を産み出したのではないかという解釈。灘の酒蔵と丹波杜氏の関係はコア技術の外部化による品質維持・技能継承システムと理解できるという解説。東大阪の中小製造業には、力のない企業がつぶれる一方で、細胞分裂のように新興企業が発生する健全な競争原理が機能してきたという認識。いずれも、それぞれの地域の文化特性を土壌にして育った伝統システムですが、見方を変えれば、多くの大企業が必死で模索している先端ビジネスコンセプトの成功事例だというわけです。

伝統システムの中から先端システムに活用できるヒントを見つけ出すために、“夜学”の効用を説かれたことも夕学担当者としては嬉しいことでした。松下幸之助、本田宗一郎、中内功に共通したことは、起業後に夜間大学で学んだことだそうです。加護野先生は、「経営学の授業は全部忘れたが、日本国憲法に授業が面白かった」という中内さんの言葉を紹介しながら、「彼らが夜学で学んだことは、実務知識や専門技能ではなく、基礎科学や古典を通して、時代を越えて生き残った普遍の真理を学び取る力だったのではないか」と推察しています。

「夕学五十講」は、“時代の潮流と深層を読み解く”ことをコンセプトにしていますので、基礎科学や古典をテーマにすることはありません。しかし経営やビジネスのみならず、政治、文化、スポーツなど各領域の第一線で活躍する識者の言葉や論理を通して、業種・業界を越えた共通原理のようなものを掴んでもらえるのではないでしょうか。

「今度は、経営学者じゃあなくて、文学や歴史の先生を呼んだらどうですか」
講演終了後、愉快にそうお話になりながらホテルに帰っていかれました。

京都の革新性については「むろまち」という小説がよいそうです。
古典を通して普遍の真理を学ぼうという方には、講演で紹介された次の2冊はいかがでしょうか。「>文明論の概略を読む」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神


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伝えたいという心が力の源泉 「芸術の力」千住博さん

ニューヨークにアトリエを構え年間300日を海外で過ごす千住博さん。今回の帰国はわずか一週間だそうです。一昨日ミラノから帰り、昨日は名古屋、週末には福岡、東京でも分刻みのスケジュールをこなすとのこと。そんな多忙な中にあって「今回はこの講演を中心に予定を組みました」と言っていただきました。感謝の気持ちで一杯です。

慶應義塾の塾監局の応接室には、千住さんに寄贈いただいた絵画が飾られています。日吉の大イチョウをモチーフにしたその絵を見る度に、「いつか夕学に来て欲しいなあ」と思っていました。間に立っていただいた多くの皆さんのご尽力もあって、念願がかないました。そして期待に違わぬ素晴らしい講演になりました。

「芸術とはコミュニケーションである」という言葉から講演ははじまりました。内面から沸き起こるイマジネーションを他者にどう伝えていくか、そのための創意工夫のプロセスが芸術活動であり、「伝えたい」という想いの強さこそが、優れたアートを産み出す源泉だそうです。
千住さんは自らの経験と豊富な美術史の知識を織り交ぜながら、「伝えたい」という想いを込めて語りかけてくれました。まさに「芸術の力」を体感した2時間でした。

控室でも印象に残るお話を聴くことができました。千住さんは、日本画の新しい可能性を拓くという開拓者としての使命を強く意識され、さまざまなフィールドに野心的に挑戦されています。「日本画というと保守的な世界というイメージがありますが障害はないのでしょうか」などという愚問を投げかけたところ、「真ん中を歩んできたからこそ、新しいことができるのです」とのご返答。東京芸大大学院で日本画を専攻し、現在も旺盛な創作活動を続けている“日本画の保守本流”という自負があるからこそ新たな挑戦ができるのだそうです。それは「新たな挑戦は決して伝統を壊すことではなく、日本画本来の素晴らしさを世界中に人々に伝えることに繋がるのだ」という信念を強く感じさせてくれるお話でした

最後に千住先生のこれから活動をいくつかご紹介します。
5/29まで福岡アジア美術館で「千住博展」が開催されています。大徳寺聚光院別院の襖絵全77枚を鑑賞できる初めての機会だそうです。

9月には「愛・地球博」のフィナーレイベントのアートディレクターをされるそうです。あっと驚く企画だそうですが、こちらはまだ公開はされていないみたいです。乞うご期待。

それと、「千住博美術の授業 絵を描く悦び」(光文社新書)は絶対のおすすめです。
京都造形芸術大学での講義を本にしたそうですが、ビジネスパースンが思わず膝をたたきなくなるような珠玉の言葉が一杯です。特にキャリア論に関心のある方は是非お読みください。


