「自己○○感」で人材育成を考える


3分間ラーニング

以前、あるコミュニティでのイベントで、こんなことを言われました。

「桑畑さんって、自己肯定感が強いですよね」

その言葉そのものは知っていたものの、そういうことを言われたのは初めてでしたし、何より「自己肯定感」について深く考えたことがなかったため、私はこう返しました。

「えーと、それって褒めてます?」

その方は即座にこう言いました。

「もちろんですよ! 常に前向きに過去を肯定するって、とても素晴らしいことでしょう? 正直うらやましいですよ」



ひょっとして「脳天気」とか「自信過剰」というニュアンスもあるのでは、と思っていた私(この何でも疑う癖も直した方が良いかも)ですが、そこで安心しました。

しかし最近、この「自己肯定感」の他にも、「自己効力感」や「自己有能感」など、様々な『自己○○感』があることを知り、これは一度自分なりに定義しておく必要がある、と感じたのです。

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ここでは、5つの『自己○○感』について考えてみましょう。



1. 自己肯定感

 自尊感情とも呼ばれ、他者からの評価ではなく、自分が自分をどう思うか、感じるか。つまり「自分は素晴らしい人間だ」という実感が「自己肯定感」だと言えるでしょう。
 ということは私は先の方に対して「自分は素晴らしい人間だ」と思っているオーラを出していたわけで、正直恥ずかしいです(笑)

 しかし「他者からの評価でなく」とは、その根拠は不要なのでしょうが、実際には過去の経験、たとえば褒められたり否定されなかったりしたことが、自己肯定感を醸成することに繋がります。
 「褒めて育てる」というのは、まさにこの自己肯定感を高めることを主眼に置いていると言えます。



2. 自己効力感

 自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できる、という可能性の認知であり、要するに自分がある課題を実現できるという自信のこと、と定義できます。
 たとえばある仕事を頼まれたとき、「自分ならできる」と感じれば、これを持っていることになります。

 では、どうしたら自己効力感を感じることができるのか。これはやはり学ぶことでスキルや知識を得ることでしょう。
 テストに臨む際、「あれだけ勉強したのだから」と思えるかどうか、それが自己効力感です。また、上司などから「君ならできる」と言われたときにも感じることができるでしょう。



3. 自己有能感
 
 「自分はデキる人間だ」という実感のことで、これは人間の承認欲求が背景にあります。やはり誰かに認めてもらうことで、人は自信を持てるのです。

 では、この「自分は優秀だ」という実感はどうしたら得られるでしょう。
 それは「目標の達成」です。特に困難な課題に取り組み、それを成し遂げたてその成果を認められたとき、私たちは「自己有能感」を感じることができます。



4. 自己有用感

 自分が誰かの役に立っているという実感のことであり、これを感じるのは当然「ありがとう」と感謝されたり、また自分がやったことに対して「ああ、喜んでくれている」と思える場面です。



5. 自己重要感

 前述の通り、人は他者から認めてほしいという欲求を持っていますが、それは先の「デキるヤツ」としてだけでなく、もうひとつ「大切な存在」としても認めてほしいと思っています。
 その欲求が満たされたときに感じるのが、この自己重要感です。

 この「自分は誰かに必要とされている」という実感は、愛されたり、頼られたりすると感じます。たとえば子供が「パパー」と満面の笑みで駆け寄ってきたり、仕事で「これ、どうしたらいいでしょう」と相談されたときなどですね。



さて、こうして5つの『自己○○感』を見てくると、組織における人材育成、具体的には「部下の育て方」についての示唆が浮かび上がってきます。

まず私が感じたのは、「自己肯定感よりも、他の自己○○感を持たせるべき」ということ。

自己肯定感は「自分は素晴らしい」という実感であり、抽象的です。他者からの評価も不要ですから、「何がどう素晴らしいのか」が曖昧になりやすいのです。

確かに子供なら「えらいねー」「すごいねー」と褒めて自己肯定感を高めることは必要でしょう。
しかし大人に「根拠の無い自信」を持たせるのはリスクがあります。

だから残り4つの『自己○○感』を「順を追って」持たせるのが得策です。



まず持たせるべきは「自己効力感」。ある仕事を「自分ならできる」、少なくとも「できそうだ」と感じさせるのです。

そのために必要なのが「学ぶ場の設定」です。課題を設定し、それに必要な研修を受けさせたり、書籍を薦めたりすることで、その課題を「達成できそうだ」と感じさせる。
そして「君ならできる」と背中を押しましょう。

そうして課題に取り組ませ、達成したら「できたじゃないか」と認めてあげれば、「自己有能感」を持たせることができます。

そのためのポイントは、課題の「達成基準」、つまり目標設定です。数値化された明確な目標があれば、「達成できた」という強い実感を持つことができるからです。

もちろん目標が達成できないときもあるでしょう。
そうしたらもう一度自己効力感のステップに戻れば良いのです。成長のスピードは人それぞれ。焦らずその人に合った目標を設定しましょう。

ここまでで「自分ってけっこう優秀では」と思わせたら、それを単なる自己満足にしないために「自己有用感」を持たせましょう。

簡単です。「よくやってくれた。ありがとう」と言えばいいのです。
この「感謝」は必ず次の仕事のモチベーションに繋がります。

ここまでのステップで「自分はこの組織にいてもいいんだ」と感じさせたら、最後は「自己重要感」、つまり「この組織で必要とされている」という実感を持たせましょう。

そのために必要なのが「頼ること」です。

「今度はこれを頼む」「君じゃないと」とお世辞に聞こえないレベルで頼りましょう。
時には「これ、どうしたらいいと思う?」と相談するのもいいでしょう。

こうして「根拠のある自信」を付けた人材になれば、それは組織にとっても、そして本人にとってもプラスのはず。

ただ、それによって相手が増長してしまうリスクは避けなければなりません。

だから4つの自己○○感を高めながらも、「まだ足りないスキルは何か」「まだ任せられないことは何か」をお互いに共有することが重要です。

そうして『自己○○感』を高めるPDCAを回していきましょう!


プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパスで専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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