« 2007年前期 | メイン | 2006年度前期 »

「個人の可能性を信じる」 奥谷禮子さん

奥谷さんの夕学講演の当日、衆議院の予算委員会で奥谷さんの発言を巡るちょっとした議論があったそうです。
1月末に発行されたある雑誌に掲載された奥谷さんのインタビュー記事が問題とされていたとのこと。奥谷さんが労働政策審議会の委員をやっていることもあって、奥谷さんの意見が政府の大多数の考え方を代弁しているのではないかということだったそうです。
民主党の某委員が「あまりの暴言だ」と息巻いた内容は、実は本日の奥谷さんの講演内容とほとんど同じもののようです。
夕学をお聞きになった方はよくお分かりだと思いますが、奥谷さんは、スタンスが明確で、歯に衣着せぬ物言いをされる方であることは間違いありません。
では、はたして夕学講演の内容は「許すまじき暴言」なのか、それとも旗幟鮮明な考え方をする人の「ひとつの見解」なのか、どのように感じられたでしょうか。

続きを読む "「個人の可能性を信じる」 奥谷禮子さん"

「日本のポップカルチャー」 中村伊知哉さん

学生時代、京都でロックバンドのディレクターをやっていたという中村先生は、蝶ネクタイがよく似合うポップな装いで登壇されました。
講演は、日本のポップカルチャーの影響力を象徴する一つの事件の紹介からはじまりました。

「昨年の6月、16歳のフランス人少女二人が、ビザを持たずに旅を続け、ベラルーシで身柄拘束されるという出来事があった。アニメをこよなく愛していた二人が目指していたのはアニメの聖地ニッポンであり、陸路を歩いてひたすら東へ東へと向かっていたのだ」

「母を訪ねて三千里」のマルコ少年よろしく無謀な旅を続けた少女達の憧憬の対象は「母」ならぬ「ニッポンのアニメ」だったという話が、日本のポップカルチャーが持つグローバルな影響力を象徴しているのだそうです。

続きを読む "「日本のポップカルチャー」 中村伊知哉さん"

「権力との戦い方」 佐高信さん

「佐高は一人の人間に惚れるところから思考回路が始動し、一つの事象を極めて単純に割り切り、一点突破型で評論を展開する。センサーが感知した人間性が常に評論の基準にあり、私は佐高の本質は“人間評論家”と見ている」
毎日新聞の岸井成格氏の「佐高信」評です。

きょうの講演の中で何度か、「岸井が...」と佐高さんが口にしたのは、この岸井氏のことです。
これも講演の中で、佐高さんが、小泉純一郎氏、小沢一郎氏、浜四津敏子氏という三人の政治家と慶應の同期生だったという話がありましたが、慶應昭和四十二年卒業の同期生には、嶌信彦氏、岸井成格氏という高名なジャーナリストもいます。お二人とも夕学ではおなじみの方ですね。
ことに佐高さんと岸井さんは、法学部峯村哲郎教授の法哲学ゼミの同期でもあり、学生時代から40年以上の付き合いだそうです。
冒頭の一文は、昨秋に出版されたお二人の対談集『政治原論』のあとがきに岸井さんが寄せたものです。佐高さんと岸井さんは、政治的な立場や考え方が異なり、政治記者と評論家という性質の違いもあって、意見が一致しない点の方が多かったようですが、互いの人間性や歩いてきた軌跡を熟知し合う、古くからの友人同士でなければ出来ない、率直で激しい議論が展開されています。
岸井さんは、自分自身にとって、佐高さんの存在や評論が、ある種の危険を察知するセンサーのような役割を果たしているとしたうえで、「人間評論家」と評しています。

続きを読む "「権力との戦い方」 佐高信さん"

「龍の背に乗る」 玄侑宗久さん

玄侑宗久さんが副住職を務める福聚寺の総本山、京都妙心寺には、「八方にらみの龍」と呼ばれる天井画があります。
狩野探幽が55歳のとき、8年の歳月を要して描きあげたとされ、龍の目は円相の中心に描かれていますが、立つ位置、見る角度によって、龍の表情や動きが変化するように見えることが有名です。

