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日本人の祖先はチャレンジャーであった 海部陽介先生

photo_instructor_853.jpg海部陽介先生は柳田国男の『海上の道』に対して懐疑的である。つまり、日本人のルーツは黒潮に乗ってやってきたという説は信じがたいと考えている。なぜなら、黒潮にのることは目的地を意識しない漂流であり、これは世界地図を知っている現代人の発想であるというのだ。私たちの祖先はそんなギャンブラーではなく、日本を目指してやってきたはずだ。だが、その方法がわからない。頭を真白にして三万年前に生きていた私たちの祖先と同じように考える。そこがスタート地点だ。

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人生は噛みしめるように生きる 田口佳史先生

photo_instructor_856.jpgかなりドラマチックな転機を迎えた田口佳史先生。25歳の時、ドキュメンタリー映画の撮影のため訪れたバンコク郊外で2頭の水牛に角で刺されてしまう。日本人の青年が入院していることを聞いた在泰邦人からの差し入れられた老子と論語、なかでも老子は田口青年の中にどんどん入っていく。

出でて行き
曰ち逝き
逝けば曰ち遠ざかり
遠ざかれば曰ち返る
入りて死す

「死ぬことはすなわち故郷に帰ること」、そう恐れることではない、その思いが強力な安堵感へとなり、ようやく眠ることができた。そしてこの経験から儒教、仏教、道教、禅仏教、神道を専門として、はや50年も古典を研究する日々を送っている。田口先生はこれらの分野に対して(その転機を考えれば当然かもしれない)、「生きる」というテーマで読む。

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回る大捜査線 清水聰先生

photo_instructor_851.jpg何の商売をしていても集客、とりわけ購買者を得るのは大変だ。日本語ではひと口に「客」というが英語ではこの辺りの区分けが厳しく、「visitor」(訪問者)、「customer」(購入者)と分けて呼んでいる。アメリカのとある店の店内放送で「Good morning, ***(店名) customers!」と流れてきた時には「アメリカではvisitorは挨拶されないの?」と仰天した。日本でなら新聞のコラム欄辺りに何か書かれてしまいそうである。そんなvisitorをcustomerにするためにはどうしたら良いのかのマーケティング提案が今回の清水聰先生の講演「新たな顧客マネジメント~循環型マーケティングの提案~」であった。

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日産はいかにしてV字回復したか  志賀俊之さん

photo_instructor_848.jpg1986年プラザ合意。急激な円高によって、それまで順調だった日産自動車は赤字に転じた。その危機的状況から、いかにしてV字回復を遂げたか。一言で表すなら「レジリエンス(Resilience)」であると、志賀俊之さんは冒頭で力強く述べた。現日産自動車副会長であり、倒産危機に陥ってから復活するまでカルロス・ゴーンのもとでその手腕を発揮してきた。レジリエンスとは「はねかえす力」であり、演題も「変革を支えるレジリエントオーガニゼーション」である。日本語で言うなら「危機的状況をはね返す力のある組織」といったところであろうか。

1990年代のマーケットシェアの恒常的低下、積み上がった負債から、いかにして今の状況まで回復できたのか。志賀さんにはレジリエントの6つの要素を自問自答形式でお話しして頂いたが、ここではその中でも組織だけでなく個人レベルでも重要だと思える3点に焦点をあてて論じてみたいと思う。

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IoTが連れてくる、人間味あふれる世界

photo_instructor_847.jpgアメリカで過ごした中学時代からプログラマーとしてのキャリアをスタートし、大学在学中に起業して生体認証の新技術を開発し成功をおさめた齋藤ウィリアム浩幸さん。この経歴を聞いただけで、間違いなく「天才」 だということがわかる。
現在は日本でアントレプレナーへの支援活動をおこなう傍ら内閣府本府参与としての顔も持つ超エリートだが、壇上では第一声からフレンドリーな雰囲気をかもしだし、自己紹介にはご自分の失敗談も盛り込んで見事にアイスブレイクされていた。

