独創的な発想はなぜ難しいのか


3分間ラーニング

私たちは仕事において独創的、つまり「人と違う」、できれば「誰も思いつかなかったような」発想が求められる場面があります。

具体的には、

・他社と差別化したいから
・今までのやり方ではダメだとわかっているから
・新しいことにチャレンジしたいから

など、ビジネスでは様々な「創造性が必要な場面」で独創的な発想が求められます。

しかし、「今までにないアイデアを出せ」と言われて、はたしてどれだけの人がそれができるでしょうか。
「そんなこと言われてもなあ...」というのが現実です。

しかしなぜ、独創的な発想が難しいのでしょうか。
単に「センスや才能がないから」で片付けて良いのでしょうか。

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私は、その理由は4つあると考えます。それは『考えることに手を抜いている』に『常識や経験に縛られている』、そして『自分ひとりで苦労している』『いきなり考えようとしている』です。

それは「どういうこと」か、そして「どうすればいい」のか、順を追ってお話ししてみます。



1.考えることに手を抜いている

人が「うーん」と考えて最初に出てくるアイデアなど、所詮「誰にでも思いつきそうなアイデア」でしかありません。

だから重要なのはアイデアの「量」です。コピーライターやデザイナーなど、所謂クリエイターと呼ばれる人たちは七転八倒しながら大量のアイデアを出し、その中でひとつでも当たればラッキー、という考えで頑張っています。
ブレーンストーミング(以下ブレストと記載)の鉄則のひとつに「質より量」があるのもそのためです。宝くじを買うのに1枚しか買わないのと100枚買うのと、どちらが当たりが期待できるか、それと同じ『確率論』の問題です。

だからまず考える前に「出すアイデアの数と所要時間」を決めましょう。1時間で100個とか、とにかく必死に、しかしタイムトライアルのゲームをしているつもりで、楽しみながら大量にアイデアを出すのです。



2.常識や経験に縛られている

ブレストの鉄則の2つめに「自由奔放」があります。「これは金かかりすぎてダメだろうなあ」など、コストや技術的難易度、法律など、アイデアの実現を阻む様々な「制約条件」があるのは事実ですが、それを気にしていたら独創的なアイデアなど出ません。
しかしいくら上司から「今回は制約ゼロで考えよう!」と言われても、独創的なアイデアがなかなか出ないのも現実。これは私たちが「無意識的に今までの常識や経験に縛られている」からです。無意識ですからどうしようもありません。

その対処法のひとつが『アナロジー(類推)』で考えること。たとえば新店舗の企画を考えるとき、神社仏閣のメタファーで考えてみるのです。神社仏閣の「あるある」を考えて出てきたご神木や手水場、おみくじや参道の出店など、これらが何を意味するのかを考え、それを強引に自社の新店舗に応用します。
このプロセスによって「一度本来のテーマから離れる」ことになりますから、自社や業界の常識や経験からも離れて、今までは出せなかったアイデアを出せる可能性が上がるわけです。

眼鏡屋さんのJINSがユニクロやスウォッチという他業界のメタファーから自社のビジネスモデルを構築し、成功したのも同じで、やはり「一度本来のテーマから離れる」のは有効です。



3.自分ひとりで苦労している

確かに天才はいます。しかし私たちは他者と協働することで天才を超えることができる。それが「三人寄れば文殊の知恵」であり、「コラボレーション」と呼ばれるものです。

誰かのアイデアを「面白い」と感じ、それをちょっと捻って「だったらこういうのは?」と新たなアイデアを思いつく。これが『触発』であり、触発の連鎖が思いも寄らぬ独創的なアイデアに繋がります。
だからどんどん他者のアイデアを改造/改良し、さらに組み合わせて別のアイデアにしてしまえばいいのです。自分ひとりで苦労する必要などどこにもありません。ブレストの鉄則の3つ目「改善・結合歓迎」はまさにそれです。

そのためにも重要なのがブレストの鉄則のラスト「批判厳禁」です。いかに他者のアイデアに「つまんない」「ムリだろ」と感じたとしても、決して否定せずに一度は「イイネ!」と言ってみる。そこから改造や組み合わせをすればいいのです。否定された方もやる気を無くしてしまいますので、それではコラボーレーションになりませんから。

ただ、「否定」はダメですが「疑問」は持っても構いません。というか積極的に他者のアイデアに疑問を持ちましょう。「なるほど、普通に考えたらそれは効果がありそうだけど、それは現在のトレンドには合わないのでは? とすると...」といったように、疑問から新たなアイデアが生まれることもあるからです。



4.いきなり考えようとしている

「何でも良いからアイデアを出せ」→「はい、ええっと...」

これではいかに上記1~3を守っても、独創的なアイデアは出ません。いや、普通のアイデアですら出すには時間がかかります。

そのひとつ目の理由は「考える範囲が広く、曖昧すぎる」からです。

だから考えさせる側は、まず「考える目的」と「前提条件」を提示しなければなりません。
「リモートワークの新しい仕掛け」を考えさせるなら、「目的は集中力の維持による仕事の質の低下防止ね」「それと現状の技術でできるなら、コストは考えなくて良いから」とやれば、随分と考えやすくなるはずです。

そして二つ目の理由が「考える切り口がない」から。

たとえば上の「リモートワークの新しい仕掛け」なら、「まずはリモートワークで集中力が続かない理由」からみんなで考え、そこで出た様々な理由をどうやってつぶすかを考える、というやり方があります。
他にも、とりあえずアイデアを出させ、「じゃあここからはこれのアイデアを強引に組み合わせたアイデアを考えてみよう」といのもあるでしょう。

言い換えれば、考える前に「考え方を考える」ことが重要なのです。




さて、いかがでしょうか。

私が講師を務める『イノベーション思考』や『デザイン思考のマーケティング』では、より詳しく「独創的な発想」のコツとツールを紹介しています。
また『フレームワーク思考』では、4.の「考え方を考える」の「考え方」を5つのパターンに分けて真ナフコとができます学ぶことができます。

最後は少々宣伝臭くなりました(笑)が、少しでも参考になれば幸いです。


プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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