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中村和彦教授に聴く、現代日本企業の「組織開発のすすめ」

photo_instructor_751.jpg ウィキペディアなどで言葉の意味を調べると、英語版ではたっぷりとした記述があるのに日本語版では薄っぺらな説明しかない項目に出くわすことがある。「組織開発(Organization Development、OD)」もそのような言葉のひとつである。中村教授は、この組織開発の研究者であると同時に、コンサルタントとしての実践者でもある。

 短い言葉だが、だからこそきちんと定義を参照しておくことが重要になる。
 まず、「組織」とはなにか。中村教授は、組織開発の第一人者であるエドガー・シャインMIT名誉教授の定義を引いて、「ある共通の明確な目的、ないし目標を達成するために、分業や職能の分化を通じて、また権限と責任の階層を通じて、多くの人々の活動を合理的に協働させること」としている。

 次に、「開発」とはなにか。Developmentの他の訳語、「発達」「成長」「進展」といった言葉をそばに並べてみると雰囲気が伝わりやすいかも知れない。つまり開発とは、「組織の体質改善」であり、「外科手術というよりは漢方薬や生活改善」に相当するものであり、「自ら気づき、自ら発達・成長させる」ことである、と中村教授は説明する。

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「相手に伝えたい」気持ちの強さから生まれた極意|長井鞠子さん

photo_instructor_749.jpg長井鞠子さんの講演は、ふつうの構成とは少し違っていた。質問タイムを2度もうけるという。
なぜなら、通訳者としての経験上「人間の集中力は、いいところ45分しか続かないから」。そして長井さんは、「質問タイムには、ぜひ質問してくださいね」と念を押す。

以前、アメリカのビジネススクールの教授について通訳した際、「日本人の学生はアホだか賢いんだかわからない。点数のつけようがない」と言われたそうだ。その理由は「クラスで発言しないから」。しっかり勉強して相応の知識があるのに、黙っていてはそれが伝わらない。

さらに続けて、ご自身の分析による「人が質問したがらない理由」を語りだした。
冒頭5分にして、長井さんがあらゆる事柄を自分のなかでしっかりと咀嚼し研究し整理し納得して、その上で前に進んでこられた方なのだということが伝わってくる。

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内田和成教授に聴く、「ゲーム・チェンジャーの競争戦略」

photo_instructor_757.jpg 「既存事業の防衛戦略 ―新たな挑戦者にどう対応すべきか―」と題して行われたこの講演の最後に内田教授は、「またか、と言われそうだけど」と独りごちながら、20世紀フランスの文学者マルセル・プルーストの次のような言葉を紹介してみせた。

 『本当の発見の旅とは、新しい土地を探すことではなく、新しい目で見ることだ』

 慌てて手元の書物を紐解いてみる。2009年の著書『異業種競争戦略 ビジネスモデルの破壊と創造』、そしてこの日の講演に合わせるかのように発売されたばかりの新刊『ゲーム・チェンジャーの競争戦略 ルール、相手、土俵を変える』。5年の時を挟んで双璧を成す両冊の掉尾を、内田教授は確かに同じプルーストの、同じこの言葉で結んでいた。
 そしてその前段に添えられた教授自身の言葉もほぼ変わらない。
「私の経験からいうと、ほとんどの場合、答えはすでに皆さんが持っている、あるいは、皆さんがいまやっていることのなかにあります。」

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ソフトな福澤諭吉論 西澤直子さん

世の中には多くの福澤諭吉論がある。学術的なそれは知らないが、一般の人向けに書かれたものの多くは、男性から見た福澤諭吉論であろう。
慶應の系譜につながるひとが書いた評伝的なもの(ex小泉信三の『福澤諭吉』)、慶應以外の人が書いた福澤礼賛論(ex丸山真男の『文明論之概略を読む』、アンチ福澤の脱亜論や東アジアの福澤論。
いずれも男目線で、近代的価値(自由、知性、文明)の啓蒙者としての福澤諭吉の功罪を論じている。言うならばハードな福澤論である。

photo_instructor_754.jpg福澤研究センター創設にあたって招致してくれた恩師のすすめもあって、福澤の女性論を専門に定めた西澤直子先生の立ち位置は、女性からの目線に特色があるようだ。言うならばソフトな福澤論といったところか。実に新鮮であった。

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知的生産の方法としてのワークショップ  苅宿俊文さん

本日の講演テーマは「多元共生社会のコミュニケーション力」

講師の苅宿俊文先生photo_instructor_740.jpgは、昨年まで、多元"化"共生社会と書いていたが、今年から"化"を取ることにしたという。
多元社会は、進行形でなく完了形になりつつあるという認識からである。

多元社会の先駆者は欧州であろう。
二度の世界大戦で一千万人を越える犠牲者を出し、辿り着いた合意が多元的共生社会の構築であり、その形態がEUであった。
その道のりは険しく、いまも大きな困難に直面はしているけれど。

日本においても、多元社会は進んでいる。
夕学では、金子郁容さん平田オリザさん西村佳哲さん山崎亮さんが、多元社会への取り組みを語ってくれた。
多元社会形成の鍵を握るのがコミュニケーションであり、コミュニケーション能力の開発メソッドとしてワークショップが有効である、という指摘も共通している。

苅宿先生もその一人、ワークショップの普及と推進を担う研究者であり、教育者であり、実践家である。
青山学院大学で開催している「ワークショップデザイナー養成プログラム」を通じて、5年間で1000人のワークショップデザイナーを育ててきた。

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普遍性が宿る場所

photo_instructor_743.jpg 森田真生さんの講演を聞きながら、「普遍性」について考えた。
 普遍性。私なりにこの言葉を定義づけすれば、時間や空間を超えて通じる真理、とでもいうところか。
 小学生でこの言葉に初めて出会ったとき、なんというのだろう、深遠な気持ちになったことを覚えている(もちろん当時は「深遠」などという言葉は知らなかった)。わかるようで、わからない。でも、なにか惹かれる。うっとりと憧れてしまうような言葉の響き。「普遍」という言葉が世の中にある以上、普遍的なものがこの世界にきっと存在するに違いないという期待が、胸の中に沸き起こった瞬間だった。

 あれから二十ン年。普遍性という言葉は何度も耳にしてきたし、自分自身で使ったこともあるかもしれない。しかし、真剣に向き合ったことは恐らくないだろう。
 今回の講演を聞き、久しぶりにこの「普遍性」という言葉にカツンとぶつかった。正面からこの言葉を見つめるのは、なんだか悪くない感じがした。

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怒らずに気持ちを伝える技術

photo_instructor_733.jpg 講師略歴を読み、ミステリアスな人だと思った。
出身地と感情教育家であること、アンガーマネジメントを始めたきっかけしか書かれていないのである。そこで、どんな人物かと安藤俊介氏の講演を聴いてみようと思った。
 簡単な自己紹介の後に「僕の講演はワークショップ形式でやりますから、今のうちに隣の人と仲良くして下さいね」と言われた。
『怒りをコントロールする技術』という講演を聴きに来るぐらいだから、皆キレやすいんだろうなー、話すの嫌だなーと思いながら隣を見ると、温和そうな中年男性だったので安心した。

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駒形哲哉教授に聴く、「社会主義市場経済」と中国を見る眼

photo_instructor_756.jpg 駒形先生の場合、それはインドネシアでのことであった。
 小学生の頃、駐在員の子として暮していた彼の地には、多くの華僑・華人がいた。なぜ彼らはここにいるのか。なぜ現地人に忌避されるのか。ぼんやりとした疑問を抱えたまま、アジア各国を経由しての帰国の途次、香港から台湾に入ろうとした駒形少年は、大陸との関係を警戒する当局によって漢字で書かれた書籍の一切を没収されてしまう。
 中国とは、一体どんな国なのか。あらためて刻まれたその素朴な問いを胸に、改革開放の35年間に、先生は研究者として向かい合ってきた。

 どんな小国であっても、人は、その国を丸ごと理解することはできない。いっときに接するのはその国の断片に過ぎない。それは人であったり、モノであったり、メディアが伝えるイメージであったりする。しかしそのような断片をいくら集めても正確な像を描くのは難しい。ましてこの巨大な隣国の場合、その断片すらあまりに多様すぎて、知れば知るほど全体像が掴めなくなる。

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デザインが持つパワー 水野学さん

photo_instructor_744.jpg『いま経営に必要なブランディングとデザイン』というタイトルの講演を聴いたところで、一介のWebデザイナーである私の頭で理解できるかどうか心配だったが、その一方で「あの『くまモン』のデザイナーさんのお話」であることに興味をそそられ、楽しみ半分・不安半分で会場に足を運んだ。

ステージに登場した講師の水野さんは爽やかな白シャツ姿。なんでも、以前テレビ番組で密着取材された際に「(編集の関係で)同じような服装に統一してほしい」と頼まれたとか。いざ着てみると気分が良かったので、それ以来、ほとんどの場面で白シャツを着ているそうだ。そんな前フリを受けて、「こんなカジュアルな格好で、しかも壇上からスミマセン」というお詫びの言葉から講演がスタートした。いつも思うことだが、ある分野で突出した活躍を見せる人は、みなさん腰が低くて自然体だ。

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発信とは人がするもの 谷口智彦さん

photo_instructor_750.jpg 「発信力」ときいて、てっきり日本文化広報のあり方を斬る!というような話かと勝手に勘違いをして臨んだが、どうやらそれは間違いだったようである。事はクールジャパン戦略の検証、といった小さな話ではない。むしろタイトルの頭にある「日本外交」、そう、まるっきりガチな国際交渉のリアルが、次々と開陳された90分であった。それもそのはず、谷口氏は、安倍首相の内閣官房参与として海外のメディアの矢面に立ち、日本政府を代弁する立場で日々闘っている方なのである。

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内なるヤンキー性を知るべし 斎藤環さん

photo_instructor_742.jpg 精神科医 斎藤環氏の「日本人ヤンキー化論」の新奇性は、異質の組み合わせにあるだろう。
「ヤンキー」というスラングワードを使って、日本人の精神構造とそこから生まれた歴史、文化、社会システムという壮大な事象を解き明かしてみせた。

斎藤先生が、日本人のヤンキー性に気づいたきっかけは天皇陛下在位20周年祭典のこの場面だという。
<こちら>

「なぜここでEXILEなのか」

天皇の即位20周年記念行事は、自民党の保守系政治家にしてみれば、最も重要な国民的イベントであるはず。そこには崇高な精神性と大衆的な祭儀が求められることは自明である。
その象徴として選ばれたであろうEXILEの姿を見ながら天皇制とヤンキーをつなぐロジックに思い至ったという。
なぜなら、EXILEが、ヤンキー的精神性を持った人々(斎藤先生曰くマイルドヤンキー)から絶大な支持を獲得しているグループであることを知っていたから...。

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嫌われる自由

photo_instructor_739.jpg 講演を聞くに当たり、講師である岸見先生の代表的な著作であり、ベストセラーとなった「嫌われる勇気」を読んだ。読んだ後は、気持ちが幾分軽くなると同時に、前に進む足取りに力がこもるような思いがした。
 本の中で最も印象に残ったのは、「『いま、ここ』に強烈なスポットライトを当てよ」というメッセージ。過去から現在、未来までをぼんやりと照らすのではなく、まさに今、自分がいるこの場所だけに強い光を当てなさい、この瞬間に全神経を集中し、真剣に生きなさいという言葉は、読後2週間が経った今もなお、私にある種の強さを与え続けている。
 「嫌われる勇気」も、今回の講演も、先生が発するメッセージは同じだ。他の誰のためでもない、自分の人生を歩め。深刻になる必要はない、今を真剣に、丁寧に生きよ。
 先生の本を読み、あるいは今回のお話を聞き、以前よりも視界の曇りが幾分晴れたような、あるいは肩の荷がおりたような思いがしたのは、私だけではないだろう。

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中室牧子先生に聴く、「科学的根拠」に基づく教育政策

photo_instructor_755.jpg 中室先生が挙げた教育政策上の論点は多岐に渡るが、ここではもっともホットで身近なトピックである「35人学級」に絞り、他の識者の見解も織り交ぜながら論じてみたい。

 財務省は先月、公立小1年生で実施中の35人学級には効果がないとして、以前の40人学級に戻すことを文部科学省に求めた。根拠として挙げたのは、導入前後で「いじめ認知件数」「暴力行為」「不登校」の値がほぼ同じ、または微増しているというデータだ。なお、35人学級を廃した場合4000人の教員と86億円の費用を削減できる。

 これに対して文部科学大臣は「教員の多忙感」等を理由に反発。参議院文教科学委員会も35人学級推進決議を全会一致で採択するなど、教育サイドでは官民・党派を問わず財務省への反対意見が強い。

 この問題に対して中室先生は、教育経済学の立場から、いずれにも与せず次のように指摘する。
 35人と40人のどちらがいいかと問えば誰もが35人と言う。しかし巨額の財政赤字を抱える中で教育の予算も聖域ではなく、支出の教育効果と投資価値の実証が必要である。その意味で文科省と財務省の議論はどちらも根拠が不十分。35人学級の効果を実証するには、科学的根拠に基づき(エビデンス・ベースド)因果関係を明確にする必要がある。

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「人間社会の根本思想」 安冨歩さん

photo_instructor_741.jpg安冨歩さんがドラッカーに感銘を受けた理由は、その予言力であったという。
大手都銀の行員として働いていた80年代末、"バブルを引き起こす"仕事に嫌気がさしていた頃に読んだ『THE NEW REALITIES』(訳名「新しい現実」)という本の中で、ドラッカーが冷戦最中にソ連の崩壊を予言していたことに驚愕した。
ドラッカーは、起こりつつある「新しい現実」を凝視することで、そこに「すでに起こった未来」を見通していたのである。
さらにいえば、「新しい現実」に適応して、これまでの自分を作りかえていくことの重要性をも喝破していた。

同じ予言者は、二千五百年前の東洋にもいた。
中国春秋時代の思想家 孔子である。

"人間社会の秩序の根本思想"を言い射ている。

安冨さんは、ドラッカーと論語の相似性をそう解釈している。

それは、両者のキーコンセプトを紐解くことで見えてくるという。
ドラッカーは「Integrity of character」
論語では「仁」
ともにズバリあてはまる日本語表現がない。それが両者の相似性を覆い隠す理由でもあったようだ。

