「勝ち組」とは何か


3分間ラーニング, ニュースの切り口

「コロナ禍の勝ち組・負け組はどこか?」

といったタイトルの経済記事をいくつか目にしました。業種としては
・勝ち組:医薬品・医療機器/食品スーパー/情報通信/ゲーム
・負け組:航空・鉄道/鉄鋼/金融/外食
あたりがそれであり、「まあそうだろうな」という感想です。

しかしこうも思いました。
「勝ち組って、本当に『勝った』と言えるのだろうか?」

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先にお断りしておくと、今回のエントリーは経済について論じることを目的としていません。あくまでも思考実験のひとつとしてお付き合いください。

さて一口に「勝つ」と言っても、そこにはふたつの意味があります。

ひとつは相手に「優る(まさる)」こと。
相手よりタイムが良い(速い)とか、より美しいとか、スポーツで言えば陸上競技や体操、フィギュアスケートなどがこちらです。

そしてもうひとつが相手を「負かす」こと。
相手を倒す、あるいはより多く点を取る、同じくスポーツではボクシングや野球、カーリングなどはこちらのタイプですね。

つまり「勝ち」と認定されるプロセスが異なっており、相手に対する邪魔や攻撃という「叩く行為」の有無が「優る」と「負かす」の違いと言えます。

その「勝ちに至る」プロセスを言葉にするなら、「優る」は「競う」、そして「負かす」は「戦う」でしょう。




さて、こう考えると「コロナ禍の勝ち組」とわれる業種や企業は、本当に「勝った」のでしょうか。

食品スーパーはどんな業種と競ったり戦ったりしたというのでしょう?
彼らは誰に勝とうとしたというのでしょう?

「あつ森」が大ヒットした任天堂にしても、コロナ禍に乗じて誰かと競い、優ろうとしたわけではなく、ましてや誰かを叩いて負かそうとしたのではないはずです。

そもそも「勝ち組/負け組」を分けるということは、双方が競い戦った結果のはず。

もちろん、業種の中で競い合った結果で売上高に差が出てきたのなら、そこで勝ち負けを論ずるのは理解できます。
しかし、コロナ禍の状況において業種や企業での勝ち負けを論じることに意味があるとは思えないのです。

そしてこれはコロナ禍の話だけでなく、企業や人を安易に「勝ち組/負け組」に分けたがるメディアへの私からの苦言でもあります。

しかし、こんな意見もあるでしょう。
「この勝ち負けは業種や企業間でなく、コロナを敵とみなしたときのもの」

勝ち組の業種や企業はコロナ禍やそれに伴う自粛生活がプラスに働いただけで、コロナと戦ったわけではありません。(医薬品会社は戦っていますが)
そして航空会社も...



...とここまで書いてきて、恐ろしいことに気づきました。

「負け組」と言われる外食産業や航空会社は、ひょっとすると国や自治体という「行政」、そして同調圧力をかける「マスメディアと大衆」に「叩かれ、負かされた」のではないか?

いや、それにしても行政やマスメディア、大衆が「勝った」とは言えません。

やはり不毛なのです。こうした「勝ち組/負け組」のカテゴライズは。


プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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