「レバレッジ」を効かせる


3分間ラーニング, ニュースの切り口

本日のテーマは「レバレッジ」です。

「てこ(Lever: レバー)の原理」を意味する言葉であり、てこのように「小さい労力で大きなものを動かす力」として、ビジネスにおいては金融業界でよく使われています。

たとえば、100万円しか手持ちの資金がなかったら大きなビジネスはできませんが、そこで900万を借り入れれば、トータル1000万円の資金となり、10倍の規模でビジネスが可能になります。(当然リスクも増えますが)

かなり乱暴な例ですが、これが「レバレッジを効かせる」ということです。

このレバレッジ、応用分野は金融だけではありません。
そう、今話題の『GO TOキャンペーン』も、このレバレッジを効かせることを狙った政策です。

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コロナ禍で、世界経済はリーマンショックなどとは比較にならないくらいの打撃を受けています。その規模は20世紀初頭の世界恐慌や第二次世界大戦に次ぐレベルで、日本経済も「全治5年」と言われています。

当然政府も手をこまねいているわけではありません。

「全世帯に一律10万円の給付」は、そのひとつの形でした。
しかし、この政策は公平ではあるものの(一部に「金持ちにまで配るのは不公平」という意見もありましたが)、経済の活性化にはほとんど効果がありませんでした。

なぜなら、給付された現金の多くはいざというときの「貯蓄」、あるいは収入補填として「生活必需品の消費」に回ってしまったからです。

「経済の活性化」とは何を意味するか。
それは当然、個人や企業が多くの消費や投資に「お金を使うこと」であり、それによって「社会にお金が回ること」です。

しかし給付金が貯蓄に回されてはお金は社会に回りませんし、生活必需品はいずれにせよ買うわけで、それで消費が増えるわけではありません。

だから経済活性化には、一律給付はほとんど効果が無いのです。
※念のため付け加えると、私はコロナで金銭的打撃を受けた個人・企業への「弱者救済」目的での給付は否定しません。あくまでも「日本経済の活性化」目的に絞って話をしています。

そこで出てきたのが「GO TOキャンペーン」です。

GO TOトラベルは「旅行代金の補填」を行うことで、「安く豪華な旅行ができるのなら行きたい!」という消費意欲を刺激し、大きな成果を上げています。

これこそ「レバレッジ効果」です。

2020年度の政府予算は約1.3兆円、仮にこれを全国民に配ると、ひとり1万円強、つまり一律給付金の1/10しかもらえない計算です。

国の予算も際限なく使えるわけではありませんから、こうした「少ない投資で大きな効果」を狙うレバレッジを効かせる政策はとても合理的です。

しかし、GO TOキャンペーン全てがレバレッジとして成功するわけではありません。
私はそこに懸念を持っています。

GO TOトラベルが成功したのは、旅行という商品が「高単価ビジネス」だからです。
通常なら朝食・夕食付きで3万円の高級旅館に2万円弱で泊まれる。だから「普段できな贅沢ができる!」と利用者が飛びついたのです。
そこには、自粛生活でたまったストレス発散の意味合いも強かったでしょう。

しかしGO TOイートは?

手続きの煩雑さなどで登録店が思ったようには増えないという問題もありますが、根本的に飲食が旅行と比較して「低単価」であることがポイントです。

成果(売上高)のトータル金額が一定だとしたら、単価の高い旅行の方が少ない利用者数で済むことは明白です。
どんな業種でも、「売上高=客数×客単価」ですから。

飲食でも高級店はありますし、旅行でも安い宿はありますが、平均すれば客単価は「一桁違う」とわけで、GO TOトラベルの10倍以上の利用者がいなければ同様の成果は出ません。

毎週GO TOイート使う、という人もいなくはないでしょうが、予約必須であり手続きの手間も考えると、利用者が激増するとは考えにくいです。

同様に、GO TOイベントもトラベルより単価は低くなります(感覚としては半分以下)が、イートと異なり「趣味の領域」ですから、個人的には少し期待しています。
と言うのも、トラベル同様「イベントな行けないストレス」から、リピーター含めある程度の利用者が期待できるという点、そして「趣味にはお金を掛けたい人」が多いと考えられるからです。(日本人が音楽に消費する金額は世界一ですし、オタクの「課金欲求」もそれ狙いのビジネスが多いことから解ります)



さて、ここまでは国のGO TOキャンペーンについてお話ししてきましたが、こうした「レバレッジを効かせる」のはビジネスでもとても重要です。

少ない投資で大きな売上に結びつける。

そのためにあなたの会社はどのようなマーケティングをしていますか?
GO TOトラベルのような「客単価の高いビジネス(事業)」は何で、苦労しなくても売れる「仕組み」の構築に力を注いでいますか?

たとえば「B to B の高額サブスクビジネス」などは考えられませんか?

さらに言えば、あなた個人としても、「楽して(orお金を掛けずに)満足(物質的/精神的に)できる」ための工夫をしていますか?

「レバレッジを効かせる」のは、様々な分野で可能なのですから。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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