「大きな主語」と「おおげさな感情表現」に注意しよう


3分間ラーニング, ニュースの切り口

テレビの主要コンテンツである報道とワイドショー。
そしてTwitterをはじめとしたSNS。

そこには、様々な「意見」が溢れています。

そうした意見に私たちは「うんうん、確かに」と頷いたり、「何言ってんのこの人?」と憤ったりする。とても日常的なワンシーンです。

最近ではコロナに関する話題や米国の人種差別、そして芸能人の引退や自殺などが、これら「意見」のネタとして取り扱われています。

しかしそうした意見に触れるとき、気をつけてほしいことがいくつかあります。
今回は2つに絞ってお話ししましょう。

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まずひとつ目が「大きな主語」です。

コロナに関する意見として、こんなのを見聞きした方も多いでしょう。

「私たち専門家の総意として」
「私の周りのママ友はみんな言ってますが」

...「私たち」って? 本当に「総意」なのでしょうか?
そして「みんな」って?

なぜ、「私はこう思う」と言わない/言えないのでしょうか。
理由はいくつか考えられます。

1.自分の意見に自信が無いから
2.「私は」より説得力があるから
3.もし間違っていた場合、責められるリスクが分散できるから

1と2はセットの場合も多いでしょう。
そして無意識的に3が理由の場合もあるでしょう。

私がここで特に問題にしたいのは、2です。

そう、「数の論理」で説得力を上げようとするひとつのテクニックとも言えますが、これは『多数論証』と呼ばれる詭弁(屁理屈)のひとつでもあります。

この多数論証は、子どもでも使えます。

「AちゃんもBちゃんも、みんな持ってるもん!」

と玩具をねだるのがそれ(笑)

ここで「そうかー、みんな持ってるなら...」となるのは親バカとして微笑ましい部分もあります。
しかし、これがコロナや差別、ハラスメントのような社会的問題、あるいは企業の重要な意思決定の場であれば...笑って済ますことなどできないはずです。

さらにそれが、SNSやテレビといった「開かれた場」での「影響力の有る人」の発言であればなおさらです。

しかし、現実には「みんな」「私たち」といった「大きな主語」を使った『多数論証』という屁理屈がまかり通っており、それを「なるほど! そうなのか!」とと鵜呑みにしてしまう人が多い。

その状況に私は危機感を抱いています。

「そうか、では「私は」と自分の意見を訴える人の方が信用できるんだな」

そう思われた方、ちょっと待ってください。
「大きな主語」でなく、半ば退路を断って「私は」と主張する人の話を見る/聞く/読む
時にも、注意しなければならないことがあります。

それが本日お話ししたい2つめのポイント、「大げさな感情表現」です。

テレビのコメンテイターや街頭演説の政治家の「涙の訴え」。
それに「そうだそうだ!」と感情的に乗せられていませんか?

また、Twitterの「怒りで震えが止まらない」とか「涙が止まらない」(止まらないのが多いなあ)というツイートに「けしからん!(q(`´))」とか「うんうん(・゚・(ノД`)・゚・。)」となったりしていませんか?

自分の意見に賛同して欲しいときにポイントとなるのは2つ。

そこに納得感のあるロジック(理屈)はあるか。そして共感を得られるか。

これがビジネスであれば優先順位は「理屈>共感」ですが、社会的な話題やプライベートな場面では、そ反対に「共感>理屈」となります。

『感情は伝染する』のです。
私たちはそれを経験的に知っているため、こうした「大げさな感情表現」を意識的/無意識的に「共感のテクニック」として使っています。

しかし、視覚&聴覚情報である「涙の訴え」や、言語情報である「震えが止まらない」などが、メッセージの送り手の真実である保証はどこにもありません。

「本当に震えながらこの文章を入力してるのか?」と疑っても良いはずです。

しかしこういうことを言うと、「人を信用しない悲しいヤツ」とレッテルを貼られるかもしれません。

それでも「私は」主張します。
感情に流されると判断を誤ってしまうリスクが高くなるからです。

お願いします。
「大きな主語」と「大げさな感情表現」にうかうかと乗らないでください。

こんな状況だからこそ。


プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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