  講師紹介:https://www.sekigaku.net/member/detail.asp?NO=1&ID=248

“実感のはりついた知識”こそ本質  「スローキャリアのすすめ」高橋俊介さん

2005年前期の第一回目。
早々に満席マークがついて予約できなかった方も多数いると思います。本当にごめんなさい。
きょうの高橋先生の講演は、期待に違わぬ素晴らしいものでした。

夕学では2度目のご登壇ですが、高橋先生には、それ以外にも「人事プロフェッショナル養成講座」や「キャリアアドバイザー養成講座」で教壇に立ってもらっています。はじまる前に、高橋先生の講義を聴いた回数を指折り数えてみたら、なんと12回目でした。つくづく「役得だなぁ~」と思います。短い間に12回も聴けば、当然内容の重複はあるんですが、不思議なことに聴けば聴くほど納得感が高まるのです。きょうは、その理由を考えながらステージ横に座っていました。

高橋先生の話をお聴きになったことのある方ならおわかりだと思いますが、自分の言葉に置き換えた平易な理論説明と豊富な事例を、マシンガントークに乗っけて一気に語り尽くすあの話術は天下一品です。
でも、きっとそれだけが理由ではないんです。

自分の生き方・働き方を通して、強い共感と信念をもって理解したことしか話さないからではないでしょうか。いわば「実感のはりついた知識」なんですね。きょうの講演でも触れていましたが、高橋先生は、夏休みがはじまる前に宿題を終わらせる少年だったそうです。ワイアットの社長時代から、秘書は持たず雑用も全部自分でこなしてきたとのこと。その理由を動機理論に絡めて「自己管理」「徹底性」という動機が強いからだと解説してくれます。
実は、高橋先生今もそうなんです。講義を依頼すると、OKの返事の翌日には、当日の配布教材が届きます。何か問い合わせをしても、必ず期日前に返答が来ます。こんなに有り難い先生は滅多にいないんです。いつも、時間ピッタリまで、ひとりの聴衆も退席させることなく講義してさっとお帰りになります。

そんな人となりを知れば知るほど、話の内容に説得力を感じてきます。
「スローキャリア」は高橋先生自身のキャリア観の集大成なんですね。
ご自身のキャリアを語り、他の方のそれに共鳴し、響き合う中で概念が形づくられ、その概念を理論で補強し、具体的な事例に還元する。だから、何度聴いても面白い。そんな気がします。

講演内容そのものを知りたい方は、是非「スローキャリア」をお読みください。
それと、講演の中で何度もお名前の出た玄田有史先生には「仕事の中の曖昧な不安」という名著があります。こちらもおすすめです。
7/20には夕学にも登壇されますので、よろしければお越しください。

それではまたお会いしましょう。

  講師紹介:https://www.sekigaku.net/member/detail.asp?NO=1&ID=247

はじめまして! 「夕学楽屋BLOG」スタートします!!

はじめまして。
慶應丸の内シティキャンパス(慶應MCC)の城取です。

このブログは、「夕学五十講」にいらしていただいた方との距離をもう一歩縮めたいという願いを込めてはじめました。私なりの講演の感想を書いたり、控え室で交わす先生方とのやりとりの様子を紹介したり、「この先生はどうしても呼びたかった!」という企画者ならではの想いを述べたりしたいと考えています。

講演終了後、皆さんをお見送りする際に、話しかけていただくことも多いのですが、その場では時間もなくて、ゆっくりお話することもできません。また、時には、何か物言いたげにお帰りになる方もいらして、いつも気になっていました。

アンケートに書いていただいたご意見・質問に、お答えしたいなあと思うことも数多くあります。
そんなすき間を、このブログをつかって、少しでも埋めていくことができればと思います。

出来るだけ講演のあった夜に、遅くとも翌日には更新するようにしたいと思います。従って、まとまりに欠ける文章になってしまうかもしれませんが、そんな時は遠慮なくご指摘ください。同じ講演を聴いても多様な感想や見解がありますので、コメントのひとつひとつに全てお答えができないかもしれませんが、
企画者として、真摯に受け止めていくつもりです。あるいは、「この人の話を聞きたい」という声をコメントで寄せていただくと実現するかもしれません?!ただ、講演者に対する質問を仲介することは出来かねますのでご理解いただければと思います。

このブログが、「夕学五十講」を中心にした、淡いけれども広がりと継続性のある、知的なコミュニティに育つことを期待しています。

これから、どうぞよろしくお願いします。