妙心寺に限らず、お寺の壁画には龍の絵が描かれていることがよくあります。また、龍神は古代から水の神とされ、日本の各地で奉られてきました。
かつてのTVアニメ『まんがにほん昔ばなし』の冒頭では、子守歌調の主題歌とともに、子どもが龍の背に乗って、自由に空を飛ぶ姿が印象的でした。
人気ドラマ『Dr.コトー診療所』のテーマ曲、中島みゆきの「銀の龍の背に乗って」の旋律も記憶に新しいところです。
日本人は龍の姿、特に、龍に乗って空を飛ぶ姿に、特別な思いを抱いてきたような気がします。
きょうの玄侑さんの講演では「龍の背に乗る」というイメージが意味するものを仏教の教えに基づいて教えていただきました。
それは講演の主題であった「もう一つの知のあり方」と密接に関わるものでした。

続きを読む "「龍の背に乗る」 玄侑宗久さん"

「不特定多数無限大への信頼」 川崎裕一さん

『ウェブ進化論』の著者で、「はてな」の取締役も務める梅田望夫氏は、これからのネット社会を切り拓くのは「1975年以降に生まれた人」だと言います。
「はてな」社長の近藤淳也氏やミクシィの笠原建治氏など団塊ジュニアにあたる世代で、きょうの講演者川崎裕一さんも同世代人です。
講演は、まずこの世代がなぜ新たなムーブメントを起こすのか、梅田氏等が主張する世代論の解説から入りました。

続きを読む "「不特定多数無限大への信頼」 川崎裕一さん"

「戦略としてのダイバシティ」 内永ゆか子さん

日本IBMのWebサイトにある役員一覧をみると、内永ゆか子さんを筆頭に、4人の女性役員・執行役員がいることがわかります。
その比率は25%以上。国内上場企業の全役員に占める女性比率が1.2%であることを考えると圧倒的な数字であることがわかります。
しかも内永さんを含めて全員が日本IBMの生え抜きプロパー社員で、部下数千人を束ねるライン部門のトップを務めています。
女性の役員登用に積極的といわれている日本企業でも、その内実は、官僚からの天下りやの高度スペシャリスト的な存在であったりすることが多い中にあって、日本IBMの実績は抜きんでたものといえるでしょう。
ところが、きょうの内永さんの話によれば、日本では断トツのダイバシティも、ワールドワイドのIBMのダイバシティ指標でみると最下位とのこと。

フランス、ドイツ、アメリカ等々、先進国サミットの首脳の半数近くが女性になる日もそう遠くないと言われる世界の趨勢にあって、日本のダイバシティの現実には暗澹たる思いがします。
しかしながら、それをヒューマニズムで理解するのではなく、戦略的な経営視点の欠如として認識する人が少ないことが最も大きな課題であるというのが、内永さんの大きな問題提起であったと思います。

続きを読む "「戦略としてのダイバシティ」 内永ゆか子さん"

デジタルメディア産業の創世にむけて 古川享さん

古川さんに夕学にご登壇いただくのは、実に5年半振りになります。最初は「夕学五十講」第一期、まだ新丸ビルの地下大会議室を会場にしていた頃でした。
その時は、講演開始2時間前に、大きなバッグを持参して来られました。バッグの中には携帯スピーカー、アンプ、無線機器などなどが入っていて、その場で独自のPA環境を設置していらっしゃいました。
その当時、古川さんの求めるデジタルプレゼンテーション環境を用意できる会場はほとんどなかったので、講演する際には全ての機器を持参することにしていたそうです。あの頃は、まだOHPやスライドを使ってプレゼンする人もたくさんいらっしゃいましたから「むべなるかな」という感じでした。

かつて、古川さん、成毛さんといったマイクロソフト経営者陣や、インテルの西岡さんが、PPTをつかったプレゼンを浸透させようと行く先々で実演に励んだという話を聞いたことがありますが、彼ら日本のIT世代の創世期を支えた世代は、社会の常識や人々の意識を変えるために自らが先頭になって走るという使命感のようなものをもっていらしたのだと思います。
今回古川さんが持参されたのはPCのみ。プレゼンテーションという小さな世界ではありますが、彼らの啓蒙は間違いなく成功し、世の中の常識が変わったということでしょうか。

続きを読む "デジタルメディア産業の創世にむけて 古川享さん"

