春からのagora

今期の「夕学五十講」も終わり、ホッとしているうちに、1週間経ってしましました。
来期の案内を開始するのは3月2日になるので、それまでの間は、恒例の夕学プレミアム「agora」の話題を中心に、ブログを書いていきたいと思います。

昨年春から始まった「agora」は、“人間力を磨く”ことを目的に、文学、歴史、芸術、身体論、社会、サイエンスなど、多彩なテーマを掲げ、少人数でじっくりと学ぶ連続講座です。

これまで10講座を開講してきましたが、従来のビジネス・経営系のプログラムとの違いは、「受講される方の90%が、個人での自費参加である」ことです。
もちろん、従来から個人の方はたくさんいらっしゃいましたが、比率でいうと30%程度でした。
それゆえに顔ぶれも多彩です。
企業にお勤めの方を中心にしつつも、お医者さん、弁護士さん、主婦、学校の先生、セカンドステージを勉強に燃える方等々多士済々です。
バックボーンのまったく異なる方々が、同じ土俵で、学び・議論し、新たな気づきを提供し合えるのも「agora」ならではないでしょうか。
私も、立場を越えて(?)、いくつかの講座には、受講生として参加させていただきました。
お陰様で、交流の幅も、ずいぶんと広くなりました。

このブログでもご紹介したことがありますが、私は「weak taies 」という理論が大好きです。
人生を大きく変えるきっかけになるような、劇的な気づきや発見は、職場や家族、親しい友人といった同質化集団からもたれされるのではなく、交流範囲の辺境に位置する異質な人々から得られる「弱い繋がり」の中から得られる、という考え方です。

「agora」が、あなたの、新しい「weak taies 」を繋げる機会になるかもしれません。


来期は下記の5講座を開講します。

竹中平蔵教授が講義する【問題解決スキルとしての経済古典】
  4月17日(土)開講・全5回

田口佳史さんに問う【論語に学ぶ人間力】
  4月20日(火)開講・全6回

李 鳳宇さんと語らう【強い映画】
  4月24日(土)開講・全6回

覚 和歌子さん・谷川俊太郎さん【詩の教室】
  5月15日(土)開講・全6回
  
山田ズーニーさんとワークショップ【伝わる・揺さぶる!文章を書く】
  4月17日(土)開講・全6回


これからは、それぞれの講座について、ご紹介していきたいと思います。

思い込み・決めつけをやめる  金井壽宏さん・川上真史さん

キャリア、リーダーシップなど、ひとの発達に関連する組織行動を研究する金井壽宏先生と、日本におけるコンピテンシーの導入者として多くの企業の人事コンサルに関わってきた川上真史さん。
学者とコンサルタントという異なるフィールドではあるものの、二人とも日本を代表する人事の専門家と言えるだろう。
今期の最終回を飾るに相応しい、贅沢なビッグツーの揃い踏みであった。

拠って立つ基盤の違いはあっても、共に京都大学教育学部で心理学を学び、「心理学の知見を企業の組織行動、人材マネジメントに活用する」という同じアプローチを取る二人には、何かと接点が多いようだ。
今回のセッションのテーマは「いまの若者にどう向かうべきか」であった。

マスコミは、昔から世代にラベリングすることが大好きだ。ちなみに私の世代(1961年生まれ)は、「新人類世代」と呼ばれた。
今春入社してくる大卒社員を「ゆとり教育世代」と呼ぶらしい。
我ら「新人類世代」も、齢五十を目前にして、ようやく「旧人類」との融合がなったようだ。
いつのまにか大勢の一群に与して、「ゆとり教育世代」の不可解さを嘆き、接し方への戸惑いを口にする。
いつの時代も、中高年にとって、若者は「理解しづらい」対象になる。

「ゆとり教育世代って呼ぶな!」と強く主張する識者もいる。
安易なラベリングが、諸問題の要因を「社会構造の問題」から、「若者個人の問題」にすり替えてしまい、思考停止を招くことを危惧している。

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何か始める前に、何かを終える 田中・ウルヴェ・京さん

人は誰も、人生のうちに何度か、住み慣れた場所・状況を旅立ち、新しい世界・状況に向かってスタートを切ることがある。
転職、リストラ、退職などネガティブな変化はもちろん、出産、昇進、抜擢のように他者から祝福されるプラスの変化もあるだろう。
そんな時、ふっと前が見えなくなることがある。自分がわからなくなるという言い方の方がいいかもしれない。

心理学者のウィリアム・ブリッジスは、そういった心理状態を次のように描写している。

「向こう岸に辿り着こうと川岸の船着場からボートをだし、しばらく進んでふと見ると、向こう岸がなくなっているのを発見するようなものだ。そして後ろを振り返ってみると、出発した船着き場が崩れて、流れに飲み込まれるのか見える...」

ウィリアム・ブリッジス『トランジッション 人生の転機』(倉光修・小林哲郎訳 創元社)

スタートは切ってみたものの、進むことも、戻ることもできない中途半端で不安定な状態、それを心理学用語で「トランジッション」と呼ぶ。

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アスリートの「育ち方」  朝原宣治さん

ギリシャ彫刻のような肉体美を、グレーのバーズアイのダブルスーツに包んで現れた朝原宣治さん。現役時代に比べると心持ち頬がすっきりしたような気はするが、知的で甘いマスクには、ネクタイ姿もよく似合う。

日本でも、ようやくアスリートの選手寿命が長なってきたが、朝原さんはその代表の一人であろう。五輪に4回、世界選手権に6回。15年以上も代表選手の地位を守ってきた。
その努力に、天の女神が微笑を返してくれたのが、一昨年の北京五輪であった。
陸上男子400メートルリレー決勝で獲得した日本短距離史上初の銅メダル。メダルが確定した時に、バトンを天高く放り上げて、仲間の選手と抱き合った朝原さんの姿は、日本五輪史に残るであろう名場面になった。
お子さんを抱えて、歓喜の涙に頬を濡らしていた奥様(奥野史子さん:元シンクロメダリスト)の姿も感動的であった。
パートナー・オブ・ザ・イヤーに輝いたということにも頷ける。

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アメリカはどこに行く 渡辺靖さん

オバマ政権の大きな政治課題である「医療制度改革」を巡る意見対立は、国民皆保険制度を素晴らしい制度だと自負している日本人には、なんとも理解しにくい現象である。
「そこまで自立・自己責任にこだわらなくても...」と思ってしまう。
そんな不可解な部分も含めて、アメリカを理解するうえで欠かせない二冊の古典があることを渡辺先生は教えてくれる。

『ザ・フェデラリスト』A.ハミルトン , J.ジェイ , J.マディソン(岩波文庫)
『アメリカのデモクラシー』トクヴィル(岩波文庫)
の二冊である。
前者は、アメリカ建国のファインディング・ファーザー達が高らかに謳いあげた「実験国家への設計図」であり、後者はフランスの若き政治学者トクヴィルが観察した活力に満ちた草創期アメリカ社会の描写である。
そこには、国家を設計する立場、国家を構成する市民の立場、それぞれの立場から、アメリカの自由と民主主義へのこだわり、アメリカンドリーム賛歌がみられるという。

全ては、自分達から始める。自分達の手で創り上げる。

そんな草の根民主主義への強いこだわりがよく理解できるという。

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