地上5メートルから見上げる戦略論 藤本隆宏さん ものづくり現場発の戦略論
2004年秋、ものづく経営研究センターが開催する「ものづくり寄席」という講演会で藤本先生が基調講演をされた時に聴いた面白いエピソードがあります。
その数ヶ月前、天皇皇后陛下主催秋の園遊会に藤本先生もお招きを受けたそうです。園遊会では、参加者がずらりと並んで、順番にひとり一人に陛下が声をかけるシーンがテレビでもよく放映されますよね。藤本さんについて「我が国の、ものづくり経営研究の第一人者で、東大のものづくり経営研究センターの責任者です」というお付きの方の紹介説明を受けた陛下から「日本のものづくりはどうですか?」とのご下問がありました。それに対する藤本先生の返答は「ハイ。“すりあわせ型”ものづくりは元気です!」だったとのこと。
この逸話に象徴されるように、この何年か藤本先生は日本の製造業、特に自動車産業に代表される「すり合わせ型のものづくりシステム」の素晴らしさを広くあまねく紹介する伝道師のような役割をされてきました。中国にとって代わられるという悲観的な観測に支配されていた日本の製造業ですが、「ある部分においては他国に簡単に真似の出来ない強みはある。その強みを武器にした戦略を構築するべきだ」というのが藤本先生の一貫した主張ですが、その「ある部分」というのが「すり合わせ型のものづくりシステム」です。
機関銃のような早口といい、風貌といい、ちょっと目には気むずかしい雰囲気の漂う藤本先生ですが、実際は腰の低い誠実なお人柄です。近くで見ると眼鏡の奥の小さな眼がとても優しいのが印象的です。そんな暖かい人間性で、世界の工場を見て歩き、現場のエンジニアと議論しながらものづくり現場発の戦略論を構築してきました。
きょうの講演はそんな藤本先生の人間性もかいま見えるような2時間でした。