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知性と情熱に彩られた「道」 池田理代子さん

池田理代子この日の客席は圧倒的に女性が多い印象。「ベルばら」世代の40代、50代が目立つ。いつもよりも柔らかな期待感に包まれる中、壇上にあらわれた池田理代子さんはビビッドなピンクのワンピース姿。お年のことには触れるのは無粋と知りつつ、つい言いたくなってしまう。72歳とは到底信じられない華やかさ、美しさだ。

講演タイトルは「私の歩いてきた道」。
「わたしの話を聴きたい人なんて居ないんじゃないかと思って」と、少女漫画の巨匠に似つかわしくない謙虚な第一声から始まった講演は、夕学五十講では珍しいインタビュー形式。漫画家の他に声楽家の顔も持つ池田さんは、人前に立つことには十分に慣れておられるはずだが、両手でマイクを持つ姿からは少しの緊張が伝わってきた。

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多様な専門性を束ねる専門家 白坂成功さん

いまから50年前(1969年)アポロ11号の成功により人類は初めて月面に立った。アポロ計画にどれ位のコストがかかったのかは知らないが、アメリカが国家の威信をかけた一大プロジェクトであった。その当時、人工衛星を1機打ち上げる為に、膨大な人員と時間が投入されたことは間違いない。
ところが、2017年、インドのPSLVロケットの打ち上げでは、一度になんと104機の人工衛星を打ち上げ、軌道に乗せることに成功している。

白坂成功今回の夕学の登壇者 慶應義塾大学大学院SDM研究科で超小型衛星の開発研究を行う白坂成功教授によれば、宇宙開発の常識は大きく変わった。
いまや、第三次宇宙開発ベンチャー時代を迎えつつあるという。ロケットも衛星も小型化・低コスト化が進み、主役は民間企業に移りつつある。宇宙開発の目的も、社会問題の解決や、ビジネスユース、さらにはエンタテイメントにまで及んでいる。

日本でも、宇宙ベンチャーが続々と生まれている。
ロケット系では、ホリエモンがスポンサーになったことで知られるインターステラテクノロジズ社が、MOMOという小型ロケットの打ち上げに取り組んでいる。
MOMO

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ビズリーチからはじまる生産性革命 南壮一郎さん

南壮一郎「どれどれ?経歴も申し分ない」
「へー、そんな経験が!」
「即戦力じゃないか!」
「ぜひ欲しい!」
「おい君、彼はいったいどこで!?」

この後に続くのはもちろん「ビズリーーーチ!」である。ビズリーチのテレビコマーシャルは登場人物が少なく、ほぼセリフだけで物語が進んでいくため、映像の派手さもない。しかし何故かインパクトがある。

株式会社ビズリーチは、代表取締役社長である南壮一郎氏が自身の経験からはじめた求職者課金型の転職サイトである。南氏が楽天イーグルス退職後に転職活動をはじめた際、いくつかの転職エージェントに登録して27社を紹介された。しかしそこに同じ企業はなく、求職者と採用者のマッチングプロセスが不透明であり、違和感をもったのがはじまりであった。

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日本発データガバナンスを通じた多様性への目覚め 山本龍彦さん

山本龍彦日本は、G20の議長国となる2019年というタイミングで、AIやビックデータの活用によって、ビジネスにおける国際競争をリードしようとするのみならず、人々の日常の暮らしへ大いにAIを活用しようとしている。

データやAIの活用により、新たなビジネスが生まれ、企業の国際化が推進されることを高く期待している。しかし、慶應義塾大学法科大学院教授で慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの副所長でもある山本龍彦氏から、AIのプロファイリングがプライバシーを侵害する可能性があること、人々をAIが検出するアルゴリズムに基づく恣意的なカテゴリーで分類する危険性を持ち合わせていることを説明いただいた。山本教授はその上で、データを活用した新たなビジネスのチャンスを法的枠組みによって適切に管理する必要性を訴えた。

