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地上5メートルから見上げる戦略論  藤本隆宏さん ものづくり現場発の戦略論

2004年秋、ものづく経営研究センターが開催する「ものづくり寄席」という講演会で藤本先生が基調講演をされた時に聴いた面白いエピソードがあります。
その数ヶ月前、天皇皇后陛下主催秋の園遊会に藤本先生もお招きを受けたそうです。園遊会では、参加者がずらりと並んで、順番にひとり一人に陛下が声をかけるシーンがテレビでもよく放映されますよね。藤本さんについて「我が国の、ものづくり経営研究の第一人者で、東大のものづくり経営研究センターの責任者です」というお付きの方の紹介説明を受けた陛下から「日本のものづくりはどうですか?」とのご下問がありました。それに対する藤本先生の返答は「ハイ。“すりあわせ型”ものづくりは元気です!」だったとのこと。
この逸話に象徴されるように、この何年か藤本先生は日本の製造業、特に自動車産業に代表される「すり合わせ型のものづくりシステム」の素晴らしさを広くあまねく紹介する伝道師のような役割をされてきました。中国にとって代わられるという悲観的な観測に支配されていた日本の製造業ですが、「ある部分においては他国に簡単に真似の出来ない強みはある。その強みを武器にした戦略を構築するべきだ」というのが藤本先生の一貫した主張ですが、その「ある部分」というのが「すり合わせ型のものづくりシステム」です。
機関銃のような早口といい、風貌といい、ちょっと目には気むずかしい雰囲気の漂う藤本先生ですが、実際は腰の低い誠実なお人柄です。近くで見ると眼鏡の奥の小さな眼がとても優しいのが印象的です。そんな暖かい人間性で、世界の工場を見て歩き、現場のエンジニアと議論しながらものづくり現場発の戦略論を構築してきました。
きょうの講演はそんな藤本先生の人間性もかいま見えるような2時間でした。

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野球にかける思い 石毛宏典さん 「四国アイランドリーグの挑戦」

自分の話で恐縮ですが、私は高校~大学までは野球フリークで、毎週『週刊ベースボール』を購読していました。その頃のことを懐かしく思い出しながら、石毛さんの話を聞いておりました。
石毛さんの野球人としてのキャリアを改めて思い返してみると、一見野球エリートの本道のように見えますが、実際は、普通の野球エリートとはひと味違う、いい意味での“あまのじゃく”的な進路決定をしてきたのではないかと思います。駒沢大学時代から将来を嘱望されていましたが、彼が選んだのは創部したばかりのプリンスホテルでした。当時、堤清明氏が打ち上げた「野球でオリンピックを目指す」というロマンに共鳴してのことでした。堤氏の横で、詰め襟姿で記者会見をした石毛さんの紅潮した顔をおぼろげながら記憶しています。
西武では、誰もが疑わぬ監督候補の一番手で、球団もファンもそのつもりだったのに、あえて現役にこだわり、ダイエーに去っていきました。この決断が堤氏の逆鱗に触れたというのは有名な話です。
引退後は、野球評論家や指導者の道を選ばず、単身メジャーリーグにコーチ修行に出かけていきました。石毛さん程の実績があれば、そしてあの弁舌と頭の回転の良さからして、テレビ局も引く手あまただったはずです。フャンの「きっとこの道に進むだろう」という予想を見事に裏切りながら、それでいて「なるほど、そういう道もあったのか」と唸らせる独自の野球人生を送ってこられた方だと思います。引退後はバラエティー番組で醜態を晒すことに躊躇しない、多くの後輩達とは志のレベルが違います。
その延長線で考えると、四国アイランドリーグの設立も、石毛さんらしい選択だったと改めて思います。

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 「ジェネレーションYの起業家に聞く」

「ジェネレーションY」とは、デジタル時代に育ちネットを空気のように当たり前のものとして使いこなす世代を意味する言葉だそうです。何年生まれから「ジェネレーションY」と飛ぶのかは日米で基準が異なり、しかも日本でも諸説あるようですが、だいたいその時代に生まれた人々は、それ以前の世代とは明らかに違う価値観を持っているという認識から生じた概念かと想像されます。ところがそれは、あくまでも上の世代から彼らをみた時の感覚であって、当の世代の人にとっては、自分達が上の世代と価値観が異なるという意識はそれほどなく、違いを感じるとすれば、ネット社会の本質を掴まえることができるかどうかという洞察力であって、それは年齢とは関係がないという印象のようです。
確かに、「ジェネレーションYの起業家達」の話を聞いていて、世代論というレッテルでひと括りには出来ない普遍性を感じました。

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相対の精神を忘れない 山本一力さん 「人生の目利きになる」