Integrity of characterを直訳すれば「人格の一貫性・統合」になる。
ドラッカー著作のほとんどを翻訳してきた上田惇生氏は、これを「真摯さ」と訳した。
「人格の一貫性・統合」と「真摯さ」では明らかに意味が異なる。
「人格の一貫性・統合」には、まず不動点としての自分があって、環境がどうなろうともぶれずに自分に立脚し続ける意志を感じる。
「真摯さ」には、まず直面する課題(仕事)があって、そこに向かって真っ直ぐに突き進む一途さを感じる。
まず自分があって、自分を守るために環境に適応するのか。
まず環境があって、環境に適応するために自分を捨てるのか。
正反対のアプローチである。

上田氏は、すべてを承知したうえで、よく考えた末に「真摯さ」という意訳を選択したと、安冨さんは推察している。
それが、高度経済成長期にあって、明確なゴールがあった日本にドラッカーの素晴らしさを理解してもらうためには最適だと信じたからではないか。
上田氏の選択は、当時にあっては正しかった。だからドラッカーは「マネジメントの発明者」になった。

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桜井博志社長に聴く、「獺祭」の湧き出ずる源

photo_instructor_738.jpg それは、久々の親子旅となった。
 岩国空港からバスと電車を乗り継いで1時間、鄙びた周防高森の駅から更にタクシーで15分。分岐点に差し掛かるたびに運転手が細い方の道を選び、ようやく着いた先が「獺祭」の製造元、桜井社長率いる旭酒造だった。

 「獺祭」の名の由来となった「獺越(おそごえ)」という名のこの峡谷で、車を降りて真っ先に目についたのが建設中の12階建ての新蔵だった。桜井社長の著書『逆境経営』でもイラスト入りで紹介されていたので事前に知ってはいたが、現地で目の当たりにするとかなりの存在感である。近寄って下から仰ぎ見ると、その巨大さがいっそう際立った。

 つぶれかけた酒蔵を立て直し、今や年商50億、「獺祭」で日本のみならず世界の市場を席巻する桜井社長。
 「ピンチはチャンス!~『獺祭』を世界に届ける~」と題された今回の講演は、きっと素晴らしいだろうが、そうはいっても現地・現場・現物、まずは行ってみないと始まらない。そんな理屈を合言葉に、ビール党の私が日本酒党の父を誘って岩国に向かったのはひと月ほど前のこと。
 旭酒造では一日二回、各5人まで見学を受け付けている。2か月先まで予約でいっぱいのそのコースになんとか滑り込んだ私たちを、説明役の社員が気持ちよく迎えてくれた。やがて5人揃ったところで、案内が始まった。

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中原淳氏と山口孝夫氏に聴く、「宇宙に選ばれる条件」

photo_instructor_752.jpgphoto_instructor_753.jpg 東大で「働く大人の学び」を研究する中原先生と、JAXAで宇宙飛行士の選抜・育成に携わる山口氏。立場も専門も異なる二人の視点から「宇宙飛行士に求められるリーダーシップ」像を立体視のように浮かび上がらせ、そこから地上の我々に有用な知見を見出そうというのが今回の対談である。
 それは私個人にとって、この四半世紀の来し方を省みる講演でもあった。

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「良いものは良いと直観で見抜くこと」がグローバリゼーション  松山大耕さん

今春、慶應MCCのagora講座で、塩山の名刹恵林寺住職の古川周賢老師に「禅の智慧」を学んだ
学んだというのはおこがましい。禅寺の前にしばしたたずんで、門柱をなでさすりながら、そこに漂う空気感を味わったという程度に過ぎない。
夏目漱石流にいえば「彼は門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待った...」というところか。

古川老師に教えていただいた印象的なフレーズがある。

「禅とは"引き算"によって本質を掴むこと」
人間も、人間が作り出す社会も「欲望拡大促進システム」である。いわば"足し算"システムで出来ている。ビジネスはその最たるものであろう。

禅はその真逆にある。
欲望はもちろんのこと、知識、常識、理屈、価値観、こだわりetc。人間が生きることで足し加えてきたあらゆるものを「捨てる」ことを目指す。
捨てて、捨てて、無心になって、もうひとつ捨てて、捨て去ることで、純粋無垢で、瑞々しく、精気に溢れた生命の根源に辿り着くことができるという。
それをブッダは「悟り」と呼んだ。

photo_instructor_732.jpg京都を代表する禅寺のひとつ妙心寺の塔頭退蔵院の跡取りとして生まれた松山大耕氏は、カトリック系の中高一貫校で学んだ。
そのせいもあってか、仏教とは何か、禅とは何かを、対比的に思考し、仮託して表現することに秀でているようだ。

禅とは対極にあるユダヤ教と比較すると、ユダヤ教が律法というルールで自己を制御するのに対して、禅は修業という体験によって掴むことを重視することがわかる。

禅寺の石庭には、思いっきり遠くに視点をおいて、対象を徹底して抽象化しようとする禅の精神が凝縮している。

日本の武道には、勝つことではなく自分の精神を高めることを尊ぶ、禅の道が生きている。

精進料理には、あらゆるもの活かし切るという禅修業の効率性が見てとれる。

松山氏が日本の禅宗を代表して、世界の宗教家・リーダーと交流している理由も、他者との相対化を通して、禅の本質を多くの人々に理解してもらおうという試みではないだろうか。

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鴻上尚史氏に聴く、「壁」を押し広げる方法

鴻上尚史 劇作家としての鴻上尚史氏の代表作に、「天使は瞳を閉じて」という戯曲がある。
 舞台は、白装束の登場人物たちが立っている場面から始まる。胸にそれぞれ「教会」「劇場」「戦場」「会社」「監獄」「国家」「家庭」「病院」「学校」と書かれた彼らは、各々の管理と抑圧の場からともに逃げ出そうとするが、「柔らかくて見えない壁」に阻まれて果たせない。
 元の場所には戻れない。でも壁の向こうには行けない。
 この状況で、境界に佇む彼らが選んだのは、柔らかな壁をどこまでも押し広げながらそこに新しい街を創る、という第三の道だった。
 天使の視点から語られるその街の創造と終焉の物語に、鴻上氏は、人間組織に不可分に内在する絶望と希望を同時に描き出した。

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「クチコミは売れる」  山本晶(ひかる)さん

ITが登場したことで大きく変容したものはいくつもあるが、マーケティングで言えば「消費者理解の方法論」がそれにあたるだろう。

消費者が製品・サービスに関わる情報を認知してから、購買、使用に至るまでのプロセスのうち、見えづらかったAttention、Interestといった初期段階のトレーサービリティが、ITによって飛躍的に高まった。ソーシャルメディアの登場はそれを加速させている。
今や、消費者はいたるところに「消えない足跡」を残してくれるようになった。
それを利用した新たな消費者理解の方法論が開発されてきた。

新たな消費者理解の知見は、さまざまな成果となって現れてきた。
夕学でもいくつかの事例がある。
・オンライン上のコミュニティをマネタイズすることに成功した武田隆氏(エイベック研究所)

・消費者を起点としたイノベーションを研究している小川進先生(神戸大学)

・ネットを通じてつながることで生まれる経済システムを説く國領二郎先生(慶應大学)

photo_instructor_746.jpg「クチコミマーケティング」もそのひとつであろう。
10年以上に渡って「クチコミマーケティング」を研究してきた慶應ビジネススクールの山本晶(ひかる)先生は、本当にクチコミは売れるのか、というど真ん中の疑問を解明すべき調査研究を行ったことがある。

結論からいえば、「クチコミは売れる」という結果が出た。

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武田双雲という人

photo_instructor_737.jpg NHK大河ドラマ「天地人」など、数々の題字を手掛ける書道家の武田双雲氏。自身を「スーパーポジティブ」と語る武田氏だが、元々はネガティブでイライラすることも多かったそう。どのようにして「スーパーポジティブ」になれたのか。武田氏は「ポジティブは技術、毎日の積み重ねで誰でも出来る」という。

 現在、江の島に住んでいる武田氏はあることに気が付いた。
江の島駅では、みんな笑顔で電車から降りてくるのだ。しかし、丸の内のようなオフィス街では、電車から降りてくる人たちの表情が暗い。今から遊びに行く人と仕事に行く人の違いだ。ポジティブとネガティブは、何か大きなことがあって決まるのではない。
同じ人がポジティブにもネガティブにもなることに気が付き、武田氏は生活の中での感情の持ち方を変えていった。

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宇宙飛行士に学ぶメンタルマネジメント

photo_instructor_736.jpg「浦島太郎と桃太郎どちらが好きか?」
JAXAで宇宙飛行士選抜に関わる松崎一葉氏が、最終候補生を3人に絞るための面接で聞く最後の質問である。あなたならどちらを選ぶだろう?
今まで難しい試験に合格してきたとしても、答えによって運命が決まってしまう。
浦島太郎か桃太郎かで、宇宙飛行士への適性がわかるのだ。

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安倍首相の言う『集団的自衛権』は、 従来からある『個別的自衛権』の一部分のことだと理解しました

photo_instructor_735.jpg 「集団的自衛権」の行使容認について賛否を問われれば、私は「反対」と答える。理由は、それはいつしか日本の平和を脅かし、戦争への距離を縮めることになると、なんとはなしに感じるからだ。
 ただし、「集団的自衛権、絶対反対!」と声高に主張するだけの自信が私にはない。
 正直に言えば、集団的自衛権が何を意味するか正確に理解しているとは言い難いし、今年7月に行なわれた閣議決定が実のところどれだけの威力を持つのか、そして日本という国のありようがこの決定でどんな風に変わっていくのか、実際のところはよくわからないというのが本当のところだ。
 印象的だったのは、7月1日の閣議決定後、安倍首相が記者会見で「今回の決定により、戦争の可能性がより小さくなった」という趣旨の発言をしていたこと。集団的自衛権に反対する人々も「戦争をしない国であり続けるために」反対しているのに、推進する人々もまた、同じ目的のために全く逆の決断を行なったという事実。同じ目的を掲げつつ、正反対の主張をする両者の違いとはどこにあるのだろう?どちらの考察がより深く、より戦略的であって、より将来を見通せているのか。
 今回この講座に参加したのは、そうした疑問のひとつでも解決できればと思ってのことだ。講師は憲法学者の木村草太先生。木村先生の講演は、個人としての賛否や評価を述べるのではなく、あくまで学者の立場から、集団的自衛権を技術的に考察するというものだった。
 結論から言えば、今回の講演を聞き、私は極めて不安かつ不愉快な気持ちに陥った。集団的自衛権の解釈変更により戦争に巻き込まれるかもしれない、という不安ではない。現政権が、世に憚ることなく穴だらけの決定をしていたことを知り、そのいい加減さに呆れたのである。

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先進国におけるビジネスモデルイノベーション

photo_instructor_734.jpg最近は受験生が入試の日に、お弁当でトンカツを食べることは少ないそうだ。
親が子どもの胃もたれを心配し、お弁当に入れないからである。
しかし、験を担ぐ食べ物がなくなったわけではなく、約10年前からネスレの「キットカット」が受験のお守りになりはじめた。
「キットカット受験生キャンペーン」を成功させたのが、当時マーケティング本部長であった高岡浩三氏である。

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伊丹敬之教授に聴く、『孫子に経営を読む』

photo_instructor_748.jpg 『孫子』は、2600年程前に書かれた兵法書である。文字にして約6000字。その読み継がれて来た永さとは対照的な、本編の短さ。
 「しかし、これだけ密度濃く、内容の深い本はありません」
 伊丹教授はそう言い切り、その理由を論じ始めた。

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成熟社会を生き抜く力

photo_instructor_745.jpg 今回の講演は、教育改革実践家の藤原和博氏。テーマは『正解のない問いに向き合う力』。
私のように、初詣で10円の賽銭にも関わらず、「もっとお金が欲しいです」と祈っている人にとっては、必聴の講演内容だった。

 藤原氏が登場直後、「わたしが似ていると思う歌手の名前を『せーの』で言ってくださーい」と聴講者に投げかけると、一斉に「さだまさし!」とかえってきた。このただのウケねらいのような、投げかけが、今回の講演ではポイントになる。

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藤原和博さんの板書を公開!

昨日、今期第一回でご講演いただいた藤原和博さんが使った板書を、ご本人の了解をいただきましたので、アップいたします。

通常の講演では、終了後に受講者にカメラ撮影をOKにしているそうですが、会場の制約もありまして、昨夜はそれが出来ませんでしたので、代わりにこのプログにアップします。

1.「20世紀成長社会から21世紀成長社会へ」

白板1.JPGのサムネール画像


2.「情報編集力アップのための自分プレゼン術」

白板2.JPG


3.日本人の人生観は変わる
※上書きがありましたので当初とは異なります。
白板3.JPG


4.ニッポンの時給を考える

白板4.JPG

第4回 10/14(火) 木村草太さん

第4回10/14(火)に登壇されるのは、いま注目の若き憲法学者 首都大学東京准教授の木村草太先生です。

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木村先生のお名前を知ったのは夕学でもお馴染みの佐藤優氏のサイトでした。
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」
安倍内閣が推し進めている一連の憲法論議について、論理的かつ分かりやすく問題点を解説してくれる人はいないかと考えていたタイミングでした。

佐藤氏は「15秒でコメントしろ、というような制約のあるテレビのワイドショーでは、展開することが不可能な、ほんものの憲法論、国家論が展開されている。」と評しています。

調べてみると木村先生は、東大法学部を卒業後、大学院に進学するのではなく、東大に助手として採用されている。当時の東大には、オーソドックスな研究者育成コースとは別に、学業優秀な学生を対象に、任期付き(3年間)の助手として自由な研究環境を与えて、博士論文に相当する助手論文を仕上げるという特別コースがあったそうな。
通常は修士2年、博士3年(最短で!)の5年間かかるところを3年間で同水準の研究成果を求められるということなので、かなりの狭き門ということかと思います。

さて、昨今の憲法論議ですが、安倍さんをはじめとする保守派勢力が、したたかな戦略のもと、よく考えられた手順で議論をリードしているような気がします。

かつてのタカ派は威勢良く、憲法改正を叫ぶだけでしたが、今回の一連の憲法論議は異なります。
真正面から憲法改正を持ち出すのではなく、まず「憲法96条改正」という迂回路を提言し、それも難しそうだとなると、集団自衛権の解釈変更という変化球を投げ込んでくる。
そのしたたかな戦術は、かつでの陸軍エリートが推し進めた大陸進出政策を想起させます。
「誰もがおかしいと気づいた時には遅かった」とならないようにする必要があります。