「ムーアの法則」がもたらすIoT

今回の講演の軸のひとつとなっていたのは、「Moore's Law=ムーアの法則」だ。これはインテル社の創業者のひとりであるゴードン・ムーア氏が提示したもので、「半導体、ストレージ、センサーは、2年ごとにパフォーマンスが2倍になる。もしくは値段が半分になる」というもの。
齋藤さんは、「ムーアの法則に従ってトランジスタ、コミュニケーション、ストレージ、センサーの4つの要素が利用しやすくなったおかげで、IoT(Internet of Things)が実現可能になりました」と説明した。

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人生は感謝を見つける旅である

空前の落語ブームだと言われる。夏にはビジネス誌が落語特集を編むほどである。現在、落語家の人数は800人。過去最大の規模だという。
日本の伝統芸能は世襲制が中心なので、落語界も二世、三世が多いのかと思っていたが、柳家花緑師匠によれば、世襲落語家はせいぜい30人程度。実は実力主義の世界のようだ。
確かに、これまで夕学に登壇いただいた落語家(柳家喬太郎金原亭馬生春風亭一之輔)は世襲落語家ではなかった。

photo_instructor_840.jpgそんな中で、花緑師匠は、落語界初の人間国宝 五代目柳家小さんのお孫さんにあたる。飛びっ切りの血筋である。しかも入門からわずか7年、戦後最年少の22歳で真打ちに昇進したという超実力派でもある。
45歳にして芸歴30年。古典から新作までなんでもこなし、落語界を背負って立つ存在の一人といえるだろう。

講演のタイトルは「笑いと感謝」。それが、花緑師匠がいま思うことだという。
「笑い」というのは落語の効能と言っていいだろう。夕学にも登壇された筑波大名誉教授の村上和雄先生の研究を引き合いにだして話してくれた。
村上先生が吉本興業との共同研究で明らかにした「お笑いを聞くと糖尿病患者の血糖値が改善する」というユニークな研究結果である。
「笑い(落語)は身体に良い」のである。

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雑学が世界に彩りを与える―科学で斬るベースボール 矢内利政さん

photo_instructor_855.jpg私は野球にうとい。野球好きの主人から「カーブ」「シュート」「スライダー」の違いを何度聞いたかわからないが、いまだに覚えられない。

ではなぜ今回、野球をテーマにした矢内利政先生の講演を聞こうと思ったかといえば、過去にこの夕学五十講に出席してきた経験からすると、自分の関心領域から離れている講演は面白い、という実感があるからだ。野球、それも「スポーツ科学」という自分から遠く離れた分野の講演は、「わからなくて当然。発見があればラッキー」とでもいうような安心感があり、私は肩に力を入れることなく丸ビルに足を運んだ。

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好きなことと役立つことを両立する 向谷実さん

photo_instructor_846.jpg 今回は、ジャズフュージョン・バンド「カシオペア」のキーボーディストである向谷実さんのお話を伺った。「好きなことをビジネスに変える」というお話であったが、向谷さんのお話を聞いて思ったのは、その好きなことがきちんと他人の幸せに繋がっているということ。好きなことを追求する姿勢の中にも、自分と社会との繋がりを欠かしていないことに向谷さんの信念が伺えたような気がする。だからこそ、そのビジネスに対価を支払ってくれる人がいるという当たり前の話なのだけれど、この感覚をすべての経営者が持ち合わせているのかと言われると、そうでもない気がする。

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異次元緩和と財政ファイナンス 池尾和人さん

photo_instructor_845.jpg「マネタリーベース(ベースマネー)という言葉は、本来、大学の経済学部で金融論の授業を取った人にしかわからない専門的用語のはずだ。それが、金融・財政政策の焦点として一般的に論じられるようになった・・・」

金融論の第一人者 池尾和人教授はそう言う。まさにその通り。だからこそ12年振りに夕学に登壇いただいた。

今年の6月7日、8日の日経新聞「経済教室」に、「ヘリコプターマネーの是非」と題して、日銀のマネタリーベース(ベースマネー)をテーマにした特集が組まれた。紙面上で、否定的な立場で登場した専門家が池尾先生であった。