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「兆し」と「見立て」のデザイン 岩嵜博論さん

人間を理解し、デザインに置き換え、ビジネスに転換する

岩嵜博論それが、きょうの講師 岩嵜博論氏のコアコンピタンスである。
リベラルアーツ大学ICUで社会学を学び、慶應SFCで建築、イリノイ工科大学でデザイン思考の修士を修め、京大MBAで博士号を取得した俊才である。


「価値の源泉がモノからサービス、体験へとシフトしている」
岩嵜さんは、その象徴的事例として、ラスベガスで開催された2018 International CESでトヨタが発表したe-paletteを紹介してくれた。
そこには、移動や物流、物販など様々なサービスに対応し、人々の暮らしを支えるモビリティカンパニーを目指すというトヨタの意思がある。自動車そのものではなく、自動車をツールとしたサービスにこそ価値の源泉がある、と宣言をしているに等しい。

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明石ガクト氏に聴く、実践:VISUAL STORYTELLING

明石ガクトいやこれ無理っしょ、この講演レビューするとか。だって相手は明石ガクトさんよ?ワンメディアの代表取締役で、日本の動画制作の第一人者よ?去年バカ売れした著書のタイトルだってズバリ『動画2.0』なんだから。動画1.0どころか静止画すらない文字だけ2500字かそこらでどうやってこの日の講演内容をまとめて紹介しろっちゅうねん。どこまで竹槍精神なんや。

なんなら今回、文章じゃなく動画でレビューしましょか?こう見えても学生時代には若手映像作家の登竜門と言われたぴあフィルムフェスティバルで予選を突破したこともあるんですよ。本選で落ちたけど。え?映像と動画は違う?そこをわかっていない時点でアウトですか。そうですかわかりましたじゃあ潔くテキストだけで玉砕しますよ。メディアとしてのテキストのダメっぷりを全力で証明することで時代は動画だよ!というのを伝えるのが今回の私の役割ってことで。斬られ役か。

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あまりに人間的な 柴山和久さん

柴山和久「百科事典のセールスマンに百科事典が必要か聞くな」という。けれども投資のアドバイスを欲しい時には投資の専門家、証券会社などに相談しなければならないのがネックである。ファイナンシャル・プランナーもいるけれど色々勧められそうだし...。多くの人はそんなところで悩んでいるのではないだろうか。

医療や法律はテレビでも専門の番組が多数あるのに、どういう訳か投資についてはない。学校でも学ばない。せいぜい経済ニュースがあるくらいだ。そうした背景があるためか柴山和久氏は「本質の流れ」を中心に話すと初めに宣言してくれた。そして「投資」ではなく「資産運用」との言葉を用い続けた。

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ストッパーのはずし方 太田光代さん

太田光代今回の講師である太田光代さんは、爆笑問題などが所属する芸能事務所の社長さん。言わずと知れた太田光さんの奥様である。会場に入ってきた太田さんを見てまず思ったことは、「美しい人だ」ということ。スッと立つ姿も、ゆっくりと歩く姿も自然に視線を持っていかれてしまう。話しはじめると声もゆったりと落ち着いていて素敵だ。

今回のテーマは「タイタンの学校のすすめ」。太田社長が経営されている株式会社タイタンでは、2018年に学校を開設した。この「タイタンの学校」には芸人をめざす「芸人コース」と、一般向けの「一般コース」という二つのコースが用意されている。

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CtoC × デジタルが変える消費行動 小泉文明さん・山本晶さん

小泉文明山本晶メルカリは楽しい。はじめた頃は家にある不要品が売れて、部屋がすっきりすれば満足だったが、やればやるほどはまってしまった。時間があればメルカリを開いて、安くて可愛い洋服が出品されていないか覗いてしまう。メルカリの小泉文明社長兼COOによると、このような行為を「探索」という。「検索」ではなく「探索」。「何かいいものないかなー」とメルカリ内をスクロールするのはまるで「宝探し」のような買い物であり、メルカリが成功した理由でもある。

