「おかえりモネ」に見る『仕事の価値観』


3分間ラーニング

NHKの朝ドラ「おかえりモネ」。
モネは東京での順調な仕事を捨て、さらに菅波先生との結婚も保留して故郷の気仙沼に帰ってきました。

ついに「おかえりモネ」です。物語もラストスパート。

物語の中で、モネは「地元の人たちの助けになりたい」ことをはっきりと自覚し、それを周りの人々にも告げます。
しかし幼なじみでモネに心を寄せる亮から「きれい事にしか聞こえないわ」と言われてしまいます。モネの心が自分にないという事実への悲しみ、そして「わざわざ東京での仕事を捨てる」ということへの疑問から出た本音なのでしょうが、このやり取りはネットでも話題になりました。

「亮ちんの気持ち分かる」という人もいれば「亮ちんみっともない」から「地元に帰って何が悪い?」という意見も。

ここで私は考えました。

これは『仕事に対する価値観の違い』かも、と。





以下の図は、私が「説得したい相手に合わせた説明をしよう」という文脈で提示する『仕事の価値観マトリクス』です。


mone.jpg


縦軸はその人の「リスクへの姿勢」。

リスクは「どちらにせよある」と考えて、前向きにチャレンジすることを好むタイプが「受容」です。ネガティブな言い方をすれば「無鉄砲」なタイプですね。

その反対の「回避」がリスクはできるだけ避けたい、新しいことや挑戦に二の足を踏む保守的なタイプ。ただポジティブに言えば「慎重派」となります。

皆さんの周りの人を思い返してください。
あなたの上司や部下、あるいはお客様はどちらのタイプでしょうか。
もちろんこれはその人のパーソナリティだけでなく、今その人が置かれている状況によっても違ってきますが、ひとつの価値観として存在するのは確かです。

次に横軸。これは「仕事の空間・時間的な貢献範囲」です。
お堅い表現なのでちょっとわかりにくいですが、要するに「誰のために、そしていつを意識して」その仕事をしているのか、という価値観のこと。

「狭い」の中でも最も左側が「自分が大事」だったり「今この瞬間が大事」と考えるタイプ。
ネガティブに言うと「利己的/刹那的」となりますが、それを一概に「ダメ」と言うことはできないはずです。個人の価値観は多様であり、それは経験や境遇で形作られますから、ひとつの価値観として認めるべきでしょう。

これが右側にいくにつれ広くなります。
空間の観点では「自分→自部門→自社→業界→日本経済→世界」、時間の観点だと「今→今期→3年後→10年後→100年後」となり、最も右が「未来の人類が暮らしやすい地球」を目指しているタイプになるわけですね。

要するに「世のため人のため」タイプであり、遠い将来の「他の惑星への移住」の準備としてスペースXを立ち上げたイーロン・マスクは典型的な例でしょう。



さて、こうして「リスクへの姿勢」と「仕事の空間・時間的な貢献範囲」の2軸で作ったマトリクスが上記の図です。

思うに、モネちゃんは左上のタイプなのではないでしょうか。

音楽をやりたくて地元から離れた仙台の高校を受験したり、気象予報士を目指して合格後は東京にすぐ出てきたりと、大胆な行動が多いです。

それでいて右上なら志向する「気象情報の活用で日本のスポーツほ強くする」ことにはさほど興味を示さず、自分の身近な人たち、具体的には家族や幼なじみなどを自分の「気象の知識とスキル」で笑顔にすることを選びました。

「モネならもっと大きなことができる。それなのになぜ?」と亮が感じ、それが「きれい事にしか聞こえないわ」という発言になるのも致し方ないこと。
特に亮は最愛の妻を震災で亡くした父親の存在もあり、地元に「縛り付けられている」と考えているでしょうから、モネを批判したくなるのは当然です。



ということで今回は朝ドラを見ながら見えてきた「仕事の価値観」について語ってきました。
皆さんはこのマトリクスではどこのタイプでしょうか。
そしてあなたの上司や部下は?

元々このマトリクスは、「相手に合わせた説明の仕方」について解説するものでした。
だからもしモネちゃんに何かをお願いするとしたら、「それをやってくれるとモネちゃんの周囲の人々や地元にどのようなメリットがあるのか」を語ればいいのです。

間違っても「やらなかったときの国家的デメリット」など語ってはいけません。
たぶんモネちゃんは「ごめんなさい」となるでしょうから(笑)


プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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