近代憲法が、権力を抑制するための知恵として生まれたことを考えると、権力を握る人達の手によって進められる憲法改正が、我々国民にとって望ましいものであるか、慎重な見極めが必要ではないでしょうか。

木村先生に、分かりやすい解説と論点整理を期待したいと思います。


・木村 草太
・首都大学東京法学系 准教授
・演題:「憲法論の急所」

講師紹介ページはこちらです。

第3回 10/9(木) 高岡浩三さん

第3回 10/9(木)にご登壇いただくのは、ネスレ日本社長の高岡浩三さんです。

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ネスレは、<ネスカフェ アンバサダーシステム>というビジネスモデルでオフィスマーケットを席巻中です。
アンバサダーを組織化して、本格的な味わいを楽しめる高機能コーヒーマシンの無料設置を武器にオフォスのコーヒー需要を開拓しようというビジネスモデルです。すでに十数万人のアンバサダーがいると聞いております。

インスタントコーヒーの代名詞でもあったネスカフェですが、その圧倒的な認知は、典型的な成熟ブランドとして成長の頭打ちを意味するものでもありました。
<ネスカフェ アンバサダーシステム>は、成熟マーケットの老舗ブランドが開拓した新たなビジネスモデルとして画期的な成功例と言えるかと思います。

高岡社長がこのビジネスモデルを開発したきっかけは、ネスレ日本の子会社である、ネスレコンフェクショナリー株式会社マーケティング本部長として「キットカット受験生応援キャンペーン」を大成功させた経験があるそうです。
「きっと勝つ」と「キットカット」という冗談のようなゴロ合わせから生まれたキャンペーンでしたが、大手予備校のゴミ箱にキットカットの包装紙を捨てて廻るというゲリラ的なマーケティング活動もあって、見事に定着しました。

ちょっとしたアイデアをビジネスモデルに仕立て上げる。
口で言うのは簡単ですが実行するのはとてつもなく困難なことかと思います。それを見事に実現してみせた高岡社長に、体験的ビジネスモデル論をお話いただければと思います。

・高岡 浩三
・ネスレ日本株式会社 代表取締役社長兼CEO
・演題:「成熟先進国におけるビジネスモデルイノベーション」

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第2回 10/3(金) 伊丹敬之さん

第2回 10/3(金)にご登壇いただくのは、日本経営学の泰斗、東京理科大学大学院教授の伊丹敬之先生です。

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伊丹先生には、一橋大学に在籍されていた頃から何度も夕学でお話いただいてきました。5回目の登壇はおそらく夕学最多登壇のおひとりになるかと思います。
今回は中国古典「孫子」を経営書として読み解く講演になります。
書店で伊丹先生の最新刊『孫子に経営を読む』(日本経済新聞出版社)を拝見して、これは夕学でお話しいただかなくては、と早速お願いしたものです。

伊丹先生が提唱してきた「人本主義」「場の理論」といった概念は、いずれも日本組織が大切にしてきた「人間の可能性を信じる」という価値観の有効性を論理的・実証的に解き明かしてくれたものだと理解しています。
そんな伊丹先生の関心が、古来から戦略書として多くの人々に読み継がれてきた「孫子」に向くのは自然のことなのかもしれません。

私(城取)も、慶應MCCagoraの中国古典シリーズで「孫子」を読み、そのしびれるような至言に感銘しました。

「戦わずして兵の屈するは善の善なるものなり」

放映中の大河ドラマ『軍師官兵衛』では、「孫子」を自家薬籠中の物にしていたと伝えられる黒田官兵衛が「戦いに勝つための秘訣は、平時の備えにある」と事ある毎に語っています。
これこそ経営にそのままあてはまる戦略の要諦かと思います。

伊丹先生が語る「孫子」。聞き逃せない講演です。

・伊丹敬之
・東京理科大学大学院イノベーション研究科 教授
・演題:「孫子に経営を読む」

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2014後期が始まります。第1回 10/2(木) 藤原和博さん。

2014年後期の「夕学五十講」の申込・予約の受付を開始しました。

早々にご予約くださいました皆さん、ご注目・ご予定くださっている皆さん、ありがとうございます。たくさんの方がご関心をお寄せくださり、とてもうれしいです。ご期待にお応えしていきたいと思います。今期もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、本日より恒例の今期の登壇講師の紹介をしていきたいと思います。
10/2(木)の第1回に登壇いただきますのは、教育改革実践家 藤原和博先生です。

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夕学五十講は5回目と、もっとも多くご登壇いただいています。常に、革新をおこし、実績を出され、メッセージを発信されている方なので、お話もいつも新しく、そしていつも、明るく前向き、具体的で実践的です。今回もどんなお話がお伺いできるのか、どんな藤原さんにお会いできるのか、とても楽しみです。

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ところで、初登壇いただいたのは2003前期でした。リクルートのトップセールスや新規事業部長をへて、年俸制のフェロー制度をつくり、その一号になられた藤原さんが示し、実行されたのは、「会社と個人の新しい関係、新しい働き方」でした。当時それは日本の社会に、企業に、私たち個々人に大きなインパクトでした。

2回目は2005年後期。東京都初の民間人校長として、杉並区立和田中学校長に就任し、改革に取り組まれている最中でした。

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知的創造には、ダイジェストする力。阿刀田 高先生。

takashi_atouda.jpg今期の最終回にまさにふさわしいご講演でした。小説家 阿刀田高先生による『知的創造の作法』。

阿刀田高先生は、短編小説、なかでもアイデア小説の書き手、として知られます。これまでなんと900篇以上の作品を生み出してこられました。それからもうひとつ。難しい古典をやさしく、楽しく、ダイジェストする、"知っていますか" シリーズでも人気です。ギリシャ神話、旧訳・新約聖書、古事記、源氏物語etc。私自身、阿刀田先生のダイジェストのおかげでどれほどに古典の理解が深まり、世界が広がったことでしょう。

まさに、知的創造の達人。アイデアを探すプロフェッショナル。
そんな阿刀田先生がその作法を明かししてくださいました。
すごいことだなあ、と同タイトルの著書が出版されたときにも私はいたく感心しました。そして今回は、本に込められたメッセージの、さらなるダイジェスト、でした。ぎゅっと。

では、知的創造の作法とは何でしょうか。

ダイジェストする力

このひとことに尽きる。と私は講演から受け取りました。
知識を、目的にあわせて、自分なりにダイジェストし、自分の知識として蓄えておく。それがクリエイティブになるための、知的創造のための方法。

では、ダイジェストとは何でしょうか。
「知識」「目的」「自分」の3つが重なっているところ、だと阿刀田先生は解説されます。
『知的創造の作法』のP19に図が載っています。私は、「知識」X「目的」X「自分」=知的創造 のかけ算でもあるのかな、と思いました。

「知識」
ダイジェストする対象そのものです。当然、豊かであるに越したことはありません。けれども多ければそれでよいかというとそうではありません。役立っている知識や語られ信じられてきた知識というのは、案外とてもいい加減なんですよ。先生はそう添えられます。

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日本のものづくりは「夜明け前」である。 藤本隆宏さん

日本のものづくりは「夜明け前」である。

ものづくり経営研究の先駆者であり第一人者、東大の藤本隆宏先生は、昨年末から事ある毎にこのメッセージを発信してきた。
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残念なことに、この20年間、日本のものづくりは猛烈な逆風下にあった。閉鎖した工場、海外移転を余儀なくされた工場は数知れない。
その状況を知り尽くした藤本先生が何を持って「夜明け前」というのか。
それを知りたくて、8年振りに夕学に来ていただいた。

なぜ「夜明け前」か。
藤本先生は言う。
長期動向の潮目が変わった。不可逆的変化が起きつつある。
変化とは、新興国の賃金上昇である。
中国では5年で2倍、タイでは年率40%のペースで工場労働者の賃金が上昇している。
中国脅威論が出始めた10数年前によく言われた「低賃金で働く労働者が内無尽蔵に供給されている」という状況がようやく終わりつつある。
経済学的にいえば、「無制限労働供給」の終焉である。

「大リーグボール養成ギブスを着けて戦ってきたようなものだ」

藤本先生は、この20年間の日本のものづくり現場での戦いをこう評した。
日本の20分の1の賃金コストですむ新興国との戦いは、生産性を2倍~3倍上げたところで焼け石に水。圧倒的なに不利な条件下での戦いであった。
しかし、5分の1程度のコスト差なら十二分に戦える。
そういう時代がようやく訪れようとしている。

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面白い絵、面白いお話、もっと面白くなりました 画家 山口晃さん

akira_yamaguchi.jpg 「私見、日本の古い絵」と題して、画家の山口晃さんにご講演いただきました。

日本の美術が、西洋の真似をしはじめ、西洋に追いつこうとする、前。日本にはヘンな絵がありました。日本の古い絵はヘンだぞ、面白いものがあるぞ、誇れるすばらしいものがあったんだぞ。それが、山口さんの私論でした。面白いお話でした。そして、美術がもっともっと面白くなる、山口さんの作品を見るのももっと面白くなっていく、そんなお話でした。

山口さんの著書ヘンな日本美術史』(祥伝社)は、2013年の小林秀雄賞を授賞されたことでも、話題となりました。

小林秀雄賞は、日本語表現の豊かな著書(評論・エッセー)に贈られる、文芸評論家 小林秀雄の生誕100年を記念して創設された学術賞。山口さんは初めて、画家として、授賞されました。授賞理由は、「読んでおもしろい」からだったそうで、やはり面白いということなんだなあ、と思います。山口さんご自身が面白いものがあるお、ヘンなものがあるぞ、と面白がっていらっしゃるのが、お話からも伝わってきてまたそれが聞いている側が面白くなっていく、そんな面白さの対話とでもいいましょうか、があるんだなと思いました。

お話は「鳥獣人物戯画」から始まり、雪舟、そしてさいご、川村清雄まで、たっぷりとお話いただきました。

「ヘンとは何ですか」「ハイすみません」
講演さいしょのスライドは、そう雪舟に怒られている山口さん筆の水墨画。それだけに雪舟はヘンだぞ、面白いぞという思いを予感しましたが、期待どおり、期待以上で「雪舟は面白いんだなあ」と実にわくわくしました。

「雪舟は、ひとつの原点であり、頂点です。」と山口さん。

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言い続ける、やり続ける、実行力 松井忠三会長

tadamitsu_matsui.jpg 株式会社良品計画 代表取締役会長 松井忠三さんにご講演いただきました。

無印良品の誕生、コンセプトから、成長、挫折、復活までの軌跡。風土改革、MUJI GRAM、海外展開、人材論、新規開発、商品開発、そして経営姿勢まで。実に、たくさんのお話をしてくださいました。溢れ出て、伝わってきたもの。それは、無印良品の強さの秘訣であり、魅力の秘密でした。けれども、秘訣で秘密のようですのに、松井さんはまったく惜しげなく、具体的なエピソードと豊富な資料を提示しながら、ていねいにお話くださいました。めぐってそれが"シンプル"なのかもしれない。振り返り、思います。

松井さんが社長に就任された2001年。無印良品は業績がもっとも低迷していたころでした。赤字、撤退、混乱、弱体化、、、「無印の時代は終わった」とさえ言われました。そこから松井さんの経営改革が始まります。
やるべきことを見極め、やるべきことには正面から取り組み、やるべきことは続ける、やるべきことをシンプルな仕組みにし浸透させる、やるべきことをDNAにした、、、松井さんの経営改革はつまり、"実行した"こと、実行し続けたこと、にありました。強くて魅力的なブランドであり企業である無印良品は、奇跡からではなく、実行の軌跡から生まれたことが、今日のお話でよくわかりました。

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アインシュタインの最大の偉大さは「あきらめなかった」こと  上田正仁さん

かつて、慶應MCCのファウンダーである妹尾堅一郎先生が「問題解決症候群(シンドローム)」ということをよく言っていた。

・問題は与えられるものである
・問題には唯一の正解がある
・問題の解き方は誰かが知っている

日本人には、これらの思考の癖が、病魔の如くに染みついているというものだ。

photo_instructor_729.jpg20年前、東大で物理学を教えていた上田正仁先生も、同じ問題意識を抱いたようだ。

大学で伸びる人、社会(大学院)で伸びる人とそうでない人を分かつものは何か。
それは、自分に対する評価基準が変わることへの「変化適応能力」の有無ではないか。
上田先生は、そう考えた。


「問題は与えられるもの」から、「問題は自分で設定するもの」へ
「問題には唯一の正解がある」から、「正解は複数あってよい」へ
「問題の解き方を憶えること」から、「新しい解き方を見つけること」へ
評価の基準が変わることに、思考の型が適応できるか否かである。

上田先生は、優秀さを三つの力の三層構造で整理している。
マニュアル力、考える力、創造力の三層である。
1)マニュアル力
答えが決まった問題を、速く、正確に解く力。 受験勉強にはこれが必要である。

2)考える力
ひとつの難しい問題を長時間考えつづける力。 大学はこれを求める。

3)創造力
自ら課題をみつけ、独自の解決方法をあみだす力 博士課程、社会はこれを問われる。

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組織と個人の見えざる約束  服部泰宏さん

いわゆる「日本的経営」と言われる概念を言語化したのは、実は日本人ではない。
半世紀以上前に、米国の経営学者ジェームズ・アベグレンが『日本の経営』で分析してみせたのがその嚆矢だと言われている。
アベグレンは、戦後の日本企業の発展の理由を分析するうちに、日本企業と従業員の間に明文化した文書こそないが、互いに相手を信じて懸命に守ろうとしている「書かれざる約束」があることに気づいた。
彼は、その約束を「Life Long Commitment」と呼び日本的経営の中心概念に据えたという。
『日本の経営』の訳者占部都美氏(当時神戸大学教授)が「Life Long Commitment」を終身雇用と訳したことから、アベグレンは終身雇用という言葉の産みの親と言われている。

photo_instructor_717.jpg今夜の夕学講演者服部泰宏氏は、アベグレンの着眼点を占部氏とは異なる意味合いで理解しようとしている。経営学の泰斗で同門の大師匠にモノ申さんとする心意気やよし。これからの活躍が期待されるライジングスターである。