かつての不要品は捨てるか、友達にあげるか、リサイクルショップに買い取ってもらうぐらいしかできなかった。だけど、捨てるのはもったいないし、リサイクルショップで買い叩かれたうえ、高く販売されるのは嫌であった。しかし、フリマアプリの登場で見知らぬ人とも個人間で取引ができるようになり、不要品の呪縛から解放されるだけでなく社会の経済的厚生が高まった。見知らぬ同士でやりとりするからには、不良品が届くとか、代金が支払われないとかいったような様々なリスクが伴う。そこをメルカリは手数料をとってリスクヘッジしている。匿名配送やユーザー同士の相互評価、商品を受け取るまで代金が支払われないシステムは安心・安全さを与えて、メルカリユーザーを増やした。

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私も考えた 石川善樹さん

石川善樹かつて「2番じゃ駄目ですか?」という言葉が話題となった、あの事業仕分けにおける困難の一つには「考えない人に考えることの重要性を説く」というほぼ不可能に近い点があったのではないかと思う。そういった場合、学者や研究者などの「考える人」は最後の手段として「有用性」を根拠として挙げることとなる。あの時私は学校教育で「考えること」を教えてこなかった長年のツケが回って来たのではないかと思ったものだ。

石川善樹氏も同様の考えらしく、学校教育で「考えるとは何か」が教えられないことを嘆かれていた。私は今回の講演を大変楽しみにしていた。「考える」ことがテーマとして扱われるのだから。また昨年の石川氏の講演も聴いていたので1年後の内容がどのようになっているのか、定点観測のような気持もあった。

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安宅和人氏に聴く、平成日本の彷徨とシン・二ホンの咆哮

安宅和人試しにWEBで「シン・二ホン」と検索してみてほしい。安宅和人氏の講演の資料や動画がいくつも出てくるはずだ。枚数の多寡や時間の長短はあるものの、リンク先の資料の多くは今回使われたものと共通だった(ので、満席だった今回の夕学を聴講できなかった方は、まずそちらで資料を確認してほしい)。

情報満載のスライドの中身に加えて目を引くのは、それら資料類の出所、つまりリンク元だ。映像がTEDなのはともかく、資料PDFの掲載場所は経済産業省・産業構造審議会の「新産業構造部会」であったり、財務省・財務総合政策研究所の「イノベーションを通じた生産性向上に関する研究会」であったり、首相官邸・教育再生実行会議の「技術革新ワーキンググループ」のページであったりする。

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きわめて日本的な「修験道」の世界 田中利典さん

田中利典今回は「修験道の世界~身体を使って心を修める~」と題して、奈良の吉野にある金峯山寺長臈(きんぷせんじ・ちょうろう)田中利典氏による講演が行われた。

「修験道」とは私には耳慣れない言葉であったが、田中氏は「日本古来の山岳信仰に、神道や外来の仏教、道教、陰陽道などが集合して成立した我が国固有の民族宗教」であると説明された。そう言われてもなおピンと来なかったが、修験道の修行をする人は「山伏」であると言われ、「ああ、弁慶なんかのアレのことか」と一応理解はしたものの、ということは山伏が現代にもいるのか?という驚きが今度は頭に浮かんだ。今私の目の前で話をしている田中氏が現代に生きる山伏なのかと思うと、何やら不思議な心持ちがした。

田中氏によると修験道には4つの要諦があるという。

一つ目は、それは「山の宗教・山伏の宗教」であるという点。聖なるものが住まう大自然において、山に伏し、野に伏して修行するのが修験道であるという。

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馬場渉氏に聴く、大企業イノベーションの起こし方

馬場渉2017年の春、日本の典型的かつ伝統的な大企業であるパナソニックで、驚きの人事があった。一つはOBであり日本マイクロソフト社長だった樋口泰行氏の請われての復帰と役員登用。そしてもう一つが、内部昇格でも出戻りでもない全くの外部人材が、こちらも請われて本社ビジネスイノベーション本部長・兼・北米子会社の副社長というポストに抜擢されることだった。
世間の耳目は前者に集中したが、パナソニックの未来に大きく影響するのはむしろ後者の方だったかもしれない。少し前まで同社製品を買ったこともなければ松下幸之助氏の著作を読んだこともなかったという馬場渉氏は、このとき、39歳にして同社の一員となった。