マネタリーベース(ベースマネー)とは、日銀の現金と貯金準備高を意味する。これを裏付けに財政出動がなされることを「財政ファイナンス」と呼ぶ。
「財政ファイナンス」は、国債発行による財政出動に限界が見えてきた日本の財政政策の次の一手として、このところ急浮上してきた言葉である。
2013年以来政府・日銀の異次元金融緩和は、「財政ファイナンス」の領域に入っているのではないかという指摘もある。
たしかに「日銀が、輪転機をぐるぐる回して紙幣を発行すればよい(市場にお金が流れ、経済活動が活発になる)」という発言を総理就任前後の安倍首相もしていた。
すでに、日銀は、年80兆円のペースで市場から既発国債を買い上げており、その保有残高は400兆円を越えたといわれている。

今年9月の「総括的な検証」を転換点として、日銀は異次元緩和政策の誤りをはっきりと認めないままに静かに表舞台からフェードアウトした、との池尾先生の弁でもわかるように、6月時点とは金融政策への関心が少し様変わりしているが、基本的な状況は何ひとつ変わっていないであろう。

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ザ・ストーリー・オブ・ムネハル・オザキ

photo_instructor_858.jpg貧しい生活だった。
1億円の借金をして、食肉用の牧場をはじめた親父は借金まみれであった。 
56歳になった尾崎宗春は子どもの頃の記憶を甦らせる。
牛は飼育しているが、高級品である牛肉なんて食べたことがなかった。
情けない。子ども心に「親父のようにはなりたくない」と思い、自分は安定した公務員になるんだと心に誓った。

高校は宮崎ではなく、大阪にあるPL学園に通った。1970年代半ばのことである。これが宗春にとっての転機となった。
大阪の街には、疲れ切った顔で会社に向かうサラリーマンであふれていた。
ふと、故郷の親父の顔が脳裏に浮かんだ。
中卒で借金まみれだが、生き生きと牧場で働く親父の顔が懐かしくなった。
目を閉じて考えた。親父のようになりたいと思った。
目を開けると公務員になる夢は消えていた。
高校卒業後、4年間は親父のもとで畜産の基礎を学んだ。
しかし、それだけでは何かが足りないと感じた。
もっと上を目指したい。自分は世界一になりたい。
「そうだアメリカで勉強しよう」と宗春は思った。

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その極意とは 前田鎌利さん

photo_instructor_839.jpg満員の聴衆の顔触れは様々、しかしやはりビジネスの現場で奮闘する20代から40代が多いのが「日本文化」がテーマの講演では珍しく思った。通常、文化をテーマとした講演だと参加者の大半は女性かあるいは年配の人だからだ。かつては書道や詩歌、茶道を嗜んでおくことが男性でも教養であったはずなのに、いつからか日本男性は文化から遠ざかっている。奇妙な話だ。オペラや美術館に積極的に繰り出す女性との会話のずれもやむなし。「男女の会話のずれはなぜ生じるか」夕学の講演で取り上げて欲しい。

話を前田鎌利氏の講演に戻す。それだけ参加者が詰めかけたのもプレゼンへの関心が高いためで書籍や研修テーマとしても大変人気がある分野だ。前田氏は「書家」、「起業家、プレゼンテーション・クリエーター」、「夫・父」の3分野を挙げ、気持ちの上では7割が書家だという。

5歳の時から書の世界に入り、教職に向け勉強するが故郷ではそのポストの空きがなかった。そんな時に阪神・淡路大震災が起き、「繋がる」ことの重要性を感じて光通信に就職、飛び込み営業を始める。そして携帯電話が固定電話より多くなった2000年にJ-Phoneへの転職からソフトバンクで働くようになった。孫正義氏と柳井正氏の対談の企画(もちろんプレゼンテーション資料作成も)や、ソフトバンク、JAXA、JINSなど多数企業やイベントのロゴやメッセージを揮毫。さらには全国に書道塾15校500人の生徒を持ち、プレゼンテーション・スクールを展開するなど多彩な活動を行っている。

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前田鎌利さんの書「念」を公開!

