伊藤 亜紗「身体論から考える利他」

伊藤 亜紗

身体のローカルルール

「自分と違う体から、世界はどう見えているのか?」という問いから出発し、おもに障害を持つ人たちとの対話を重ね、彼らの感覚や機能の差異から独自に編み出された驚くべき体の操縦法や、痛みとの折り合い方を聴取してきた伊藤亜紗氏。また介護や介助に携わる人たちの声などからケアの感性についても考察を広げ、それらの調査結果を、データ(数字)ではなく一人ひとりで違う「その人の体らしさ」「個別性=ローカルルール」の物語として全く新しい身体論・ケア論にまとめてきた。

その伊藤氏は、今、東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センターで長を務め、当面「利他学」を主題とする研究プロジェクトを率いる。「利他」を、宗教ではなく学問の文脈で系統づけられるのかといぶかしむ向きもあろうが、日本の理工系大学としてはめずらしくリベラルアーツに力を入れる東工大の試みときけば納得がいく。「ほんとうに必要とされている科学技術とは何か」を考えるとき、本来的に自己中に陥りがちな学問を相対化する倫理としての役割もあろう。むろん、パンデミック下で世に高まる排他的な自己責任論の大合唱を批判する立場として、利他学発信が急務となった背景もある。

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社員たちよ、ハゲタカのように生き延びろ。 小説家・真山仁さん

真山仁

 この講演前日の2021年11月1日、東京都の新型コロナ新規感染者数はとうとう9人にまで収束。2020年5月31日以来の1ケタとなった。同日の全国の感染者数も86人と、2020年6月以来の2ケタ。わずか2ヵ月半前の8月13日、東京都の新規感染者は5773人とピークを迎えていたというのに(全国のピークは8月20日の2万5876人)。

 でも誰ひとり楽観してはいない。第6波はいつやって来るのか、再び医療崩壊して入院もできなくなるのではないか。救急搬送もされず自宅で亡くなる人が8月には250人にも上った。そんな、憲法25条の生存権すら脅かされるディストピアが記憶に生々しいからだ。

 講師の真山仁氏は言う。「このコロナ禍は結末が見えないドキドキハラハラで、もしこれがサスペンス映画なら最高の場面ですよ。でもこれは実社会ですからね。これを警鐘だと思って、我々は目覚めないといけないんです」

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ストレスと正しく向き合って仲よくなる 青砥瑞人さん

青砥瑞人

今回は、私にとってはじめてのアーカイブ配信による聴講だ。
画面越しの聴講がどんな感じなのか楽しみにしつつ配信日を待っていたのだが、よりによって配信開始日の前日に口内炎ができてしまった。その数、3つ。口の中が熱っぽくてズキズキ痛くて、気がめいってくる。

口内炎の原因はなんとなく分かっている。最近胃の調子が悪いのだ。そして胃の調子が悪い原因はいくつか思い当たる。公私それぞれに、気がかりなことやイライラすることを抱えている。
「あーあ、ストレスを力に変えられたらどんなに良いことか」と、祈りに似た気分を抱えつつ、やけくそ気味に青砥瑞人さんの再生ボタンを押した。

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第15回 1/27(木)國分良成先生

photo_instructor_1101.jpg1/27(木)は前防衛大学校長、慶應義塾大学名誉教授 国分良成先生にご登壇頂きます。

バイデン政権の対中国政策は、トランプ大統領のような不確実性を持たず、より激化しているとも言われています。

アメリカが主導してきた国際秩序に中国が挑戦しているという世界観からより厳しいものとなり、中国の台頭によって、いまや世界の二つの超大国ともいえるアメリカ、中国が互いにどのように向かい合うかは、アジアの安全保障のみならず、グローバル経済、社会にも大きな影響を与えます。

世界が分断される"米中新冷戦"の恐れが現実味を帯びているともされるなか、日本の果たす役割とは何か、日本はいまどう行動すべきなのでしょうか。

政治学者 國分先生は、現代中国政治を専門とされ、そのなかでも特に中国共産党問題について長く研究していらっしゃいます。

2021年から本年3月までの9年間にわたり、防衛大学校の校長も務め、「世界一の士官学校を目指そう」と掲げ、在任中は『新たな高み』や『さらなる高み』などのプロジェクトを推進し、世界の中での位置を日々考えてこられました。

『夕学五十講』には、2008年のご登壇より今回は4回目。節目節目で、國分先生には世界のなかにあっての中国の現況についてお話し頂いています。

創立100年を迎えた中国共産党。

ニュースより私たちが知る限りでは、習近平体制下にて強権主義的傾向が顕著であることばかりですが、経済成長もかつてより鈍化しているとも言われるなかにあって、体制をどのように維持しようとしているのか。今後の日中関係、安全保障について考えるうえでも関心が尽きません。

習近平体制下における中国共産党の現在、そして、今後の中国政治と世界との関係。一段と複雑になっている現況、そしてこれからについて、今回も新たな視座を教えてくださる
國分先生のお話しよりじっくり考えていきたいと思います。(保谷)

・國分 良成(こくぶん りょうせい)
・前防衛大学校長、慶應義塾大学名誉教授
・演題:「中国は変わらないのか?」

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第14回 1/25(火)落合陽一さん

photo_instructor_1103.jpg1/25(火)はメディアアーティスト 落合陽一さんのご登壇です。

落合さんは、アーティストとして、写真家、随筆家などとして作品を生み出し、発信をされています。文化庁文化交流使や万博テーマ事業プロデューサーなどを歴任、さらに大きな場や価値をプロデュース、生み出すお仕事もされています。

そして、筑波大学デジタルネイチャー開発研究センターセンター長、准教授・JSTCRESTxDiversityプロジェクト研究代表、と研究・教育においても多彩。落合さんが提唱・研究されている「デジタルネイチャー」は、テクノロジーを自由に駆使し人間、自然、デジタルリソース(コンピューター)がシームレスにつながり合うという世界観。まさに既存の枠や領域をシームレスに、時代と次元、と呼ぶのが正しいのかわからないが、の最先端をいま・こことシームレスにフィールドとして、ご活躍されています。今回はそんな落合さんが見つめるポストコロナの社会、生き方や働き方、世界を語っていただきます。

前回の『夕学五十講』ご登壇は2018年、演題は「超AI時代の生き方・働き方・考え方」でした。この回の夕学リフレクションで、とても私が印象的だった一文があります。

「今回はこれまでとは違ったメディアアーティストの視点と切り口であり、AIやテクノロジーがどうのこうのという話よりも、落合さん自身の考え方に脳が刺激された感じであった。」

そう、落合さんという生き方、働き方、考え方、存在そのものから受ける刺激、メッセージがある。長期化するコロナ禍から先を見る立ち位置に一歩、踏みだしたい、
視線を上げたい、私たち。ポストコロナを見据えて。楽しみです。(湯川)

・落合 陽一(おちあい よういち)さん
・メディアアーティスト
・演題:「ポストコロナを見通す」
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