馬場氏は、ERPの世界的企業として有名な独SAPグループでキャリアを積んだ。直近では本社カスタマーエクスペリエンス担当バイスプレジデントとしてシリコンバレーに籍を置き、大手顧客のデジタル・トランスフォーメーションをハンズオンで支援してきた。

だが、ディズニーの放送部門がいくら頑張っても、NETFLIXのスピードには追い付けない。小売業の世界最大手ウォルマートも、amazonのようなデジタルネイティブ企業の動きには追随できない。過去に成功体験を持つ大企業が、それ故に、デジタルに最適化された新興企業に追い抜かれる事態。「イノベーターのジレンマ」そのものだ。

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生き切る 細川晋輔さん

細川photo_instructor_965.jpg「禅とは捨てる修行」だとよく聞くので何を捨てるのかずっと考えていた。断捨離とは違うらしい。では長年の間に培ってしまった思い込みの類だろうか。はたまたつまらぬこだわりのことだろうか。あれこれ考えていたけれど、「これが」というものに確信を持つには至っていなかった。細川晋輔氏の講演で私はこの問いへの答えの一つを見出せたように思う。

「雲水日記」という誠に可愛らしくユーモア溢れる絵を用いながら、私達にはなかなか窺い知ることのできない修行僧の生活が細かく紹介された。故郷を旅立ち修行道場への入門を乞う図、庭詰め、先輩僧への挨拶、托鉢、畑仕事、座禅、禅問答など。絵があまりに可愛らしくて見過ごされそうだが日常生活は当然のことながら大変厳しそうで規則的だ。細川氏がこれでもかというほど微に入り細に入り日常生活の説明をするのを聞いて、私にはそれが「修行僧の生活とは『超人』になるためのものではありません」と言っているように思えてきた。型にはまった同じ生活を繰り返すことで感覚を研ぎ澄まし、自分のなすべきことに集中して、その成果を試される。毎日毎日。それが目的のように思える。

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日本経済の機会とリスク 竹中平蔵先生

タケナカphoto_instructor_991.jpg慶應義塾大学名誉教授であり、東洋大学教授でもある竹中平蔵先生は、開口一番に「日本人は平成の時代に起きてきた海外の出来事について検証を行っていない」と警鐘を鳴らした。令和の時代がしなやかで強い時代であるために、捉えておくべき世界の事象とは何か。グローバルにコネクトされた社会を生き抜くために求められることは何か、考える時間となった。

我々の生きるこの世界では、戦後の世界的復興と同レベルのエネルギーを注いで、World Architectureを再構築することが求められている

スイスで行われている世界経済フォーラムのダボス会議では、各国の経済リーダーが集い、世界の安定的な成長に向けた様々なテーマを討議する。2019年は、ドイツのメルケル首相が提唱した「戦後構築したLiberal World Orderはうまく機能しておらず、我々の生きるこの世界は、戦後の世界的復興と同レベルのエネルギーを注いで、World Architectureを再構築することが求められている」というメッセージが観衆の注目を浴びた。ポピュリズムの台頭や米中対立の最中にある、現在の世界情勢を表すのにふさわしい言葉である。

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戦略的意思決定とは、見えない機会損失について考えることである 清水勝彦先生

katsuhiko_shimizu.jpg私たちは何かの機会(opportunity)を得る代わりに、何かの機会を失っている。それは他でもなく、時間やお金、身体等の資源が限られているからだ。その限られた資源を効率的に配分(投入)できる企業や個人が高い利益を生み出すことができる。

寓話『アリとキリギリス』で、アリが成功したのは勤勉で「遊び」という誘惑に打ち勝つ強い心があったからではない。限られた資源(時間、労働力)を効率的に配分(夏の間、遊びではなく食料の備蓄)したからだ。よって、目の前の快楽に気を取られ、まだ見ぬ冬のことまで注意を払えなかったキリギリスも「怠け者」という一言では片づけられず、夏の間に「食料の備蓄」という努力を投入するところを、全ての時間を遊びに投入してしまったというように資源投入に誤ったのである。キリギリスが夏中に遊んで人生を謳歌しないで、冬に備えて働いていれば、生活するに困らない食料を得ることができただろう。