さて、服部先生が言わんとするのは、アベグレンが指摘したのは雇用形態ではなく、組織と個人が「書かれざる約束」に基づいて形成している関係性のことではないか、というものである。
「組織と個人の関係性」それが、服部先生の研究テーマである。

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ドラマ『半沢直樹』が生まれるまで 福澤克雄さん

いまとは違って20年程前まで、その年のラグビー日本一は、社会人の日本一チームと大学の日本一チームによる決定戦によって決していた。確か1月15日と決まっていたと思う。
1985年に慶應ラグビー部がトヨタ自動車を破り、慶應史上初の日本一に輝いた時の中心選手の一人が、本日の講師福澤克雄氏である。

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日本代表チームにも選ばれたこともある、将来を嘱望されるラガーマンだったという。

ところが福澤さんの夢は、ラグビーではなく「映画監督になる」ことであった。
慶應幼稚舎時代の担任が語った「一生続けられる仕事を見つけろ!」という言葉を素直に受け止めていた克雄少年は、映画『スターウォーズ』に出会って以来、その思いを忘れずにいた。

紆余曲折を経て、TBSに中途入社した。
「これからはテレビ局が映画を作る時代が来る。ドラマの経験を積んで準備をしておけ」
という先輩の助言が頭にあったという。
体育会で鍛えた仕切り屋の腕前と体力で下積み生活を乗り切って、35歳の時に『3年B組金八先生』でドラマ監督デビューを果たした。当時生徒役で出演したのが上戸彩であった。
2003年、明石家さんま主演で沖縄戦を描いた『さとうきび畑の唄』で文化芸術祭大賞を受賞し、ディレクターとして確固たる地位を築いた。
ジャニーズ事務所に食い込んでSMAP出演ドラマを一手に引き受けるようになり、『砂の器』(中居正広主演)『華麗なる一族』(木村拓哉主演)など大型社会派ドラマを次々ヒットさせた。2009年には『私は貝になりたい』で映画監督の夢を実現した。

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自分で考えよう。学びたいことは学ぼう。池上彰先生

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「お父さんのイメージがあるのでね。」

講演あとの楽屋で、池上先生はそう笑っておっしゃいました。
お会いして一瞬で場は和やかになり、お話すれば思わずほっとする方、お目にかかり、"あの"お父さんの雰囲気そのものと思いましたが、たしかに講演では意外なところもありました。
おだやかな口調で、わかりやすい解説、ここまではイメージ通りながら、きびしいご指摘やするどい問題提議を次々されます。学生の頃から、本が大好きでいらしたというのは期待通りながら、その入手方法はパチンコ屋の景品、ちょっと予想外の一面でした。

岩波文庫のショーペンハウエル著 『読書について』 は、その一冊でした。

「頭をぶん殴られた感じ。」
読んだとき、それほど、衝撃を受けられたそうです。

読書とは、他人の思考の運動上で運動するようなもの。読書だけしていては、自分で物を考える力が失われる。とショーペンハウエルは言うのです。本をたくさん読んできたけれど、自分はただ読んでいるだけだった、自分でその本について咀嚼することをしてこなかった、と池上先生は気づかされたそうです。自分で考えてこそ。池上先生の原点がありました。

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輿論と世論の違いが分かりますか?

「世論」と書いて「よろん」と読むのは、いまの時代一般的な感覚であろう。
「世論」の意味を「世間一般の意見のことで、公共の問題について、多くの人々が共有している意見」とするwikipediaの解説に違和感をもつ人は少ないに違いない。

しかし、「世論」という言葉の使われ方には肯定と否定の両面がある。
「政治家は世論の意見に耳を傾けよ」という言い方をする。肯定的な使い方である。
「浮ついた世論に流されてはいけない」と言ったりもする。こちらは否定的な立場である。

辞書を引くと、「かつては(よろん)は輿論と書き、世論は(せろん)と読んだ」とある。

佐藤卓己先生によれば、本来両者の意味は明らかに異なった。その違いは日本語で説明するよりも英語で表現した方が分かりやすい。

輿論:Public opinion  
世論:popular sentiments

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実際に、明治の知識人や新聞は、両者を的確に使い分けていたという。
「輿論は天下の公論」として尊重すべきものとされ、「世論は外道の言論・悪論」として受け流すべきものとされていた。

「輿論」は正確な知識・情報をもとにして、議論と吟味を経て練り上げられるべきものに対して、「世論」はたぶんに情緒的な感覚、日本語でいえば「空気」のようなものである。
大きく異なる概念をひとつの言葉に統合してしまったことが、イメージの両面性に起因する。

佐藤先生が問題視するのは、両者の概念混同がなぜ起きたのかという理由もさることながら、むしろ混同によって起きた現象である。
情緒的な感覚意見でしかない「世論」が、議論と吟味を経て練り上げられた「輿論」であるかのように重視され、世の中を動かすようになってしまったという事実である。

例えば、新聞の世論調査で示される内閣支持率は、情緒的な感覚意見を数値化したものである。タレントの好感度調査とよく似ている。
にもかかわらず、内閣支持率が20%を割ると、マスコミは「いよいよ危険水域に入った」と大見出しを打つ。その数字を受けて政治家は倒閣に走り出す。
世論調査が社論を決め、政局を動かしている。
逆に言えば、内閣支持率が高ければ、マスコミの政権批判は迫力を欠き、内閣は何をやっても許される風潮が生まれる。安倍政権はまさにこの状態である。

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スポーツがめざすは守破離 山口香さん

yamaguchi.bmp山口香さん。かっこいい方でした。ハリのある白な柔道着を着て、凛々しく立つ山口さんの柔道姿、とてもかっこよかった。印象に残っています。信念をもって、力強く情熱的に、それでいて軽妙で明るく、お話くださった今夜の山口さんも、とてもかっこよかったです。

一芸に秀でている人は何にでも秀でている

よく言われる言葉ですがスポーツもまさに同じです。スポーツにどんな意味・価値があるのか。スポーツはなぜ社会に役立つのか。そして暴力がなぜ悪いのか。コーチの役割とは何なのか。柔道家であり指導者であるからこその持論を山口さんは語ってくださいました。スポーツのみならず仕事やマネジメント、生き方へのヒントも、たくさんあるメッセージでした。

守破離

山口さんは「守破離」の「破」「離」ができることで、スポーツが社会に役立つとおっしゃいます。スポーツの稽古に励み、勝負に挑むのは、そういう人間をつくるためです。
道にある「守破離」という言葉。山口さんは「守」とは「わかる」、「破」とは「できる」、そして「離」「つかえる」ようになることだと言い替えて教えてくださいました。稽古によって基礎を身につける自分を高めていく、勝負でお互いを高めていく、できるようになる、力がついていく、そしてさいご「つかえる」ようになってこそ。

「つかえる」とは、「世の中で自分の道ではないところで通用する」ことと山口さんはおっしゃいます。
スポーツをやる目的は、強くなる、金メダルをとる、ことではありません。世の中の役にたってこそです。そして、スポーツはその力を育む力や可能性を十分にもっていて、だからこそ道が受け継がれ鍛錬されてきたのでしょう。

しかしこれに至れるかは、指導者の責任も大きいと山口さんは力をこめられます。
指導者がときおり、「道」に立ち戻り、その精神をしっかり語り、教えなければ、伝わりません。体を鍛え技を磨くだけでは、強く勝てる選手にはなれるかもしれないけれど、離には至れません。
柔道で世界トップを極めた実力と実感、指導者としての経験とが礎にあって、山口さんのお話には説得力がありました。

スポーツは社会の縮図

では、社会で役に立つとはどういうことでしょうか。スポーツにはルールがあります。

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人間の自由と組織の本質 菊澤研宗さん

「科学は哲学から生まれ、哲学は神学から生まれた」

分子生物学者の村上和雄先生から聞いた言葉である。
実に深くて味わいのある言葉だが、それゆえ単純なことではないようだ。

photo_instructor_731.jpg菊澤研宗先生によれば、
20世紀初等の欧州で、科学は自らを産み落としてくれた哲学への反駁を始めた。
「科学が進歩すれば、哲学など必要なくなる」
ウィーン学派と呼ばれる集団は、論理実証主義を奉じて哲学的領域への浸食を始めた。

これに対してカール・ポパーが立ちはだかった。
論理実証主義者が主張する科学的方法論の万能性を、ひとつひとつ論理的に反証していった。

「すべての問題を科学で解決出来るわけではない。科学は哲学を抹殺できない」

それが20世紀の「科学vs哲学」論争の論理的帰結であった。

菊澤先生はこの春まで二年間アメリカに在住していた。
間近で見た21世紀のアメリカでは、再び科学万能主義は台頭しているという。

「科学でなんでも説明できる。哲学・美・倫理でさえも科学で扱える」

例えば、美しい絵画を見て感動している人間の脳内血流の動きを科学的に分析すれば、美とは何かも解明できる。
科学主義者は、そう主張しているという。

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和食とはうまみ、京料理とは寸法 菊乃井主人 村田吉弘さん

moto_yosihiro_murata.jpg 京都の老舗料亭 菊乃井三代目主人 村田吉弘さん。料理人として、料亭主人として、京都人として、日本の将来を考えるひとりの大人として、そして日本人として語ってくださいました。和食とは何か、日本料理とは何か、京料理とは何か、文化とは何か。

和食 日本人の伝統的な食文化」は昨年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録され話題となりました。村田さんは理事長を務めるNPO法人日本料理アカデミーとともにその仕掛け人・発起人でいらっしゃいます。

では、和食がユネスコに登録されたというのはどういうことでしょうか。
そして、和食とは、日本料理とは、京料理とは何でしょうか。
これが村田さんのメッセージでもありました。

村田さんによると、日本料理とは、うまみの料理だそうです。

母乳は糖、脂質、うまみ成分でできています。食も同じです。パン、お米、小麦、まず世界のどこでも糖を食べます。そして特筆すべきは他の国々の料理は脂質が中心であるのに対し、日本は世界で唯一、うまみ成分を中心に料理があることです。 うまみといえば "だし"です。
おいしいだけでなくこの"だし"は0キロカロリー。コンソメなり鶏だしなりだしにあたるものはどれも高カロリーです。うまみ成分には心を落ち着かせる効果もあります。、和食とはうまみの料理、そしてうまみが、世界でもまれな低カロリーで栄養バランスのよい健康的な料理を実現しているのです。

次にでは、京料理とは何でしょうか。村田さんによると京料理とは「寸法」です。

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ダイオウイカを追いかけて 窪寺恒己さん

作家の荒俣宏氏によれば、博物学の歴史は大航海時代の到来とともに始まるという。
命知らずの探検家や一攫千金を夢見る商人達が繰り出す船団の中には、古今東西の珍奇なもの、ワンダー(驚異)なものを探そうとする博物学者たちも乗っていた。ドラゴン、ミイラ、人魚など彼らが探そうとした未知の珍物のひとつにクラーケン(海魔)と呼ばれる謎の巨大頭足類があった。

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中世の船乗り達に口伝されていたというクラーケンこそが、今夜の夕学ゲスト窪寺恒巳先生が追いかけてきた「ダイオウイカ」である。
ギネスでは全長18Mとされているが、測定法がやや眉唾的で、信憑性の高い最大全長は14.4M(触腕込みの長さ)、体長は7M。いずれにしろ巨大なイカである。

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多くの研究者や海洋ジャーナリストが生きたダイオウイカの撮影に試みたが、失敗が続いてきた。なにせ相手は水深600M~900Mの深海に棲む。真っ暗闇の世界である。

窪寺先生も2002年から小笠原沖で調査を開始し、2004年には世界初の連続静止画撮影に成功した。
2006年には、生きているダイオウイカを釣り上げる場面を動画撮影することにも成功した。

ダイオウイカC.jpgのサムネール画像

そして2009年、NHKグループが海外メディアと組み、世界の研究者、専門家を集結する大規模プロジェクトを結成。窪寺先生も加わった。
ダイオウイカの生きている姿を撮影するためにはクリアするべき条件がいくつかあった。
・イカには見えない微細な"赤い光"(近赤外線)をあてること
・微細な光で撮影できる高感度カメラを開発すること
・30時間以上の長時間撮影を可能するカメラシステム(後にメデューサシステムと呼ばれる)
・イカを誘因する方法の用意(生物発光、フェロモン、えさ等々)

それらをクリアして、いよいよプロジェクトがスタートしたのは2012年のことだった。
場所は小笠原沖。窪寺先生自身が成功確率1%と推定するほどの一か八かの大勝負であった。
ディープローパー、トライトンという2機の潜水艦が活躍した。いずれも水深1000Mまで潜ることができる。

潜水艦A.bmpのサムネール画像

潜水艦B.jpgのサムネール画像のサムネール画像

調査隊は見事に3度に渡る撮影に成功する。
無人カメラメデューサが2回、そしてハイライトは、窪寺先生が乗り込んだトライトンで撮影した23分に及ぶ映像であった。
黄金色、シルバーに輝くその姿は神秘的な感動をもたらせてくれる。
その様子はNHKオンデマンドで観ることができる(有料)
「NHKスペシャル 世界初撮影!深海の超巨大イカ」
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2013046478SA000/

ダイオウイカの生態もいくつか解明できた。
彼らは、元は浅瀬に棲むイカだった。それが進化の過程で深海に適応していった。だから目もあるし、墨袋も残っている。黄金色、シルバーの輝きもその名残だという。
彼らを追って、マッコウクジラも深海まで潜るようになった。ダイオウイカが巨大化したのは、マッコウクジラに補食されにくくするための環境適応だったと考えれる。

ダイオウイカは600~900Mの深海に潜み、じっと上を見つめている。太陽光がほんのわずか差し込んでくるので下から仰ぎみると獲物の影が見えるのだ。獲物を発見すると静かに近づき、巨大な腕を広げて一気に包み込むように捕食する。

深海にはダイオウイカ以外にも巨大なイカがたくさんいる可能性がある。マッコウクジラの巨体がそれを示唆してくれるという。あの身体を維持するに足る十分なエサ(巨大イカ)の量があるということだ。
人間が、深海の謎究明の入口に立ったばかりのようだ。

人はいろいろ、医もいろいろ、人生いろいろ、だから、レジリエンス 新見正則さん

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Improbable!
そんなこと、あり得ないよな!でもそうだったんです。