昨日、ご講演いただいた前田鎌利さんが講演のなかで書かれた"念"の一文字。いつも気にしている強い思いという意味で、"おもい"と読まれていました。ご本人の了解をいただきましたので、アップいたします。

前田鎌利氏の「念」夕学五十講にて.JPG

鎌利さんのFacebookでも公開してくださいました。
https://www.facebook.com/kamarimaeda


田中角栄は「天才」なのか―金権政治と人間的魅力―

photo_instructor_844.jpg日本列島改造論、日中共同声明、ロッキード事件。田中角栄といえば、功績と罪過を残した人物である。しかし、早野透教授が過去の文脈で角栄を語ることはない。現代の政治にIfを付け「もし角栄だったら」という視点で、独自の「田中角栄論」を語る。

元朝日新聞記者で角栄のバンキシャ、そして現在では桜美林大学名誉教授。今回の講演は「体制と政策を考える」というクラスターに分類される。しかし、視点は「人間田中角栄」であった。つまり、金権政治と非難された角栄像だけではなく、人間としての魅力を存分に語って頂いた。それは人間関係を築くにあたって、または強いリーダーシップを発揮するにあたって非常に役立つ内容であったと感じる。また、質疑応答では、石原慎太郎が言うような「天才」だったのかについても言及して頂いた。

とはいっても、何から書いていいのやら...キーボードを打ちながらもまだ悩んでいる。講師には様々な内容を盛りだくさんに話す先生もいる。しかし、早野教授のお話はいくつかのトピックがありながらも「かくして田中角栄という人物は魅力的なのだ」という結論に落ち着いてしまうのだ。つまりは角栄の魅力に抗えない一人なのである。

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小川和久氏に聴く、「国際水準から見た日本の危機管理」

photo_instructor_843.jpg「外交・安全保障・危機管理、この三つは日本の数少ない苦手分野。四方を海に囲まれ、海に守られてきたこの国は、危機に遭遇した経験に乏しい。なのに、その自覚すら不足しているため、ともすれば国内でのみ通用するレベルの危機管理で自己満足しがちである。私が演題にわざわざ『国際水準』と謳ったのは、国際水準をクリアしていなければ、それは危機管理とは言えないからだ」

そう喝破して、小川和久氏は、目覚めの冷水を会場に浴びせながら90分間のマシンガン・トークの口火を切った。

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マネージャーになる・育てる・幸せになる! 松尾睦先生

松尾睦経済規模がなかなか思うように大きくならず、AIのように自分で経験を積み人間の仕事を代替する機械まで現れた。私たちは、昨日していた自分の仕事は明日なくなるかもしれないという不安が多くの人の心の片隅に常に陣取っているような時代で仕事をしている。諸先輩方に至っては、自分がエースだったころの仕事の仕方なんぞは通用せず、どうにかしてこの時代を切り拓く後世を育てたいという熱い思いのやり場を、探しているように見える。会場は、そんな諸先輩方が多く詰め掛け、私のように背伸びをして「マネージャーの育て方・なり方」の講演にお邪魔する若輩者は少数派であった。

だが、北海道大学大学院経済学研究科教授の松尾睦先生のお話はそんな部下の育て方やマネージャー予備軍である自分がどのように道を歩むべきかを教えてくれた。

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個人でもチームでも最大限の力を発揮する方法 井原慶子さん

photo_instructor_838.jpg2014年、バーレーン。サーキットへと向かう井原慶子さん。これで最後のレースにしようと思った。有終の美を飾るために負けられない戦い。しかし、リーダーが連れてきたメカニックは、今日が初めての新人キャサリンである。女性だから力が弱く、シートベルトをつけてもらうのに8秒かかった。男のボブがやれば1秒である。負けると感じた―――。そこに、リーダーがやってきた。

「ケイコ、新人のキャサリンはどう?」
「もう最悪よ」
「そうだろ。でも、キャサリンが来てくれたおかげで、ベルトの締め方から、器具の効率的な並べ方まで、多くの改善点が見つかったじゃないか」