この得られたはずの食料が機会損失、言い換えれば夏のレジャーのコストである。清水勝彦先生によれば、機会損失の問題はこのように「見える」ところばかりに気を取られ、「見えない」ことに注意を払わないから起こるという。

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第25回 7/31(水)吉田裕先生・保阪正康さん

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7/31(水)今期の最終回です。テーマはアジア・太平洋戦争です。


ご講演いただくのは一橋大学大学院社会学研究科 特任教授 吉田裕先生。そして、ノンフィクション作家 保阪正康先生を対談のお相手としてお迎えします。

吉田裕先生の近著『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)が話題となりました。13万部を記録。徹底した第一線の兵士の目線であることと、歴史学者による一冊であったことが本著を特徴づけていました。

吉田先生は日本近現代軍事史、日本近現代政治史をご専門に、長きにわたり一橋大学で教鞭をとられるとともに、アジア・太平洋戦争、日本の軍隊や徴兵制、日本人の戦争観などをテーマに著作をお持ちです。

保阪先生は日本近代史、特に昭和史をご専門とするノンフィクション作家です。前回「昭和天皇実録」をテーマにご登壇いただいた『夕学五十講』にご来場くださった方もたくさんいらっしゃることと思います。研究を重ね、延べ4,000人余の人びとに聞き書きを行ってこられた、といいます。今回はそんな保阪先生だからこそ、との思いからご登壇をお願いしました。

『夕学五十講』ではこれまでにも歴史や戦争をテーマとした講演を開催していますが、中でも私が印象に残っているのが4年前の「戦後70年、『学生と戦争』を考える」です。
軍隊を経験された3名の方々をお招きしました。戦後70年たった今だからこそ、と、初めて語ってくださったお話もありました。実際に目撃し体験したお話を生で伺えた貴重さと同時に、その重みをとても感じました。そして、戦争の記録・記憶の継承の重要さと難しさについても考える機会となりました。今回は、私の中ではその続きの位置づけです。

テーマは「兵士達が見たアジア・太平洋戦争」。研究者とノンフィクション作家の先生方が語り合う"兵士の目線"による戦争の現実。皆さんとじっくり伺うとともに、私たちも新たな角度から戦争について見つめてみることできたらと思っています。(湯川)

・演題「兵士達が見たアジア・太平洋戦争」
※講演60分、対談30分、質疑応答30分の構成です。
・吉田 裕氏 
・一橋大学大学院社会学研究科 特任教授 講師プロフィール
・保阪 正康氏 
・ノンフィクション作家 講師プロフィール

第24回 7/17(水)安部 龍太郎さん

ryutaro_abe.jpg7/17(水)にご登壇いただくのは作家 安部 龍太郎さんです。

安部龍太郎さんは『血の日本史』で1990年にデビュー、2013年には『等伯』で第148回直木賞を受賞。皆さんご存じのとおり現代を代表する人気の歴史小説家のお一人です。私もいつか実現したらいいなと楽しみにしていました。

直木賞受賞作である『等伯』は、日経新聞の連載中から、話題となりました。
長谷川等伯といえば代表作『松林図屏風』。
この絵のことは知っているがそのすごさや描いた画家のことはあまりよく知らない、そんな読者も圧倒的に多かったなか、安部さんによって、躍動的で、力強く、生き生きとした長谷川等伯が描き出されたのでした。
歴史小説の面白さに引き込まれた、私も一読者、一ファンの一人です。

そんな安部さんが、歴史小説家になって三十年、ずっと取り組んできたテーマがある、とおっしゃいます。それが織田信長。『信長はなぜ葬られたのか』『信長になれなかった男たち』など作品もありますが、そこにとどまらない尽きぬ探究心や情熱を言葉に感じます。そしてそれが今回の講演実現にもつながりました。