オペラ椿姫を聴かせると心臓移植が上手くいきました。病は気から。脳が免疫をコントロールしています。
新見正則先生はこの研究結果でイグ・ノーベル賞を授賞されました。"something improbable"を理念とし、人々を笑わせ、そして、考えさせるな研究結果に与えられる国際的なイグ・ノーベル賞。会場が笑いにわいた授賞式の新見先生とネズミさんチームのスピーチは、BBCはじめ世界のメディアで報道されました。You tube でもご覧いただけますのでぜひどうぞ。
イグ・ノーベル賞受賞スピーチ

Something improbable!そんなこと、あり得ないよな!
以前はそう思われていたことが世の中で起こり、できるようになり、当たり前になったりもしています。インターネットもそうですし、山中伸弥先生のiPS細胞もそうでした。医療そのものも、同じです。サイエンスであり確かな答えがあるとは、私たちの思い込み。経験則にもとづいて、いま一番良いと思われていることをしているに過ぎません。Improbableが起こり飛躍的に進歩することもあれば、正しいとされていた方法や基準値が変更されることもあります。
人はいろいろ、何が効果があるかも人それぞれ。医療はグレーで、医療だって市場原理。ですから、自分で考え、選ぶ、という意識が必要です。新見先生のメッセージでした。


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里山資本主義 藻谷浩介さん

photo_instructor_712.jpg藻谷浩介氏は、政府系金融機関在職時代(日本政策投資銀行)に、平成大合併前の3,200市町村の全てを自費で巡歴したという。しかも2度、3度廻った地域も多かったと聞いていた。
藻谷氏に率直に聞いてみた。

「なにがそこまでのモチベーションになったのですか?」


答えは、この講演のスタンスにも通じるものがあった。

事実を確かめたかった。
「○○○○と云われている」=情報や理論ではなく
「□□□□であって欲しい」=信念やイデオロギーでもなく
自分の目と足で確かめる。
そうすると目から鱗が落ちるような思わぬ事実に出くわすことがある。
それがとにかく面白かった。

藻谷氏が講演で使った資料の言葉を借用すれば
1.統計と実例から帰納し、確実に事実と言えることを押さえる
2.統計と実例から帰納し、確実に間違いと言えることを押さえる
3.どちらとも言えない領域について、仮説を元に仮判断を下し、後日検証する
そのために、訪れた市町村の、地形・交通・産業・人口動態・通勤通学動態・郷土史等を詳細に把握した。
これが藻谷氏の首尾一貫した調査スタイルである。

新書大賞2014に輝いたベストセラーで、今回の講演テーマでもある「里山資本主義」という考え方も、同じ姿勢で形成されたものだ。
中国山地の里山で、実際に行われ、立派な成果を出している実例で、なおかつ、工夫さえすれば他の地域でも展開可能な地域のあり方を提示したものだ。

例えば、岡山県真庭市では、集成材工場の副産物(産業廃棄物)である木屑をペレットに成型し、専用ボイラーで燃やすことで、極めて高効率の発電を実現している。ペレットは灯油の半額、電力の1割が木で賄うことができている。

例えば、広島県庄原市には、石油缶を再生利用した手作りのエコストーブを作り、少量の木切れを完全燃焼させて、おいしく煮炊き+暖房を実践している人がいる。しかも「過疎を逆手に取る会」と名付けた仲間を募り、暮らしの中での創意工夫を楽しんでいる。

「里山資本主義」についてはこちらを参照
http://www.nhk.or.jp/eco-channel/jp/satoyama/interview/motani01.html

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普通にでも前向きに。日々の仕事のなかで自分でつくるキャリア 花田光世さん

photo_instructor_726.jpg 花田光世先生にご登壇いただきました。キャリア、人材開発の分野で日本を代表する専門家であり、実践的研究者でいらっしゃいます。キャリア自律、キャリアアドバイザー、プランドハプンスタンス、花田先生が提唱されてきたキャリア論がありました。皆さんもご存じの言葉、もしかしたら人事制度や研修にも登場する身近なコンセプトではないでしょうか。

「自分の居場所をつくる」。今回の講演タイトルです。さて、どういうことでしょうか。肝は「つくる」にありました。

・キャリアに当事者意識をもつ。
・日々の仕事に向き合うなかで、
・モチベーションも自分で積極的につくりながら
・キャリアを自分で構築していく。
・それによって、自分の居場所は、自分でつくっていく。

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「情報余り時代」のビジネスモデル 小川進さん

photo_instructor_706.jpg小川進先生とは、実に12年振りの再会であった。
まだ、夕学五十講が昔の新丸ビル地下の大会議室でやっていた時(2002年5月)に来て頂いて以来である。
調べてみたら、その時の講演タイトルは「顧客と店舗の知恵を活かす経営」であった。
次のような内容紹介がされていた。


90年代以降に存在感を示した流通企業の仕組みについて紹介します。 セブンーイレブン、しまむら、ユニクロ、マツモトキヨシといった企業が どうして成長することが可能であったのかを事業運営の仕組みといった視点から 説明します

当時小川先生は、『イノベーションの発生論理』で組織学会の高宮賞を受賞したばかりで、それを実務家向けにリライトした『ディマンド・チェーン経営』も話題になっていた。新進気鋭の若手マーケティング研究者であった。

いま思えば、今回の講演の萌芽のような話をされていたのだなと思う。
「ユーザーイノベーション(消費者を起点としたイノベーション)」は、当時から一貫して小川先生が追究してきたテーマである。
ひとつのテーマを10年以上続ける姿勢は研究者の範になるべきだ。素晴らしい。

さて本題。
小川先生によれば、マーケティングの世界では、2005年以降大きくパラダイムが変わったという。ソーシャルメディアの登場が転換点であった。
消費者が、購買にあたって入手できる情報量が飛躍的に増えた。にもかかわらず、消費者が選択できる情報はそれほど増えていかない。
「情報余りの時代」が到来した。

歴史をみれば時代が変わる時に必ず新たな時代に適合する企業群が登場してきた。
フォード、トヨタ、セブン・イレブン、アマゾン等々がそれにあたる。
だとすれば「情報余りの時代」にも、新たな企業群が生まれるはずである。

それは「ユーザーイノベーション」の取り込みに成功した企業であろう。
小川先生はそう予見する。

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40代50代まだまだこれから。だからこそ多様な働き方。明るい未来 柳川範之先生

noriyuki_yanagawa.jpg柳川範之先生は、小学校4年生から中学1年生をシンガポールで、高校時代をブラジルで、過ごされたそうです。楽屋でご挨拶のあと、ふとそんなお話になりました。時代は1970年。帰国子女がまだまだ珍しかった時代、そして、シンガポールは独立間もなく、ブラジルは債務激増の時代です。

「こんな国があるのか、と思いました。」
その頃を振り返り、ひとこと、おっしゃいました。その言い方に明るさがありました。働き方の多様性、選択肢をもつ生き方、40代50代はまだまだこれからいろいろなことをやるチャンスがあってその能力も持っている。柳川先生のメッセージの原点をこのひとことに感じました。

産業構造の変化は、世界全体で急速におこっています。講演の前半は、経済全体の大きな視点からとらえていきました。産業構造の変化、それに伴う能力や技能の陳腐化、直接・間接的グローバル競争の激化、直面しているのは日本だけではありません。日本の問題はこの世界の変化についていけなくなる危険性、にあります。産業構造調整のスピードが遅く、少子高齢化や人口減少といった特徴からです。それではどう変わらなければならないのでしょうか。
暗い話題が続きますが、と先生がなんどか添えられたとおり、楽観的にはとうていなりにくい現状ながらも、常に柳川先生のお話には前向きさを感じました。実際、講演も著書もさいごはこう、しめくくられています。

「未来は明るい。未来には大きな可能性がある。」

では、どうしたら変われるのでしょうか。
柳川先生は、働き方の多様性と、学び直しの2つ、だとお話されました。

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会社は夢で誕生し、情熱で成長し、責任感で安定し、官僚化によって衰退する  坂本幸雄さん

経営の第一線でバリバリと仕事をしていた人が、辞めた後に体調を壊すという話はよく聞く。多くの場合、緊張感がなくなったことで身体のたがが緩んで悪いところが噴出する、というものであろう。

2013年7月末、エルピーダ再建の道筋をつけて、管財人兼CEOを退任した坂本幸雄氏もまもなく帯状疱疹を発症した。それをきっかけにしばらく体調を崩した。
しかし、自覚している理由は、普通の人と少し異なったようだ。
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ストレスがなくなって身体のたがが緩んだのではなく、「ストレスがないことがストレスになった」とのこと。
身も心も、骨の髄まで仕事人間なのかもしれない。

日体大野球部出身で、地元(群馬)で高校野球の監督になるつもりだった坂本氏が、夢破れてビジネスの世界に入ったのは1970年である。日本法人設立3年目の日本TIの倉庫係からの出発であった。ジャパニーズドリームの体現者でもある。

坂本氏は、汎用DRAM全盛期の頃から半導体業界の風雲児と呼ばれていた。
社長になっても電車通勤を通し、社員には、「会議は1時間以内」、「資料はA4一枚」を厳命した。空いた時間で世界を飛び回り、ひと癖もふた癖もあるIT業界の創業者やワンマン経営者を口説き落としてきた。
「異能」の経営者と言ってよいだろう。

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国と地方を分ける意味 橋本大二郎さん

1991年、史上初の戦後は生まれ知事として高知県知事に当選し、4期5選16年の知事経験を持つ橋本大二郎氏
「インテリジェンス」という概念を世に知らしめた外交ジャーナリストで、慶應SDMの教壇に立つ手嶋龍一氏。

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ともにかつてはNHKの報道記者、キャスターとして大活躍をした経歴をもつとあって、オーディエンスは何を聞きたいのかを意識しながら、論旨明快かつ具体的な議論を進めていただいた。

対談のテーマは「地方分権」である。橋本氏のライフワークとも言える。
従って、橋本氏の持論を手嶋氏が広げつつ、突っ込むという理想的な展開で対談は進んだ。

「元祖改革派知事」として、県内の保守派や霞ヶ関と対峙してきた橋本氏は、「地方分権」の重要性と難しさの両方を、身をもって知っており、かつそれを明晰に語ることができる数少ない論者である。

「地方分権」がなぜ遅々として進まないのか
橋本氏はその問題点を、1)補助金、2)法律、3)国と地方の力関係の3つの側面から解説してくれた。

1)補助金の問題
国から地方への補助金は、戦後復興期以来、全国津々浦々の社会インフラ整備に役だってきた。しかし、すでにその歴史的使命を終えている。
1000兆円の借金を抱える国には、もはや地方への補助金につぎ込むお金がない。
地方も、随分と前から「お腹いっぱい状態」に陥っている。
にもかかわらず止むことなく続いている。

補助金の多くは「ひもつき」である。使い方の基準が事細かに決まっている。これに従うと全国どこにいっても同じ規格の道路、橋、施設、街が出来上がる。
そこには個性がない。橋本氏流に言えば「画一化の罠」である。

2)法律の問題
法律の作り方が、地方の声、実情を(実態として)無視している、と橋本氏は言う。
例に挙げたのが「メガソーラー」問題である。
3.11を受けて、再生可能エネルギー買い取りを義務づけた法律が成立したのはいいが、全国各地で「メガソーラー」設置をめぐるトラブルが頻発している。
地元が知らぬうちに、遊休地を買い取った企業が国の認可を受けてソーラー設置を始めてしまい、異様な光景が突如として形成されている。
「メガソーラー」を設置するならば、地域と連携し、売電収益の使い道も地域の課題解決に繋げるべきだ。長野県の飯田市ではそれができつつあるのに。
もっと地方の裁量に委ねることが求められる。

3)国と地方の力関係
端的にいえば、地方版の「政・官・財トライアングル」がもたらす問題である。
公共事業に利権を持つ地方のボスが、選挙応援の見返りに地元出身の政治家に公共事業を陳情する、政治家が霞ヶ関に働きかけ、官僚が地方に補助金を流す。
小泉改革、民主党政権で公共事業が削減されて弱まりつつあるといわれたトライアングルの紐帯は、国土強靱化構想という美名を借りて復活しつつある。
東北沿岸地区で進められている防潮堤復旧事業はその縮図である。何も変わっていない。

国と地方のやるべきことを仕分けして、国は本来やるべき戦略課題に集中すべきだ。問題は山積しているのだから。


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好きという力 戸田奈津子さん

natsuko_toda.jpg 映画「スターウォーズ」の構想を、ジョージ・ルーカスは10代のころに、すでに描いていたといいます。どうしても語りたいことがあったからこそ生まれた作品。彼のイマジネーションに、CGという技術が追いついてできた作品。エピソード4~6が前半のエピソードより先につくられた過程もこれを示しています。

映画「タイタニック」が世界的に大ヒットしたジェームス・キャメロンは、そのすべてを3Dの開発に投じたそうです。やはり10代のころからあたためていた「アバター」を立体的に見せたい、との思いを追及し、彼の次の大ヒット作は生まれました。

戸田さんは、2人の少年の夢が、映画を生み、映画と時代を変えた、というお話から始められました。そしてこれは後半の戸田さんご自身の姿とも重なりました。好きという力のモチベーション。

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マーケティング性をもったマーケティング戦略 井上哲浩先生

photo_instructor_709.jpgまさにいまの時代、の戦略。示唆に富んだ講演でした。慶應ビジネススクールの井上哲浩先生に前回『夕学五十講』にご登壇いただいたのは2008年前期。この6年の間に、私たち消費者をとりまく環境、ビジネスの環境、データの世界、時代はずいぶん変わりました。

あらゆるところにあらゆるデジタルデータが蓄積されていく時代。メディア、ツール、インフラ、どんどん変化していく時代。行動や発言といった、これまでデータにはなりえなかった定性情報までもが蓄積されていく時代。「ビッグデータの時代」とはこれら、私たちをとりまく環境の総称、ともいえるかもしれません。

ビッグデータの時代にあって、マーケティングはどう何が変わり、あるいは何は変わらないのか。このテーマに挑んだ井上先生の講演ですが、ビッグデータの時代の意味するところがメッセージでもありました。

データ・マネジメント・プラットフォームの時代
講演の前日、4/17の日経一面に「ビッグデータ 300社連携」という記事が掲載されました。

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スポーツの力 宮本恒靖さん

photo_instructor_727.jpg2002年日韓、2006年ドイツと2大会連続でサッカーW杯の代表チーム主将を務めた宮本恒靖さんの卓越したキャプテンシーの象徴として語り継がれているシーンがある。


