「運」と「ツキ」の違いとは


3分間ラーニング, 講師の公私

先日、帰省からの帰り。羽田空港で預けた手荷物が出てくるのを待っていたとき、ふと尻ポケットに触った私は、そこにあるはずの財布がないことに気づきました。

慌てて実家に電話しましたが、見当たらないとのこと。レンタカー屋さんや途中で寄ったガソリンスタンド、お昼を食べた空港のレストランに連絡しましたが、いずれも「無い」との返事。

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最後の望みは「機内の座席」です。
ANAのヘルプデスクに行き、探してもらいます。既に私が乗った機体は次の目的地に飛び立ったとのことで、乗務したCAさんが気づいてくれたかどうか。

現金は数千円程度しか入っていなかったとは言え、キャッシュカードや各種プリペイドカードなど、カード関係が気がかりです。
キャッシュカードを止める準備をして連絡を待ちました。




そこで連絡が。「CAが落とし物を拾ったみたいです」

一縷の望みをかけていると、「財布らしいので取りに行ってきます」と窓口スタッフ。
数分後、「こちらでしょうか」と持ってきてくれたのは紛れもなく私の財布。安堵と感謝で何度「ありがとうございます!」と言ったでしょうか。



...実は、私は落とし物をして出てこなかったことがないのです。

公衆電話ボックス(古っ!)に財布を忘れたときも、電車にセカンドバッグを置き忘れたときも、そして大学生時代にも...

夏休み、福岡から宮崎に帰省した私は地元の夏祭りを見物しに出かけました。
立ち寄ったゲームセンターで、プレイに邪魔な腕時計を外し、そこに忘れてきたのです。途中で気づいてゲーセンに戻りましたが時計はありません。合格記念に父親からプレゼントされたものてすから、暗い気分で帰路につきました。
そこで出会ったのが高校の同級生。久しぶり、と立ち話の中で時計を無くしたことを伝えると、別の同級生が「ゲーセンで時計拾った」と言っていたとのこと。
ただ、今その彼がどこにいるかわかりませんし、携帯電話などない時代です。実家に戻ってから連絡先調べるか...と思っていたら、その彼ともばったり出会いました。
時計のことを聞くと、「これか?」と私の時計が!
「それそれ!」ということで無事時計も私の所に戻ってきたのです。

...さて、こんな私は「運が良い」のでしょうか。
それとも「ツキがあった」のでしょうか。

そもそも、「運」と「ツキ」にはどのような違いがあるのでしょうか。



ネットで調べてみると、様々な説明がなされています。

1. 「ツキ」はチャンスをつかむ力で、「運」はピンチを乗り越える力
2. 「運」は到底実現しそうもないことを、偶然実現させてしまうことで、「ツキ」は対象が勝負事の場合に使う
3. 「ツキ」は短期的効果で「運」は長期的効果

などがありました。

私の「落とし物が見つからなかったことがない」は、1.と2.の定義では「運」、3.の定義だと「ツキ」になりますね。

ただ、私は「運」と「ツキ」の両方があったように思うのです。

「ゲーセンに忘れた時計が見つかった」ケースで言うと、「同級生が拾ってくれた」やそれを知った別の同級生が「教えてくれた」のが「運が良かった」。私が選んだ帰路によって同級生と出会えたのが「ツキがあった」。

冒頭の「機内で落とした財布が戻ってきた」のは「CAが拾ってくれた」ことが「運が良かった」で、「落とした場所の可能性を洗い出して全てに連絡した」私の行動に「ツキがあった」と言えます。

そう、私としては「運」は向こうからやってくるもので、「ツキ」はその運と出会うための(結果的に)正しい選択、だと思うのです。

それを図にするとこんな感じでしょうか。



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「運が良い/悪い」と言っても、何もせずに待ってても「幸運」には出会えない。
幸運に出会うか、それとも不運に見舞われるかはわからなくとも、様々な選択肢を挙げてその中から選び、前に進む。

その選択肢が幸運に出会えたら「ツキがあった」と喜べばいいし、幸運に出会えなかったり残念ながら不運にぶつかってしまったら「ツキがなかった」と諦めれば良いと思うのです。

重要なのは、チャンスをつかむために、あるいは困難を克服するために自らが「前に進もうとする意志」であり、進む道(選択肢)を複数挙げる「情報収集力と分析力」なのです。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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