「はやぶさ2」の物語は終わらない


ごあいさつ, ニュースの切り口

本日は2020年12月25日。
年の瀬であり、私も今日が仕事納めです。

皆さん、今年はどんな年でしたか?

...まあ、「最高でした!」と答える方はいないでしょう。
今年は年間を通して、新型コロナウイルスに翻弄、蹂躙された1年でした。
また人種差別や著名人の死など、暗い話題が多かったように思います。

しかし、明るいニュースが無かったわけではありません。

そのひとつが惑星探査機「はやぶさ2」の偉業です。

hayabusa2.jpg





「はやぶさ2」は、言わずもがな2010年に私たちに感動を与えてくれた「はやぶさ」の後継機です。

10年前の感動は今でも覚えています。
「はやぶさ」の地球帰還は真夜中にリアルタイムで見守り、人ではありませんがその頑張りと切ない最後(大気圏に突入し燃え尽きる)に涙しました。
ファンはこんな歌まで作りました。(名曲です!)
  ↓
【初音ミク】 はやぶさ

この曲にもあるように、はやぶさには様々なトラブルが発生し、何度もミッション失敗の危機が訪れました。
しかし関係者の「ならこうすれば」というアイデアと、「こんなこともあろうかと」というリスクマネジメントにより、満身創痍ではありますがミッションは成功し、大きな成果をもたらしました。

参考までに、はやぶさが成し遂げた「世界記録」をご紹介します。
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<世界初記録>
・マイクロ波放電型イオンエンジンの運用
・宇宙用リチウムイオン二次電池の運用
・イオンエンジンを併用した地球スイングバイ
・月以外の天体からの地球帰還(固体表面への着陸を伴う天体間往復航行)
・月以外の天体の固体表面からのサンプルリターン
・地球と月以外の天体からの離陸(着陸と離陸としては最小の天体)

<世界最遠記録>
・光学的手法により、自力で史上最も遠い天体への接近・到達・着陸・離陸

<世界最長記録>
・最も長い期間を航行し、地球に帰還した宇宙機(2,592日間)
・最も長い距離を航行し、地球に帰還した宇宙機(60億km)
・最も長い時間、動力飛行をした宇宙機
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そして「はやぶさ2」。

彼(!)もまた、兄(!)とは異なる小惑星「リュウグウ」に着陸し、大気と地表のサンプルを私たちに届けてくれました。

スタッフが日本に持ち帰ったサンプルは予想を超える量であり、それは地球に生命が生まれた起源を知る手がかりになると言われています。



...しかし、私は少し不満です。

それは「はやぶさ2」に対してではなく、この偉業に対する世間の反応に対してです。
兄であるはやぶさに比べ、世間の盛り上がりがイマイチなのがどうしても気に入らないのです。

これまた参考までに彼の記録を。
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<世界初記録>
・小型探査ロボットによる小天体表面の移動探査
・複数の探査ロボットの小天体上への投下・展開
・天体着陸精度 60 cm の実現
・人工クレーターの作成とその過程・前後の詳細観測
・同一天体2地点への着陸
・地球圏外の天体の地下物質へのアクセス
・最小・複数の小天体周回人工衛星の実現
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どうです、すごいでしょ?

...まあ、世間の反応の違いがどこから来るかはわかっています。

それはストーリー、「物語性」の強さです。

前述の通り「はやぶさ」は幾多の試練を乗り越え、偉業を成し遂げました。
そして最後には人類への「プレゼント」を贈り、自分自身は燃え尽きました。

まるで映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」の古代進のようであり...古いですか?
では、同じく映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」のトニー・スターク/アイアンマンや「ターミネーター2」のシュワルツェネッガー演じるT-800ようだと言えば...

たとえの是非はどうでもいいのです。
要するに、私たちはこうした「試練→勝利→死」というドラマが大好きであり、そこに「はやぶさ」はドンピシャだったと言えるでしょう。

しかし私は声を大にして言いたい。

「はやぶさ2の物語は終わっていない!」と。

確かに、彼は兄のような試練に見舞われてはいません。しかしそれは兄の苦労から(本当は彼自身ではなくプロジェクトのメンバー達が)学び、それらを活かしたからです。
実はそれもまたひとつの「物語」です。

そして、「はやぶさ」と「はやぶさ2」の大きな違い。
それは、はやぶさは地球に帰還し大気圏で燃え尽きましたが、はやぶさ2はサンプルの入ったカプセルを切り離した後、また次のミッションに向かったという点です。
だから私も「はやぶさ2」の説明で「持ち帰った」ではなく「届けた」と表現したのです。

そう、彼は今もまだ旅の途中であり、物語は続いているのです。

もちろん人にも宇宙機にも「終わり」は必ず来ます。

兄のように「かっこよく散る」のもドラマですが、私は最後の最後まで「俺は俺の責務を全うする」のもまたドラマだと思うのです。(最後に鬼滅ネタで今年をしめる、と...)



では、皆さん、よいお年を!

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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