2004年アジア杯準々決勝ヨルダン戦。宮本さんの抗議によってPK戦の最中にゴールサイドを変更させた場面である。

2004年アジア杯 日本VSヨルダン PK戦の場面

このシーンの解説として、宮本さんの英語力、交渉力を絶賛する声が多い。
しかし、宮本さんによれば、サイド変更が出来たのは、あくまで結果論であった。
もちろん、審判にサイドを変えるべきだと訴えたのは事実だが、彼が本当にやろうとしたのは、相手チームに傾いた勝負の流れを断ち切ることであった。

その時、宮本さんは、ぬかるんだ地面を見ていただけではないだろう。試合そのものを俯瞰的に見ていた。自分もキッカーになる可能性もあるわけだから、普通の選手なら「自分ならどう蹴ろうか」を考えるはず。
しかし、彼はもっと大きなもの、広い視野で試合を見ていたようだ。
だからこそ、その場の時間を止め、人々の意識を変えるために、迷うことなく抗議に向かった。

ディフェンダー宮本恒靖のプレーは、ずば抜けた「先読みの能力」に特徴があった。相手の進路、パスの出し先を、的確に読んで、いち早く対応することができた。
けっして恵まれているとはいえない身体で、代表チームのセンターバックを務めることができたのは、この力によるところが大きい。

彼はいつも、人が見ないところ、見えないものを見ることができた。

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月曜の夜にみる月と金曜の夜にみる月が違ってみえるのは何故か 穂村弘さん

hiroshi_homura.jpg夕学五十講2004年度前期、第2回目は、歌人 穂村弘さん。
言葉"をテーマにした"講演会を聞いていた"はずですのに、ほんわかな穂村さんのつくりだす時空間のなかにしばし入って漂っていた。そんな感覚でした。これが"ホムラワールド"、なんですね。

私たちは必ず、世界像のなかで、生きています。世界像は人それぞれ。
外から他人の世界像が見えるときがあります。それが言葉。

世界像と言葉の可能性。それが穂村さんのメッセージでした。
どういうことなのでしょう。穂村さんはいくつかの言葉や短歌を例として紹介しながら、その世界観を伝えようと、ていねいにお話をしてくださいました。おかしくてくすくす笑ったり、おもしろくて声に出して笑ったり、共感して微笑んだり、しながら聴きました。

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成長戦略は、いまが正念場! 竹中平蔵さん

夕学五十講2014年度前期のトップを飾ったのは、竹中平蔵先生である。

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冒頭、竹中先生は、最近ことある毎に聞くという二択質問を投げ掛けた。

2013年一年間で日本の株価は57%の上昇、先進国ではダントツの上昇率。
世界の投資家がアベノミクスを、期待を込めて評価した結果であろう。
では、アベノミクスで日本経済はこれからさらによくなると思うか?

A:期待を込めてよくなると信じたい
B:期待はしたいが、よくなるとは思えない

会場の答えは6:4でAが多かった。これは珍しい結果だという。他でやると2:8でBが多い。世間はアベノミクスの先行きを悲観的に見ている。
これは現政権内の風向きと一緒だという。

「首相と官房長官だけががんばっている状態」

それが竹中先生の見立てである。

人々が懐疑的に見ているのが、アベノミクス第三の矢「成長戦略」の中身であろう。ここには、竹中先生も深く関わっている。

竹中先生は、安倍政権の「成長戦略」は、まさにこれからが勝負。海外投資家は期待しつつも不安を隠せない緊張状態で見守っているという。

竹中先生によれば、成長戦略や他の二本の矢とは評価ディメンションが違う。
一の矢、二の矢は需要サイドへの働きかけであり、 即効性がある。
成長戦略は、供給サイドへの働きかけなので、実現するまでに時間がかかる。
我々は、印象論や感情論に縛られずに、実現可能性を冷静に見極めねばならない。

では、成長戦略として、どのような絵図を描けばよいだろうか。

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第25回 7/29 (火) 阿刀田高さん

takashi_atouda.jpg最終回、第25回7月29日(火)にご登壇いただきますのは、作家の阿刀田高さんです。

阿刀田高さんは、これまで40年以上にわたる執筆活動のなかで、900篇以上の作品を生み出してこられました。第81回直木賞ほか数々の授賞もされてこられました。日本ペンクラブ第15回会長、また、1995年から今年の1月まで、なんと19年間、直木賞選考委員も務められました。間違いなく現代の日本を代表する作家のおひとりでいらっしゃいます。

さて、阿刀田さんといえば、ブラックユーモアの短編小説、そして「知っていますか」シリーズです。

ちょっと不思議で、ちょっと怖くて、思わず笑ってしまう。日常にありそうで、自分にも思い当たりそうで、思わずドキリ。短編小説はそんな独自のブラックユーモアにあふれています。

「知っていますか」は、ギリシャ神話、聖書、古事記、源氏物語と次々、古典を容易に読み解いたシリーズ。それまではちっともわからなかった、わかる気がしなかった、古典はこんなに面白いのか!と次々出会いえた私もその一人です。

「古典を読むには原典をたどるのがいちばんよいが、読むべき古典が多すぎる。質のよいダイジェストにも意味があるのではないか。」

阿刀田さんのそんな思いも込められています。

そんな阿刀田さんご自身の、"創造の井戸を掘り下げてきた"経験をまとめられたのが、『知的創造の作法』です。今回の講演タイトルでもあります。

知的創造の達人がその作法を種明かししてくれているのですから、面白いに違いない、わかりやすいに違いない、そう思われた方きっとご期待にお応えする講演です。「知的創造の作法」、皆さんとご一緒に学んで、ちょっと考えて、おおいに楽しんでみたいと思います。(湯川)

第24回 7/25(金) 藤本隆宏さん

第24回 7/25(金)に登壇いただくのは、東大大学院教授で、ものづくり研究の第一人者藤本隆宏先生です。

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藤本先生が、東京大学ものづくり経営研究センターを作って10年。
日本の製造業の復権、産業競争力の維持への期待を一身に受けて活動してこられました。
この10年をマクロから見れば、中国の急速な台頭、韓国勢(サムソン、LG等)のスピード、アメリカの新興勢力の躍進等々、日本の製造業を取り巻く環境は、益々悪くなっているという印象があります。

しかし、現場発のものづくり研究に生涯を掛け、日本と世界の製造現場を歩き回ってきた藤本先生には、日本の産業競争力の底力がはっきりとみえているようです。

リーマンショック、トヨタバッシング、円高による海外移転という荒波を乗り越えて、新たな環境に適応した日本のものづくり産業が育ちつつあるといいます。
否、正確に言えば、孵化寸前のところまで来ているということかもしれません。

日本のものづくりは、「夜明け前」である。
そう断言する藤本先生の力強いお話を伺えるものと思います。

第23回 7/15 (火)  山口晃さん

akira_yamaguchi.jpg7月15日(火)にご登壇いただきますのは、画家の、山口晃さんです。

オートバイに乗った戦国武士。
六本木と江戸が一体になった街。

ふだん日本美術や現代アートにあまり馴染みのない方でも、「ああこの絵の」と山口晃さんの作品をご覧になったことがあるのではないでしょうか。絵画や襖絵、小説の挿絵や装丁などと幅広くご活躍です。

山口さんの絵は、時代が縦横無尽に行き交って、なんとも発想の面白い作品です。そして絵をよく見ると、とても細密で、描写は鋭く、発想と技術の突飛さがまたとても面白いのです。浮世絵のような、大和絵のような、そして、漫画のような。日本の伝統と現代の息づかい、両方を同時に感じさせるところも面白いなあと思います。山口さんのなかでは時空がどんなふうにできているのでしょうか。
そんな山口さんが、画家・絵師の目線から日本美術の有名作品の背景や魅力を解説する著書を出されました。

ヘンな日本美術史』(祥伝社)

2013年の小林秀雄賞を授賞されたことでも話題となりました。

小林秀雄賞は、文芸評論家 小林秀雄の生誕100年を記念して創設された学術賞で、日本語表現の豊かな著書(評論・エッセー)に贈られています。山口さんは、初めて、画家として授賞された方でした。それもすごいことです。
「読んでおもしろい」からだというのが授賞理由でした。読んでみるとたしかに読み物として面白い。それに自分が思いもしなかった突飛な切り口から鑑賞や解説をされるので日本美術を知る、観るのがますます面白くなりました。

面白がり、面白さを伝え、面白さを絵で表現する山口さんが「私見」で語ってくださる「日本の古い絵」。お話も、山口さんにお会いすることも、とても楽しみです。(湯川)

第22回 7/11(金) 松井忠三さん

tadamitsu_matsui.jpg第22回 7月11日(金)にご登壇いただきますのは、株式会社良品計画 代表取締役会長の 松井忠三 さんです。

MUJI」」といえばいまや、誰もが知る、日本が誇る、世界のブランド。
そして誰もに身近な生活ブランドでもありますね。お住まい、通勤途中、オフィスなど皆さんの街にも、1つ2つ店舗があって、お買い物または利用されたことのある方も多いのではないでしょうか。

「無印良品」が提案した、シンプルな暮らしはとても斬新なものでした。その「シンプルさ」に、ぎゅっと、経営とブランド力のエッセンスも圧縮されているに違いありません。そう感じさせる松井さんの著書のタイトル。

無印良品は、仕組みが9割 ―仕事はシンプルにやりなさい(角川書店、2013年)

今回の講演は、本著を入口にしつつ、無印良品V字回復の軌跡、それを実現した松井さんの経営手腕の実績、松井さんの持論や思い、じっくりお伺いしたいと思っています。

無印良品は現在、世界24ヶ国に、258店舗。2014年2月期の連結純利益予想は、前年比56%、予想を35億円上回る、177億円です。しかし常に順調であったわけではありません。

松井さんが社長に就任された2001年当時も、無印良品の業績が低迷していたころでした。大学卒業後、西友ストア(現西友)に入社、1992年に無印良品に移ります。以来12年、"無印良品とともに"仕事をし、経営されてきたのが松井さんです。

「無印良品」の価値、価値観に、たちもどった経営をしてきた、自信をもっているからこそ、「シンプル」というキーワードで振り返り、語ってくださっているのだと思います。仕事もマネジメントも生活も、シンプルにできたらいいなあ、シンプルっていいなあ。憧れも重なり、MUJIのシンプルさへのヒントがあるに違いない、そんな期待いっぱいで私も講演を楽しみにしています。(湯川)

第21回 7/8(火) 上田正仁さん

第21回 7/8(火)に登壇いただくのは、東大大学院理学系教授の上田正仁先生です。

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上田先生のご専門は
「冷却原子を用いた気体のボース・アインシュタイン凝縮の理論的研究、および量子情報・量子測定・情報熱力学」
ということですが、いったいどういう研究なんでしょうか(笑)。皆目分かりませんね。

もちろん、夕学でお話いただくのは、研究のお話ではありません。
演題は「考える力の鍛え方」です。
上田先生が昨年著された同名の本をモチーフにしたお話になります。

激戦を勝ち抜いてきた受験エリートである東大生の中でも、いまひとつパットしない人間、大学四年間でグンと伸びる人間、卒業してから頭角を現す人間と、さまざまなタイプの人間がいます。
大学や社会人になって必要な能力は、独創的なアイデアを生み出す・考えだす創造力ですが、先述の差は、この創造力の差でもあります。

上田先生は、東大生に対して、独創的なアイデアを生み出す思考トレーニングを試行錯誤しながら実施してきた結果、考える力は意識的な努力の積み重ねによってシステマティックに向上させることができる、と確信しているそうです。

東大物理学者が語る「考える力」の鍛え方。
興味深い講演です。

第20回 7/4(金) 服部泰宏さん

第20回 7/4(金)に登壇いただくのは、横浜国立大学大学院准教授の服部泰宏先生です。

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服部先生は弱冠33歳、わが敬愛の金井壽宏先生(神戸大)門下生で、注目の若手経営学者のお一人です。

師匠と同じで、専門は、組織と個人の結節領域で起きているさまざまな事象を掘り下げることです。
この20年、企業人事の論点として「組織と個人の関係変容」というキーワードが何度となく喧伝されてきました。成果主義の導入、非正社員の比率増加、ダイバーシティの推進などなど、トピックには事欠きませんでした。
一方で、以前として新卒社員の一括採用は行われています。終身雇用を変えると言う会社もほとんどありません。
では、現実の企業組織の中で、実際のところ、組織と個人の関係はどう変わっているのか、変わらないのか。そろそろ地に足のついた実証的な研究成果が望まれるのでしょうか。

服部先生は、まさにこの問題を一環した研究課題として追究してきました。
今回の講演でも、最新の研究・データをご提示いただきながら、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

第19回 7/1(火) 福澤克雄さん

第19回 7/1(火)に登壇いただくのは、TBSテレビ制作局ドラマ制作部のディレクター福澤克雄さんです。

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幼稚舎からの生粋慶應ボーイで、大学在学中はラグビー部に所属、大学日本一のみならず、社会人代表をも破って、慶應史上初のラグビー日本一に輝いた時の主要メンバーです。
お名前でおわかりのように、福澤諭吉先生のひ孫さんにあたります。

TBSに入社してから制作した番組は
『3年B組金八先生(第5~7シリーズ)』(1999年~2005年)、『さとうきび畑の唄』(2003年)、『GoodLuck!!』(2003年)、『砂の器』(2004年)、『華麗なる一族』(2007年)。『Mr.Brain』(2009年)等々話題作揃いです。

そしてなんといっても、昨年「倍返しだ」のセリフとともに社会現象的大ヒットドラマとなった『半沢直樹』も、福澤さんが監督した作品でした。

今回の夕学でお話いただく演題は、ズバリ「メガヒットドラマはどうやって出来たのか」です。
噂によれば、10月からは『半沢直樹』の続編が放映されるとか。
タイミング的にも、絶好の機会をお見逃しなく。

第18回 6/23(月) 池上彰さん

第18回 6/23(月)に登壇されるのは、ジャーナリストで東工大教授の池上彰さんです。

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夕学は8年振り2度目の登壇になる池上さん。前回は大ブレークする直前のタイミングでした。

