ヒトを人間たらしめるもの 長谷川眞理子さん

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今回の夕学では「認知の進化と感情の進化」と題し、総合研究大学大学院学長の長谷川真理子先生が講演をされた。

長谷川先生は自然人類学がご専門。この自然人類学とは、「ヒト」という動物を生物学的に研究する学問のことである。また10年ほど前からはご自身の専門を超え、心理学、文化人類学、社会学、経済学の専門家らとともに、「ヒト」について多角的に研究する学際的な場をも創設してこられた方だ。

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斎藤 幸平「人新世の危機とSDGsというアヘン」

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資本主義の次に来る、真に豊かな社会

自家用ジェットに乗りながら環境案件に投資するビル・ゲイツ。古着のリサイクルをするファストファッションブランド。SUVの電気自動車。大インチの省エネテレビ。大量にコレクションされるマイバッグ......。最近見かける「本末転倒」。だが千里の道も一歩からというじゃないか。できるところから始めなくてどうするアクション。

自家撞着に陥るのも無理はない。人間の自然界への侵食が遠因とされる疫病が世界中に蔓延し、四季なき日本には今年もまた痛ましい水害の頻発が予感され、先月末のカナダでは気温が連日50度近くにまで達した。ディストピアが常態化したせいで判断がおかしくなってしまったとて、誰が責められようか。思い余った我々は、藁をも掴む思いで政府や企業という売人が小分けに繰り出してくるSDGsという「アヘン」にすがり、一瞬の癒しを得る。しかしSDGsはこれまで通り欲望にまみれた生活を続けるための「免罪符」にすぎず、長い目で見ればほとんど誰も(人も地球も)救わない。斎藤幸平氏が「アヘン」「免罪符」などと敢えてキツい表現を使うのは、事ここに至ってはSDGsのような小手先の対処法では間に合わず、もっと大物の敵(資本主義)を知る必要を訴えようとしての深慮なのだった。

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7つの証言に聴く、西川悟平氏というキセキの調べ

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証言#1 中学校のブラスバンド部の顧問

はい、チューバ吹きだった西川悟平君に初めてピアノを教えたのは私です。
「チューバで音大を受けたいけど入試科目にはピアノ演奏もある。自分はピアノを弾けないので教えてほしい」とお願いされて。
筋はよかったです。何より楽しそうでした。
でもある時、「ピアノって面白い!僕はピアノで受験する!」と言い出して。
私は言いました。「そんなの絶対無理。ピアノ科の受験生なんて、みんな3歳から英才教育。15歳からやって受かるわけがない」。
何度言っても彼の決意は変わらなかった。そして最後には受かったんですよ。すごい努力をしたんでしょうね。
でも、そんな彼に、私は最初から最後まで否定の言葉しか投げなかった。ほんとうに申し訳ないことをした。いつか謝りたいと思っていましたが、先日、演奏会後のロビーで、三十年ぶりに彼に謝ることができました。
「先生のおかげで、僕は今ここにいる」。彼の笑顔に救われました。

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「Doing well,doing good」が叶えた成長物語 小出伸一さん

koide.jpgその社名は20年前から知っていた。
たまたまCRMに注力するクライアントを持っていた関係で、「セールスフォース」という名はよく見聞きしていた。
しかし、数あるソリューションプロバイダーのひとつだろうと思っていたし、我が社自身はCRMツールを必要とするような業種ではなかったこともあり、あまり注視したことはなかった。
そんな私が今回、小出伸一会長の講演に興味を持ったのには、きっかけがあった。

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田中康平先生に聴く、「恐竜の残した手がかりに私たちは何を見出すか」

tanaka.jpg世界が変わって見える瞬間、というのがある。
周囲の物理的な構成は同じなのに、自己という鏡面に結ばれるその投影が、唐突に違った像を結びはじめる瞬間。
誰かの教えに導かれて、その新たな世界が見えてくるだけでもじゅうぶん心地よい。今は砂漠にしか見えないその場所に、数千万年前には確かに存在していた巨大生物の営みが、ありありと浮かび上がってくる、それだけでも。
ましてや、その世界像を理論的に創り上げたのが自分自身だとしたら、その喜びの深さは如何ほどか。
今から1億年ほど前、恐竜が跋扈していた時代を舞台に、研究者としてのそのような特権的な愉しみを享受してきたのが、筑波大学生命環境系助教の田中康平先生だ。

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