結果、このレースでは初のアジア人女性として表彰台に上がれた。同じ女性なのに、新人の女性メカニックでは勝てないと感じたことを恥じた。レース後のリーダーの言葉が胸に響いた。

「新人は本番で育てる。その決断が出来なければリーダーじゃない」

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宇宙生命は存在する、たぶん 渡部潤一さん

photo_instructor_837.jpg夕学五十講は10回以上聴講しているが、講演の数日前からワクワクしたのは初めてだ。
ワクワクの理由はなんといっても「宇宙生命は存在するか」という本講演のテーマ。
テレビ番組の「宇宙人」特集に親しみ、友達のUFO目撃証言に興味津々な子供時代を過ごした私にとって、地球外生命は長いあいだ畏怖の対象であり、友達であり、フィクションでありノンフィクションだった。いるのか、いないのかーーいよいよその答えが出るかもしれないのだ。ワクワクしないわけにはいかない。

分からないからおもしろい

講演は、2013年にロシアのチェリャビンスク州に隕石が落下したときの、緊迫感ある映像からはじまった。空を切り裂く隕石、落下の衝撃波で割れるガラスの様子など、いま見ても恐ろしい光景だが、この隕石落下事故は世界中の天文学者の誰も予測しない出来事だった。

その一方で、この事故の翌日に小惑星が地球に接近することは予測されていた。
講師の渡部潤一さんは、この小惑星接近に関して事前にニュース番組の取材を受けていた。ところがロシアの隕石落下事故が起こったため、そちらについても急きょインタビューが組まれた。緊急事態ゆえ、カメラに映る渡部さんは普段着姿だ。実際のテレビ画面をスクリーンに映しつつ、「30分のニュース番組に同じ人物が2度、それも衣装を変えて出演したのは相当めずらしいことだそうです」と話して会場をドッとわかせた。

そう。テーマもさることながら、渡部さんのお話は大層おもしろい。映像を交えたりちょっと自虐的なネタを挟んだりして、客席を飽きさせないのだ。講演がはじまって20分ほどで、会場全体が渡部さんのペースに心地良く巻き込まれていくのが分かる。

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廣瀬キャプテンに聴く、「傍に立つ者」の覚悟

廣瀬俊朗2015年9月19日、イングランド・ブライトン。ラグビー日本代表のワールドカップ本大会初戦の相手は世界ランク3位の強豪・南アフリカだった。賭け屋の倍率は日本の34倍に対し南アフリカは1倍というのだから、そもそも賭けにもならない。なにしろ日本がワールドカップの舞台で勝利を収めたのは24年前の一度きり。下馬評はそれほどあからさまだったが、グラウンドに立った代表選手たちの胸には秘めた思いがあった。
そしてその戦列に、グラウンドに立つことを誰よりも熱望していた男の姿はなかった。

元日本代表キャプテン、廣瀬俊朗氏。
高校日本代表、慶應義塾大学、東芝、そして日本代表。その錚々たるキャリアの、いずれのチームでもキャプテンを務めてきた、文字通り「日本ラグビーの牽引者」のひとりだ。
2012年、日本代表の再建を託されたエディー・ジョーンズ氏がヘッドコーチに就いた時、勤勉なハードワーカーとして知られる名匠が「自らの理念を理解しチームへ浸透させる力」を基準に選んだキャプテンが、廣瀬氏だった。

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トランプ躍進の陰に「反知性主義」あり 森本あんり先生

photo_instructor_836.jpgもしトランプが大統領になったら、アメリカはどうなるのか。日本は、世界は――。来る11月8日の米大統領選挙を控え、世界が固唾を呑んで見守っている。10月末の現時点ではヒラリーの圧倒的優勢が見込まれているものの、まさかのどんでん返しがあるのでは、という一抹の不安は消えない。実際、これまでもトランプは思いがけず"いい勝負"をしてきたのだ。
移民の脅威やオバマへの失望、ヒラリー嫌悪の高まりといったトランプ人気の理由をいくつ挙げられても、あそこまで極端な人物を支持するメンタリティはやはり理解し難い。その不可解を、森本あんり氏が少なからず氷塊してくれた。