実は、池上さんとMCCは少しだけご縁があります。
2005年にNHKを退社されフリーになった池上さんは、充電と学び直しを兼ねて、いろいろな大学の社会人向け講座を受講されていました。
慶應MCCでは、「日経新聞から金融情報を読み解く」という講座(当時開講中)を受講されました。慶應商学部の金子隆先生の人気講義であった金融論の授業を、社会人向けにアレンジしたもので、日経新聞マーケット総合面に毎日掲載されている、さまざまな金融情報の見方と背景理論を学び、経済のダイナミズムを理解しようという講座でした。

池上さんは、経済、経営、政治、外交等々、各大学で幅広く最新の知識と理論を学び直されたようです。

池上ブームが、他の知識人ブームと異なり長続きしている理由を私なりに考えてみると、池上さんは、自分の引き出しにあるもので勝負するのではなく、あくまでもインタープリターに徹しているということではないでしょうか。
どんな領域であれ、人々が知りたい、知るべき知識を選びとり、取材し、わかりやすく再構成して解説してくれる。それが池上さんのプロフェッショナリティかと思います。

その専門性を支えているのが、自らも実践してきた「学び続けること」ではないでしょうか。
今回は、継続的な学びの実践家 池上彰さんが語る「働く大人の学び論」をお聞きできると思います。

第17回 6/20(金) 佐藤卓己さん

第17回 6/20(金)に登壇いただくのは、メディア史、大衆文化論を専門にする歴史学者の佐藤卓己先生です。

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最近、「反知性主義」への警鐘を鳴らす知識人が増えてきました。
夕学でも、佐藤優氏が政治家の「反知性主義」を指摘してくれました。
http://www.keiomcc.net/sekigaku-blog/2013/10/post_554.html#more

内田樹氏も同じ主旨のブログを書いています。
http://blog.tatsuru.com/2014/03/05_0950.php

反知性主義というのは、理論や事実・エビデンス、歴史的経緯や文化的背景といった知的思考をすっとばして、わかりやすさ、美しい物語、即断即決を尊ぶ思考のあり方を意味します。

佐藤卓己先生のいう、「輿論(よろん)」と「世論(せろん)」の同一化も同じ現象ではないでしょうか。
「輿論」とはpublic opinion、公的な問題に対して、論拠と責任を伴った意見をいうことです。
一方の「世論(せろん)」とはpopular sentiments、感情的で場当たり的な居酒屋評論家的発言を指します。

日本では、1920年代に大衆メディアの登場に伴って、「輿論」と「世論」の境界がなくなり、それが戦争に向けた国民的熱狂を引き起こしてしまったという現実があります。

ネットの普及、ソーシャルメディアの興隆にともなって起きている「ネトウヨ」現象や「ヘイトスピーチ」の発生を見ると、「輿論と「世論」の同一化は、戦前以上の規模と勢いで広がりつつあるのではないかという危機感を覚えます。

私達は、この時代にどうふるまえばよいのか。
ウェブ時代に「世論の輿論化」をどう取り戻せばよいのかを考えてみたいと思います。

第16回 6/17(火) 山口香さん

第16回 6/17(火)に登壇いただくのは、筑波大学体育系准教授で柔道家の山口香さんです。

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この2年間、日本の柔道界は、史上最悪の危機的状況にありました。
ロンドン五輪で金メダル男子ゼロ、女子1個と惨敗したことに加え、男子では元金メダリストの指導者による暴行事件、女子代表チームのパワハラ指導、全柔連指導部の閉鎖的体質の露呈と、伝統を揺るがす不祥事を続けざまに起こしてしまいました。
特に、女子代表チームで行われていた暴力やパワハラ指導の実態は、日本スポーツ界に染みついた悪しき風習や考え方が凝縮されたものであったと思います。

女子柔道界黎明期のスターで、指導者としても実績のあった山口さんが、背中を押す形で、選手自身による告発や問題提起が行われたのは、異例なことでありましたが、長年の膿を出す意味では、避けられない荒療治だったと思います。
批判を恐れず声をあげた山口さんの勇気と信念は、広く敬意が払われるべきではないでしょうか。

厳しい師弟関係とは、本来互いをリスペクトしあえる信頼のうえに築かれなければなりません。ところが日本の場合、指導者が選手を意のままにする偏った力関係に陥る間違いを起こしやすいようです。

山口さんのお話を伺いながら、これからの時代、私たちはスポーツに何を求め、何を目指すのかを考える機会にしたいと思います。

第15回 6/11(水) 菊澤研宗さん

untitled.bmp第15回 6/11(水)は、慶應商学部教授の菊澤研宗先生が5年振り、二度目のご登壇です。

前回講演はこちら

経営哲学を専門とする菊澤先生、制度派経済学に依拠する経済学者でもあり、組織の不条理を研究する経営学者でもあります。
カント、ヘーゲル、ポパー、マックスウェーバー、ドラッカー等々。ドイツ観念哲学から、科学哲学、コーポレントガバナンス論から軍事史研究、人間主義経営学まで、おそるべき博識を誇り、幅広い研究領域をカバーする先生です。

慶應MCCのagora講座でも、マックスウェーバーのプロ倫やドラッカーの経営哲学を講義いだいてきました。

古典を通して考える【自由と資本主義】 2009年
http://www.sekigaku-agora.net/course/kikuzawa_kensyu2009.html

菊澤研宗教授による【ドラッカー再発見】 2010年
http://www.sekigaku-agora.net/course/kikuzawa_kensyu2010.html

この二年はカリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院で、在外研究生活を送り、さらに研究領域を広げて帰還されたばかりです。

帰朝講演もかねてお願いした今回の夕学では、「いまこそ経営に哲学を!」というど真ん中の本質的テーマをお話していただくことにしました。

菊澤先生が、米国留学中の二年間でより思いを強くしたのは、やはり日本企業には哲学が必要だということ。
米国流の科学的で経済合理的マネジメントだけでは、企業が合理的に不正を犯したり、合理的に失敗したりすることを防ぐことは出来ない。この不条理から抜けだすには、人間主義的で哲学的マネジメントが絶対に必要だ、ということだそうです。

「企業はなぜ存在するのか」「企業の社会的使命は何なのか」というそもそも論を深く深く考える機会にしていただければと思います。

第14回 6/10(火) 村田吉弘さん

moto_yosihiro_murata.jpg第14回 6月10日(火)は、菊乃井主人の村田吉弘さんです。

京都・祇園にある老舗料亭 「菊乃井」。18代前の先祖から京都に住み始めたという、生粋の京都人でもあるその家に、村田さんは、長男として生まれました。立命館大学在学中にフランス料理修行のために渡仏。大学卒業後、料亭での修行を経て、実家に戻り、1976年「菊乃井木屋町店」を開店。1993年「菊乃井」3代目を継がれて、現在に至ります。

「菊乃井」 主人として、料亭を仕切り自ら料理でもてなす村田さんはまた、「日本料理を正しく世界に発信する」「公利のための料理をつくる」 ことをライフワークにもされています。

昨12月、「和食(Washoku) 日本人の伝統的な食文化」、ユネスコの無形文化遺産に登録され、話題となりました。
食文化はいま世界で滅びかけている、国民一人ひとりが守っていかなければならないと、和食の登録申請に尽力されたおひとりでもいらっしゃいます。

世界、と同時に、日本の大人や子どもへの食育活動も積極的に展開しなければならない。NPO法人日本料理アカデミー理事長として、医療機関や学校を訪問しての食育活動や、アカデミックな継承と研究をめざした教育活動などにも取り組まれています。

今回、『夕学五十講』では、「京料理とは何か」、をタイトルにご講演いただきます。
世界からみた和食と、日本にいきる和食。ヨーロッパで料理修行された料理人であり、生粋の京都人である料理人。老舗料亭と、毎日の私たちの食卓。村田さんの原点が「京料理」にあるのかもしれません。日本のこころ、ぜひ皆さんに聴いていただきたい講演です。(湯川)

第13回 6/6(金) 窪寺恒己さん

tsunemi_kubodera.jpg第13回 6/6(金)は、国立科学博物館標本資料センター コレクションディレクター、窪寺 恒己さんにご登壇いただきます。

人類初、世界初のダイオウイカとの遭遇。

窪寺さんたちの大プロジェクトとその大成功は、私たち日本中をワクワクさせてくれました。


昨年1月に放送された、NHKスペシャル「世界初撮影!深海の超巨大イカ」はたいへんな反響を呼び、ダイオウイカは一大ブームになりました。
番組は放送前から話題となって、ドキュメンタリー番組としては異例の視聴率16.8%を記録。ダイオウイカに会えると人気が高まり、国立科学博物館で開催された特別展「深海」は、来場者数59万人を記録、たびたび行列ができていました。番組や展覧会をご覧になられた方も多いのではないでしょうか。

巨大なダイオウイカが、暗く静かな深海のなか突如現れ、動き回る姿は、圧巻でした。と同時に、遭遇の瞬間、頂点に達した窪寺さんたちの興奮と感動が、画面からあふれ伝わってきて、感動を共有しました。

欧米の研究者やドキュメンタリ―製作会社がたびたび試みながらも成功することのなかった、ダイオウイカとの遭遇、インパクトの大きさを感じます。しかしそれだけではなく、"深海の神秘"という、私たち人類にとっての永遠のロマンも背景にあるのではないでしょうか。

ダイオウイカは、16世紀の大航海時代からも、海の魔物として知られ、恐れられていたといいます。私たちと同じ、この地球上に実在しながらも、人間がアプローチし得ない、未知にあふれた深海という世界。そこに生きるダイオウイカ。それを追い続ける研究者のおひとりである窪寺さん。神秘であるからこそ惹かれ、感動の発見があるからこそ惹かれるのだと思います。

人類400年のロマン。
窪寺さんのロマン。
深海の神秘、私たちのロマン。

「深海の怪魔 ダイオウイカを追いかけて」。窪寺さんのロマンあふれるお話、皆さん、ご一緒しませんか。(湯川)

第12回 6/5(木) 新見正則さん

masanori_niimi.jpg第12回 6/5(木)にご登壇いただきますのは、帝京大学医学部外科 准教授の新見正則先生です。

新見先生は、西洋医で、漢方医、臨床医で移植免疫の研究者、趣味はトライアスロン、そして、昨秋「イグ・ノーベル賞 医学賞」を授賞されました。

テレビ東京の「主治医が見つかる診療所」にレギュラー出演もされています。たいへんな人気番組で、月曜夜のレギュラー放送に加え、この春からは毎昼の別冊放送も始まりました。

新見先生はあるときは血管外科や脳の専門医師として、あるときは漢方を処方するお医者さんとして、あるときは移植免疫学の研究者として、またあるときはご自身の体験をもって、コメントやアドバイスをされています。

先日、「体重コントロールの達人」でもある新見先生とぶらり横浜を"健康散歩"する回をみました。「ちょい○○」が新見先生のアドバイス。食事では、野菜をちょい足し、炭水化物ちょい残し。ちょい運動では、散歩がてらちょいたくさん歩く、ちょいでこぼこ道を選ぶ、など。「いいとはわかっているけれど、なかなかできない」ことの多いなか、私たちふつうの人々の気持ちに寄り添われているのも新見先生らしさです。

昨秋、「イグ・ノーベル賞医学賞」に輝かれました。イグ・ノーベル賞は、ユニークでユーモラスなちょっと笑えるような実験内容で、でも、とても考えさせられる結果、に与えられる、国際的な賞です。授賞式はハーバード大学でおこなわれます。

心臓移植したマウスに、さまざまな音楽や音を聴かせたところ、オペラ「椿姫」を聴いたマウスがいちばん延命したそうです。移植免疫学は20年前オクスフォード大学に留学されたとき以来のライフワークだそうですが、一方で、先ほどのちょい○○のような、好奇心や考え方あって、運と縁に恵まれての成果なのだ、と新見先生はおっしゃっています。

そんな新見先生とマウスが教えてくれる、幸せな生き方論。
元気に、幸せに、楽しく生きていきたいなあ。そんなお気持ちのある方、どなたにも、ぜひお聞きいただきたい講演です。(湯川)

第11回 5/28(水) 藻谷浩介さん

photo_instructor_712.jpg第11回 5/28(水)は、日本総合研究所主席研究員藻谷浩介さんです。

前著『デフレの波』が大ベストセラーとなり、一気に全国区のエコノミストとして世に出た藻谷さん。日本経済が直面する最大の問題は「二千年に一度の人口の波」だ、と言うご指摘は、ハッとさせられる気づきを与えてくれました。
夕学でも素晴らしい講演をしていただきました。
http://www.keiomcc.net/sekigaku-blog/2011/04/ppt.html

藻谷さんは、日本政策投資銀行時代には、平成合併前3,200市町村の全てを、ほぼ自費にて巡歴し(しかも2度、3度)、地形・交通・産業・人口動態・通勤通学動態・郷土史等を詳細に把握した地域研究・地域振興政策研究の専門家です。

昨年上梓された『里山資本主義』は、そんなライフワークの一環と位置づけられる好著でした。
自らナビゲーターとして出演したNHK広島局制作の「里山資本主義シリーズ」で取材した、身近な資源を活用する地域発の新たな取り組みを書籍化したものです。こちらも前著に負けない大ベストセラーとなりました。

私も信州の出身なのでよく分かりますが、日本の山村、農村にはどこにいっても里山があります。里山には、先祖が営々守り育んできた自然と人間の共生システムがあります。里山のルールを守っていれば、いまの時代でも、水と食料と燃料、それに幾ばくかの現金収入がちゃんと手に入ります。

里山を維持できるか、それとも失ってしまうのか、瀬戸際の危機にある日本の現状を確認しつつ、里山が持つ価値について考えてみよう。
そんなお話が伺えるものと思います。


第10回 5/23(木) 花田光世さん

第10回 5/23(木)に登壇いただくのは、慶應SFC教授で、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(財)SFCフォーラム代表理事の花田光世先生です。

photo_instructor_726.jpg人材開発、キャリア論の分野で日本を代表する専門家として知られる実践的研究者でいらっしゃいます。

「キャリア自律」という言葉・概念は、いまでは当たり前のように使われていますが、1990年代初頭に、花田先生が最初に我が国で提唱をされた概念です。

単なる研究者ではなく、キャリアアドバイザーの育成、キャリア自律プログラムの実践、キャリア自律促進の組織風土・組織システム構築の支援、ダイバーシティ開発の支援など実践活動を積極的に行ってきたことで定評があります。