「舟が来たら乗る」 八塩圭子さん

ワタクシゴトで恐縮ですが、土曜日の朝は『めざましどうようび』で八塩さんの顔を拝見することから始まります。
愛犬の散歩から戻ると、八塩さんの修士論文研究通りの計画的・習慣的視聴行動が身についた娘達が、かならず8チャンにスイッチを入れていて、賑やかなメンバーに囲まれて、お姉さん的な仕切りをみせる八塩さんの笑顔を拝見しながら朝食をとるのが毎週の習慣になっています。
とはいえ、きょうの講演を聞くと、爽やかな笑顔の裏では、多忙な一週間乗り切ったうえに、ほぼ徹夜状態で早朝生番組に臨む隠れたご苦労があるということがよく分かりました。きょうの夕学もよくお受けいただいたと感謝しております。
生「八塩圭子」さんは、テレビのままに、いえテレビ以上に素晴らしい女性でした。古い言葉で言えば「八頭身美人」。スラリとした長身に小さな顔がちょんと乗っていて、「さすがテレビの人は違う」という感じです。

さて、そんな八塩さんが「自分で稼いだ金をつぎ込んでつらい思いをするマゾ的生活」を覚悟して、夜間のビジネススクールに進んだ理由は何なのか、そしてそこで得たものは何だったのかをお聞きするのがきょうの夕学でした。

続きを読む "「舟が来たら乗る」 八塩圭子さん"

「相利共生」をめざして チャールズ・レイクさん

7日の日経新聞【春秋】欄は、ロンドンの金融街シティーの話題でした。空前の活況に沸き立ち、日本円で2億円以上のボーナスを受け取る金融マンが4千人以上いるとのこと。しかも英国人だけではなく、米国はもちろん、ロシア、中国など世界中から人材が集まっています。今年の企業買収や株式新規公開の取引額はロンドンがニューヨークに圧勝したそうです。高成長マーケットである中近東、アジアに距離的に近いのが最大の勝因と紹介されていました。

この記事にはありませんが、世界から人材とマネーを引き寄せるシティーの磁力は地政学的な理由だけではなく、そうなるように意図した政策(法整備・インフラ整備・人材配置)の効果だというのが、きょうの講師チャールズ・レイクさんのご指摘のひとつでした。

3歳~15歳まで日本に在住し、アメリカンスクールではなく、日本の学校で義務教育を修めたレイクさんは日本人以上に日本のことをよく知っている知日派米国人です。
一方で90年代には米国通商代表部特別補佐官として日米貿易摩擦交渉の実務に携わったハードネゴシエイターでもあります。きょうのプレゼンテーションは、随時全体のアジェンダを示すことで、現在の位置取りを確認しながら、分かりやすいデータに裏付けられた論理的な主張を展開する説得力溢れるものでした。米国ビジネスエリートのプレゼンテーション見本を示してくれたような気がします。講演の中でレイクさんが使った言葉をお借りすれば、まさに「ベストプラクティス」でした。

日本と米国の良いところを身につけ、逆に言えば双方の欠点もよく理解したうえで、日本在住の親日派米国人の代表として、日米関係をよりよくしていこうと志をもって活動をされていることがよくわかりました。

続きを読む "「相利共生」をめざして チャールズ・レイクさん"

「エンタテイメント(感動)経験をデザインする」 稲蔭正彦さん

「コンテンツは王様である」
これはITやネットワークの世界で語られる有名な言葉だそうです。
CGを駆使したファインアートの創り手として、またプロデューサーとして、ハリウッドを含めて国際的に活躍してきた稲蔭先生の講演は、この言葉で始まりました。

「デジタルエンタテイメント」というワードからすぐに連想されるのは、「通信と放送の融合」問題です。新しいIT技術とネットワーク環境の整備によって、映画・テレビ・ゲームといった既存コンテンツがデジタル化され、自由に流通される。消費者にとっては便利だが、制作者サイドでは知財保護や課金システムなどの課題がある...といった連想が働いてしまいます。
稲蔭先生は、既存コンテンツのメディアチェンジは重要ではあるけれど、本質的な問題ではなく、むしろテクノロジーの進化によってはじめて可能になる新しいコンテンツが生まれるかどうかがこの言葉の含意であると説明しました。
良質なコンテンツには必ず「予測と裏切り」がセットされているそうです。
ヒットするコンテンツには、「この次はきっとこうなる」という予測可能な安心・安定を提供しながら、ポイントで、あっと驚く裏切りや意外性を埋め込まれているもので、その組み合わせの妙が決め手になるとのこと。ハリウッド映画はその典型だと言います。
例えば『マトリックス』は、テクノロジーオリエンテッドの発想で生まれた「予測と裏切り」の最新系で、新たな技術により「まさか、こんなことが」と思えるような世界を表現することで画期的な「予測と裏切り」を提供しました。
しかし、稲蔭先生によれば、テクノロジーオリエンテッドの「意外性」は長続きしないし、むしろ最新テクノロジーを利用はしても、それに頼らず「意外性」をまったく別の方法で表現できるかどうかがキモになるそうです。
このあたりは、高度MPU「セル」を駆使した高解像度をウリにするソニーの『P3S』と『DS』や『Will』でゲームの新領域を開拓することに成功している任天堂の戦略を対比させるとなにやら暗示的ですね。