「彼のことが分かれば日本と日本人が分かる。そう思ったからです。」
と安部さん。しかし追いかけ続け何がわかったか、といえば、なぜ信長がわからないか。そしてそこが面白い、そうに違いない、と今からわくわくするのです。信長を通じて眺める戦国時代、信長をとおして観る日本と日本人、作家 安部 龍太郎が描く "新しい歴史観" 楽しみでなりません。(湯川)

・安部 龍太郎
・作家
・演題は「信長はなぜ葬られたのか」
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第23回 7/11(木)高橋 祥子さん

syoko_takahashi.jpg7/11(木)は株式会社ジーンクエスト 代表取締役、株式会社ユーグレナ 執行役員バイオインフォマティクス事業担当 高橋祥子さんにご登壇いただきます。

ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか?

誰もがドキッとするような高橋さんの著書タイトル。テクノロジーの進歩によって、生物学にも大きな変化が生まれているといわれますが、生命科学の根本情報であるゲノムの活用は私たちの生活、世界を大きく変えるとされています。

高橋さんが代表を務める株式会社ジーンクエストは、生活習慣病など疾患のリスクや体質の特徴など約300項目以上におよぶ遺伝子を調べ、病気や形質に関係する遺伝子をチェックできるベンチャービジネスを展開しています。

ゲノム解析はデータ収集から始まる
と、言われるほどに、ゲノム解析では膨大な人々からの膨大なデータが必要です。その一方で、倫理的、法的、社会的問題を生み出すこともあり、その点において、遺伝情報を扱われることに対する私たちの不安や恐怖感が存在することも間違いありません。

今後も加速度的に進歩を続けるテクノロジー。生命科学のテクノロジーにはどのようなメリットとリスクがあり、有効活用するためにはどうすればいいのか、未来に向けた思考はとても大切なことでしょう。

高橋さんは遺伝子解析の研究推進、正しい活用を広めることを目指し、大学院在籍中に日本初の個人向け大規模遺伝子解析サービスを立ち上げ、展開しています。高橋さんだからこそ見えていらっしゃるゲノムの活用の現状と未来についてお話し頂けること楽しみです。(保谷)

・高橋祥子さん
・株式会社ジーンクエスト 代表取締役
株式会社ユーグレナ 執行役員バイオインフォマティクス事業担当
・演題: 「パーソナルゲノムが拓く未来」
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第22回 7/9(火)村上絢さん

aya_murakami.jpg7/9(火)ご登壇いただくのは一般財団法人 村上財団 代表理事の村上絢さんです。

私たちビジネスパーソン一人ひとりが、社会とお金についてじっくり考える、きっかけとなる講演をお願いしたいとの思いから今回のご登壇が実現しました。

「日本の社会がより強く、優しく、しなやかであるように、私たちにできることを探したい」と村上財団のウェブサイトにスローガンが掲げられています。そのためには「日本はお金がもっと循環する社会になるべきである」と村上さんは言い切ります。それはどういうことなのか、それはなぜなのか、それが私たちが社会とお金を考えることにつながると思います。

村上絢さんは、村上ファンド創設者の投資家 村上世彰さんの長女で、モルガンスタンレー証券会社債券部勤務をへて、投資家に。
プロフィールからはつい、羨望も混じり"あの村上さんのお嬢さんならね" とそれがすべてかのように思います。しかしながら村上絢さんのご活躍やメッセージからは、強い指針や思いをたしかに感じます。

高校時代をスイスに留学し、海外における社会貢献活動のあり方に影響を受けたといいます。父である村上世彰さんの意志を継ぎ、チャリティ・プラットフォーム代表に就任。一般社団法人 子ども宅食応援団理事も務め、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんらとともに、子どもの貧困問題にも具体的に取り組まれています。ご自身、お2人のお子さんをもつ母でもいらっしゃいます。