「星にあげて、星から降ろしてるんですね」 山本一力さんに通信衛星による夕学サテライトの説明をした際におっしゃった言葉です。まさに「説明」ではなく「描写」ですね。映像が宇宙空間を飛んでいくさまが目に浮かぶようないきいきとした表現に、いきなり感服してしまいました。話を聞く際にも、真正面から相手の眼を見据えて離しません。「あなたの話を聴いていますよ」というメッセージがしっかりと伝わってきます。
「人生は全て相対で成り立つ。相手のこころを思いやる気持ちが原点であるべきだ」講演の中でそうおっしゃった通り、山本さんはいまでも営業マンのこころを持ち続けている素晴らしい人でした。

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新潟を世界一にする 池田弘さん 「アルビレックス新潟の奇跡と軌跡」

冷たい冬の雨をものともせず、人懐っこい満面の笑み浮かべながら池田さんは控室に現れました。スーツの襟元から覗くのは鮮やかなオレンジのクレリックカラーシャツ。オレンジはアルビレックス新潟のチームカラーです。
池田会長は、構えは小さいながらも新潟で一番の古社の宮司として生まれ、いまも現役の神主さんであると同時に、23の専門学校と高校・大学を要する北陸有数の教育グループ新潟総合学院の理事長、サッカー、バスケット、陸上競技、ウィンタースポーツのチームを運営するスポーツビジネス企業 アルビレックス新潟の会長、そしてベンチャーインキュベーションを目的に組織化されたニューベンチャービジネス協議会の会長を務めます。宗教・学校・スポーツ・企業...人間が社会を営むのに不可欠な要素の多くに経営者・リーダーとして関わっていることになります。一見脈略のない事業連鎖のように見えますが、池田さんの中では極めて筋の通ったシナジーが描かれていたのでしょう。聴く人に、そう納得させる講演でした。

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世界の地図を変える国 榊原英資さん 「インドを読み解く」

榊原先生がインドに関心を持ったのは最近のことだそうです。詳しく調べようと思い、書籍を探したところ、日本にあるインドの専門書は哲学や宗教学ばかりで、経済について、特に現代インド経済を解説する本はほとんど存在しなかったそうです。中国に関する本が有象無象含めて氾濫しているのと対照的だとのこと。
恥ずかしながら、私もインドについての知識は実に浅はかなものです。「ゼロの概念が生まれた国で数字に強い」「シリコンバレーはインド人だらけ」「カースト制はいまだに深刻な問題らしい」といった程度の知識はありましたが、首相の名前がモンマハン・シンだということさえ知りませんでした。
そんな私にとって、きょうの講演は「現代インド入門」とでも呼べるようなたいへん分かりやすいものでした。

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品格ある教養人たれ 村上陽一郎さん 「現代における教養とは」

「かつて、働くとことは“神の呪い”であった」 そんな刺激的なメッセージではじまる本があります。(『仕事の裏切り』ジョアン・キウーラ)
古代ギリシャにおいて、仕事は奴隷の役割でした。農地を耕すことも、工具を作ることも、火事、育児、全ての労働は神の呪いを受けた奴隷に課せられた宿命だと考えられていました。一方で市民(貴族)は詩を詠み、音楽を奏で、哲学を論じることに生き甲斐と精力を傾けていました。そのために必要な素養がLiberal Artsつまり「奴隷の責務である仕事から解放されるための技」だったわけです。逆に言えば、“神と繋がる”ための素養として必要なのが「教養」だったのです。
村上先生の講演は、そんな背景を受けて、12世紀に生まれた「大学」という社会システムの役割とそこで求められた「教養」についての話から始まりました。

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議論の本意を定る事 平山洋さん 真実の福澤諭吉を求めて

私は慶應の出身ではありませんし、恥ずかしながら、慶應MCCの立ち上げに参画するまで福澤諭吉については「一万円札の顔写真」と「天は人の上に人を作らず…」程度の知識と興味しかありませんでした。何年か前に、少しは福澤諭吉の勉強もしなければと『文明論之概略』(岩波文庫)を購入し、テキスト代わりに丸山真男の『「文明論之概略」を読む』(岩波新書)をセットで揃えたのが初めての福澤体験です。後から聞けば、最初は『学問のすすめ』を読むべきだそうで、確かに『文明論之概略』は格調高い漢文体で書かれているので、丸山氏の解説がないと理解するのが難しかったことを思い出します。(解説もかなり難解でしたが…)そんなわけで、読んだというより、パラパラとめくったというのが正しい表現かもしれませんが、第一章が「議論の本意を定る事」という章題で始まっていることを印象深く憶えています。いま風に言えば「ロジカルシンキングの重要性」とでも言えばいいのでしょうか。
このブログを書きながら『「文明論之概略」を読む』を今一度開いてみたところ、丸山真男は、最初に「議論の本意を定る事」ではじまる理由を、『文明論之概略』が書かれた明治初期の混沌とした時代背景と結びつけて、既存の価値観や物事の見方・考え方が大きく変わろうとしている時には、なによりもまず「思考と議論の方法論」を持つことが重要だという福澤の思想の表出であると論じています。福澤には他にも有名な「多事争論」という言葉もありますが、没後100年を経て、今またロジカルシンキングの必要性が声高に叫ばれている事実に、時代を超えた福澤思想の普遍性を感じざるを得ません。
きょうの講演で、平山先生が繰り返し主張されていたのは、福澤研究について、そんな論理的な議論をもっとやりたいという強い問題意識だったような気がします。