続きを読む "「エンタテイメント(感動)経験をデザインする」 稲蔭正彦さん"

M1層のホンネを掴む 藤井大輔さん

“人材輩出企業の雄”と言われるリクルート社からは、多くの起業家や社会イノベーターが産まれています。
夕学にも多くのリクルート出身者・現役社員が登壇してきました。指折り数えてみたら、今期の藤井さん、大久保さんを含めてその数なんと7人。夕学にとっても、リクルートは、実務家講師の最大の供給源です。一民間企業としては特出すべき実績になります。

本日の講師、藤井大輔さんもリクルート遺伝子の伝承者として、その系譜を継ぐ者のお一人です。
リクルートが年に一度行う新事業開発コンテスト「Newリーグ」から生まれたM1層向けのフリーマガジン構想を『R25』という形にして実現し、大成功を収めた若き編集長です。

続きを読む "M1層のホンネを掴む 藤井大輔さん"

奥-井ノ上3rdメモリアルフォーラム 日本の外交戦略への提言

きょうの「夕学五十講」は特別編でした。
3年前の11月29日にイラクで凶弾に倒れた二人の外交官、奥克彦さん・井ノ上正盛さんの遺志を受け継ぐべく、サントリーラグビー部監督の清宮克幸さんをはじめ、生前お二人と親しかった方々が立ち上げたNPO法人「奥-井ノ上イラク子ども基金」の主催する「奥-井ノ上3rdメモリアムフォーラム」を夕学の一環として開催したものです。

開催の経緯は、7/5のブログ(清宮さん登壇の回)に書かせていただきましたが、二人の外交官が命の代償に残した、平和への願いをこめた「志」を受け継いだ素晴らしい企画だったと思います。
「奥-井ノ上3rdメモリアムフォーラム」は毎年一回、お二人の命日に時を合わせて、日本の外交戦略について議論を深めることを目的に開催されています。
今年は、イラクへの自衛隊の復興支援活動がとりあえずの収束をみたこともあって、イラクが残した課題をどう考えるべきかを主眼に企画されたそうです。
毎回フォーラムでは、一方の意見を声高に主張する場ではなく、できるだけ多面的な議論が展開できるように、さまざまな立場の論客をパネリストに招いています。
今回は、第一部で、現役自衛官の本音の意見もお聞きできましたし、第二部では、市民・財界・政府と異なる三者の立場を代弁するお三方の熱のこもった議論もありました。
司会の黒岩祐治さんのメリハリの効いたプロフェッショナルな進行もあって、聞きにくいこともズバリと聞いていただき、パネリストの方も飾ることなく、本年をぶつけ合っていただいたと思います。
多角的な議論を行うというフォーラムのねらいは十分実現できたのではないでしょうか。

続きを読む "奥-井ノ上3rdメモリアルフォーラム 日本の外交戦略への提言"

「五感と実質価値を提供する」 須藤実和さん

東大理学系の大学院でバイオを学んでいた須藤実和さんが、畑違いのマーケティングの世界に飛び込んだ理由は「化学を社会にPRする」という夢を抱いたからだそうです。
博報堂で広告実務を経験した後、外資系コンサルティングファーム、ベンチャーキャピタルで会計や企業投資のキャリアを積み、戦略系コンサルで経営戦略、新事業創造に携わり、今春からは大前研一さんのもとで人材開発支援活動を中心に活躍を始めました。
華麗なキャリアに加えて、相手を優しく包み込むような、柔らかな対人能力はトップコンサルタントに不可欠な要素かもしれません。
控え室でお聞きしたところでは、須藤さんは、個人の活動として、来春オープンを目指して、飲食系の新規ビジネスの立ち上げにもコミットしており、リアルビジネスへの関心も強く持っていらっしゃるようです。

続きを読む "「五感と実質価値を提供する」 須藤実和さん"