日本の非営利組織の活動を資金面で支援する。投資や資金というと実社会、一般市民から遠い世界とイメージしがちですがそれをしかと結びつけ、活動されている方。そんな村上絢さんだからこそのお金と社会のお話、じっくり伺い、自身に引き寄せ考えたいと思います。(湯川)

・村上 絢
・一般財団法人 村上財団 代表理事
・演題は「資金循環で社会の問題を解決する」
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第21回 7/3(水)鷲田祐一先生

yuichi_washida.jpg7/3(水)は一橋大学大学院経営管理研究科 教授 鷲田 祐一先生のご登壇です。

アップルやダイソンの製品が、優れたデザインで世界的な成功を収めています。これらの企業では、経営の最高意思決定でデザインという要素が重視されていると言われます。

一方で、日本の製造業は技術偏重にて右肩上がりを続けてきたなか、ここ数年で、ものづくり日本としての価値づくりが揺らいでいるとされています。

日本の企業経営の意思決定において、デザインという要素はひどく軽んじられており、企業経営とデザインが結びつくことに着目していない企業もまだまだ多く、大きく出遅れている感があることは否めません。

そこには、日本では「デザイン」という言葉が、色やカタチという狭い意味に封じ込められてしまった歴史ゆえ、本来の「設計」という概念が含まれなくなっているという背景もあるようです。

鷲田先生は、大学卒業後、博報堂に入社し、生活総合研究所、イノベーションラボと消費者研究を続けていらっしゃいました。本来の「デザイン」とは何かを理解されているからこそ、私たちの生活の実態を理解していらっしゃるからこそ、先生のお話には説得力があります。

デザインによる企業経営においての可能性について、事例やさまざまなデータとともに解説いただきます。(保谷)

・鷲田 祐一(わしだ ゆういち)先生
・一橋大学大学院経営管理研究科 教授
・演題:「企業経営とデザインの力」
プロフィールはこちらです

第20回 7/2(火) 田村次朗先生

jirou_tamura.jpg 7/2(火)ご登壇いただくのは、慶應義塾大学法学部教授、ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー 田村次朗先生です。

田村先生は、経済法、国際経済法、交渉学をご専門に、教鞭をとり、研究、教育に携わられています。そしてそれらの実践面の最前線でもご活躍です。日米通商交渉、WTO(世界貿易機関)交渉等に携わってこられ、世界経済フォーラム(ダボス会議)では「交渉と紛争解決」委員会委員を務められています。今回の「対話型リーダーシップ」はまさに、研究・教育・実践の世界の最前線にいらっしゃる田村先生だからこそのテーマ。

交渉学とは「対話(Dialog)」の方法論である

と田村先生はおっしゃいます。前回4年前に「三方よしの対話力~交渉学入門」と題して『夕学五十講』にご登壇いただきました。そのときの大きなメッセージがこの「交渉学とは対話の方法論である」でした。対話は、立場や価値観、文化、利害の"異なる"当事者同士が合意形成をめざす、困難でストレスを伴う営みです。そのときの夕学リフレクションはこちらです。

今回はこのメッセージの応用編ともいえましょう。ここ数年で多様性とは必然で当り前であると認知されてきました。しかし認知は単なるスタート地点、多様性の複雑化、対立や障害の深刻化がすすんでいるのも事実です。ますます求められていくのが対話型リーダーシップです。私たちビジネスパーソン誰もにとって大切な基盤能力ともなりうる、このテーマについて、今回はじっくり講義いただきたいと思います。楽しみです。(湯川)

・田村 次朗
・慶應義塾大学法学部教授、ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー
・演題は「対話型リーダーシップのすすめ~リーダーシップ基礎教育への挑戦~」
講師プロフィールはこちら