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細胞からその先は 上田泰己先生

photo_instructor_842.jpg専門外の人に専門性の高い話をするのは大変だ。説明できてもどれだけ理解しているか、全体や詳細を、はたまたその趣旨を本当に理解しているかなどは話し手には本当のところ理解しようがない。研究の必要性や有用性のみを話しても研究する喜びやワクワクする気持ちは伝わらず、それが伝わらなければ「何も伝わらない」。

上田泰己先生の講演は、研究の説明とワクワク感が上手く調和し、表現されたものだった。始まりはジョルジュ・スーラの有名な点描画を紹介し、点のように単純な「要素」によって絵が構成されているように私たちの体も同様ではないかと美しい例えからである。

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坐禅で"型"から解放される 平井正修さん

平井正修平井正修さんが住職をつとめる全生庵は、安倍晋三首相がたびたび訪れたり、中曽根康弘元首相が現職時代に週1ペースで通っていた寺として知られている。

安倍さんや中曽根さんが全生庵に足を向ける目的は、坐禅だ。
坐禅――例のポーズや、お坊さんにうしろからペチンと叩かれるシーンはテレビで見たことがあるが、いったい何のためにやるのか、やるとどうなるのか。
坐禅について知りたいことは多々あるが、平井さんのお話は全生庵を建立した山岡鉄舟の生涯をふりかえるところから始まった。

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リーダーになるのはそれほど難しいことじゃない 日向野幹也さん

日向野幹也あなたの周りでリーダーシップのある人といって思い浮かべるのは誰だろう。同じ会社の直属の上司を挙げる人もいるだろうし、憧れの経営者に思いを馳せる人もいると思う。
早稲田大学大学総合研究センター教授の日向野幹也先生のお話を聞いて、内向的な同僚や影からのサポーター的存在であった先輩だって職場でリーダーシップを発揮していたのだということに気づかされた。 日向野先生が提唱するリーダーシップ像を知った後は、私と同じように隣の席のあの人や、もしかしてあたしだってリーダーであったということに気づいてもらえると思う。

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作られたイメージ 井上章一さん

井上章一講演タイトルからして京都への屈折した思いが語られるのかと思いきや、京都の話はほとんど無かった。講演中、私は心の中で何度も呟いた。「関西の人の話って本当にサービス精神旺盛だ」それほど井上章一氏の講演はたくさんの興味深い話題と笑いで満ちていた。

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第25回 7/29 (火) 阿刀田高さん

takashi_atouda.jpg最終回、第25回7月29日(火)にご登壇いただきますのは、作家の阿刀田高さんです。

阿刀田高さんは、これまで40年以上にわたる執筆活動のなかで、900篇以上の作品を生み出してこられました。第81回直木賞ほか数々の授賞もされてこられました。日本ペンクラブ第15回会長、また、1995年から今年の1月まで、なんと19年間、直木賞選考委員も務められました。間違いなく現代の日本を代表する作家のおひとりでいらっしゃいます。

さて、阿刀田さんといえば、ブラックユーモアの短編小説、そして「知っていますか」シリーズです。

ちょっと不思議で、ちょっと怖くて、思わず笑ってしまう。日常にありそうで、自分にも思い当たりそうで、思わずドキリ。短編小説はそんな独自のブラックユーモアにあふれています。

「知っていますか」は、ギリシャ神話、聖書、古事記、源氏物語と次々、古典を容易に読み解いたシリーズ。それまではちっともわからなかった、わかる気がしなかった、古典はこんなに面白いのか!と次々出会いえた私もその一人です。

「古典を読むには原典をたどるのがいちばんよいが、読むべき古典が多すぎる。質のよいダイジェストにも意味があるのではないか。」

阿刀田さんのそんな思いも込められています。

そんな阿刀田さんご自身の、"創造の井戸を掘り下げてきた"経験をまとめられたのが、『知的創造の作法』です。今回の講演タイトルでもあります。

知的創造の達人がその作法を種明かししてくれているのですから、面白いに違いない、わかりやすいに違いない、そう思われた方きっとご期待にお応えする講演です。「知的創造の作法」、皆さんとご一緒に学んで、ちょっと考えて、おおいに楽しんでみたいと思います。(湯川)