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新たな統合のあり方を目指す 姜尚中さん 「東北アジア共同体に向けて」

今朝、Googleで「姜尚中」と検索したところ、とあるブログのタイトルが目にとまりました。曰く「男も惚れる姜尚中という男」。つまり、女性が惚れるのは当然として、もてる男をやっかみたくなるのが本性の男でさえ「この人は凄い」と思わせる魅力があるとのこと。
控え室に現れた姜先生は、スラリとした長身に、ハイネックのホワイトボタンダウンシャツ、黒のイタリアンスーツをノータイで着こなし、ヒルズ族ベンチャー社長顔負けのダンディーな装いでした。しかも森本レオを彷彿させるハスキーな低音を響かせながら、ソフトに気配り豊かに話を進めます。
いざ講演がはじまると、頭脳明晰、論理明快、複雑に絡まった糸を丁寧に解きほぐすようにわかりやすく説明をしてくれます。確かに凄い人でした。

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内発的国際化 キャメル・ヤマモトさん 「日本人企業進化論」

「私は、バブルの最後にやって来る男です」キャメル・ヤマモトさんは冗談めかして、そう自己紹介されるそうです。外務省を辞めて外資系コンサルティングファームに転じた1年後にバブル崩壊に遭遇しました。2000年のITバブルの終焉がはじまったのはシリコンバレーで暮らしはじめて2週間後のことだったそうです。中国に活動の拠点を移しつつある現在、中国の活況ははかない終わりを迎えるのか、あるいはキャメルさんのジンクスが破られるのか。どうやら後者の可能性が高いようではあります。

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新たな経済モデルが求められている 細田衛士さん 「グリーンキャピタリズム」

先日の「サンデープロジェクト」で、金のリサイクル事情の特集がありました。金は地上で最も希少性の高い資源でありながら、すでに採掘可能な埋蔵量の7割近くを掘り出してしまっているという危機感もあって、携帯電話やパソコンのマザーボードなどさまざまな製品廃棄物から、些少な金を取り出してリサイクルしている様子が放映されていました。金の延べ棒1本のうち30%がそうやって再利用された金で出来ているとか...
きょうの細田先生の講演では、金のリサイクルシステムをグリーンキャピタリズムの先駆者として紹介されていました。

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失敗から学ぶ 堀紘一さん 「Ever Onward」

「君たちはそういう考え方をするのか。明らかに間違っているね」控え室に入って早々に、堀さんからそう指摘されました。
夕学では、講師の方々に当日の受講予定者リストをお見せしています。受講者の企業や職種によって、講演の進め方や事例の出し入れをする方が多いので、それを事前に確認していただくためです。実は春から個人情報保護対策の一環でお名前を伏せて、企業名と部署名だけの一覧に変更しました。そのリストをご覧になっての感想が冒頭のキツ~イ一撃です。
個人情報保護法の立法趣旨はこういう対応をすることを促しているのではない。安易な扱いが思わぬ悪用を招くことを避けるためのものだ。人に教えを請おうという時に自分の名を名乗らぬ人がいるはずがない。確かに名前があったところで、講師は何に役にも立たないが、礼儀として失礼な話だ。リストを持ち帰ってばら巻くような人達を講師に呼んではいないだろう。主催者の保身以外の意味はない。とバッサリと切られました。
講演前に怒らせてはまずいと思い、「そうはおっしゃいますが...」と言いたい気持ちをグッと抑えて丁重に謝りました。しかし、堀さんが指摘したかったのはそういう次元のことではなく、「何が問題なのかを、一歩突っ込んで考える姿勢の欠如」だったのだと、講演を聴きながら気づきました。

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中国は国というより世界そのものだ 関満博さん 「中国民営企業の先進性」

台風直撃情報の影響でやむなく欠席された方が多かったために、特別に設定した関先生の連続登壇ですが、きょうも中国のエネルギーを熱く語っていただきました。
関先生は、きょうのテーマである「中国の民営中小企業」を研究テーマと定め、北京、大連、無錫、深せん、広東の5都市をベンチマークし、定点観測をしてきました。それぞれが地域性を生かした独自のモデルを作り上げており、5都市を観ることで中国の全体像がつかめるからという理由からです。各地で30社、計150社の民営企業を訪問調査した集大成が、近々700頁の大著にまとまり出版されるそうです。きょうは、そんな調査から大連、北京、広州の各都市で出会ったエネルギッシュなベンチャー経営者や彼らと密接に関わりながら発展する大学関係者のお話を聞くことができました。

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