MCCでは花田先生が主管する慶應SFC研究所 キャリア・リソース・ラボラトリーとの共催で「キャリアアドバイザー養成講座」を開講しており、すでに数百人規模のキャリアアドバイザーを世に送り出してきました。

長らく本を書かないことで有名で、「書かざる巨人」と評されてきた花田先生ですが、昨年二冊の本を上梓されました。

『「働く居場所」の作り方 あなたのキャリア相談室』日本経済新聞出版社
『新ヒューマンキャピタル経営』 日経BP社

同じテーマについて、個人からの視点、組織の立場に分けて書かれたセットの本と理解してよろしいかと思います。
いわば、花田先生の実践的研究の現時点の集大成といえるものかもしれません。

今回の講演では、前者の本をベースに、日常の仕事の中にキャリア自律を組み込んでいくことの意義についてお話いただく予定です。

第8回 5/20(火) 柳川範之さん

第8回 5/20(火)に登壇いただくのは、東大大学院教授で経済学者の柳川範之先生です。

photo_instructor_711.jpg2012年7月 野田首相(当時)のもとに設けられた国家戦略会議フロンティア分科会の報告書の中に書かれた次の一文が話題になりました。

「・・・場合によっては、40 歳定年制や50 歳定年制を採用する企業があらわれてもいいのではないか・・・」
報告書の主旨は、経営環境の変化と働く人の意識・ニーズに変化を受けて、もっと柔軟な雇用形態が増えるべきだという、しごく当たり前の主張でしたが、マスコミはいつものミスリードで「40歳定年」だけを大きく取り上げました。

この意見の提唱者である柳川先生は、「究極のリストラ? 40歳定年制の発案者・柳川範之東大大学院教授に聞く」などというセンセーショナルなタイトルの記事もありましたので、ご記憶の方も多いかと思います。

このワード、実は、議論を喚起するために、柳川先生が意識的に使ったものだそうです。その意味で、したたかに目的ははたされたのかもしれません。

先行きが見えない時、進むべき道に複数のオプションを持っておくべきだ、というのは意思決定の常道です。
個人のキャリアも同じ、22~23歳の若さで、終身雇用の代償に将来の選択肢を捨ててしまうという意思決定が、本当に正しいことのなのかどうかをよく考える必要があります。

元気に生き生きと働き続けるために、世界経済の変化に合わせた働き方について、柳川先生と一緒に考えてみたいと思います。

第9回 5/22(木) 小川進さん

第9回 5/22(木)に登壇いただくのは、神戸大大学院教授の小川進先生です。

photo_instructor_706.jpg小川先生は、ユーザーイノベーション(ユーザー・消費者参画型の新製品開発)研究を専門とされるマーケティング学者です。MITスローンでユーザーイノベーションの第一人者エリック・フォン・ヒッペル教授のもとでPhDを修得されました。

ユーザーイノベーションが、新たな商品開発の方法論としてはじめて注目されたのは、もう10年以上前になります。
小川先生が『イノベーションの発生論理』という本を書き、組織学会高宮賞を受賞されたのは、2000年のことになります。2002年前期の夕学に登壇いただいて、ユーザーイノベーションについてお話していただいたことがあります。
当時始まったばかりの「空想生活」などの事例を興味深くお聞きした記憶があります。

ユーザーイノベーションは、それまでのものづくりと百八十度パラダイムが異なるので、当時からその困難さが指摘されていました。画期的な大ヒット商品が生まれてこないことも懐疑的な人がよく口にすることでもありました。

ただ、小川先生の近著『ユーザーイノベーション』を詠むと、そういう大ヒット商品を作ろうという発想そのものが、大量生産時代の意識を引きずっているのかなと思うようになりました。

「こういうものが欲しい」という消費者の思いは、本来ユニークなものであるべきで、ユーザーイノベーションというのは、ロングテール型なのかもしれません。
この本で小川先生が紹介しているユーザーイノベーションの事例は、いずれもそのタイプではないでしょうか。

創造の喜びを消費者に広げる。
イノベーションの民主化こそが、ユーザーイノベーションの本質だと小川先生はいいます。「モノ作りの新たな形について興味がある方にきっと参考になる」お話だそうです。


第7回 5/16(金) 坂本幸雄さん

第7回 5/16(金)に登壇いただくのは、元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄さんです。

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エルピーダ社の設立と挫折は、日本企業の再生・再編のあり方を考えるうえで、多くの教訓を残してくれました。
日立、NEC、三菱電機という日本を代表する総合電機メーカーのDRAM事業を統合させ、世界と戦える専業メーカーとして再生すべく、たたき上げのプロ経営者坂本氏を社長に迎えて建て直しを図る。上手くいけば、将来映画の題材になったかもしれない大きな挑戦でありました。

リーマンショックさえなければ、挑戦は成功したかもしれません。
あるいは、もっと早く坂本さんに全権が委ねられていれば環境変化も乗り切れたのかもしれません。
または、実はエピルーダ社がマイクロンの傘下に入り生き残ったという選択は、坂本さんだからこそ出来た、最善の再建策だったのかもしれません。

倒産から1年半、社員をひとりも切らずに再生をはたすという難事業を成し遂げたうえで、『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』という話題の本を書いて、日本はエピルーダの挫折から何を学ぶべきなのかを世に問うた坂本さんに、当事者ならではの思いを語っていただきたいと思います。

第6回 5/14(水) 橋本大二郎さん&手嶋龍一さん

第6回 5/14(水)は、前高知県知事の橋本大二郎さんと外交ジャーナリストの手嶋龍一さんの対談になります。
かつてNHKの報道記者として20年近く同僚であったお二人は、いまは慶應大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)の教授同士として再び近しい関係にあります。

橋本大二郎さん手嶋龍一さん

44歳という当時の最年少知事として当選以来16年間に渡って高知県知事を務めた橋本さんは、改革派知事の代表として、行財政改革や新たな政策の実現に取り組みました。
現在も、「地域自立型の国づくり」を目指して精力的な活動を進めています。

一方の手嶋さんは、外国特派員時代の知見をもとに、外交ジャーナリストとして独立後は、日本の外交・安全保障政策に欠落していた「インテリジェンス」という言葉と概念を広めたことで知られています。

今回は、昨年秋に慶應SDMで企画していたお二人の対談講演が、台風の影響で中止せざるをえなかったことを残念に思われた手嶋先生が、場所を丸の内に移して、実務家向けにアレンジして企画していただきました。

地方分権の流れを受けて、財源と権限の移譲を受けつつある地方ですが、受け止め方は地域によって温度差が大きいように思います。
昔ながらの官僚出身知事による県政が続いている自治体もあれば、大阪や愛知のようにやたらと威勢がよくて、その分も揉め事も多い都道府県もあります。

「地方分権はなぜ必要なのか」
豊富な知事経験を持つ橋本さんに、手嶋先生が問いかける形で論点を深めていただけることを期待しています。

第5回 4/22(火)戸田奈津子さん

第5回 4/22(火)は、映画字幕翻訳者の戸田奈津子さんです。natsuko_toda.jpg

大ヒット作、歴代アカデミー賞作品ふくむ、数多くの映画作品の字幕翻訳を手がけてこられました。
その40数年は、私たち日本人が、世界が、ハリウッド映画に魅せられ、感動し、衝撃を受け、憧れ、未来を夢見た、時代の変遷そのものでもあったのではないでしょうか。

「E.T.」「インディ・ジョーンズ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「スター・ウォーズ」「シンドラーのリスト」「フォレスト・ガンプ」「タイタニック」「ハリー・ポッター」「アバター」etc... 挙げればきりがありません。皆さんの思い出の映画、大切な映画のなかにも、戸田さんが字幕翻訳された作品がいくつもきっとありますね。

私自身もそうです。初めて映画館でみた洋画は「E.T.」でした。「おうち 帰る」とE.T.がつぶやくシーン。「いつもここにいるよ」のお別れの言葉。大泣きしました。ひらがなとようやく少しの漢字を覚えたころで、必死に画面の字幕を追いかけたこととともに、字幕で読んだいくつかのセリフをいまでも覚えています。

限りある字数に、映画と言葉と思いのすべてを凝縮し、表現し、そして伝える、字幕。戸田さんの映画、英語、字幕翻訳にかける想いをじっくり、お伺いしたいと思います。(湯川)

第4回 4/18(金) 井上哲浩さん

第4回 4/18(金)に登壇いただくのは、慶應ビジネススクール教授の井上哲浩先生です。

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マーケティングサイエンスを専門とする井上先生。恩師である池尾恭一先生との共著で、こんな本も書いています。『戦略的データマイニング』日経BP社

この2年程、マーケティングの世界では、「ビッグデータ」という言葉が盛んに喧伝されました。
ICチップが至るところに埋め込まれ、私たちの行動はデジタルデータとしてさまざまなところに蓄積されているといわれています。
またtwitter、SNSといったソーシャルメディアから発信される定性情報はネットワーク上に増殖を続けています。
かつては泡のように消えていった私たちの行動や発言が、個人IDにヒモ付けされることで連結、意味づけされて、ビッグデータの中から創出してくる。
ビッグデータ=宝の山論を信じる人は、決まってそんな壮大な物語を語ります。

はたしてそれは本当なのか。典型的なバズワード現象に陥りつつある「ビッグデータ」の時代に、マーケティングはどう変わるのか、あるいは何が変わらないのか。データを使った「発見と創出」のマーケティングを標榜する井上先生の持論をお聞きします。

第3回 4/14(月) 宮本恒靖さん

第3回 4/14(月)は、元サッカー日本代表キャプテンの宮本恒靖さんです。

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02年の日韓大会、06年のドイツ大会と2大会連続でW杯日本代表のキャプテンを務めた宮本さん。日韓大会ではバットマンマスク(鼻骨骨折の保護ガード)が印象的でしたし、ドイツ大会ではヒデと他の選手の間にあって苦悩した姿が記憶に残っています。

三浦知良、中田英寿、本田圭佑など、サッカーのスーパースターは、どこか突き抜けたところがあるアバンギャルドな雰囲気の選手が多いのですが、宮本さんはその対極の良識派のイメージがありますね。

関・関・同・立に各100人以上の合格者を出す大阪の名門生野高校時代にガンバ大阪のユースチームに所属、プロ契約と同時に同志社大学に進学した文武両道タイプです。
知性に加えて、甘いマスク、強烈なキャプテンシーを併せ持ったスタープレイヤーでありました。

引退後は、2012 年9月よりFIFA マスター(FIFA が運営するスポーツに関する大学院)にチャレンジし、イギリス・イタリア・スイスでの受講を経て2013年7月末に修了したばかりです。サッカーと教育、地域コミュニティ-、ライフスタイルが深く結びつく欧州のサッカー、スポーツの楽しみ方を、広い視野で日本に還元してくれる方だと確信しています。

お願いした演題は「FIFA マスターで考えた日本サッカーの未来地図」
世界を知る宮本さんならではの、深い話をお聞きしたいと思います。

第2回 4/11(金) 穂村弘さん

第2回 4/11(金)は、歌人の穂村弘さんです。
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現代短歌を代表する歌人であると同時に、ユーモアたっぷりの洒脱なエッセイにも人気が高い穂村さん。なんと20本以上の連載を抱えているそうです。

慶應MCC agora講座では、『穂村弘さんと詠む【世界と<私>を考える短歌ワークショップ】の講師をお願いしておりまして、昨年は私も参加して、ホムラワールドに感化されたくちです。

穂村さんは、「社会化された言葉」から自由になろう!というメッセージを、繰り返し、あの手この手で、叩き込んでくれました。
私たちは、長く生きていると(とりわけ企業組織で)、暗黙のうちに社会の色、組織の色に染まっていきます。特に思考や言語は、所属する世界の通行手形のような意味合いをもっているので、社会の色、組織の色を強く反映したものになることが避けられません。

しかし、おもしろいもので、人のこころに刺さる短歌というのは、社会の色、組織の色を拭い去った自由な言葉を使っています。
つまり、短歌を詠むという行為は、住み慣れた世界、語り慣れた言葉の束縛を解き、現代人が忘れた自由な表現を取り戻すことでもあるのです。

このような「反社会化的姿勢」というのは、穂村さんのあらゆる視点・生き方に貫かれていて、多くのファンを引き付ける理由でもあります。

私たちに求められている創造性、新奇性、新たなモノの見方・考え方には、「反社会化的姿勢」が不可欠なことは間違いありません。
短歌にまったく興味がないという方にこそ、ぜひお聞きいただきたい講演です。
短歌好きはもちろん大歓迎です。

2014年前期が始まります。第1回 4/10(木) 竹中平蔵さん

先月26日(水)、2014年前期の「夕学五十講」の申込・予約の受付を開始しました。開始早々に満席講演が出るなど、今期も多くの方にご関心をお寄せいただけているようです。ありがとうございます。

本日から、恒例の今期の登壇講師の紹介を開始したいと思います。
4/10(木)の第一回に登壇いただくのは、慶應SFC教授の竹中平蔵先生、正念場を向かえているアベノミクス第3の矢 成長戦略について、現状と今後の見通しを語っていただきます。

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政府の産業競争力会議のメンバーでもある竹中先生、成長戦略の政策立案を推進する立場にあります。とはいえ、かつて小泉政権で経済政策の司令塔を務めた時とは、政権に対する立ち位置はかなり異なるようです。
誤解を恐れずに推察するならば、ちゃぶ台をひっくり返したくなるような怒りをぐっとこらえながら、改革を実のあるものにするために、必死になって岩盤規制に立ち向かっているという感じでしょうか。

安倍首相がダボス会議で第3の矢について言及した裏には、竹中先生の強い要請があったと側聞します。一方で、ダボス後の国内講演では、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に対する「海外投資家の失望感は非常に高まっている」という厳しい指摘を行っています。

安倍首相の口から、岩盤規制改革の意欲を改めて世界に向かって公言してもらい、その威光を楯に規制改革に取り組む一方で、改革に対する海外の厳しい見方を紹介することで、そこかしこに潜む抵抗勢力への牽制球としたのかもしれません。

あるいは、タカ派の持論を表出しはじめた安倍首相に対して、胸突き八丁を迎えている岩盤規制改革は、全精力を注ぎ込まなければ乗り切れないという暗黙のメッセージを送っているのかもしれません。

4/10にどんなお話が伺えるのか楽しみです。