第23回 7/15 (火)  山口晃さん

akira_yamaguchi.jpg7月15日(火)にご登壇いただきますのは、画家の、山口晃さんです。

オートバイに乗った戦国武士。
六本木と江戸が一体になった街。

ふだん日本美術や現代アートにあまり馴染みのない方でも、「ああこの絵の」と山口晃さんの作品をご覧になったことがあるのではないでしょうか。絵画や襖絵、小説の挿絵や装丁などと幅広くご活躍です。

山口さんの絵は、時代が縦横無尽に行き交って、なんとも発想の面白い作品です。そして絵をよく見ると、とても細密で、描写は鋭く、発想と技術の突飛さがまたとても面白いのです。浮世絵のような、大和絵のような、そして、漫画のような。日本の伝統と現代の息づかい、両方を同時に感じさせるところも面白いなあと思います。山口さんのなかでは時空がどんなふうにできているのでしょうか。
そんな山口さんが、画家・絵師の目線から日本美術の有名作品の背景や魅力を解説する著書を出されました。

ヘンな日本美術史』(祥伝社)

2013年の小林秀雄賞を授賞されたことでも話題となりました。

小林秀雄賞は、文芸評論家 小林秀雄の生誕100年を記念して創設された学術賞で、日本語表現の豊かな著書(評論・エッセー)に贈られています。山口さんは、初めて、画家として授賞された方でした。それもすごいことです。
「読んでおもしろい」からだというのが授賞理由でした。読んでみるとたしかに読み物として面白い。それに自分が思いもしなかった突飛な切り口から鑑賞や解説をされるので日本美術を知る、観るのがますます面白くなりました。

面白がり、面白さを伝え、面白さを絵で表現する山口さんが「私見」で語ってくださる「日本の古い絵」。お話も、山口さんにお会いすることも、とても楽しみです。(湯川)

第22回 7/11(金) 松井忠三さん

tadamitsu_matsui.jpg第22回 7月11日(金)にご登壇いただきますのは、株式会社良品計画 代表取締役会長の 松井忠三 さんです。

MUJI」」といえばいまや、誰もが知る、日本が誇る、世界のブランド。
そして誰もに身近な生活ブランドでもありますね。お住まい、通勤途中、オフィスなど皆さんの街にも、1つ2つ店舗があって、お買い物または利用されたことのある方も多いのではないでしょうか。

「無印良品」が提案した、シンプルな暮らしはとても斬新なものでした。その「シンプルさ」に、ぎゅっと、経営とブランド力のエッセンスも圧縮されているに違いありません。そう感じさせる松井さんの著書のタイトル。

無印良品は、仕組みが9割 ―仕事はシンプルにやりなさい(角川書店、2013年)

今回の講演は、本著を入口にしつつ、無印良品V字回復の軌跡、それを実現した松井さんの経営手腕の実績、松井さんの持論や思い、じっくりお伺いしたいと思っています。

無印良品は現在、世界24ヶ国に、258店舗。2014年2月期の連結純利益予想は、前年比56%、予想を35億円上回る、177億円です。しかし常に順調であったわけではありません。

松井さんが社長に就任された2001年当時も、無印良品の業績が低迷していたころでした。大学卒業後、西友ストア(現西友)に入社、1992年に無印良品に移ります。以来12年、"無印良品とともに"仕事をし、経営されてきたのが松井さんです。

「無印良品」の価値、価値観に、たちもどった経営をしてきた、自信をもっているからこそ、「シンプル」というキーワードで振り返り、語ってくださっているのだと思います。仕事もマネジメントも生活も、シンプルにできたらいいなあ、シンプルっていいなあ。憧れも重なり、MUJIのシンプルさへのヒントがあるに違いない、そんな期待いっぱいで私も講演を楽しみにしています。(湯川)