「算数」と「数学」の違いとは


3分間ラーニング, 思考トレーニング

このブログで何回か行ってきた「類義語トレーニング」。

「恋」と「愛」、「改善」と「改良」、「面談」と「面接」など、私たちは様々な類義語を使い分けています。

類義語とは、「意味はほぼ同じでニュアンスが異なる」言葉のこと。
では、そのニュアンスの違いとは?

それを類義語辞典など使わずに、自分の頭で考えてみる。
そうして思考・コミュニケーションの最重要部品である「言葉」に敏感になることは、思考力・コミュニケーション力を高めることに繋がるからです。

そして本日のお題。

さて、「算数」と「数学」の違いとは?
すぐ続きを見るのでなく、まずはあなた自身の答を考えましょう。

あ、「小学生が学ぶのが算数で、中学生以上が数学」という誰でも思いつく定義以外でお願いしますね(笑)

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さて、いかがでしょうか。

ネットで調べると、様々な人が様々な定義をしています。
たとえば...

◆ 算数は計算するためのやり方を教えるということであり、数学はそれを学問として研究するもの
◆ 算数では正しい結果を得ることに価値がおかれ、数学では結果そのものよりも、どうやってその結果に達したかのプロセスに価値がおかれます
◆ 「数学」では計算の正確性というよりはむしろ、答えに行き着くまでの過程、すなわち「論理の正確性」が求められる

といった具合です。

では、私なりの「算数」と「数学」の違いを。

◇ 算数は「論理」を学び、数学では「理論」を学ぶ

具体例でお話ししましょう。
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Xさんの家族とYさんの家族が集まって、8人でホームパーティを開きました。
Xさんの家族はサンドイッチをそれぞれ2個ずつ、Yさんの家族はおにぎりをそれぞれ4個ずつ持ってきました。
サンドイッチとおにぎりの数を足すと26個でした。
XさんとYさん、それぞれ何人家族でしょうか。
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大人である私たちは、当然こう解こうとします。

X+Y=8
2X+4Y=26

はい、中学校の「数学」で最初に習う、シンプルな連立方程式ですね。

移項して「Y=8-X」ですから、「2X+4(8-X)=26」で、そこから「2X-4X=26-32」。
そして「2X=6」なので「Xさんは3人家族でYさんは5人家族」となります。

では、「算数」で解こうとしたらどうなるのか。
たとえばこういう解き方ができます。

・全員がXさん一家だとしたら、食べ物は16個。
・全員がYさん一家の場合は、食べ物は32個となり、その差は6個。
・Yさん一家はXさん一家より2個多く持ってくるので、Yさん一家がひとり減る毎に2個食べ物は減る。
・差が6個ということは、6÷2でYさん一家が3人減れば26個になる。
・よってYさん一家は5人家族で、Xさん一家は3人家族。

面倒くさいですね(笑)
方程式という「道具」を使えば、もっと短時間で解けるのに!

これでなんとなくおわかりいただけたでしょうか。

「算数」は、与えられた情報から、まず前提条件を明確にする必要があります。
そしてそこから「~だとすると、○○になる」と考えを進め、そこからさらに「だとすると...」と、まさに「筋道を立てて考える」ことで答にたどり着く。

「筋道を立てた考え方」を考える、これこそ「論理」を学ぶことです。

それに対して「数学」は、簡単に解くための「方程式という道具の使い方」、つまり「理論」を学ぶものなのです。

ちょっと補足しておきます。
「理論」は「論じられる理(ことわり)」であり、「論理」は「理(ことわり)に基づいて論じること」と解釈できます。
そして「理(ことわり)」とは何らかの法則を意味しますから、ここから「理論とは、言葉によって説明できる何らかの法則性、つまりある分野における知識体系を意味する」と定義することができます。

それを踏まえて「理(ことわり)に基づいて論じること」を考えると、「論理とは、何らかの法則性に基づいて論じたり考えたりすること、つまり筋の通った説明や思考の「やり方」を意味する」と定義できます。

だから英訳すると「理論=Theory(セオリー)」、「論理=logic(ロジック)」なわけです。

話を戻すと、ここから「数学は理論(方程式や関数などの知識体系)を学ぶもの」であり、「算数は論理(筋道を立てた説明や考え方)を学ぶもの」、というのが私の考えです。




もちろん、私の考えが唯一の正解だとは考えていません。
しかし...ここで文科省の学習指導要領を見てみましょう。

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<算数>
算数的活動を通して,数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え,表現する能力を育てるとともに,算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。
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<数学>
数学的活動を通して,数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則についての理解を深め,数学的な表現や処理の仕方を習得し,事象を数理的に考察し表現する能力を高めるとともに,数学的活動の楽しさや数学のよさを実感し,それらを活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てる。
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私の定義って、悪くないと思いませんか? (^^;;;

...というのは半分冗談ですが、重要なのは定義の正しさではありません。
最初に述べたように、言葉の定義を考えることそのもの、そして「その考えるプロセス」が重要なのです。

「そういえばこれって...」と疑問を持ち、何らかの考え方を使って諦めずに考え抜く。
そのひとつの「教材」が、この類義語トレーニングなのです。

プロフィール

桑畑 幸博

慶應丸の内シティキャンパスシニアコンサルタント。
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應丸の内シティキャンパス で専任講師を務める。また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

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