Youtuberの「差別化戦略」と「説明力」


3分間ラーニング, 講師の公私


コロナ禍でYoutubeを視聴する頻度と時間が増えた。

これは私だけではないでしょう。

我が家のリビングでは、今まで観ていたテレビ番組でなくテレビ内蔵のアプリでYoutubeを観るのが普通になってきました。

私一人ならプロ野球関連やポケモンGOの対戦実況、ムスメとなら様々なゲーム実況やダンス/歌の解説動画などがヘビロテのジャンルとなっています。

そうして数々の動画を観ていると、いつの間にかひとつのジャンルにおいて配信者(Youtuber)が固定化されてきます。
つまり「観なくなるYoutuber」が増えていき、チャンネル登録の解除も増えていきます。

この「観続けるYoutuber」と「観なくなるYouber」の違いとは?

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まずは野球関連から行きましょう。
我が家の定番は、ジャイアンツの公式チャンネルと元ロッテのキャッチャー、里崎智也さんの「Satozaki Channel」です。
元プロ野球選手のYoutuberは多く、いくつかは私もタマに観るのですが、里崎さんの動画はほぼ全て観ています。

次にゲーム実況ですが、こちらは声優の花江夏樹さんの動画が視聴回数ではダントツ。
そして解説系の動画では、ボイストレーナーおしらさんの「しらスタ」。

さて、里崎さん、花江さん、おしらさんのYoutubeチャンネルの登録者数は順に約42万人、191万人、125万人。鬼滅の刃で主人公役の知名度から花江さんが多いのは当然としても、おしらさん、里崎さんも各ジャンルの中ではトップクラスの登録者数です。



では、この3人の共通点とは何か。
私はそこに明確な「差別化戦略」、そして圧倒的な「説明力」の存在を見ます。

前述の通り里崎さんの他にも野球解説者たちのチャンネルはいくつもありますが、もちろんそれぞれに良さはあります。
たとえば元太陽ホエールズ「スーパーカートリオ」の一員、高木豊さんのチャンネルは、その人脈を活かしたビッグなゲスト(たとえば原辰徳監督)との対談が人気ですし、元西武・巨人のデーブ大久保さんは、その性格を活かしてゲストから「ぶっちゃけ話」を引き出しています。

しかしそうした「選手としての知名度では上」の方々と里崎さんが根本的に違うのが「ゲストに頼らない企画と分析力」です。
氏はその企画力と分析力によって差別化しているわけです。

たとえば過去10年以上のデータを用いた「12球団ドラフト通信簿」や、シーズン3連戦を全て見た上での「全試合総チェック」など、手がかかるため他のYoutuberが手を出さない企画を「あえて」採用しています。

大量のデータを整理し独自の指標で採点するなど、元キャッチャーならではの分析力が光ります。

そして分析力にはそ背景に「論理的思考力」の高さがあるのは当然で、それは「説明」にも活かされています。
感覚的に「自分はこう思う」と、また昭和の元プロ選手にありがちな精神論で語るのでなく、あくまでも理路整然と事実(データ)から共通点を見いだし、「だからこう」と論理的に語る。だからこそ視聴者は「なるほど」と納得し、別の動画もチェックしたくなるわけです。

また12球団全てを取り上げる公平性も、一球団のファンでなく広くプロ野球ファンの共感を得ている部分でしょう。

次に花江さんですが、これは声優人脈とゲーム実況人脈という「2種類の人脈」を活かしたコラボが大きな差別化要因です。
「ハリー・ポッターシリーズ」や「黒子のバスケ」の主役だけでなくシンガーとしても活躍している小野賢章さんや、ゲーム実況チーム「bintroll」と一度にコラボした「among us」の実況などは、花江さんでなくては配信できない動画です。

説明力の視点で言えば、声優ならではの「聞き取りやすい声質と滑舌」が一番のポイント。
それに加え、ゲーム実況者でしばしば見かける感情にまかせた「ブチ切れ発言」が無いのも、視聴者が不快感を持たない花江動画の特長と言えるでしょう

そして「しらスタ」。
曲を幾度となく止めながら細かい部分の「凄さ・工夫」を解説するスタイルは、他のYoutuberでも行っていますが、そこに「歌詞の意味」という視点が入ってくるのはおしらさんならではの差別化と考えています。

特にYOASOBIの「夜に駆ける」を取り上げた動画では歌詞の元となったネット小説を元に、歌詞のこの言葉にこういう意味があり、だからこういう歌い方になる、と細かく解説してくれており、「歌がうまくなりたい」というメイン視聴者だけでなく、YOASOBIのファンや広くJ-Popファンを唸らせる内容となっています。

また、彼の繊細さが感じられる驚きや切なさを素直に出した語り口は彼の特長であり、論理性とともに共感性も高い「説明力」が感じられます。



さて、いかがでしょうか。
これを書いている私もなかなか楽しかったので、また別の機会に様々なYoutuberの差別化戦略と説明力を分析してみたくなりました。

しかし重要なのは「この分析から見えてくること」です。

私は「人気のYoutuberも企業も同じ」だと思うのです。

Youtuberだけでなく、元気のある企業はこの「差別化」がしっかりできており、また自社のビジョンや商品・サービスのポイントなどの「説明力」も高いです。

そして差別化においては花江さんの人脈や里崎さんの分析力のような「活かすべき強み」を把握することが重要です。そしてその「強み」は「説明力」にも活きるのです。

さらに言えば「差別化」「説明力」は私たちひとりひとりの「個人」においても重要です。

あなたの「キャリア戦略」において、他の人材とどう「差別化」しようとしていますか?
そしてどう自分の強みや目標を「説明」し、周りを巻き込みながら想いを実現させていますか?


プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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