第19回 6/28(金) 堤 未果さん

mika_tsutsumi.jpg

6/28(金)は国際ジャーナリスト、堤 未果さんにご登壇いただきます。
堤さんのお名前やご活躍をメディアや著書でご存じの方も多いことと思います。

最新刊 『日本が売られる』は、昨秋、ベストセラーとなり、大きな話題となりました。

安全で安心、水と安全はタダ同然、医療と介護は世界トップ、そんな"日本で今、とんでもないこと"が起きている。いつの間にか"国中に値札がつけられ、叩き売りされている"と言い切る堤さん。衝撃ですがそれらは、私たちが知っているべきこと。これまで、知られてこなかった、知らされてこなかった触れられてこなかったこと、しかし、たしかな事実、対面せねばならない現実です。堤さんは常にそれらに迫る取材・報道を続けられています。

本書の前に米国のシリーズがありました。『貧困大国アメリカ』『沈みゆく大国アメリカ』などタイトルが示すように、米国の"暗部"をえぐり出す、と評されています。

NY州立大学同大学院で国際関係論学を学ばれた後、国連、米国野村證券勤務や9.11の体験をへてジャーナリストに。日本と米国を行き来しながら活躍されています。

徹底した現場取材と、公文書分析による調査報道で、米国の暗部をえぐり、日本の事実を見つめる堤さんに、今回は直に、日本の事実、さらにはどうしたら日本を、未来を守れるのかをじっくり伺います。(湯川)

・堤 未果
・国際ジャーナリスト
・演題:「日本が売られる~次世代の為の宝を守れ~」
講師プロフィールはこちら

第18回 6/27(木)デービッド・アトキンソンさん

david_atkinson.jpg6/27(木)は小西美術工藝社 代表取締役社長 デービッド・アトキンソンさんにご登壇いただきます。

元ゴールドマン・サックスのパートナー時代は「伝説のアナリスト」と称され、現在は、国宝・重要文化財の補修を手掛ける三百年企業 小西美術工藝社の社長、まさに「国宝の守り人」として活躍を続けるアトキンソンさん。

イギリス オックスフォード大学では「日本学」を専攻し、ゴールドマン・サックス証券では、日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し注目を集めました。当時より、裏千家に入門するなど日本の伝統文化に深く親しんでいらしたそうです。

日本に拠点を移してからこの30年。
経済の低迷、それにともなう子どもの貧困、地方の疲弊、文化の衰退・・・等、様々な出来事を目の当たりにし、見るに耐えなかったというのが正直な気持ち、と今年出版されたばかりの著書『日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義』にて語っていらっしゃいます。

厚かましいと言われても、大好きな日本を何とかしたい。

日本への熱き想いをお持ちのアトキンソンさんだからこそ、「世界から見た日本」と「日本から見た世界」の両面を知るお立場より、日本の魅力を世界にどう伝えていけばよいのか冷静な視点でお話し頂きます。(保谷)

・デービッド・アトキンソンさん
・小西美術工藝社 代表取締役社長
・演題:「日本の魅力~その活かし方と伝え方~」
プロフィールはこちらです

第17回 6/21(金)津川 友介先生

yusuke_tsugawa.jpg6/21(金)はカリフォルニア大学ロサンゼルス校 助教授 津川 友介先生です。

食、健康、エビデンス。
ここ数年の注目ワードでもあります。私たち、誰もにとって身近な健康と食、研究がすすんでいます。健康における食事の重要性や効果、具体的な方法がわかってきています。

今回はそんな世界の最前線、カリフォルニアから津川先生をお招きしての講演です。著書『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』も話題となりました。

健康と食事は、ずっと以前から高い関心が寄せられ、大事で、なにかと話題を生んできたテーマです。メディアでは常にとりあげられ、次々流行やヒットも生んできました。けれどもその一方、常についてまわっていたのが "かもしれない"でした。

効果があるかもしれないし、ないかもしれない。良いかもしれないけれど、それほどでもないかもしれないし、さらには良くないこともあるかもしれない。

しょせんよくわからない、しょせんは食べ物。そこにエビデンス、科学的根拠がでてきました。説得力が違います。実践できます。効果もでます。ここまできたことでようやく "万人に万能な" 方法や選択はないのだ、との正しい認識にもつながってきたように感じます。
人はいろいろです。自分の健康は自分のものでしかない。自分で考え、自分でコントロールすることをめざす。そのためにはエビデンスをどう理解し